俺のハーレムは何かがおかしい   作:祐。

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春の締め括り。ハーレム生活の真骨頂

 陽が沈み始めた東京の街。直にも太陽がビルの並びに消えていくだろう時間帯を、自分はLe goût du péché(ル・グー・デュ・ペシェ)で穏やかに過ごしていた。

 

 本日は珍しいことに、閉店時間が2時間ほど早まっていた。もっと言えば、明日と明後日は休業日の予定にもなっている。

 2連休が待ち遠しい。そんな従業員のウキウキとした様子が簡単に見て取れた中で、最後の客が店から出ていった。

 

 いつもの席に座る自分は、客を見送るタキシード姿のメーを眺めていく。そしてすぐにも振り向いてきた彼女は、すごく嬉しそうな様相で駆け寄りながら言葉を掛けてきた。

 

「いやっふぅ~~~!!! 連休だ~~!! 今日は家でビール飲みまくるぞ~っ!!! カンキ君には最後まで付き合ってもらうから、そこんとこ、よろぉ~!」

 

「今日もお疲れ様。メーの閉店が待ち遠しそうな様子が見てて面白かったよ。あと、今日はユノさんも泊まりに来るから、お客さんがいる以上は節度を守ってお酒を楽しもうね」

 

「ほいほ~い、りょっか~い。んじゃあ私、ミーティングと着替えしてくっから、カンキ君は先に外で待ってて! すぐ戻ってくるから!」

 

 そう言って、ドタドタと足音を立てながら奥の扉に入っていったメー。彼女のハツラツとした姿に自分は思わず苦笑いしてしまいながらも、一足先に外へ向かうことで彼女達の合流を待ち始めたものだった。

 

 ――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 私服姿のラミア、メー、レダ、ユノと合流し、4人の美女と共に自宅へ向かっていく。

 夜に差し掛かった時刻であり、仕事帰りなどの社会人が見受けられた。その帰路を辿ること15分ほどして、景色はビバリーヒルズのような上品な通路が視界に広がり、間もなくして自宅に到着する。

 

 いつもより早い帰宅。それに加え、前準備も済ませておいた食卓を囲うと共にして、自分達はグラスを打ち鳴らしながら乾杯の挨拶を交わし合ったものだった。

 

 私服姿の皆が、それぞれの飲み物を口にして盛り上がり始めた。これで気分は完全にプライベートのそれへ移行すると、ラミア以外がほろ酔いの状態、特にメーは酔いしれた様子で夕食を楽しんでいく。

 

 ユノを含めたいつメンと囲う食卓。寂しさを感じさせないどころか、前向きになれる充実感に満たされたこの空間に、自分は酒による頬の赤みを浮かべながら、刹那に過ぎ去る目の前のひと時を大切にするように満喫していたものだ。

 

 ラミア、メー、レダの他愛ない話に、ユノが微笑しながら見守る光景。こうして存在する4人の彼女らは、もはや自分の人生においてなくてはならない重要な人物らであったことは確かだろう。

 

 人生を前向きに捉える際に、必ずと言っても過言ではないほど必要になる心の支え。もう、4人の存在をなくしては生きられないかもしれない。それほどまでに、自分は彼女らに依存し切っていたとも言える。

 

 ……今になって、1人で過ごしてきた反動が表れたか。

 孤独でもなお保っていたこれまでの平常心は、所詮ただの強がりに過ぎなかった。こうして、心底から安心できる“仲間”と出会ってしまったからこそ、独りでは生きられなくなる代償と引き換えに、美女達と共に暮らす日々を手に入れた。とも考えることができるのかもしれない。

 

 あぁ、親父からとんでもないプレゼントを貰ってしまったな。

 彼女達がいる生活はとにかく居心地が良い。このままずっと、皆と離れ離れになることなく一緒に暮らせればいいのに。

 

 いや、もしかしたら俺は、この中の誰かと結婚することにでもなるのだろうか。親父も少なからずとそんな目論見を持っていたようだし、何なら本気で彼女らの中から相手を探すべきなのか……?

 

 ……とかいう、酔っているからこその思考が脳内に巡り出す。

 その様子を先ほどから眺めていたのだろうレダが、艶やかに微笑みながらこちらに声を掛けてきた。

 

「ウフフ、カンキくぅん? わたし達のことを舐め回すように眺めながら、一体何を考えていたのかしらぁ?」

 

「え? あ、いや。そんな別に大したことじゃないよ!」

 

「そぉ~? すっごく幸せそうにニヤニヤしちゃっていたものですから、妄想の中のわたし達でイヤラシイぃ~ことでも考えていたんじゃないのぉ~?」

 

「ヤラシイことなんか考えてないよ! ただ、そうだな……正直に白状すると、みんなとの将来についてちょっと考えちゃってはいたかな。ほら、もしかしたらこの中の誰かと結婚……っ」

 

 と、長々と言い訳してきた自分に対して、もう我慢できないと言わんばかりに右手を振り上げたメーが突如それを叫び上げてきた。

 

「王様ゲーーーーーム!!!!」

 

 !?

 

 この人、いつも急にゲームを始めるな……!

 あまりの勢いに、隣に座っていたラミアとレダが耳を塞いでいく。共にしてレダが「ちょっと何なのよ突然! うるさいじゃない鼓膜破れちゃう!」と割と本気でキレていくのだが、対するメーは完全に酔っ払っているため無敵状態だった。

 

 まるで、某アクションゲームの(スター)を取ったかと言わんばかりの猪突猛進ぶり。彼女はその勢いでレダを置き去りにしながら、勝手に話を進めていった。

 

「さぁ今回も始まりました第4545回メー様主催の王様ゲーム! 柏島邸を舞台とする今回はなななんと! 女4名男1名による夢のようなハーレムが実現してしまいました!」

 

「ちょっとメー! あなたなんでお酒で酔うと、そんなスラスラと言葉が出てくるようになるのよ! それも早口で!」

 

「気品さが漂うムーディーな空間。シャンパンやカクテルなどを嗜む絶世の美女を(さかな)に食事を行う男の静けさは果たして、理性という名の抑止力が働く聖人由来の由緒正しき紳士なのか、はたまたァ!? 草食動物の皮を被りながら捕食の機会を虎視眈々とうかがい続ける肉欲に飢えし野獣なのか……!? 豪勢な食卓を囲う柏島邸にて今、私を含む美女達に囲まれしハーレム王様ゲームが開幕する~~~~ッ!!!!」

 

「しかもちょっと本格的なナレーションなのが余計にムカつくわね……っ」

 

 レダがツッコミに徹してくれるから、自分は気楽に眺めることができていた。

 

 そそくさと行動し始めたメーが、食器棚から5本の割り箸を持ってくる。それをローテーブルの上に置いていくと、彼女はいつの間にか持ってきた赤色のペンで、5本ある割り箸の内の、1本だけに赤色のマークをつけていった。

 

 先端に塗られた赤色のそれ。あとはそれぞれの割り箸に細かく番号が振られることで準備は完了。メーは用意してきた透明じゃないグラスに割り箸を入れると、カラカランッと音を立てたそれを一同に差し出しながら進めてきた。

 

「はいじゃあ、まずは近くにいるユノさんから!」

 

「余興というものも、たまには悪くないものね。それならば、これにしようかしら」

 

「引いたね! はいじゃあ次、隣にいるレダ!」

 

「もう、強引なんだからぁ……。面白そうだから参加させてもらうけれど」

 

「その意気その意気! じゃあ次は私が引いて……ほい、ラミア!」

 

「メーさん、こーいうのスキですよねー。まー、イイですけど」

 

「大好き大好き~! ……おっ! 誰も王様引いてない! ってことは~?」

 

 ニヤァ、とした笑みでこちらに振り向いてくるメー。差し出されたグラスと、1本だけ入っている割り箸に自分は緊張を帯びながらそれを引いていくと、先端には赤色のマークがついていたことから、一同がそれぞれの「おぉ!」を口にしてきたものだ。

 

 王様を引いてしまった……。

 こういう時、どんな命令をすればいいのだろう。しかも相手は女性だから、あまり失礼にならない命令にしなければ……。という内心が巡り出してくる。

 

 一同はこちらを見守っている。その視線は、王様からの指名や命令に恐れをなすものというよりは、まるで当てられるのを自ら待ち望んでいるかのような、期待の眼差しに近しいものとも言えただろう。

 

 悩みに悩んだ挙句、最初の1発目ということも考慮した上で自分はマイルドな命令を出すことにした。

 

「じゃあ……4番に一発芸をしてもらおうかな?」

 

 と命令した瞬間にも、ラミア、メー、レダからは「えー」という謎の落胆が響いてきた。

 何かマズいことでもしてしまったのか。王様である自分が恐れを抱きながら驚いていく中で、ラミアとメーがダメ出しを行ってくる。

 

「カンキさん。どーせですから、もっと過激なモノにしましょーよー」

 

「え? 過激なもの!?」

 

「そうだよカンキ君~。せっかく王様引いて美女達にセクハラチャンス到来してんのに、命令はただの一発芸? そんなのつまんないってば~! もっとこう、私達を辱めるような勢いのどデカイ一撃が欲しいっていうの?? ほら、男の欲望曝け出して!!」

 

 それ、わざわざ本人達が勧める!?

 

 むしろ想定と真逆の反応をされてしまったことに、自分は何だか追い詰められるような気分を覚えた。そこにレダの「そうよそうよ~!」という追撃も加わったことから、自分は半ばやけくそ気味に命令を改めたものだ。

 

「じゃ、じゃあ……! みんながそこまで言うのなら……! 4番は~……服を脱ぐッ!!」

 

 ラミア、メー、レダからは「おぉ~!」という声が上がる。

 

 いや、だから反応が逆だってば!

 なぜそこまでしてセクハラされたがるんだ。という疑問が脳裏によぎるのだが、それと同時にして割り箸を掲げたのがユノであり……。

 

「私が4番よ」

 

「え」

 

「柏島くんの命令であるのならば、私は喜んでこの身を捧げるといたしましょう」

 

 とか口にするなり、ユノは何の躊躇いもなく衣類を脱ぎ出したのだ。

 それも、アウターを脱いでからYシャツのボタンを外し始める徹底ぶり。そしてシャツを脱ごうと両手を掛けたことから、自分は慌ててストップを命令していく。

 

「ちょ、ちょちょちょユノさん!!! もういいです! 十分です!! 1枚で結構ですから! ありがとうございました!」

 

 アンダーウェアもずれて、ユノの黄金比からなる美麗なくびれとへそが覗いてきた光景。この最中にユノが命令通り留まる一方で、ラミアからは更なるダメ出しをされたものだった。

 

「あの、カンキさん。現実とゲームを区別されてるトコはケッコーなんですけど、カンキさんもオトコなんですから、もっとガツガツ攻めてみてもイイんじゃないでしょーか?? コレじゃータダの野球拳ですよ?? 1発目からハダカにできるのが王様ゲームの醍醐味なんですから、ウチら全員ハダカにする意気込みで来て頂けると、ウチらも張り合いがあるというモノですし」

 

「まさか、女の子からこんな指摘をされるなんて思わなかったよ……」

 

 ――――――――――

 

 

 

 ――――――――――

 

 美女達に囲まれながらも、その生活自体は自分の知っている展開と大きく異なっていた。

 

 俺のハーレムは何かがおかしい。

 それを確信させる出来事の連続は新鮮でありながらも、どちらかと言うと翻弄に近しい気分で自分は振り回されていたものだろう。

 

 だが、更なる恐ろしい事実がこの先に控えていた。

 今までの出来事は、現在の生活に至るまでの過程に過ぎなかったのだ。むしろ、この生活の真骨頂は今から開始を告げる。

 

 夏に差し掛かったこの季節。俺を囲んでくれる美女達は、この場にいる4人だけに留まらない。何故ならば、地球に苛烈な温暖が訪れると共にして、“新たな美女”もこの家にやってくるからだ。

 

 今後も、クセの強い女の子達が増え続けることだろう。今でさえ濃厚な個性達に翻弄されている自分でもあるが、この先どのように蹂躙されてしまうのか、ある意味で楽しみでもある。

 

 何かがおかしい俺のハーレムは、まだまだ始まったばかりだ。

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