次回以降、少し投稿頻度を下げようかと思います。理由として、より質の高い小説を提供したいという意思と、完結に向けて皆さんに過去の話を読む期間を設けたいと考えたからです。
完結までもう少しですが、最後までご愛読頂ければと思います。
「……正気に、なりなさいな。」
先生の応援に来たは良いものの、変わり果てた知り合いの姿が一つ。いつもの私とは大違い、彼女に投げかけた声も掠れ、誰に聞こえているかも分からない程。
全くの面影無しでないのが、私の負の感情を一層駆り立てる。何故、その様な姿に成り果ててしまったのか。何故、その結果に至ってしまったのか。
何故、私を頼ってくれなかったのか。
「ワカモ!?」
「…先生。早く、落としましょう。あの姿を見続けるのは、正直嫌でたまりません。」
先生相手ですら、いつものような上擦った声を出せない。それ程、私は動揺しきっているのか。
あんな、まるで別物の様な姿の彼女を、私の脳は受け入れられる事もなく。今にも、吐いてしまいそう。そんなはしたない事を、大衆の前で出来る訳もなく、どうにか堪える。そのせいか、銃を強く握ってしまう。
何かの為に行動する時、私は基本後悔はしない。先生の為であれ、私の為であれ。結果的に、行為の目的者が得をしたのだと考えているから。しかし、彼女に対しては違う。
醜い。目の前の結果をこの目で見て、湧き出た感情はソレであった。彼女が、ではない。こうなるまで放っていて、それで平気でいた自分が。もし、私があの時悩みを吐き出させさえしていれば。意味の無いたらればが、無限に脳を巡る。
「ワカモ……」
私を見る先生が、私にどんな感情を抱いているのか。侮蔑か、不安か、期待か。もし、前向きな感情を抱いているなら、それを捨てて下さい。是非とも、後ろめたく、暗い感情を、私に向けて下さいませ。
「…………指示を。私の罪を、清算したいので。」
─己の情けなさを、悔いぬ訳にはいきません。
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vanitas vanitatum. et omnia vanitas.
全ては虚しい。私は、そう教えられ続けた。マダムから洗脳のように教え説かれ、その思想がままに生きてきた。
事実、どうにもならずに虚しく終わる結末もあるだろう。この世界は、都合のいい物語等では無いから。私が見ているこの情景も、
……何となく、解る。アレは、彼女だ。見てくれとは裏腹に、奥底は何一つ清らかで無い。あの時の彼女の瞳と、何らの差異は無い。ドス黒いという言葉ですら、生温い。深淵を覗いているような。
「…………っ」
他人の様に、思えなかった。あの時も、今も。あの呪文に囚われ続けた自分を、彼女に投影してしまう。どうしようも無く窮屈だった、あの頃の私が、離れない。
今も、苦しんでいるのだろう。しかし、私にそれを助ける義理はない。……無い、筈なのに。
奔る。間に合えと、心の底から願いながら。
「……貴女から、答えを聞いてない…っ!」
まだ、彼女の黒い感情の理由を聞いていなかった。この際だ、助けた後にでも聞いてやろう。私が助けに行く理由など、その程度で構わない。
先生達に助けて貰ったこの命、今度は誰かの為に使ってやろう。どうするも自分の勝手だ、咎める者もいまい。
vanitas vanitatum. et omnia vanitas.
そんな言葉、私が壊してやる。彼女の全てが無意味になるなど、あってなるか。
「サオリ!?」
─
──────
「皆……」
生徒が、集い出す。他地域に援軍として派遣した生徒達から、ワカモやサオリのような、招集をかけてない生徒まで。何故なのかを考えたが、彼女の人脈だろうと、すぐ理解出来た。
「……私では、どうにも出来ない友人がいます。」と、ワカモがいつか切り出してきた時があった。ワカモが来た事で、それが彼女だった事が証明された。きっと、力になれなかったんだろう。それを、今でも引き摺っているんだろう。
サオリは……分からない。ミサキから「自分探しの旅に出てるから……何処にいるかは分からない。」と言われた事もあるから、旅の途中であったのかもしれない。それでも、ここに来た理由は分からないが。
いつの間にか、戦況が変化していた。眼前の彼女は疲労を隠す事も無く、目に見えて分かる程である。対してこちらは、万全な生徒が続々と。
勝てる。希望的観測は、確信に変わった。
「……!ハスミ!」
「これで……ッ!」
一撃が放たれる。顔を覆っていた装甲に直撃し、ソレは剥がれ落ちる。同時に、攻撃が止む。
「……先輩。その眼……ッ。」
ミカが、そう一言。無理もない。
ポロポロと、装甲が崩れ落ちる。経年劣化したガラス片のように、呆気なく。皆が、その光景を見届ける。銃を地面に落としている生徒も、いた。
不謹慎にも、その景色が綺麗に見えた。
「…………」
誰も、何も言えなかった。魅入っているのか、感傷にふけっているのか、解は分からない。されど、目が離せなかった。
空が、茜色に移ろう。曇りきっていたキヴォトスの空も、時間を取り戻したかのように、明るい色に染まってゆく。
陽の光が、神秘のプリズムを照らす。さながらその景色は、ダイヤモンドダストの様で。雪は積もらず、ただ感慨深さが募るばかりであった。
「リンネ先輩ッ!」
ナギサのその声に、皆が漸く正気を取り戻した。普段走るような事をしない彼女が、なりふり構わず走り寄る姿を見て、正気を取り戻す者もいた。
ナギサが抱える彼女の姿は、憔悴しきっていた。息をしているのも、どうにかといった具合。
─さながら、命枯れる数刻前とも見えた。