或る正義の先に   作:Cross Alcanna

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感想を一件、いただきました。肯定的な評価だったので、内心一安心です。

3話まで毎日投稿していましたが、流石に毎日を続けるのは厳しいので、これからペースが落ちていきます。「更新されたから見るかぁ」位の心持ちでお願いします。


片鱗

「……数の、暴力。」

 

 

私の眼下には、地獄絵図が広がっていた。

 

夥しい数の不良と対峙する、四人の……確か、ゲヘナ生徒。後ろに悪魔の翼みたいな羽があるのが、ゲヘナ生徒の特徴。後、制服。

 

個別の戦闘力で言えば、ゲヘナ生徒側に分がある。それは分かる。しかし、相手取っている数が段違い。かなり効率良く、或いは連携して撃退しないともたない位には。一人で相手取ろうとすれば、私でも時間はかかりそう。出来なくはないが。

 

その証拠に、四人中二人が息を切らして(或いは切らしかかって)いる。だが、表情を見るに、全員がその数に辟易している。一人だけ、ちょっと楽しんでるように見えなくもないが。

 

武器を見る。……かなりバランスが良い。遠近の数が割と理想に近い。どちらかに偏っているだけで、戦闘の効率はガクッと落ちるし、戦略の幅も狭まる。戦略について()()()()齧っている私でも、それくらいは分かる。

 

 

「……近距離の子が、負担が重い。」

 

 

ただ、中遠距離が一人ずつなので、仮に一人が一人ずつ見ているとなると、敵撃破に集中出来る人がいない。逆もまた然り。後一人いれば、と言った所だろうか。

 

……個人戦じゃない戦闘は、かなり久々だけど。大丈夫だろうか。私の戦闘は()()()()無茶なやり方をする。間違ってあの子らに損害を与えたら、どうしたものか。

 

……考えるだけ、無駄か。行こう。

 

 

 

──────

 

 

 

「……えっ?」

 

 

瞬間、目の前の敵が爆散した。それが、手榴弾(グレネード)の類なのは分かった。

 

しかし、()()()()()()()()()()()()()()。通常、手榴弾は投擲するので、そこまで速度を出す事は叶わない。だが、私の横を通り抜けたソレは、どうだろう。世間一般で言われる、豪速球くらいはあった。

 

後ろを見る。見慣れない影が、一つあった。私以外の皆も同じくらいに振り返っていたらしく、皆一同に警戒を強める。

 

そんな私達の警戒を他所に、彼女は手榴弾のピンを抜く。そして、投げる。()()()()()()に。

 

 

「ちょっ…!?」

 

 

そんな言葉が漏れたのは私だが、声の一つも出てしまうだろう。敵に向けて投げるのならまだしも、自分の前に投げたのだ。自滅しようとしてるのと同じ。私達の常識からして、有り得ない行為。

 

()()()

 

何を蹴ったのか。手榴弾を、だ。

 

私は、理解出来なかった。火薬が詰まった、危険物を蹴る。それがどれだけ危険な行為か。毒がある食べ物を毒があると理解して食べるくらい、有り得ない。

 

蹴られた手榴弾は、私の逆側を横切る。そして、敵の最中で爆散。彼女は、それが当たり前かのように、次から次へとそれを繰り返す。精密機械のようだ。

 

正気から戻った私達は、急いで敵の方に向き、戦闘を続ける。後ろから来る援軍の手榴弾(危険物)に、少しだけ不安を感じながら。

 

 

「ハルカ!」

 

 

アルの声が響く。ハルカの前には、先程の隙を見逃さまいと意気込んだ不良達。待ち伏せていたのか、遮蔽に隠れていたのか。

 

しかし、その試みは失敗に終わる。

 

正確緻密な銃撃が、不良らの頭に当たる。彼女だった。

 

アサルトライフル、だろうか。アル以上に距離があるというのに、凄腕スナイパーの如き正確さだった。彼女の少し前にいるアルも、目を丸めて驚いていた。ムツキも、感心していた。

 

ここを契機に、私達の蹂躙劇が始まった。

 

 

 

──────

 

 

 

「ありがとう、助かった。」

 

 

「そう。」

 

 

私のお礼に素っ気なく返す彼女。これが素なのだろうか。

 

マジマジと彼女を見る。身体は痩せ細り、目はハイライトを失っている。先程持っていた武器は、どこにもない。ムツキがそれについて聞いたところ、()()が武器代わりなのだとか。

 

コレとは、ピンク味がかった紅色の……キューブらしきもの。彼女も、名称は忘れてしまったらしい。何でも、本人の神秘?がコレを使う鍵になってるのではないか、との事。あくまで推測の域を出ないとは言うが。

 

 

「貴女、名前は?」

 

 

「……さぁ。忘れた。」

 

 

名乗る必要が無くなったから、と添えて、そう言ってのけた。制服の様な服を着てる気がするが、既に何箇所かが悲鳴を上げている。無人島帰りと言われても信じられそう。

 

名前を聞き、気まずくなったと思ったアルは、彼女に謝罪する。しかし、「別に、何とも思ってない。」との一言で、終わらせてしまう。

 

無礼と言うか、冷淡と言うか。

 

 

「……次からは、気を付けて。」

 

 

そう告げて、彼女は踵を返した。私達はその背中を、ただ見届けるしかなかった。

 

 

 

──────

 

 

 

「……あれは。」

 

 

本当に、偶然だった。

 

今日はアコに休むよう言われたので、適当に街をふらついていた。そこで、彼女等を見つけた。

 

便利屋68。私にとって、要注意集団の一つ。

 

しかし、今日ばかりは苦戦を強いられていた。便利屋を倒そうとしていたのか、別の人を狙っていたのか。一個小隊を倒すのには過剰ではないかと思う程に多い数の不良。幾ら彼女達が強いとは言え、苦戦を強いられるのは無理がない。

 

今回ばかりは、と私も加勢しようかと考えた。しかし、ある轟音が、その意識を吹き飛ばした。

 

 

「……腕は、落ちてない。」

 

 

声の主は、例の幽霊だった。厳密には、幽霊と噂されている人物だ。髪が白と灰色で構成され、身は非常に細く、目のハイライトは失踪中。

 

便利屋の一人が彼女の行動に声を上げるも、まるで聞こえていないかの如く、次から次へと手榴弾を蹴り続ける。

 

彼女に、風紀委員会の巡回代行を依頼した事があった。イオリが外せない用事で参加出来なかった時、イオリが依頼したと言う。私含めて全員が、実力に対し疑いを持っていた。ゲヘナは治安もさることながら、生半可でない実力者が多い。そんな生徒の暴動や素行を、抑えられるのかと。

 

結果、それは裏切られる事になった。

 

一回目の戦闘で疑問のベクトルが転換し、二回目の戦闘で疑問は失せ、三回目以降からは恐怖を抱いた。

 

あの時の戦闘から考えると、実力は私の方に分があると思う。けれど、無駄が無い。誰もが出来ないと言い張る事を、平気な顔をしてやってのける。奇策に徹されては、正直分からない。

 

戦闘において、彼女の常識は私達の常識とは違う。あの時、彼女を見てそう確信した。あの時は銃を使っての戦闘だったが、手榴弾をああして扱うとは。意味が分からない。

 

 

「…!?何処から取り出したの……!?」

 

 

手に持つ手榴弾を使い果たした彼女は、何処からともなく銃を取りだした。あの時使っていた種類とは違う事は、この際置いておく。問題は、()()()()()()()()()()()()事だ。

 

この世界に、魔法は無い。寧ろ、科学が発展した世界と言えるだろう。そんなキヴォトスにおいて、あんな芸当を見せられるとは。

 

驚く私を外に、彼女はアサルトライフルらしき銃を、スナイパーライフルの適正射程付近から撃ち出す。あまりに、正確だった。敵に弾が吸い付いてるような錯覚を感じるまである。

 

何が、私の方が実力は上、だ。あんなの……。

 

 

─私より、ずっと強い。

 




少し戦闘描写を混じえたので、いつもよりちょっと文字数は多めでした。

因みに、ヒナと主人公の強さについてですが、純粋なパワーで言えばヒナの方に軍配が上がります。奇策や有利な状況に持っていく事が出来れば、主人公に軍配が上がる、といった感じです。
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