俺のハーレムは何かがおかしい   作:祐。

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女神が集う家

 ラミア、メー、レダの3人が帰宅したことにより、就寝時刻が近付いてきた夜の時間帯において急に賑やかになり始めた自宅の中。

 

 暖色の照明がリビングを照らす空間に、クセの強い活気が戻ってきた。

 夕飯を用意して、彼女達の帰りを待っていた自分。Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)の閉店時間が間近になると、みんながいつ帰ってくるのかをついつい気にしてしまう体質となってしまったものだ。

 

 3人が帰ってくると、最初に仁義なき浴室の取り合いが始まる。

 顔を落とす。その単語が飛び交うメイク落としの儀。さっさと気持ちを落ち着けたい彼女らは一刻でも早くメイクを落としたがり、時には複数人で入浴しては乳の大きさで口喧嘩をしていたものだ。

 

 リビングにも聞こえてくる女の争いに、男の自分は苦笑しながらも微笑ましく思えてしまう。そんな感じに3人はサッパリすると、ラミアはヘアバンドで髪をまとめたり、逆にメーはいつも結っている髪を流したり、レダは暑いからと言って露骨に下着姿でうろついたりなど、様々な姿を見せてくる。

 

 こうして3人が一段落したところで、皆で夕飯を囲ったりする。本日もその流れだろうと思いながら調理器具を洗っていると、ふらっと寄ってきたレダは下着の姿でこちらにくっ付いてきた。

 

 レースの大人びた黒色。褐色肌との親和性を誇るアンダーウェアと、豊満なバストを支えている大きなブラジャーを擦り付けるような彼女の動作。

 こちらの右腕を下ろしては、自身の股に通すような姿勢でレダは前のめりになっていく。このアプローチに自分は隠し切れない動揺で心臓を打ち鳴らすと、彼女は魔性の笑みを浮かべながら、艶やかに喋り出してきた。

 

「あ~ん、カンキく~ん。いつもわたし達の面倒を見てくれてありがとぉ~?」

 

「れ、レダ! ちょっと、上も下も当たってる当たってる!」

 

「ウフフ、だって当ててるんですもの~? こうすれば、カンキくん喜んでくれると思って~。わたしからの、ささやかながらの労りよぉ? ほぉら、遠慮なんかしないで受け取って……」

 

 レダはそう言って、こちらの右手を自身の股で挟み込んできた。

 わ、わーーーーっ!!!? と内心に迸る電流。今も手先に伝わってくるショーツ越しの温もりが一層もの興奮を煽ってくる中で、がら空きとなっていた左腕へとメーが飛びついてくる。

 

「あららぁ~ん? カンキ君、すごい顔してるけどどったん~? 話でも聞こか?」

 

「メー! ちょっと、レダを止めて……!」

 

「止めてって言うけどさ~、だったらその手、引っこ抜けばいいだけじゃん?」

 

「まぁそれはそうだけど!」

 

「カンキ君はむっつりスケベよのぉ? そういうプレイがお好みなんかぁ? ほれほれ」

 

 と言って、次はメーがこちらの左手を自身の股で挟み込んでくる。

 同じく寝間着越しの温もりがこちらの心を乱してきた。そうして両手が彼女らの神秘にお邪魔した状態に自分は顔を真っ赤にしていると、ひとりソファに座ってスマートフォンを操作していたラミアが淡々と声を掛けてきたものだ。

 

「お盛んなのは構いませんけど、せめてご飯を食べてからにしませんか?? テーブルに出てる唐揚げが冷めちゃいますから」

 

 片手間に美容液を肌へ塗り込むラミア。少女の言葉にメーとレダは「はーい」と答えてくると、2人で悪戯な視線をこちらに投げ掛けながら両手を解放し、それぞれが歩き出しながら言葉を投げ掛けてきた。

 

「残念でした、今日はここまで~。続きをプレイしたいなら、コインでも入れてコンティニューしなきゃね~?」

 

「ウフフ……今日もウブなカンキくんをたくさん楽しませてもらったわぁ。次はどんな手で誘惑されるのか、予想して当ててみてちょうだ~い?」

 

「あは、じゃあピタリ賞で出血大サービスしちゃう?」

 

「それ名案~! ピタリ賞のサービスは、じゃあ~……メーとわたしの“食べ比べ”とか、どうかしら?」

 

「ウケる」

 

 か、体が持たない……! いろんな意味で……!

 張り詰めた“興奮”で、ちょっと前屈みになってしまった自分。こちらの様子にメーとレダがクスクス笑っていると、不意を突くようにインターホンが鳴らされた。

 

 ピンポーン。

 家中に響き渡った音を聞き、一同が振り返っていく。特にレダは、真っ直ぐな足取りでハンガーラックに掛けてあったバスローブを身に纏っていき、彼女の身なりが整ってから自分は玄関先の映像を確認した。

 

 ……ユノさんだ。

 私服姿で佇むユノ。クールビューティーな存在感が際立つ彼女を迎えるべく、自分はすぐに扉を開いて言葉を投げ掛けた。

 

「どうも、ユノさん」

 

「夜分にごめんなさい。貴方達の様子をうかがうべく、帰りに少し立ち寄ってみただけなの」

 

「わざわざありがとうございます。レダも引っ越してきましたからね」

 

「えぇ、レダに限らず、彼女達が貴方に無礼を働いていなければいいのだけど」

 

「そんな、とんでもない。集団での生活である以上は大変なこともありますが、本当に心から楽しく毎日を過ごさせて頂いています」

 

「貴方が満足してくれているようならば、安心したわ。……柏島くんの喜びはお父様の喜びであり、柏島家の喜びは私の喜びでもある。Le goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)は我々不運の申し子を救済する回帰の地であると同様にして、柏島くん、貴方という唯一無二の殿方に満足していただく心の拠り所として機能する組織。店の働きかけは貴方の人生にかけがえのない幸福をもたらし、貴方の満足度は店の存在意義そのものとなる。これは、柏島の血筋に捧げる恩返しに過ぎないの」

 

「は、はぁ……」

 

 相変わらずのユノ節だ……。

 言葉の大半を理解できずにいた自分が、唖然とした顔で彼女を見遣ってしまう。反面、向かい合っていたユノはすごく満足そうに微笑を浮かべていた様子から、まぁ本人が納得しているのならいいかと半ば思考停止してしまったものだ。

 

 と、自分らが会話を交わしていると、家の中からはラミア、メー、レダの3人が駆け寄ってくる。

 

「あー、ユノさん。どーもー、お疲れ様でーす」

 

「ユノさんばんはー! あれ、私お店に忘れ物しました?」

 

「あなたが直々に出向くなんて珍しいじゃない。心配いらないわよ、わたしは楽しくやれているから」

 

 ユノを慕うように声を掛けていった3人。彼女らの顔ぶれにユノは安心したように頷きながら、そう返答を行ってくる。

 

「ラミア、本日の業務もお疲れ様。メー、私は私用で訪れた故に自身の不手際を案ずる必要は無いわ。レダ、貴女はもう環境に憂いや怯えを抱える必要が無くなった。不幸からの脱却を実感すると共にして、魂の解放を心より自覚なさい」

 

 みんなに対しても、こういう喋りをするんだなぁ。

 何気無く思った言葉を内心で呟く間にも、ユノは踵を返すようにしながらセリフを続けてきた。

 

「みんなの顔が見られて良かったわ。明日も業務を控える者は、本日の内にコンディションを整えて万全を期すように」

 

 締め括りの挨拶とも聞き取れるユノの言葉。これに自分も流れで頷いていくのだが、次にもメーがそんなことを口にしてきたのだ。

 

「ねね、ユノさん。これからご飯食べるとこだったから、ちょっと寄ってかない?」

 

 え?

 首をグリンッと動かして振り返った自分。で、メーに続いてラミアとレダも喋り出してくる。

 

「イイんじゃないですか?? せっかくココまでいらっしゃっているんですし、ChalkI(チョーキ)さんのお宅に上がってみるのもアリだと思いますけど」

 

「そうよぉ! ぜひ寄っていってちょうだい! ユノさんとも、この感動を分かち合いたいわぁ! カンキくんのお手製料理もあることだし」

 

 ここで俺の料理を引き合いに出さないでもらえるかな!?

 

 本格的なフランス料理店を仕切る人間に、こんな粗末な物はお出しすることできないよ!

 という内心のツッコミを入れていく自分。だが、ガビーンッとするこちらの反応とは裏腹にユノは凛々しいサマでそう答えてしまったものだ。

 

「声を揃えられてしまっては、期待を裏切るわけにはいかないわね。柏島くん、30分だけ立ち寄らせてもらうことは可能かしら」

 

 ――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 ソファに集まり、ローテーブルに置かれた鶏の唐揚げやサラダなどの夕食を囲っていく。その中でもひと際と存在感を放っていたのが、正した姿勢で座るユノの姿だった。

 

 皆が「いただきまーす」と口を揃えて食べ始める中、自分だけは床に敷いた座布団に座り、ユノの顔色をうかがってしまう。

 一口……唐揚げを口に運んで、彼女は咀嚼する。左手を口元に添えて上品に召し上がっていくと、直にもユノは穏やかに笑みながら感想を伝えてきた。

 

「とても優しい味なのね。パンケーキに近しい柔らかな歯ごたえと、脂質を感じさせないさっぱりとした後味がまるでおやつのよう。……揚げ物という油を使用した熱調理で、人肌の温もりが如き真心を宿らせる独自の技術は、さすが柏島くんとも言うべきでしょう」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

 ほ、褒められているのかどうか分からない……。

 遠回しに美味しくないとも言われているような気がして、自分は不安で顔色を悪くしてしまう。だが、一方でユノは子供のように無邪気な表情で、2つ、3つと唐揚げを頬張っていくと、もきゅもきゅと穏やかに食べる様子を見せながら再び喋り出してきた。

 

「美味しいわ。安心して食事を行うことができる味を前にして、自制が利かず無意識に箸を進めてしまう。次の機会には、調理の過程を傍で拝見したいくらいよ」

 

「そんなにですか……? 取り敢えず、お気に召して頂けたのなら幸いです」

 

 ひとまずポジティブな意味で受け取っても良さそうだった。

 

 ホッと一安心。自分は胸を撫で下ろすように息をついていくと、それを見ていたラミアやメーが可笑しそうに言葉を掛けてきた。

 

「お墨付きが頂けて良かったですねー。そのチョーシで、ウチにオイシイお料理をたくさん作ってもらえますと嬉しいです」

 

「カンキ君の緊張、みんなにひしひし伝わってたんじゃない? この世の終わりみたいな顔してたからさ~、私が笑わないでいるの大変だったこと知らないでしょ?」

 

 相変わらずの2人だなぁ……。

 複雑な心境の顔をラミアとメーに向けていく。そんな視線を投げ掛けていく傍ら、ユノは皆を見守るような表情で前方の光景を眺め遣っていたものだ。

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