ゲボ吐きそう、もうやだおうちかえるぅ!!!   作:星ざくろ

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 呪術廻戦完結まであと3話。
 今月末で終わってしまうと思うと、どうにも物寂しく感じてしまいますね。
 一方で、こっちの話は筆者が遅筆過ぎてまだまだだらだらと続いていきます。
 筆者が何かの間違いでうっかり死なない限りは牛歩ながら続いていくのです。
 これからも読者諸兄の暇潰しになりましたら幸いです。


こだまことだま①

2017年4月24日 17時57分

浦見区市街 爆心地

 

 随所で燃え盛る火の手と斜陽に照らされて紅く染まる墨色の大地をかれこれ2時間近く彷徨う女がいた。

 

 異様とも言える水色の長髪も今は陽と火に照らされて紅く染まって見える。

 

 手も顔も炭塗れ、身に纏うスーツも汚れてしまっている。

 

 あっちにふらふらと歩いたかと思えば、何かの残骸を退かして地面を掘り返す。

 

 こっちにふらふらと歩いたかと思えば、炭で覆われた地面を掘り返す。その繰り返し。

 

 「やだよ・・・禪院さんどうして・・・・」

 

 ここにもいない、どうして、なんで、どこにと譫言のように口からか細く洩れる。

 

 頭ではもう理解してしまっている。

 

 けれども、心がその現実を未だに受け入れられずにいた。

 

 「君、まだやってたん?」

 

 そんな女の許に男が一人歩み寄ってくる。

 

 書生風の装いを身に纏った髪を金色に染めた吊り目の男だ。

 

 女は暫しその男の顔を虚ろな瞳で見つめるがすぐに視線を地に戻して掘り返す作業に戻る。

 

 そんな女の様態に腹を立てたのか男は舌打ちをひとつ鳴らし、四つん這いで地面を掘り返す女の腹を蹴り上げる。

 

 ウッ

 

 くぐもった呻き声と共に1間程吹き飛び地に転がる。

 

 「無視とか酷いわ。君が呑気に砂遊びやってる間にこっちの作業全部終わってもうたで」

 

 男の手には既に消し止められた松明があった。

 

 「これだけの大爆発があったのに残らず鎮火してしまってるのは具合が悪い。交通網麻痺してるせいで窓だの補助監督だのの集まりも悪いしで俺までこんな下働きする羽目になってもうたわ」

 

 男は手に持っていた松明を放り投げて、空高くを旋回する報道ヘリを忌々し気に見つめて男はそう愚痴る。

 

 これほどの大爆発の発生が既に大いに不自然とも言えるが、それ以上にこれ程の火の手が上がったにも拘らずその凡そ全てが既に鎮火済みという不自然は隠蔽する必要があった。

 

 それらを更に上回る不自然があるが、まさか生存者の非術師を皆殺しにするわけにもいかない。

 

 そちらの処理は上の連中がどうとでもするだろう。

 

 金を積むなりしての口封じだ。

 

 これほどの大事を隠蔽しきれるのかは甚だ疑問ではあるが、男は最低限上に睨まれぬ程度には動く必要があった。

 

 不運な事にこの街の消防署や警察署の連中は既に駆けつけて生存者の捜索に当たっている。

 

 浦見駅を挟んで向こう側にあった浦見消防署や警察署はこの爆発の被害域のギリギリ外にあったのだ。

 

 不幸中の幸いと言えば、駆けつけた隊員や警察官の現場指揮に当たる人間がこちらの事を多少なりとも知る人間であったという点と、いざこざになる前に上からの圧力が正しく伝わったという点だ。

 

 内心で何を思っているかはともかく、男の指示に現場の人間は従った。

 

 とはいえ、この辺り一帯に火を点けて回れなどと言えば反発がある事は想像に難くない。

 

 今は一刻も時間が惜しかった。

 

 男は彼らに被害地域の封鎖と生存者の保護、彼らを外から見られぬように隔離するように指示を出し、自身がこれから行う行為の一切の邪魔立てと他言をするなとだけ言い残しその場を離れる。

 

 そこからは事前に道具類を買いに走らせていた補助監督の女が到着次第、手早く拵えた松明と油を手に男の術式である投射呪法を駆使して駆け回り辺りに火を点けて回り時折見つける生存者の存在を捜索中の連中に伝えてまた走る。その繰り返し。

 

 上の連中の圧力で足止めを食らっていた報道ヘリが駆けつける頃にはなんとか目につく生存者を全員収容、それらしい現場に仕立て上げる事が出来ていた。

 

 「いい加減十分やろ。こんだけ探して見つからんのやから残念やけど真依ちゃんは跡形も残らず消し飛んだ。それが答えや」

 

 腹を抑えて咳き込む女に男はそう諭す。

 

 「目につく生存者は全員救出された。生き残りはもう居らん。ここからは消防隊員さん達の仕事の邪魔になる。言いたい事分かるよね?」

 

 女は男に視線を向け、その後ろで燃え盛る炎が目に映る。

 

 「―――ぁ、禪院さん・・・そんなところにいたんですね」

 

 女は虚ろな瞳のまま這う這うで炎目掛けてにじり寄っていく。

 

 「はぁ・・・」

 

 男はため息をひとつ吐き、女の頭を上から勢いよく踏みつけにして地面に叩きつけた。

 

 「世話の焼ける・・・・」

 

 「三輪!!?」

 

 男と女の許に走り寄る影が三つ。

 

 一人は男と共にこの地にやってきた補助監督の女。

 

 「ああ、歌姫ちゃん来たんや。それに―――」

 

 男は女の頭に足を乗せたまま最後の一人に目を向ける。

 

 「直哉、テメェ―――」

 

 巫女服の女の隣でこちらを睨み付ける眼鏡を掛けた女。

 

 「真希ちゃん。君ィ、何しに来たん?」

 

 「あ?」

 

 「よくもまぁ、顔出せたもんやなって言ってんの。君が身の程を弁えんかったばっかりに真依ちゃん消し炭になったで」

 

 「―――ッ!!?」

 

 「まぁええわ。歌姫ちゃん、この子気ィ狂ってもうて火の中に飛び込もうとしてたからちょっと乱暴にやけど意識落としといたから後任せてもええ?」

 

 そう言って男は女の頭から足を退ける。

 

 「三輪!三輪ぁ!!」

 

 「余計なお世話かもやけど、その子向いとらんで呪術師」

 

 それは男にしては珍しい気遣いでもあった。

 

 呪術師という仕事に仲間の死は付き物だ。

 

 一々そんな事に心揺さぶられているようでは、仕事が立ち行かなくなる。

 

 それを出会ってまだ間もない、たかが学友の一人が死んだくらいで気がふれてしまうようではとてもではないがやってはいけないだろう。

 

 「これ、今どういう状況?」

 

 「わ、びっくりした。悟君やん」

 

 「お前は―――たしか、禪院家の」

 

 「五条!」

 

 「や、歌姫。北海道の案件片付けて急いできたんだけどもう終わっちゃった感じ?」

 

 そこへ唐突に、何の前触れもなく一人の男が姿を現した。

 

 長身、白髪に包帯で目を覆った奇妙な出で立ちの男だ。

 

 「御覧の通りやで、ここで暴れてた連中は消し炭になるか逃げるかしたあとみたい。残ってるのはこの向こう百年は呪いを寄せ付けなさそうなアホみたいな残穢と瓦礫の山だけ」

 

 包帯の男の問いに吊り目の男が答える。

 

 「そっか、完全に出遅れちゃったみたいだね」

 

 包帯の男は辺りを見渡す。

 

 パッと見でこの地に残る術師のものと思われる残穢は5つ。

 

 一つはここら一帯を縦横無尽に駆け回ったかのような残穢。

 

 これは目の前にいる禪院家の男のものだ。

 

 この周りで今も燃え盛る炎に呪いの気配を感じない所とすぐ近くに転がる松明の存在を加味すると、なんらかの理由で火を点けて回る必要があったのだろうと察する。

 

 次に、爆心地の端の方。

 

 その周辺だけ地面が窪んでいる。

 

 残穢の気配からして恐らく特級相当。

 

 三つ目は四つ目に上書きされて随分と希薄になってしまっているが微かにでも残っている時点でこれも特級と見てもいいだろう。

 

 そして問題の四つ目。

 

 辺り一帯を焼き尽くしたであろう呪術の残穢だ。

 

 もしも宿儺の指が帯びる呪力の質感を知らなければ、呪いの王が復活したと勘違いしてしまっていたであろう凄まじさ。

 

 向こう百年という話も頷けてしまう。

 

 一つ気になる点はこの呪力の質感に覚えがあるという点だ。

 

 「これは目黒の・・・?」

 

 いや、近似ではあるが同一ではない?

 

 包帯の男は先月の一件を思い出す。

 

 目黒区の公園に残されていた残穢。

 

 自身の親友と争ったであろう術師のものを思い出し、目の前のそれと見比べる。

 

 親兄弟程度には似通っているけど、やっぱり違う。そう男は結論付けた。

 

 全くの無関係かと言われれば疑問を挟む余地はあるが、ひと月でこれほどの成長を遂げられるとも思えない。

 

 あっても血縁とかその程度の関係だろう。

 

 何にしても鍛え直しが必要かな?と、男はまだ見ぬ強敵の存在に久しく心躍らせる。

 

 五つ目は男が庇護下に置いている少年―――伏黒恵のものだ。

 

 最後に術師のそれの他に残る十数個体程の呪霊の残穢についても気にすべき点だろう。

 

 この場合、まず疑うべきは呪霊繰術。術師の残穢こそ残されていないが、呪霊の残穢から読み取れるその質を鑑みるに、被疑者筆頭は―――

 

 そこで思考をいったん打ち切る。

 

 考え出せばきりがないからだ。

 

 「これだけの被害だと、死人も結構な数になってそうだね」

 

 「いや、それがそうでもないんよ。結構な住民が生き残っとるみたいで何がしかの結界術で守られとったみたいやね」

 

 「そうなの?」

 

 「まだ正確な数が出たわけやないけど、死んだのはあの窪んどる辺りで踏み潰されたみたいにぺしゃんこになってた非術師数人とこの辺うろついとったらしい真依ちゃんとかも状況的に見て消し炭にされたんやないかってくらいやね」

 

 「つまり、真依の死体が見つかったわけじゃないんだよね?」

 

 「いや、まあそうやけど・・・悟君、本気で言っとる?」

 

 「死んだと決めつけるにはまだ早いでしょ。上手く逃げおおせている可能性もゼロじゃないんだしさ?」

 

 「五条・・・」

 

 「バカ目隠し・・・」

 

 「五条先生ね?」

 

 男はもう一度、死者が出たという窪んだ辺りに目を向ける。

 

 「―――ん?」

 

 特級の残穢に隠れてほんの僅か、つい今しがた想起した目黒で見た術師のものが存在している事に気付いた。

 

 「どうかしたの?」

 

 「いや、なんでもない」

 

 巫女服の女の問いには答えず、男は話題を変える事にした。

 

 「そういえば、見掛けないけど恵は?」

 

 「伏黒くん?そういえば見掛けてないわね」

 

 「そういえばアイツ、住んでんのこの辺だっけ?」

 

 「恵君って、悟君が預かってるっていう?」

 

 「出られなかったんだけど、4時過ぎ頃に凄い数の着信が入ってたからてっきりここにいると思って折り返し入れずに直に跳んできたんだけど」

 

 そう言って包帯の男は上着のポケットからスマホを取り出す。

 

 「その恵君も消し炭になってたりしてね」

 

 「―――そういえば、お前にとっちゃ恵は次期当主候補の対抗馬になり得るのか?当主の息子つっても、そんな半端な強さだとやっぱ内定とはいかないわけだ」

 

 「は?」

 

 そうして、人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる包帯の男と、今にも人を殺しそうな顔をした吊り目の男が暫し睨み合いになるが、吊り目の男が目線を逸らし舌打ちを打ってその場を離れようとする。

 

 「あほらし。付き合ってられんわ」

 

 そんな時だった。

 

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

 

 スマホのバイブ音と思しきくぐもった音が響く。

 

 「僕のじゃないね」

 

 スマホを手に持つ男は自分のものではないと否定する。

 

 「あ、私んだ。0868?どこの市外局番だ?」

 

 眼鏡の女が懐からスマホを取り出し見知らぬ番号からの着信に困惑している。

 

 「出てみたら?ひょっとしたら真依からかもよ?」

 

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

 

 「今度は僕のスマホ。はは、恵からだよ」

 

 それ見た事かと笑みを深めてこちらを見つめてくる包帯の男に吊り目の男は大きな舌打ちを打って今度こそ立ち去っていった。

 

 「もしもし・・・・真依!?無事なのか!!?お前今どこに!!!?」

 

 どうやら真依も無事そうだと一安心したところで包帯の男も電話に出る。

 

 「もしもし恵?お前今どこに―――」

 

 

 「「は?岡山!?」」

 

 

 

2017年4月24日 18時00分

岡山県津山市旭丘 越谷邸

 

 

 き、気まずい・・・・

 

 瞑っていた瞼を薄ぅく開き、気取られぬように足元に視線をやる。

 

 そこには白いオオカミ犬と黒いオオカミ犬が二匹。額には特徴的な文様がある。

 

 伏黒恵め、抜け目なく玉犬に僕の事を監視させてやがるッ!

 

 敷かれた布団の左右を挟むように見知らぬ女子供が姦しく話し込んでいる。いや、一人めっちゃ知ってるやつが居るけど・・・

 

 また一段とデカくなってまぁ・・・・目算だけど立ったら180近いんじゃねぇの!?

 

 て待て待て!掛け布団をひっぺがそうとするんじゃない!!上はともかく、下は今なにも履いてないんだぞ!!?

 

 「こらこられんちょん、この人今履いてないんだから掛け布団引っぺがしちゃダメだよ」

 

 「そ、そうだよれんちゃん!が・・・この不審者さん今何も履いてないから掛け布団引っぺがすのはまずいよ!」

 

 不審者ァ!?仮にも友達の僕を不審者呼ばわりィ!!?

 

 「けどウチ、この不審者さんのお股にぶら下がってる焼き芋さんもっとよく見たいん!」*1

 

 「れんちょん、あれは焼き芋とかじゃないから」

 

 「お姉ちゃん、私も見たい!」*2

 

 「しおりちゃんまで何言ってんの!?」

 

 「れんちゃんもしおりちゃんもダメだからね!?」

 

 頼むぞ!?この状況、ホントお前だけが頼りなんだからな!!?

 

 「ほら、このみちゃんからも何とか言ってやってよ!」

 

 「・・・・」

 

 「・・・・このみちゃん?」

 

 「なっちゃん、一つ聞きたいんだけどいいかな?」

 

 「え、なに急に改まって・・・」

 

 「メガネ君のアレのサイズって知ってる?」

 

 「え?」

 

 「!?」

 

 ・・・何言ってんだこの女?

 

 察するにメガネ君ってのは壁際に寄りかかって僕の事を凝視していたところに今の発言でビクッと反応した彼の事だろう。

 

 「いや、急に何言ってんの!?ウチが知ってるわけないじゃん!!」

 

 「いやさ、私の元カレのおっきい時のアレのサイズと比べてもこの人の焼き芋遜色ないからさ、ひょっとしてアレが短小ってやつだったのかな?って」

 

 「いやいやいや、十分おっきいんじゃないの!?あんなの入るわけないじゃん!!?」

 

 「いや、それが意外とすんなりと」

 

 そうなの!?

 

 「そうなの!!?てか彼氏とかいた事あるのこのみちゃん!!!?」

 

 「そりゃあるよ、私の事なんだと思ってるの?なっちゃん」

 

 「あ、あのお二人ともれんちゃん達もいますからその辺りで・・・・」

 

 おっと、そうだよ。こんな話、子供の教育によくないぞ!

 

 「あ、そうだよね。ごめんね?」

 

 「ホントだよもぉ、ウチ変な汗掻いちゃった」

 

 「あはは、ごめんって」

 

 「あはは・・・で、兄ちゃん。実際のところどれくらいの大きさなの?」

 

 「!!?」

 

 「夏海先輩!?」

 

 いやいやいやいや。

 

 「いや、別に見せろとか言いたいんじゃなくて実際問題どれくらいのサイズ感なのかな?って」

 

 「・・・・・・」

 

 「いいじゃん!減るもんじゃなし!」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「え?兄ちゃん、それでっかくない?もしかして見栄張ってるんじゃ・・・?」

 

 「・・・・・・」

 

 「うっそだぁ!?」

 

 嘘とか言って差し上げるな!

 

 そっとしておけ!

 

 「やっぱりあれは短小だった・・・・?」

 

 んなわけ!?

 

 「そんな筈ないから!?・・・よし、こうなったら仕方ない!」

 

 布団のすぐ傍にあった気配が壁際にある気配の許へとにじり寄っていく。

 

 「そういうわけだから兄ちゃん。そのズボンの中身、義によって検めさせてもらう!」

 

 「!!!?」

 

 「こら!暴れるな!!パンツが脱がせにくいでしょうが!!!」

 

 「「「おぉ~!」」」

 

 もう滅茶苦茶だよ!いや、待て!この状況はむしろ好機!!

 

 周りの連中の目があっちの騒動にいってる間に玉犬に気取られぬように細心の注意を払いながらそっと傍らにいる旧友の手に触れようとしたところで逆に相手の方から手を握られる。

 

 ≪・-・・・ -・-・・ ・-・-- -・--・ ・-・-- ・・ --・-・ おきてるでしょ

 

 向こうも同じことを考えていた様だ。

 

 僕の狸寝入りなんてお見通しか。

 

 昔取った杵柄、観劇などに際して声に出しての会話が憚られる場での意思疎通手段としてモールス信号を用いていた事がこういう形で役に立つ日が来ようとは思わなんだが。

 

 ≪・- --・-・ -・-・ -・-・・ -・ ・-- ・--・ ・・・ -・-・ いっしょにきたやつらに--・-・ ・・- -・ ・- ・--- しょうたいを-・-- ・・-・・ ・・ ・・・ --- ---・- ・・ -・-・ けどられずに・・- -・・- ・・・- -・・- -・-・・ -・ ・- うまくまきたい・-・-- ・--・ -・ ・・ ・-・-- てつだって-・・ -・ -・--・ ・・-・ ・-・-・ ほたるちゃん

 

 

―――以下、回想

 

 

 「―――か、帰って不貞寝するんじゃなかったのか?」

 

 「そのつもりだったけど、今の無防備な君を見逃す理由にはならないよね」

 

 そう言って羂索は両の手を胸元に持っていき、まるで手の甲側で合掌するかのような素振りを見せ―――

 

 

 

 

領域展開

 

胎蔵遍野

 

 

 

 翁の消失に合わせるようにして球状結界の守りを失った津美紀ちゃん達の許になんとか飛び込む様にして覆いかぶさり死に物狂いで簡易領域を展開する。

 

 しかし、この不調のせいなのか。

 

 それとも羂索の領域と押し合うには元から足りていなかったのか。

 

 何にせよ1秒と持たずに見る見るうちに剝がされていく。

 

 あと刹那の内にこの超重力に飲み込まれてしまうのだと確信する。

 

 そんな絶望の淵でふと思う。

 

 そういえば結局―――

 

 「蛍ちゃんの引っ越し先に一度も遊びに行けなかったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

森羅万象 第三楽章

 

 

 

 

 

表象展観

 

 

 

 

 「は?」

 

 それは羂索の口から出た混乱の音だったのか、或いは僕自身の口から出た困惑の音だったのか。

 

 意味不明。

 

 突如として羂索の領域の基点たる悍ましき樹木が同じだけの質量の真っ赤な花弁へと姿を変えて舞い散ってしまった。

 

 「―――ッ!?」

 

 続けざまに無数のサーベルが空より飛来して羂索に襲い掛かる!

 

 剣群を寸でのところで躱し、飛来してきたサーベルの一つを掴んでは続くそれを打ち払っている。

 

 しかし、完全に往なせているわけではないようだ。

 

 次第にかすり傷は増え、遂には左太ももを串刺しに貫かれた!

 

 「いったいなにが」

 

 ともあれ、これは好機だ。

 

 恐らく羂索の術式は今、焼き切れている!

 

 不調状態でなければここで僕も攻撃に加わり、畳みかけるところだが流石に今は逃げに徹した方が良さそうだ。

 

 今の状態に最適な身体操法を手探りしながら、なんとか二人の身体を抱え上げる。

 

 「ひゃっ!?」

 

 「ちょっ!?」

 

 てか、なんでこの子達全裸になってるんだ?

 

 いや、今はそんな事にかかずらっている場合ではない。

 

 とにかく、少しでも遠くにッ!?

 

 身を捩り、倒れ込むように背後から飛来したサーベルを回避するッ!

 

 アイツ、自分の被弾増やす覚悟で僕の方も逃がさない気か!!?

 

 身を伏せた状態からなんとか立ち上がろうとするが、どうにも身体が言う事を聞かない。

 

 次の瞬間、羂索が掴んだサーベルを振りかぶるのが視界の端に見えた。

 

 まずい、今度こそ躱せないッ!

 

 やられ―――

 

 

 ズガンッ!

 

 

 突如として轟音と共に羂索の胴体、その右半分が弾け飛んだッ!!?

 

 何だ今のは!?まさか狙撃!!?あの威力となると対物ライフルとかか!!?

 

 いったい誰が!!?いや、気にしている場合じゃない!この好機を逃せばもうチャンスはない!!

 

 なんとか身体を動かし―――

 

 「うぉっ!!?」

 

 突如として自身の足元、その影が盛り上がり巨大な白蛇の口となって僕らを丸呑みにしようとするのを寸でのところで飛び退くッ!

 

 これは―――

 

 「玉犬ッ!」

 

 次の瞬間、白と黒の大型犬二頭が僕目掛けて飛び掛かってくるッ!!?

 

 「ぬぉぉおお!?」

 

 背中を薄皮一枚引っかかれるがこれも無理矢理回避して転がり距離を取るッ!

 

 やっぱり呪力出力が安定しない。

 

 体は異様に重く反応が鈍重、呪力強化や術式の行使をしようにも出力が安定しないッ。

 

 思考はそれなりにクリアだが、他が最悪だ。

 

 なにより状況も最悪だ・・・

 

 「お前、津美紀と禪院先輩に何をしたッ!」

 

 「め、恵!?ち、違うのこれは・・・」

 

 「み、見ないで伏黒君・・・」

 

 「いや、待て待て何もしてな―――」

 

 

 「嘘を吐くなァ!!」

 

 

 その激昂の叫びと共に呪力を滾らせ飛び掛かってくる中学生男子の姿がそこにはあった。

 

 

 ふぇぇ、なんかマジギレの伏黒恵が襲い掛かってきたんですけどぉ・・・(半泣き)

 

 

*1
無知故の知的好奇心

*2
無知の痴




【三輪霞】
 どっかのケリィみたいに生存者というか学友の真依ちゃんを探していた人。
 SANチェック失敗したりアイデアロールに成功したりして一時的発狂状態になっているかもしれない。
 ドブカスの精神分析(物理)で失神中。


【禪院直哉】
 今回の事後処理の初期対応で一番働かされた人。
 補助監督に火付けの道具類を買って来させて辺りに火を点けて回り、その傍らで生存者のほとんどを発見したのもこの男。
 一仕事終えてから砂遊びに勤しむ子供をやさしく諭し、寝かしつけた。


『浦見警察署及び消防署合同救助隊』
 ギリギリ被害を免れた浦見区の警察署及び消防署の人員で編成された救助隊。
 救助活動を始めてすぐに妙な男の横やりが入り、直後に上からの謎の圧力も掛けられこの妙な男の指揮下に置かれる。


【庵歌姫】
 呪術高専東京校から急いで駆けつけた京都校の教師。
 禪院真依や三輪霞ら一年の担任。
 五条悟が嫌い。


【禪院真希】
 歌姫と共に駆けつけた真依の双子の姉。
 直哉の心ない言葉には結構来るものがあった。
 SANチェックにギリ成功してアイデアロールを振らずに済んだ。
 担任の五条の事をバカ目隠し呼ばわりしている。


【五条悟】
 現代最強の呪術師。
 北海道全域を雷速で飛び回る特級仮想怨霊カンナカムイの祓除に従事していた。
 今年の初めから今月の頭まで放送されていた漫画原作のアニメの影響か、可愛らしい童女姿だった事もありどこか罪悪感を感じる任務だったとは本人の談(どの口が)。
 任務終了後、恵からの鬼電と浦見での事態を知り急いで跳んできた。


『れんちょん』
 小学三年生の少女。
 知的好奇心に溢れている。
 挨拶はにゃんぱす。


『しおりちゃん』
 小学二年生の少女。
 父親が駐在さん。
 1歳の妹がいる。


『このみちゃん』
 大学二回生の女。
 高校時代は吹奏楽部でフルートを演奏していた。
 彼女の言を信じるならガバ〇ンという事になるが果たして・・・・?


『なっちゃん』
 中学三年生の少女。
 義によって兄のパンツの中身を詳らかにしようとするやべえ女。
 初恋の人は兄ちゃんらしい。


『メガネ君』
 高校二年生の〝無口〟なメガネ。
 妹にパンツの中身を詳らかにされそうになっているかわいそうな人。
 フルチンの男や彼と共にやって来た連中の事を警戒している。
 玉犬の事もちゃんと見えている。


『蛍ちゃん』
 中学一年生の少女?
 目算で180近い高身長。胸部も更に重量を増している。
 久しぶりに再会した友人の事を咄嗟に不審者呼ばわりした。


【羂索】
 冴羽獠(偽)絶対殺すウーマン。
 領域展開を何らかの謎の力で解体されて術式が焼き切れている。
 自身に向かって殺到する剣群をなんとか往なしながら冴羽殺害の機会を伺っていたがどこかから狙撃されて上体の右半身が吹き飛んだ。


『津美紀ちゃんと真依ちゃん』
 何故か全裸になってしまっている高一女子二人。
 緊張の連続による発汗、煤塗れの大地に倒れこんだり転がったりしたので薄汚れている。
 フルチンの男と合わせると童貞が見れば事後に見えてしまうのは仕方がない事かもしれない。
 紆余曲折を経て現在は岡山にいる。


【伏黒恵】
 フルチン強姦魔絶対殺すマン。
 想像力豊かな中3童貞。
 シスコン。悪人が嫌い。
 事件発生時、帳が邪魔をして現場に入れず、津美紀には電話が繋がらず、頼みの綱の五条先生に鬼電しても出ずでヤキモキしていると帳が破れてそこから発生する熱波、爆風の余波に吹き飛ばされたりしていた。
 そこからやっとの思いで現着した時に見た光景は彼をプッツンさせるには十分だったのである。
 紆余曲折を経て現在は岡山にいる。


【星野我愛熱斗】
 冴羽獠を名乗るそれでも僕はやってないクソガキ。
 絶対殺すウーマン&マンの猛攻をどういうわけか凌ぎ、18時時点での生存は確定している模様。何故か岡山にいる。
 巨体故にサイズの合う衣服がなく、貸し出してもらえないので現在もフルチンのまま布団に寝かされ玉犬に監視されている。
 居合わせたご近所の子供たちにも股間にぶら下がるものを目撃されており、それを指して焼き芋呼ばわりされている。
 自身の巨体のサイズ感に合わせる形で公衆浴場などでドヤるためだけに術式での増改築を繰り返した一品で、実用性を一切考慮に入れていない。常人が抜刀すれば間違いなく貧血に倒れること請け合いである。
 なんとか高専関係者の目を盗んでトンズラこけないか蛍ちゃんと画策中。

七海「虎杖くん、見えますか?これが呪力の残穢です」

  • いや、全然見えない
  • 凝!(範囲指定反転pc勢)
  • オレでなきゃ見逃しちゃうね(メモ帳転写)
  • 本当だ混じってるよウケる(誤字報告)
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