或る正義の先に   作:Cross Alcanna

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虚心のレゾンデートル

「……何で、こんな所に。」

 

 

そう言い放つ私と、少し先に見える奇妙な人工物。何故かは分からないが、気付けばこんな所に足を運んでいた。自分でも、どうしてここに来たのか分からない。

 

水面に頭角を現すその人工物は、酷くボロボロであった。内側から抉られたような、激戦が繰り広げられたような、そんな有様で。

 

 

「…心地良い。」

 

 

甚だ、奇妙な話だ。ここに来たのは初めてだと言うのに、何故か心地良さを感じる。似た景色に思い入れがあるとかでもないのに、何なんだ。

 

普通なら嬉しいモノが、気持ち悪い形で私を襲っている。

 

ふと、周りを見る。すると、少しだけ荒れている所が。……復興でもしていたのだろうか。だとすれば、大分荒削りな復興にも程がある。こんな規模で正式に何かを行えるのは連邦生徒会だろうか。生徒会長の失踪から、大分ガタガタになってる気がするが。

 

 

「……秩序、ね。」

 

 

秩序など、今のキヴォトスに十分備わっているのだろうか。聞く所によれば、ゲヘナは相変わらずやりたい放題。ミレニアムですら所によっては好き勝手。七囚人は徐々に脱獄する始末。トリニティは……言うまでも無いか。百鬼夜行は、知らない。

 

私がいた頃はまだまともだった、と思う。全く穏便であったかどうかはさて置き、トリニティ以外も今程でなかった筈。……そっちは、生徒会長の失踪がトリガーの可能性も、あるけど。

 

遠くで聞こえる喧騒も、雑音にしか聞こえない。私に絡む誰かを、私は虫としか思えない。煩く羽音をたてる、蠢く虫にしか。そこに正常など、ありはしない。

 

……私は、何の為に生きてきたのか。生きるにつれて、分からなくなる。時間に反比例して、謎は溢れかえる。これ以上は、私のキャパシティが限界を迎えるというのに。誰かが教えてくれれば、どれだけ楽な事だろう。

 

 

「……誰だ?」

 

 

そんな事を考えていると、いつの間にか背後に誰かが立っていたようで。

 

 

 

──────

 

 

 

「……誰だ?」

 

 

ふと、そう言ってしまう。誰がここにいようと勝手だと言うのに。……私の、悪い癖だ。

 

ただ、そう言ってからマジマジと目の前の人物を見ると、本当に誰か気になり始める。私の記憶には、こんな人物はいなかった。それでいて、只者ではないと解る。

 

()()()

 

 

「…ただの、旅人。」

 

 

こんな無法地帯で旅をする?()()()()()()()?……怪しい要素しかない。

 

ここが初めて訪れた場所なら話は変わるが、しかし彼女はキヴォトスが危険な場所だと、理解しているような気がする。だとしたら。私ですら敵う相手なのかも怪しい。誰かを呼ぶべきか。一人旅している私が?あんな事件を起こした、他でもない私が?些か、傲慢が過ぎるだろうに。

 

ただ、敵意は無い。それだけは、明確に分かった。

 

 

「……そうか。」

 

 

私がそれだけ言うと、彼女は何処かへ行こうとする。旅人という文言が事実なら、また別の場所に行くのだろう。

 

その後ろ姿は、私と、似ている気がする。

 

 

「……なぁ。」

 

 

そんな掛け声を、何故か私がかけた。完全に無意識下だった。そうとも知らない彼女は、私の声を聞いて足を止める。振り返る。私の言葉を、待つようにして。

 

何を聞けばいいのか、全く分からない私。私の言葉を待つ、()()()彼女。少し考えて、私はようやく言葉を発する。

 

彼女に既視感を感じた。それが何なのか、知りたい。全ては無意味。彼女の顔には、私が散々信じ続けてきた、あの懐かしい言葉の羅列(忌々しい呪いの文言)が貼り付いているように思えて仕方無かった。

 

 

「貴女は、どうしてそんな顔をしている?」

 

 

「もう、忘れたわ。」

 

 

私の問いに帰ってきた言葉は、これだけだった。

 

 

 

──────

 

 

 

「いやはや、やはり彼女は興味深い。」

 

 

「随分アイツに御執心じゃない。あんな人形のどこが良いのやら。」

 

 

時間が経てば経つ程、興味が尽きなくなる。今では先生の方が勝るソレも、何れは彼女の方に軍配が上がるかもしれない。

 

彼女がそう言うのも、無理はない。何せ、彼女は最早人として欠落している。差別としてではなく、人間の機能として。その危うさは、時に思いもしない方向に事が転換していく。私は、それを期待しているのかもしれない。

 

我々は、"崇高"に至る為に存在している。それは、ついこの間"崇高"に至ろうとして、ソレを阻まれた彼女も同様だ。(私だけかもしれないが)未だ、"崇高"に至るまでの明確な道筋は無い。随分と前に、神秘を数多秘めた彼女を実験とした試みも失敗したので、私は現在も模索の最中である。

 

 

「もしかしたら、彼女が至るかもしれませんね。」

 

 

気付けば、彼女は何処かへ行ってしまっていた。とどのつまり、私の呟きは独り言となってしまった。確証も、根拠も無い。けれど、直感がそう言う。論理は否定するが、本能が否定しない。彼女の危うさが魅力的に映るのは、本能がそう信じ始めているからなのだろうか。

 

自身が"崇高"に至る事が一番ではあるが、想像だにしない"崇高"を拝めるというのも、また面白い。

 

……彼女について、本格的な調査が必要かもしれませんね。

 

 

 

──────

 

 

 

─私は望む、安寧の箱庭を。

 

─私は覚えている、私の嘆きを。

 

 

─New Access Code, Resistered.─

 




今回のように短い回もあれば、長くなる回もあります。基本的に、そこまで長くない一話を心掛けようと思っていますが、要望があれば感想にお書き下さい。

最近、未熟ながらブルアカの考察もしている先生からの一言でした。
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