或る正義の先に   作:Cross Alcanna

7 / 19
今回は、この作品特有の設定や、私の考察の元に進めている場面が如実に表れています。予め、ご理解下さい。その関係もありまして、少しだけ長くなっています。


或る怨嗟の始発点

『───さん!』

 

 

『問題、ありません。』

 

 

誰かが、静かにそう言う。焦る様にして声を掛ける、他の誰かとは裏腹に。静かに告げた主は、敵を薙ぎ倒していく。彼女を取り巻く、20か30、或いはそれ以上に膨れ上がっている人数を。

 

冷静だった。板に着いた流れ作業のようだ。倒した敵の数を数える彼女にとって、虫を潰していく事は、オマケだとでも言いたげであった。

 

静かに、ただ冷静に。優雅に氷上を滑るように。その場にいた者の半数が、彼女の蹂躙劇に魅入ってしまっていた。喜劇でないというのに、見世物でないというのに。

 

 

『ふぅ、これで全員ですかね。お疲れ様です。』

 

 

全てを薙いだ彼女は、人が変わるようにそう告げる。先程まで圧倒的蹂躙を繰り広げていたニンゲンとは、まるで別人。

 

その態度に慣れていた周りは、その言葉に首を振る。縦に。

 

一人、彼女に近付く。

 

 

『リンネ先輩、今日もお見事でした。私も、先輩のように戦闘出来れば……』

 

 

『それは、オススメ出来ません。戦闘とは、真似をすれば上達する類ではありません。経験と手札の数が、物を言うものです。』

 

 

彼女は、そう言う。

 

戦は、踏み越えた戦の数が物を言う。戦は、手札が多ければ、それだけ戦略を見い出せる。それは、何においても違いない。場数が少ない者が勝ちうる、或いは、手札が少ない方が勝ちうるルールでない限り。

 

それを知る彼女は、凡そ歴戦の猛者であるだろうか。戦を知れば、自ずとソレに至る。それに目を背けるかは、さて置くとして。

 

 

『これから、多くの戦闘をするでしょう。相手の強さに戦く日も来るでしょう。でも、それは通過点にしか過ぎません。貴女が為したいモノの為に、それを糧にして下さい。』

 

 

彼女の物静かな激励に、周りの者は大きく返事を返す。そして、各々が各作業に移る。

 

 

 

──────

 

 

 

『貴女を、トリニティから追放します。』

 

 

彼女は、愕然とする。紛れも無い、自身が属する学園からの追放宣告。学生の身としての、死刑宣告と大差なかった。他学園に再入学する事自体は可能である。しかし、彼女は愕然とした。それを、知らないかの如く。

 

抗議した。何度も、何度も。しかし、返ってくる返事は、変わらずじまい。追放の二文字は、揺るがない。

 

曰く、気風にそぐわないから。トリニティとは、お淑やかにある事を求められる気風にある。言わば、これがトリニティの学風であろうか。力を振るう目的が、幾ら他者の為であろうとも、それがトリニティと相反している事は、少なくとも自明の理。()()()()()()()()()()()()()()

 

曰く、雰囲気を乱すから。前者との関連もある。トリニティの多数は穏健派(武力を用いらない、という意味では)。そうした者は、武力を以て事を為す姿勢をよろしく思わない。事細かな流れを端折り、結果、学内の雰囲気を乱す事に繋がる。

 

これらが正統化されうる理由は、一つ。派閥の争いがあるから、である。

 

トリニティとは、言ってしまえば一つの国。極論ではあるが、どの派閥がトリニティを牛耳るのかが、常日頃交錯される。学園らしくない学園。それが、他ならぬトリニティであった。

 

結果、彼女は追放された。()()()()()()()()()()()()、という表現が正しいだろうか。

 

 

 

──────

 

 

『……これは。』

 

 

彼女は昔、ある任務の最中に自身の手足となる物を見つける。当初の彼女はそれを、"古の遺物"と名称付けていた。それはこの時点を以て、彼女の生涯の武器となる。

 

見た目は、ピンク味がかった朱のキューブが三つ、合体したようである。非常に硬く、特段ギミックを持たないように感ぜられる。実際、これそのものを動かすギミックは無い。

 

しかし。彼女が武器を想ずる。さすれば、そのキューブだった物は、想じた武器へと変容した。彼女はこの過程を鑑み、コレが"自身の想じたモノに変容する物"であると結論付けた(後に、神秘が関連する事に気付く)。

 

……しかし、それは。そんな甘い蜜などではなかった。決して、恩恵のみを与えうるモノ等では、なかった。

 

言うなれば、キヴォトスの根源に関わる、負の遺産であった。

 

 

 

──────

 

 

 

─"崇高の願器"について─

 

アレは、私が望む形になった。私の悲願……野望が、叶う。()()()()()()()()()()()()という、野望が。何をしよう、というのでは無い。私は、見たいのだ。奇跡が奇跡で無くなるその時、世界はどうなりうるのかを。私の野望の根源は、たった一つの好奇心である。

 

アレは、膨大な神秘と、少量のバグを掛け合わせる事で、奇跡を生じさせる。神秘と恐怖(バグ)は表裏一体である、という主張をある研究者が述べていた。私もそれにあやかり、神秘と恐怖の元であるソレを、崇高と呼称する。

 

……しかし、だ。懸念点がある。それを、一個人が握ってしまった時である。これは、奇跡を実行した後に、神秘を消費する。その時消ずる神秘は、算定出来ない。つまるところ、その者の神秘では足りぬ時。

 

それは、その者の消失を意味すると、私は論ずる。確証は無い。しかし、私の推論では、これは間違いないだろう。

 

兎に角、これは一個人が使ってはならない。それだけである。

 

 

 

──────

 

 

 

「先生!」

 

 

「うん。また何かが出現したんだよね?」

 

 

今日の当番である火宮 チナツが、私の元に駆けてくる。要件が推測できたので、その旨を伝えたが、どうやら的中してしまったようである。何でも、点在的に様々な巨大生命体が確認されたとの事。

 

砂漠にてビナー。廃工場にて、ケセド。遊園地にてゴズとシロ&クロ。ミレニアム近海にてペロロジラ。トリニティの大聖堂にてヒエロニムス。そして、ゲヘナ市街地にて、ホド。これまで期間を空けての出現はあったものの、これ程一堂に会するような事態は、初めてである。一個体ずつ相手するのにも手間と人員を取ると言うのに、その全てが一斉に現れる事になろうとは。

 

……なんとしても、止めねば。時間をかけ過ぎてしまったり対応を間違えれば、キヴォトスの存続が危うい。私に、かかっている。

 

─行こう。

 




オリジナル設定や私の考察について、予定では完結後に出そうと考えています。
ですが、「今解説してくれた方が解り易い」「早めに出して欲しい」等の声がありましたら、コメントにてお伝え下さい。ご意見を参考にし、発表時期を都度、変更します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。