三人目の子供 作:誰だっけ
「……で、どうなんだよ?」
さっき俺とぶつかった同い年ぐらいの男の子……左翔太郎が俺に話しかけてくる。
「何がだ?」
「さっきも言ったじゃねーか!
「……まぁそんな感じだ。」
俺の返信を聞いた翔太郎は顔をパァーと明るくし、俺の手を取る。
「なら一緒に行こうぜ!!」
「おい、ちょっと待t ───」
▼▼
あ〜やべぇ〜〜ドアの前に来ちゃったよ〜。
「翔太郎、まずは失礼の無いように……」
ドン!ドン!
俺はどうやら遅かったみたいだ。翔太郎は既にドアをノックし始めていた。
「……うるさいぞ。消えろ。」
ドアから誰かが顔を出して出てくる。
(鳴海荘吉さんだ……)
「この張り紙が見えなかったようだな坊主達。困り事なら、警察にでも行け。」
荘吉さんがドアに貼り付けていた張り紙を見せてくる。
「いや。ここじゃなきゃダメなんだよ。おれたちをあんたの助手にしてくれ、おやっさん!」
すかさず翔太郎が荘吉さんに気持ちを伝える。
「お前に言うことが二つある。一つ、ガキに探偵の真似事ができん。二つ、こっちはもう仕事を辞めている。以上だ。」
それでも諦めず翔太郎は喰らいつく。
「なめんなよ。この街は俺の庭だ。それにおれが入れば仕事も再開もできるって!」
俺も負けずと喰らいつく。
「お、俺もこの街に来たばっかだけどいろいろなことを知っている。俺もきっと役に立てるはずだ!」
「……よくわかった、坊主達。」
翔太郎がイケる!と思い、また顔をパァーと明るくする。
「断る。」
「えええええーっ、そんなあー!もっとちゃんと面接とかしてくれよお!」
翔太郎が頭を押さえながら叫ぶ。
「十年早い。こいつに手が届くぐらいの身長になってから、また来るんだな。」
荘吉さんはドアに貼り付けている張り紙を指しながら俺達にそう言ってドアを閉める。
「翔太郎、良い案があるぞ。」
▼▼
ドン!ドン!
荘吉さんがまたドアを開けて出てくる。
「……なんて辛抱の足りねえガキだ……」
荘吉さんがため息を吐きながら言う。その理由は……
「へへ!上手くいったな、アース!」
「お、重い。」
そう、俺は翔太郎を肩車し、ドアに貼り付けていた張り紙を取ったのだ。
「おまえたち……ちょっとこっちに来い……」
「入れてくれんの!」
「!!おい翔太郎、揺らすな!」
「う、わああああっ!」
俺達はバランスを崩して倒れた。
▼▼
中に入ってみるとそこはまるで別の場所のように感じた。
これが大人の匂いってやつか……
そんな俺達の前に荘吉さんがコーヒーの入ったカップを置く。
「ぶっ!」
翔太郎がコーヒーを吐き出す。
「……まっじいな、これ。砂糖とかミルクないの?」
そういえば荘吉さんの入れるコーヒーは不味かったな……
「やれやれ……いいか坊主。お前には『我慢』ってもんが無さすぎる。」
『我慢』か……
「我慢は探偵稼業の必需品だ。おまえみたいなせっかちな格好つけにはこの仕事は向いてねえ。」
「よ、よく初対面なのにおれの性格まで分かるね……さすが名探偵……」
「黙って大人になるまで我慢しろ。そもそも子供に探偵助手なんてやらせられるか。おまえ達の親御さんに申し訳が立たん。」
「俺は平気っすよ。母さんなら全然オーケー出すと思うんで。それに……俺はまだこの街に来たばっかだけど、もっとこの街のことを知りたいと思ったんで。」
「俺は両親は事故で死んじゃったよ。親戚のおばちゃんの家で世話になってる。」
「……そうか。悪かったな。」
「いいよ。だから、おれ風都を好きになったんだもん。この街が俺を助けてくれたんだ。」
その後は俺達は必死に荘吉さんにアピールした。それを荘吉さん……いや、おやっさんは静かに聞いてくれた。
「なのにさ、最近街は化物に荒らされてばかりじゃん。空飛ぶ人間蝙蝠とか気持ち悪い骸骨男とか。」
「……気持ち悪い…ね……」
おやっさんがショックを受けたような顔をする。
「俺はそうは思わないぜ。人間蝙蝠はともかく骸骨男は俺は好きだぜ。かっこいいし、なりより俺、助けてもらったこともあるもん。」
おやっさんが驚いたような顔をする。まさか自分が助けた相手が助手になりたいと来るとは思わなかったのだろう。
「だけど、奴らのせいで街を離れてしまう人たちも増えている。」
翔太郎が真剣に風都への思いを語る。
「おれは街を守りたいんだよ。蜘蛛男をやっつけて、歌姫を救ったおやっさんみたいに!」
「………マツ……」
突然おやっさんの顔が曇る。
「?」
ビクッ!っと俺と翔太郎は震えた。俺は多分この時のおやっさんの顔を一生忘れる事はないだろう。おやっさんの怒ったような顔を……
前にも言ったがおやっさんが探偵業を休業している理由は、相棒を失ってしまい、『植え付けられた人間が愛する物に触れた時、その愛する人間を爆殺する。』という子蜘蛛を植え付けられしまい、愛する妻子に会えなくなってしまい、心に深い傷を覆い自暴自棄になった事が理由だ。
俺達はそのことついて触れてしまったんだろう。
「……帰れ、坊主共……二度来るな……」
▼▼
俺達は鈴鳴珈琲というコーヒーショップに居る。
翔太郎の案で、不味いコーヒーを飲んでたらイライラもするからおやっさんを美味しいコーヒー豆で喜ばせようという案だ。
「夜遅くごめんなおっちゃん。」
「ああ、まあいいってことよ。翔ちゃんたっての頼みだし、その翔ちゃんの友達の頼みにだからね。」
「「ありがとう(ございます)(な)!」」
俺達はコーヒーショップの店主にお礼を言って走り出す。
「……なんで急にあんなに怒ったんだろ、おやっさん…」
「考えて分からないなら、まずはちゃんと謝ろうぜ。」
「ああ!そうだな!!」
でも、何か忘れてる気がするんだよな?
忘れちゃいけない何かを……
その時、俺は気づかなかった。後ろに蟻地獄のような大きな手が地面から突き出ていたことを……
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