俺のハーレムは何かがおかしい   作:祐。

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1年目 春の章
家の住人が増えました。


「ウチ、ココに住んでイイですか??」

 

 暖色の照明の下、就寝の準備をしていた自分へとラミアが言い放つ。

 

 紫色の寝間着とフェイスパックを身に着けた彼女が、しれっとした表情で先の言葉を口にした。それも、手前のローテーブルに美顔器や化粧液などを設置した入念な様子と共にして……。

 

「……まぁ、確かに自宅のようにくつろいではいるけれどさ。それに、あれだ……ラミアが泊まりに来るようになってから今日で1週間ぐらいになるよね?」

 

「ハイ、そーですね。ソレって実質、ウチの自宅というコトにもなりますよね??」

 

「いやならないけど!?」

 

 ガビーンッというSEを響かせながら驚いた自分。だが、こちらの反応にラミアは不服そうに頬を膨らませてくる。

 

「えー、どーしてですかー?? ウチ、あのアパートに戻りたくないですー。私物を取りに部屋へ帰る度、思うワケなんですよ。あーあ、カンキさんは温かいお部屋で優雅にパスタを食べていらっしゃるのに、どーしてウチはこんなオンボロアパートでモヤシを食べてしのがなきゃいけないんだろーって」

 

「そりゃあまぁ、人にはそれぞれの生活があるもんだし……」

 

「ソレにですよ?? ウチ、やっぱり可愛いじゃないですか?? まー、可愛いかどーかはイマはどーでもイイんですけど。カンキさんはオンナの1人暮らしって考えたコトあります?? アナタが思う以上にキケンと隣り合わせであるコト、オトコのアナタには分からないですよね??」

 

「うーん……それを言われちゃうと、肯定はできないよね……。どうしようかな」

 

 本気で困った。

 

 ゴネるラミアに自分は頭を悩ませて、次にも頼みの綱とも言える人物の名を出していく。

 

「なら、親父に訊いてみるか。親父が許可してくれれば、ここに住んでもいいと思う」

 

「ホントですか!? ヤッター!! ならカンキさん、さっさとChalkI(チョーキ)さんに電話掛けてください!! ホラ早く!!」

 

「わ、分かったから焦らせないで!」

 

 ラミアに急かされるよう、自分は慌ててスマートフォンを取り出していく。

 

 電話帳から親父の番号を選び、呼び出し音を鳴らしながら耳にあてがう。それから暫しコールを続けると、直にも端末越しに親父の声が聞こえてきた。

 

『あらカンキ~? どうしたのこんな時間に~?』

 

「あぁ親父、今忙しい?」

 

『もぅ全然大丈夫! 番組の収録現場の関係でちょっと周りが騒がしいけれど、カンキと話せるなら私大歓迎~!』

 

「そっか、それなら良かった」

 

 以前にも描写したかと思われるが、喋りから分かるように親父は中性的なキャラとして売っている。

 

 キャラというか、親父は元からそういう“性質(タチ)”なのだ。

 異性とも同性とも恋愛できる人。それでいて、親父は中性的な顔立ちをしていたことから、そのどちらからもウケが良い。

 

 化粧を纏い、毛先にツヤがかかった黒髪のウルフカット。彼から見た右目を前髪で隠し、髪質もヴィジュアル系の遊び心あるウェーブがかかっていることから、素で長いまつ毛にカラーコンタクトを入れた黒色の瞳、コスメで煌めく頬に紅色の唇という非常に魅惑的な容貌で世間の注目を引いている。

 

 加えて、183cmという長身に黒色のヒールを合わせた外見も特徴的だった。

 なびかせた黒髪や黒色のトレンチコートは艶めかしく、赤色や青色、黄色や灰色など様々な色や柄が入り混じるようなシャツと、裾にスリットが入った黒色のボトムスという格好が一般的。その立ち姿はまさに妖艶と呼ぶに相応しく、息子である自分も親父は生粋の美人だなと思えてしまえる。

 

 一方で、蓋を開けば彼は明るい面白おじさんでもある。

 いつもニコニコしていて、女性的な立ち振る舞いでポピュラーに会話する。現在も画面越しから分かるニッコニコな笑顔を脳裏に思い浮かべながらも、自分は本題へと移るべく話を進めていく。

 

「親父、話があるんだけど」

 

『はいはい、お父さんになんでも聞いてちょうだ~い? どうかしたの~? あ! もしかして私が注文してあった縦5m幅3mのキャンバスでも宅配で届いたのかしら~?』

 

「は!? 親父そんなの頼んでたの!?」

 

『あら、反応からして違うのね? じゃあじゃあ、蝶々の標本10匹セット10個でも届いたのかしら? それならカンキ、ビックリして電話も掛けちゃうわよねぇ~!』

 

「いや届いてないけど今教えてくれて本当に助かったよそれマジでビックリするわ!! ……って違う! そうじゃなくて!!」

 

『あら、それも違うのね? うふふ、それじゃあ純粋にお父さんの声が聞きたくなっちゃった? んもぅカンキったら、ホームシックならぬ父親シックってとこかしらぁ。あ、恥ずかしがらなくてもいいのよ~? 私達は親子の関係なんだから~』

 

「だからそうじゃないんだって!! 俺が訊きたいのは……」

 

 と、親父のペースに乗せられていた自分が手こずっていると、フェイスパックをしたラミアがトコトコ歩いてきて手を差し出してきた。

 

 代わってほしい、ってことか。

 察した自分は、親父のペースに半分呆れ気味な顔を浮かべながらラミアに端末を渡していく。これにより相手が代わると共にして、ラミアは親しい調子で喋り出した。

 

「どーも、お世話様でーす」

 

『あ、ラミアちゃんじゃな~い! 今日も来ていたのね~いらっしゃ~い。私の(うち)でよければゆっくりしていって~』

 

「ありがとうございまーす。カンキさんには、いつもお世話になってますー」

 

『いえいえこちらこそ~! いつもお店の当番ありがと~! 先日もお話しできて嬉しかったわ~! ラミアちゃんやお店の女の子達の近況を知れてホント安心した~! それと、私の息子がラミアちゃんに失礼を働いていないかしら~? あの子もお年頃の男の子だし、ラミアちゃん可愛いから手を出していないか心配で!』

 

「お気遣いどーもー。カンキさんには良くして頂いているのでご心配なくー」

 

『まぁ、それなら良かった!』

 

「それでですけど、ウチ、コチラに住んでイイですか??」

 

 急にぶっ込んできたなッ!?

 あまりにもカオスな会話に、自分は目玉が飛び出すような衝撃を受けていく。

 

 で、それに対して親父はと言うと……。

 

『いいわよ~! おっけ~! カンキのことよろしく~!』

 

「わー!! ありがとうございますー!! じゃーイマのアパートのお部屋解約しちゃいますねー!!」

 

『はいはーい! せっかくだしラミアちゃん、このままカンキのお嫁さんになってもらえないかしら~?』

 

「あー、ソレはケッコーです」

 

『あら~、ざんね~ん。気が向いたらいつでも声掛けてちょうだいね~?』

 

「ハーイ、どーもー。じゃー、お電話切りますねー」

 

『またいつでも電話してね~! じゃ~ね~! おやすみばいび~!』

 

 ピッ。

 ハイッ、とスマートフォンを返してくるラミア。自分はそれを呆然としたサマで受け取っていくと、ラミアは何気無い足取りでソファに戻りながら喋り出してきた。

 

「そーいうワケで、今日からコチラでお世話になりまーす。よろしくお願いしますねー」

 

「あ、うん。はい……どうぞよろしく……」

 

 たった一瞬の出来事に対して、あまりにも情報量が多すぎる……

 

 電源がついたままのスマートフォンを握り、自分は立ち尽くすようにラミアを見遣っていた。そんな彼女は既に馴染んだ様子でフェイスパックを取っていき、ヘアバンドで髪をまとめながら、あたかも最初からここの住人であるかのように美顔器のスチームを浴び始めたものだった。

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