俺のハーレムは何かがおかしい   作:祐。

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桃とのお出掛け。食べ歩きを楽しむ

 リビングでお昼のバラエティ番組を観ていた自分。かけていた掃除機を途中で止めて、今も佇んだ姿勢で、特集として映っていたラーメン店の大行列に注目してしまう。

 

 東京内のグルメについて紹介するコーナーを目にしてからというもの、自分は心のどこかで食べ歩きに憧れを抱いてしまえたものだ。

 いいなぁ、たまには美味しい物をハシゴしてみたい。内心で揺らめく欲求にひとりワクワクしていると、直にも2階から下りてきた私服姿のレダが声を掛けてきた。

 

「カンキく~ん、洗濯物を干し終えたわよ~」

 

「あぁ、レダ。おかげで助かったよ。いつも家事を手伝ってくれてありがとね」

 

「ラミアとメーがだらしないだけで、むしろ当然よ。住まわせてもらっている身分としても、尚更ねぇ」

 

 こちらへ歩み寄りながら口にしたセリフ。本人は特に意識していないのだろうが、その足取りもどこか艶めかしく感じられ、元から発せられる魅惑的な存在感に自分は良からぬ気分となってしまう。

 

 で、そんなこちらに接近したレダは、この腰にさり気無く手を回しながら不思議そうに訊ね掛けてきた。

 

「食い入るようにテレビを観ていたけれど~、どうかしたのかしらぁ? ……『東京のマル秘グルメスポット紹介』?」

 

「そう、グルメ特集で紹介されていた和食やラーメンがすごく美味しそうだったから、つい」

 

「へぇ~」

 

「いいなぁって思ってたんだ。俺も美味しいものを食べ歩きしたいな」

 

 すごく自然にくっ付いてきたレダの体温で、本能的にドキドキしてしまった自分。だが、同時にして巡ってきたテレビへの意識でそちらへ振り返り、先行した憧れを語るように先の言葉を口にする。

 

 で、それを聞いたレダは、こちらの顔を見上げながらそれを答えてきた。

 

「なら、すればいいじゃない。食べ歩き」

 

「え?」

 

「今はお昼時だし、何ならこれからしましょうよ?」

 

「え、今から!?」

 

「今から。思い立ったが吉日よ~? カンキくん」

 

 艶やかに喋り、レダは右手の人差し指をこちらの胸にツーッと走らせてくる。そのアプローチに余計ドキドキさせてしまう中で、レダはこの体に埋まるようゆっくり抱き付きながら言葉を続けてきた。

 

「いつも、わたし達を優先してくれてありがとう。わたし達の意思を尊重することを第一に、ずっと気を払いながら面倒を見てくれているんでしょう? ラミアもメーも、ユノさんもわたしも、あなたの献身的な姿勢に感謝しているんだから」

 

「いや、俺からすれば普通のことをしているだけの感覚だったんだけど……」

 

「だけど、それは言い換えれば自己犠牲的とも言えるでしょうねぇ。こうやって、いつもいつも自分を押し殺してばかりいたら、あなたはいずれ壊れてしまう」

 

「レダ……?」

 

「たまには、自分を優先に考えてみましょう? 食べ歩きをしたい。なら、今から食べ歩きしましょうよ。1人が気になるのなら、わたしも傍で付き添ってあげるから」

 

 そう言いながら、レダは人差し指でこちらの乳首周辺をなぞり出してくる。

 

 こ、言葉と行動が一致してない……!

 という内心を巡らせつつ、自分は悶々とした気分で顔を赤く染めながらそう返答したものだった。

 

「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて、今から駅前で食べ歩きでもしようかな……? 何だかんだで見慣れたお店ばかりに立ち寄るかもしれないけれども、それでも良いのならレダにも付き添ってもらえると嬉しいな。美味しさを分かち合える相手が居てくれた方が、もっと楽しめそうな気がするから」

 

 ――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 急ではあるが、レダと共に駅前へと赴いた自分。出先でも当然のように手を繋いでいた自分らは、周辺の飲食店や屋台などを物色するように散策していった。

 

 ラミアやメーとは違い、レダがこちらに合わせるよう足並みを揃えてくる。そんな一味違うお出掛けに、自分は食べ歩きよりも彼女との外出を満喫するような心持ちで歩を進めていたものだ。

 

 レダとしても満更ではなかったらしく、いつもの魔性な一面を全くうかがわせないモラルを弁えた仕草でこちらに付き添っていた。

 艶やかな容貌はそのままに、公衆の面前であることを意識した常識的な立ち振る舞い。こちらを誘惑することは一切なく、人当たりも良いことから呼び掛けられる店主などに好印象を残したことだろう。

 

 また、周囲からすると自分らは夫婦のように見えていたらしい。

 レダは奥さんと呼ばれ、自分は旦那さんと呼ばれる頻度が多かった。これにレダはどことなく嬉しそうな様子を垣間見せ、それらの言葉を否定することなくむしろこちらの腕に抱き付くことで新妻を演じていた。

 

 慣れないロールプレイに、自分は少し挙動不審になっていたかもしれない。だが、レダはこちらの動揺すらも楽しむように振る舞ってくる中で、アイスクリームのキッチンカーの前ではこのようなやり取りを交わしたものだった。

 

「レダは何にするか決めた? 俺は、アイスクリームはバニラで、トッピングはシャインマスカットとキウイにするけど」

 

「わたしは、そうねぇ……アイスクリームはチェリー&チョコチップ、トッピングはイチゴとバナナにして、チョコレートソースでもかけてもらおうかしら。決まったから注文しましょう? ダーリン」

 

「だ、ダーリン……!?」

 

 ぎゅっ、と右腕にくっ付いてくるレダ。さり気無く乳を押し付けてくるアプローチに思わず鼻血が出そうになるものの、グッと堪えることで自分は平常心を取り繕いながら2人分の注文を済ませた。

 

 ベンチに座り、カップに入ったアイスクリームとトッピングのセットを頂いていく。

 美味しい……! この感動をレダと分かち合い、時には2人で食べさせ合ったりなどの非常にラフなやり取りを交えたひと時。それだけでも幸せに思える時間を過ごせたと思えたものだが、今もこちらに寄り掛かっていたレダは艶やかに顔を見上げながら喋り出してくる。

 

「ダーリンは食べ歩きでアイスが食べたかったのかしら?」

 

「え? まぁ、そりゃあね。せっかくだから、外でしか食べられないようなスイーツとか食べておきたいなって」

 

「ウフフ……ウソはついていないんでしょうけれど、その言葉が本音ってわけでもないことくらい声の感じで分かるんだから」

 

「それって……?」

 

「レディのわたしに気を遣って、可愛いスイーツが食べられるお店を探してくれていたんでしょう?」

 

「あー……」

 

 図星と言えば図星だった。

 自分も食べたいと心から思えたが、どちらかと言うとレダが食べていて恥ずかしいと思わないような食べ物、という条件で店探しをしていたことは事実。

 

 それを声だけで理解するなんて……。

 女性の直感というか、わずかな変化をも読み解く鋭さには驚かされたものだ。そんな自分の反応にレダは確信めいた微笑みを浮かべながら、顔を覗き込むようにして、甘い声音で囁いてくる。

 

「わたしに気を遣わなくてもいいのよぉ? 今日は、カンキくんが主役のイベントなんだから、お肉でも何でも、カンキくんが食べたいと思った物をたくさん食べ歩きましょう?」

 

「ありがとう、レダ。変に遠慮しちゃった俺が悪かった」

 

「別にカンキくんが悪いだなんて言ってないわよ? むしろ、カンキくんみたいな優しいオトコ、わたしだ~いすき」

 

「あ、ありがとう……」

 

 香るメスのフェロモンが、言葉と相まって強烈な魅惑を醸し出している。

 レダと一緒にいると、興奮で体温が高くなってしまう。それでいて、この些細な心境の変化も彼女に悟られているんだろうなと考えてしまうと尚更、変に意識してしまって体の芯が火照ってしまうのだ。

 

 照れ臭く思った自分は、もじもじと縮こまってしまった。もちろん、こちらの様子を見たレダは余裕綽々といった具合に艶やかな微笑みを浮かべていた。

 

 ――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 自分に素直になれ。己にそう言い聞かせてからというもの、自分はレダに遠慮しないチョイスで食べ歩きを満喫することができた。

 

 キッチンカーのケバブを皮切りに、店舗の海鮮丼や立ち食いそば、ホットドッグにタピオカジュースなどいろんな食事を堪能する。

 周囲の目を気にせず、今日、自分が食べたいと思えた食べ物を我慢せずとことん食べ尽くす。食い倒れも上等という勢いで突き進んだ自分の進撃に、レダも割とノリノリな様子で最後までついてきてくれた。

 

 2人で来て正解だった。もしもこれが1人だったら、肩身の狭い思いでどこか遠慮してしまっていたかもしれない。

 だが、レダはこちらのチョイスに口を出さず、全て肯定して付き添ってくれた。こうしてレダと共に歩く東京の街を心から楽しみ、また、年上であるからこその頼れる存在感と抱擁間に自分は救われた部分もあった。

 

 シメのラーメン店に入り、そこで王道の醤油ラーメンを食していた自分。向かいの席では豚骨ラーメンに餃子と炒飯のセットで食事を行うレダの姿があり、胸元まで伸ばしたもみあげを掻き上げる仕草を披露してきたことで、色っぽくも女性らしいそれについつい見惚れてしまう。

 

 当然のように、こちらの視線に気付いていたレダ。チラッと上目遣いで目を合わせてくると、一息ついたところで彼女は満足げに喋り出してきた。

 

「カンキく~ん? さっきからずぅ~っと、食事に集中できていないように見えるんだけど~?」

 

「花より団子なんて言葉はあてにならなくてさ、手元に美味しい団子があっても、やっぱり綺麗な花が目の前にあるとそっちに意識が向いちゃうんだ」

 

「ウフフ、それっぽい言葉で濁しているけれど、要はわたしに魅了されていただけなんでしょう? カンキくんの、オンナに慣れていない初々しい目つきが最高に堪らないわぁ……。あなたから意識されること、わたし大好きみたい……。だから、もっとわたしに見惚れてちょうだい……? 熱烈なくらいに注ぐあなたの視線で、わたしのことを絶頂させて……?」

 

「レダの色気はとんでもないな……。見惚れていたことは否めないけど、その気持ちの中にほんのちょっとだけ、レダを心配する意識も含まれていたことは弁解させてもらえないかな」

 

「安直な弁解ねぇ? 付き添うだけのわたしのどこを心配すると言うの? ウソが下手なところも青くって、本当に可愛い子……」

 

「いやいや、心配しているのは本当だよ。だってレダ、さっきから俺より食べてるから……」

 

 ビクッ。

 緊張を伴った反応で、レダが硬直する。今もラーメンに加えて餃子と炒飯を頂いていた彼女は、途端にして露骨な動揺混じりのしどろもどろな喋りを見せてきた。

 

「こ、これはぁ~~~そうねぇ。あぁアレよ! か、カンキくんはオトコのコだから食欲旺盛で育ちざかりだから??? 付き添いのわたしも年上として対抗しなきゃいけないというか、いえ対抗じゃなくてこう気を遣わせないように食事のレベル??? を合わせていただけで別にあなた以上に食べ歩きを楽しんでいたとかそんなワケではなくて」

 

「俺、家で聞いちゃったからこの際に打ち明けるんだけどさ。申し訳なく思って今まで言わないでいたんだけど、レダ、数日前にラミアとメーから太ったことをイジられてたよね……?」

 

「げっ。カンキくん、それどこで聞いたのかしらぁ~……?」

 

「お風呂からあがって、洗面所に居た時にリビングから話し声が」

 

「あらぁ~……。えっとぉ、その~……今日の食べ歩きのことは、わたし達だけのヒ・ミ・ツ……ってことでお願い、ね?」

 

「それは全然大丈夫。ただ、俺から見ても確かにちょっとふくよかに見え始めてきたというか……」

 

 こんな話ができるのも、ある意味でレダがLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)の人間だからと言えるのかもしれない。

 

 ワンピース越しの腹部に注目しながら言葉を口にしたことで、レダは慌てながら両手でお腹を隠してきた。その頬には赤みを浮かべていて、どうやら本気で焦りと羞恥を感じているらしい。

 

 逆にレダをイジるなんて、なんだか新鮮な気持ちになってしまえた。

 尤も、彼女の健康を第一に考えていた自分は、苦笑しながらもこのように言葉を返したものだったが。

 

「ダイエット、俺も付き合うから一緒に頑張ろうね」

 

「あ、あははぁ~……! え、えぇ、そうねぇ……! ……さ、さすがにカンキくんが看過できないレベルだと、イヤでもダイエットしなきゃいけないわよねぇ……」

 

「せっかく外に出ているんだし、この足でランニングするためのシューズでも見に行こっか。ついでだし、俺も運動用の靴を新調するから、この際だし一緒に頑張ろうよ」

 

「それもそうねぇ……。もう、今日はカンキくんの付き添いでお出掛けをしたというのに、結局はいつも通り、あなたに気を遣わせちゃった。……ここまで来たら、いっそのこと最後までわたしに付き合ってもらっちゃおうかしら? 靴選びからダイエットまで、いつもみたいに面倒見てちょうだいね? ダーリン」

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