一応は推しの子が原作の二次創作である事を標榜する作品なので何かこの日に公開出来たらなと思い書いた小話。
本編とはあまり関係のない別√のお話。
推しの子終盤のネタバレを多分に含んでいると思うので未読の方はお気を付けを。
しっかし、呪術廻戦も推しの子も終わってしまったのかぁ・・・・
20■■年12月26日
苺プロダクション ミーティングルーム
「で?いちおう言い訳くらいは聞いてあげるけど」
B小町ライブツアー Glare×Sparkle の全日程を終えた翌日の事。
俺、星野アクアはパイプ椅子にダクトテープで口を塞がれ手足は念入りに縛られ拘束されていた。
すぐ近くにはB小町のメンバーであるルビー、有馬、
「ん~・・・」
口を塞がれているのだから当然というべきか、くぐもった唸り声しか発する事は出来ない。
つまりこいつらはハナっから僕に言い訳を許すつもりがない。
「フンッ!」
右の頬を刺すような痛みが走り、それに遅れて赤熱していくのが分かる。
早い話が引っ叩かれたのだ。有馬に。
「言いたい事があるならはっきり言いなさいよ!」
め、滅茶苦茶だコイツ!!?
「んッ!?」
口を塞がれて言えるはずもない言い訳を言う間も与えず、振り切った掌を元あった場所に戻すかのように今度は左頬に裏拳が叩き込まれたッ!
誰か話が通じそうなやつはいないかと他の面々に視線をやるが―――
「・・・・」
ルビーは今まで見てきた中でも類を見ないほどの絶対零度の眼差しで僕を見下ろしている。
アイの秘密を世間に暴露した時でさえここまで酷薄な顔を見せる事はなかった。
ルビーの眼差しに薄ら寒いものを覚えながら今度はMEMの方へと視線を移す。
「いや~、今度ばかりはおいたが過ぎたよね。あっくん」
いくら何でも今度ばかりは庇いきれないし、庇う気もないよと視線を逸らされた。
言いたい事は分かるが、こうも一方的なこの状況はどうにかしたい。
この三人の後ろ、部屋の隅の壁際に佇む一団に目を向ける。
あかね!頼む!!助けてくれ!!!
懸命なアイコンタクトの甲斐あってかあかねと視線が合う。
「―――あれ?あれれ?アクアくん。まさかまさかとは思うんだけど、ひょっとして私が怒っていないとでも思ってる?」
満面の笑顔。
しかし、とんでもない圧を放つそれを見てそう言えば笑顔って元は威嚇行為だったなと今は心底どうでもいい事を思い出した。
ハナっから我関せずと目線を明後日の方向にやっている姫川や顔をクラッチバッグで隠した寿さんはもちろんの事、嗜虐的な笑みをこちらに向けて先ほどから携帯でアホほど写メってくる不知火はそもそも当てにできないだろう。
残すところは大人組だが―――
「ククッ」
不知火同様、人を食った笑顔でこちらにカメラを向ける実家暮らしのすねかじりは当てにできない。
壱護さんはこういう時の発言力は無いに等しいので戦力外。
残すところは、僕たちの保護者であり監督役。苺プロの社長。
ミヤコさんが残された最後の希望だった。
心底呆れたという表情で、親指で首を切りサムズダウンされる事でその希望は脆くも崩れ去ったが・・・・
何故こんな事になったのか?
僕はどこで間違えた?
はじめから全部だバカ兄貴と昨夜十年ぶりに再会し、この状況を作り出した諸悪の根源たるバカ弟に吐き捨てられたような気がした。
―――以下回想
「俺には夢がある」
あり得たかもしれない未来を夢想する。
「いつか外科医になって」
雨宮吾郎が果たせなかった夢を今度こそ果たして、
「有馬の気持ちに応えるのも良いかもしれない」
見ていて飽きない陽だまりのような彼女と共に歩んでいく。
「姫川とまた海に行く」
今度は俺が運転する車に乗せて出掛けてみたり、
「ミヤコさんや壱護さんの事を母と父と呼んで」
血は繋がっていなくても一心に愛情を注いでくれたあの人達の事を恥ずかしがらずに親と呼んで、
「あかねに受けた恩を全て返して今度こそ対等な関係を築きたい」
俺の都合に巻き込んで、散々利用してしまった彼女に返せる限りの償いをして、今度こそ何の思惑も無しに友達になりたい。
「ルビーがドームに立つ姿を絶対に見届けたい」
「だけど―――」
―――それらすべてを捨ててでも
「それらすべてを捨ててでも、妹の未来は俺が守る」
手に持つナイフを突きつける。
「妹の未来を蝕むお前はここで死ぬ。もうお前の思い通りにはいかない」
「正気なのか?そんな事をしたら君の妹は―――」
本気である事を悟ったのか、目の前の男から初めて余裕が消えて狼狽えてみせる。
「お前は僕が殺す。そして、妹をひとごろしの妹として報道はさせない」
そのための方法が、たった一つだけ―――
突きつけていたナイフを逆手に持ち替え、己が腹部へと突き入れた。
「自伝映画によって告発されたカミキヒカルは逆上、脚本担当とトラブルになり、刃傷沙汰の末共に崖から転落死した」
物語の脚本として書くのなら監督に突き返されそうな筋書きだが、どこにでも転がってそうな、ありそうな話だ。
「メディアと世間は真実を求めない」
体からどんどんと血の気が引いていくのが分かる。
突き刺した腹に刺すような痛みとじわじわと広がっていく鈍い痛みが交互に押し寄せ、傷口とそこから溢れ出る血液は灼熱のように熱いのに、身体はどんどんと冷え切っていく。
既に朦朧とし出した意識の中、なんとか目の前の男の胸倉に掴みかかる。
「おい・・・」
「なら、騙し切ってやるさ」
体重をかけて男を自分諸共柵から押し出す。
「やめろっ!!おいっ!!!」
「この嘘は暴かせない」
次の瞬間、僕らを極寒の海が包み込んだ。
月明かりがかすかに照らす暗闇の中、最後の力を振り絞って目の前の男の首を絞める。
既に碌な力は入らないほどに衰弱したこの身体で、それでも目の前の男を万が一にも逃すまいと・・・
薄れゆく意識の中で、そんな僕の手をたやすく振りほどき、仕返しとばかりに男の手が伸びてくるのが見えた。
これまでか―――
次の瞬間、海が弾け飛び筋骨隆々の学ラン姿のどこかで見た事があるような顔の男と水飛沫の合間でその隣に佇む懐かしい誰かの姿を一瞬幻視して僕の意識は今度こそ途絶えた。
次に目が覚めた時、僕はどこかの浜辺で寝かされていた。
跳び起きた時に猛烈な違和感を感じ、自分で刺し貫いたはずの腹部を見る。
血痕のベッタリと付いた穴の開いた服。
先ほどまで海の中に沈んでいたのがまるで嘘であったかのようにからりと乾いたそれを捲くし上げる。
「なっ!?」
あるはずのものがない。
深々と刺し貫いた傷が綺麗さっぱりと消失していた。
「あぁ、目が覚めたのか」
声の方に振り返る。
「お前―――」
「十年ぶりだな、
「ガーネット・・・」
十年前に俺たち兄妹の前から姿を消した弟の姿がそこにあった。
「お前・・・なんで・・・・・」
「何ではこっちのセリフだよ。黒川さんに言伝頼んだんだけど聞いて無い筈ないよな?」
「・・・・・」
以前、あかねと袂を分かって少ししての頃の事。
どういうわけか、こいつはあかねに接触してカミキヒカルの件はこちらで処理するから手出し無用と一方的に通告して去って行ったと聞いている。
「
弘子ちゃんとのデートの埋め合わせとか、星歌ちゃんのライブ見に行く約束もブッチしちゃったしあーもーどうしよとか言って唸っている。
「まぁ、どっちも死ぬ前に間に合ってよかったよ」
「グゥッ」
「は?」
弟の足元。
暗くて今の今まで気付かなかったそこには、カミキヒカルが首から下を地面に埋め立てられて顔だけを出していた。
「人殺しにならずに済んでよかったな?アクア」
まるでサッカーボールを踏みしめるかのようにぐりぐりとその男の頭を弄んでいる。
「た、助かったよガーネット。君みたいな息子がいて僕はとても幸せだよ」
「幸せ?そりゃいいね。僕は逆にとっても不本意だけど」
「と、ところでそろそろここから出してもらえないかな?」
「お前―――」
「心配しなくてもそのうち出すよ。何を隠そう人待ちでね、それまでの辛抱だよ」
「ガーネットお前!」
「うるさいなぁ、分かってるよ。いいから黙って見てろ」
にべもなくそう吐き捨てると屈みこみカミキヒカルとの話を続ける。
「ところで神木さんちの輝くんはワンピースって読んでる?」
「え?・・・あ、あぁ」
「じゃあ〝エ二エス・ロビー〟も知ってるかな?」
「せ、世界政府直轄の裁判所か何かだったかな?」
「そうそう!ちゃんと読んでるねぇ」
こいつは急に何を―――
「で、この裁判所なんだけどそもそも世界政府には権力分立制度がないから上が黒と言えば白も黒になっちゃうんだよね」
「・・・・・君、さっきから何を」
「気付かない振りしちゃってまぁ!分かってるくせにぃ♡」
「で、出来るはずがない!ここは日本だぞ!!」
「そう、日本は三権分立の国。そんな横暴が許されるはずがない!・・・と、思うじゃん?」
何の、なんの話をしてるんだ。ガーネット?
「あんたを真っ当な方法で立件して司法の裁きを受けさせるのって難しそうじゃん?だから、いろんなところに根回しして超法規的に裁くことにしたって話」
「あ、ありえない。そんな話があるはずが」
「いくらなんでも殺し過ぎたね。総監部を頷かせるのはなかなか骨だったけど、口先だけでこれだけ殺せばもう立派な呪いだよってね。神木輝、アンタの秘匿死刑が決まったよ」
「おい、急に呼びつけやがって。もうちょい先って話じゃなかったのか?」
「お、来た来た。ごめんね、うちのバカ兄貴が先走って危うく計画がおじゃんになるところだったもんだから」
男が唐突に、何の前触れもなく現れた。
右端の口元に縦の切り傷がある切れ長い目をした長身の男。
ギロリとこちらをひと睨みしてから視線を地中に埋まったカミキへと向ける。
「で?こいつがそうか?」
「そ、依頼人を唆してアンタに僕のかあさんを殺させた黒幕がこれだよ」
「・・・・は?」
こいつ、今なんて言った?
「おい、ガーネット。お前今なんて言った?」
「黙ってろつったろ。・・・・要はあの日、僕の守りを貫いてかあさんを殺して見せた実行犯がこの人だったって事」
「おまえがぁ!」
怒りのあまり、男に飛び掛かったがこの後の記憶を俺は有していない。
気付いた時には段ボールに梱包されて苺プロの事務所前に放置されていた。
ミヤコさんの口振りから、ガーネットから連絡があったようでカミキヒカルの処理は既に完了しているようである。
―――回想終わり
「さて、いったいどうしてくれようかしら?この男は」
「ん~拷問?」
然も当然といった口調で拷問なんて言葉を口にするルビーに恐怖を覚えながらこの危機をどうやって乗り越えるかを思案していると―――
「みんな分かってないなぁ」
そこでつい先ほどまで写メる事に夢中だった不知火が会話の輪に入ってくる。
手提げカバンからいそいそとピンクの大き目な巾着袋を取り出した。
「美男子を拘束して好き放題出来る状況なんだよ?だったらやるでしょ!エ□調教!!」
何を言ってるんだ!?この女は!!?
「ぬわーっ!!?ふ、フリルちゃん・・・その巾着袋って」
「うん、昨日お泊りの時に見つけて今日の趣旨的に使えるかなってMEMちょのおうちから持ってきた」
「なんでぇぇえ!!!?」
「へぇ、MEMはこういうのを普段使っているのか」
「ちょ、姫川さん中を物色しないで!テーブルに並べないで!!」
「こ、これが大人のおもちゃ!初めて見た!!これってどうやって使うの?」
「ル、ルビーいや、あの」
「あんたこれ、随分とえげつないの使ってるのね」
「かなちゃん・・・手心を・・・手心を・・・・ッ」
――――うん・・・なんともお労しいMEMには申し訳ないが、この敵軍の混乱に乗じてなんとか脱出を図るしかない。
ケツにあんなえげつないものをねじ込まれるのだけはごめんだ!
「ン!?」
がしりと肩を後ろから掴まれ、振り向くとバイブレーションしたえげつない大きさの凶器を掲げて満面の笑みを浮かべるあかねの顔がそこにはあった。
くっ・・・殺せっ・・・・・・!!!
この後、見かねたツクヨミの助けを借りてなんとか貞操を守り抜き、拘束を解いて脱出に成功し事なきを得た。