長くなりました。どうぞ。
「あら、こんな所で会うとは。」
「……何で、いるのよ。」
今の私は、どんな顔をしているのだろう。……いや、きっと。面倒な事が形を持って現れた、とでも言いたげな顔をしている事だろう。何せ、厄介の権化のような存在が目の前にいるのだから。
ワカモ。あの七囚人の一人であり、現在は先生のストーカーをしている。そして、強い。ある程度洗練された小隊位であれば、一人でどうにか出来てしまう程には。
そんな彼女が、どうしてこんな所にいるのか。割と誰も知らないような、辺境チックな場所だと思うけど。
「偶然ですわ。私だって、こうして羽を伸ばす日もあります。」
根っから年中ストーカーに明け暮れてるイメージしかないのだが。
彼女を私なりに一言で表すなら、"子どもの延長線"。子どもは、飽くなき興味を示す。と同時に、人が変わったかのように飽きる。少し場違いな言い方をすれば、緩急の激しい取っかえ引っ変え。
なので、先生に一途であると風の噂で聞いた時は、少なからず驚いた記憶がある。先生に対する、ほんの少しの同情も添えて。
「……貴女、追放されたのです?生真面目の擬人化の様な貴女が?」
「だから、じゃないの?」
若干の皮肉を混じえて放った彼女の言葉に、あっけらかんと事実を突き返す。
私は、そういう場所だと理解している。だからこそ、仕方なかったのだ。
「……このまま、果てで朽ち果てるのです?貴女らしくありませんが。」
「知らない。私に聞かれても、困る。」
出来るのであれば、治したい。自分の身体を自分で操作出来ないこの感覚は、しかして気持ちが悪い。鳥肌だって立つ程には。
「……貴女こそ、こんな所で油売っていいの?自慢の尾行業があるんじゃない?」
「あら、随分と皮肉が上手くなりましたわね。」
引き摺り回してやろうか。
──────
「…………」
やはり、噂通りだった。既に遠のいた後ろ姿を未だに見送り、そう耽る。
"神出鬼没の幽霊!?"等という巫山戯たうたい文句ではあったものの、実在した。それが縁のある彼女であったとは、思いもしなかったけれど。確かに、幽霊のようであった。かつての正義感に満ちた、生真面目な少女の姿はとうに無く。
前から馬が合わないのではと思っていたが、追放と聞いてやはりと思ったのは、記憶に新しい。噂では、トリニティは外面をやたら取り繕うきらいがある。「先代から守られてきた〜」だの「我々の気風に合わない」だの宣って、善性分子を排していたのは、外ですら有名な話。
今日顔を見るまでの彼女を知っているからこそ言えるが、やはりか、という感情が強かった。
「……気持ち悪い。」
想像にしない、そんな呟きが漏れる。
私は彼女を、"悪くない存在"だと思っている。寧ろ、話をする分には信用出来るとすら。彼女は、とてつもなく聡明だ。だから、他生徒とは違い、私が満足出来る返しをしてくれる。そんな相手がほとんどいなかった私にとって、少し面白かった。
……
始めは、あんなに型はまりで哀れな奴、としか思っていなかったのに。
「……掛け合って、みようかしら。」
あの優しい先生ならば、彼女すら救えるのではないか。私のような不器用には、到底出来ないような奇跡が。
……貴女の為ではないわ、リンネ。ただ、私がそうしたいと思っただけ。結果的に救われうる事になるのが、たまたま貴女なだけ。私の気まぐれの、被害者となりなさい。
素直になれないのではありません。憐れんでいるのでは、ありません。
─己の情けなさを、悔いてる訳ではありません。
──────
「……やはり、そうか。」
某日某所。
私は今日も、研究を繰り返す。世間からは「有り得ない」と後ろ指を指される、隔絶された可能性を。
私は、疑問を感じていた。この世界は、中々どうして"奇跡"が頻発する。記憶に新しいのは、先生とやらの救出作戦。どこかの誰かによって中継されていたが、素人目でも分かる通り、助かる見込み等、探し当てる方が難しい事態だった筈だ。しかし、やり遂げた。
甚だ疑問に残る。奇跡は、中々にして起こらないから奇跡なのだ。奇跡の定義を満たさない奇跡は、最早都合の良い改変とも言える。
しかし、物事に干渉し、結果を思う通りに捻じ曲げる事の難しさとくれば、熾烈を極める。そんな物はあってはならぬし、禁忌に部類されうる。タイムトラベラーが一般に犯罪者たりうるのは、そうした理由あってだろう。
だからこそ、私はある仮説を立てた。
周りは突飛だと言う。私も、おかしいとは思っている。しかし、奇跡が何の気なしに頻発する方がおかしい。周りの者は、とにかく危機感を欠くように感じる。
だが、私の説は辻褄が合ってしまう。他に説があると言うなら、人の限界は事象改変に足りうると言うのなら、私の方から頭を下げて、是が非でもやってもらいたい。
私だって、こんな結論に至りたくはなかった。
─奇跡を起こす、ナニカが存在する。
今更ですが、ここまでの高評価を貰って、内心凄く驚いています。それ程までにブルーアーカイブが人気を風しているという事なのでしょうね。