或る正義の先に   作:Cross Alcanna

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今回は、少し短めです。

もう少し突き詰めれば長く出来たとは思いますが、今回はこの短さでいかせてもらいます。お許しを。

次回以降、どんなキャラを出すか迷っているのは、ここだけの話。


憧憬は彼方へ

「……随分、遅かったじゃない。」

 

 

対面する生徒達に向かって、私はそう言い放つ。警戒を強める者もいれば、目を丸くしている者も。

 

……随分と、忌々しい(懐かしい)格好。目の前の者の服装を見て、思わずそう感じる。

 

トリニティの委員会の一つ、正義実現委員会。()()()()()()()()()()()、要素の一つ。トリニティの治安維持に貢献しながら、最近ではトリニティ外でも活動してるのだとか。()()()()()()()()()()()()()()

 

……頭痛が、止まない。

 

最近、多くなってきた気がする。こういう時は、決まって誰かと対面した時。……そろそろ、何処かに隠居した方が良いかしら。人と会う度に頭痛に見舞われていたら、流石に煩わしい。キヴォトスの学園の生徒じゃないので、病院の学割も効かないし。

 

一人の「銃を下ろしなさい。」と言う一声を以て、警戒していた者の銃口が地面を向く。出会って早々から私を睨んでいたソレらは、漸く私以外を視野に入れる事になった。良い気分ではなかったので、助かった。

 

 

「……正当防衛。吹っかけてきたのは、あっち側。」

 

 

私は基本、自分から不良を薙ぎ払う事はしない。疲れるだけだし。しかし、不良は余程名の知れた者でない限り、否応にも襲撃してくる。仲間を連れて。それを返り討ちにするのが、私の今の日課になりつつある。不本意極まりない。もっと、フレッシュなルーティーンを日課にしたいものだ。

 

恐らく、誰かからの通報か何かで来たんだろう。それに、いつもの()()よりは手こずった。とどのつまり、そこそこ手の焼く不良集団だったと考えられる。だとすれば、正当防衛と言えば察してくれるのではないか。まぁ、正当防衛というのは本当だが。

 

キヒッ、と。一つの笑い声が。そこに転がる屍より余っ程不良らしい見てくれをする者が、その声の主だ。強い、とは聞いている。名前は、忘れたが。……あ、諭されてる。

 

 

「…リンネさん、ですよね。」

 

 

長身の()()が、私に問いかける。

 

リンネ、とは。誰かの名前なのだろうか。私は名前を忘れている訳だし、「私です」と首を振る事は叶わない。ただ、彼女は私の面影を見るような表情を止めない。つまり、そういう事なのだろう。

 

 

「…名前は、忘れた。けど、貴女がそう言うなら、そうかもね。」

 

 

と、曖昧な返事を返しておく。が、決して嘘は言ってない。詐欺ではありません。よって無罪。

 

……それはさて置いて。私の返事を聞いた彼女は、先程とは打って変わって悲しい表情に豹変する。と同時に、少しの憐憫を込めた目線を、私に送る。()()()()()は、音を立てる気配も無い。この空間は、キヴォトスとは思えない程、静寂であった。

 

……トリニティを追い出された事は、覚えている。そして、正義実現委員会の生徒が私を見て驚き、私がリンネとやらであるかと問うてきた。

 

……嗚呼、()()()()()()

 

 

「…………私、リンネって名前、なのね。」

 

 

私の名前は、どうやらリンネというらしい。

 

 

 

──────

 

 

 

「…………嘘。」

 

 

ある生徒の通報で来た私達。最近手を焼いている不良集団が大きく活動しているとの通報があり、こうして大人数で来たのだけれど。

 

当の不良集団は、とある人物の足元に転がっていた。

 

貫繋(つつなが) リンネ。私が最も尊敬している、元正義実現委員会の委員長であり、今は分からないけれど、かつてはトリニティ最強であった、私の憧れの先輩。

 

私以外にも、ツルギも先輩の強さに惹かれているらしい他、噂によれば、あの聖園 ミカも先輩の強さに憧れていたのだとか。それが真だとすれば、先輩はトリニティの最強格を(間接的に)作り上げた第一人者である。

 

正確で緻密な射撃、扱える武器の種類、各地形を活かした戦略、相手を理解した上で戦況を掌握する洞察力と頭の回転力。その他様々な要素は、私以外の人を魅了するのに申し分ない。

 

けれど、あの人は正義実現委員会を……いや、トリニティ自体を追放された。

 

……皮肉にも、()()()()から、らしい。

 

曰く、「トリニティの気風にそぐわない」「治安維持に貢献している点を加味しても、そのはしたなさはトリニティの雰囲気を乱す」との事だった。

 

私は、酷く激怒した。今でも、よく覚えている。2時間に渡る抗議も虚しく、先輩の追放は遂行されてしまったけれど。あの時の先輩の表情は、言葉で形容出来ない程に虚ろだった。信じていた者に裏切られたような、表情だった。

 

 

「…リンネさん、ですよね。」

 

 

絞り出した言葉は、これだけだった。あの時の面影は殆どなりを潜め、最早別人のようであった。そして、私の事なんて忘れてしまっているようでも。

 

返ってきた返答は、自分の名前を忘れた、との言葉。……やはり、あの時の出来事が未だに強く残ってるのだろうか。

 

悔しい。私が無力なばかりに、憧れの先輩をこのような末路を辿らせてしまった事が。目の前の彼女が、まるで死人の一歩手前の様に成れ果ててしまった事が。

 

 

─憧れていた背中は、もう。

 

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