インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
拙いですがよければどうぞ。
side HG
《レストラン》
探索を終えた俺達は、レストランに戻ってきた。
あー、やっぱり俺達が最後だったか。
まあ、そりゃそっか。
俺達はあのだだっ広いマーケットも調べたもんな…
「悪い。俺達が一番最後だったか」
「地下2階と3階を調べていただいたのですから、ありがたい事ですわ。むしろわたくし達がお手伝いするべきでした」
息をするかのような自然な気配り…
さすがはお嬢様…おハイソだ…
「では、神風様達が戻っていらした事ですし、昼食にしましょうか」
そう言って神風が持ってきたのは、綺麗に盛り付けられたパスタだ。
今日のパスタはボンゴレビアンコか…美味そうだな。
サラダとアヒージョ、コンソメスープも美味そうだ。
あとよく見たら、肉を使わない料理にしてくれている。
多分、暗野のおしおきがフラッシュバックしないようにという配慮だと思う。
「……美味い」
梶野と酒蔵が作ってくれた料理は、思わず涙が溢れそうになる程美味かった。
美味いものを食べると生きていると実感するという話を聞いた事があるが、本当だったんだな…
◇◇◇
食事が終わった後は、前回と同じように報告会を開いた。
議長は当然神風だ。
「さて。全員食事が終わった事だし、探索の報告会をしよう。まずは俺達の班からだな。東野、報告を頼む」
俺か…
まあ、神風は全員の話を聞いて整理しなきゃならないから、俺らが発表するのが妥当だな。
「ああ。温泉施設は、とにかく広くて効能ごとに分かれた温泉が何種類かあったぜ。脱衣所は、全員で入っても困らない数のロッカーや洗面台も設置してあった。あと、入り口のところにはガトリングガンが設置してあった。多分、ペンションの男子棟と女子棟の時と同じだと思う。ランドリーとトラッシュルームは、ペンションのものとほとんど同じだった。広さはこっちの方はあるけどな。地下2階の報告は以上だ」
「っし、じゃあ次はオレだな!3階のマーケットは、とにかくだだっ広くて色んな種類のものが置いてあったぜ!まるでホームセンターかショッピングモールって感じだった!大抵のものはマーケットに行けば揃うんじゃねえかな。っとまあ、3階はこんな感じだぜ!」
俺達の次は、打田と氷川の班か…。
「女子風呂と地下1階を調べていたのは打田と氷川だったな。報告してくれ」
「……女子風呂は、さっきの東野の報告と一緒だった。地下1階の娯楽施設には、卓球とかビリヤードとか麻雀とかダーツとか、あと小さいけどボウリングとかクレーンゲームもあった」
「ええと…その他にも、リラクゼーション施設や休憩所もありました……休憩所では、好きな食べ物を注文できるそうです……」
リラクゼーションか…
アレか、温泉施設にあるスパとかエステみたいなもんか。
…ん?
ちょっと待て。
それって、モノクマに全身を触られるって事じゃないのか…?
………考えただけでさぶいぼ立ってきた。
モノクマの施術は…うん、受けたくないな。
「次、私いいかしら。ロビーは、観葉植物や噴水が置かれていたけれど、ほとんど一般的なホテルのレイアウトと変わらなかったわ。かなり南米を意識したものではあったけれどね。それと、ロビーのフロントは、ペンションの時と同じような構造になっていたわ。多分だけれど、前回のように学級裁判の会場に繋がる隠し通路になっているんじゃないかしら」
「植物まで金ピカだった…モノクマは配色センスがクソ……」
うん。
それは知ってる。
いらん事報告しなくていいよ六道…
「診療所は、十分な薬剤や医療器具が置いてあったから、大体の怪我や病気なら診療所で対応できるわ。危ない薬品もあるから、使いたければまず私に声をかけてね」
なるほどな。
道具さえあれば、薬師寺に頼めば多少の怪我なら治してくれるだろう。
とりあえず当分は怪我や病気の心配は要らなさそうだ。
「ねえ聞いて…診療所にあったガムみたいなのがクッソ不味かったんだけどさ…ちはる、モノクマを告訴しようと思ってるんだ」
「ガムみたいなの?」
「これ」
そう言って六道が机の上に出したのは……ゴムだった。
えっ、待って。
六道お前、当然のように机に出してるけどそれ、マジで診療所にあったのか!?
だとしたらセクハラじゃねえか!!
「なっ…あの穢らわしい食肉類共め!!俺様がこの
「あいつら…これってセクハラよね」
「次会ったら撃ち殺す」
「はわわわわっ…!」
安室は顔を真っ赤にして怒り狂ってるし、薬師寺は呆れ返ってるし、打田は銃を片手に殺気立ってるな。
氷川は狼狽して今にも泣きそうになっている。
うん、女子は普通はそういう反応になるわな。
「ヒュ〜、わかってるじゃないモノクマも゛っ」
あっ、酒蔵が安室に刺された。
痛そう……
「なあなあ、何の話してんだ?オレにも教えてくれよ!」
「きゃはは、変態ヒロキが何か気持ち悪いって事だけはわかるよ!」
「ええと…そちらは一体何の用途で使うものなんですの?診療所にあるものという事は、治療行為に用いる物という事ですわよね、消灯寺さん?」
「僕に振らないでよ…僕だって知らないよ」
あの4人はすごいピュアだな。
酒蔵にもあいつらの純粋さを少しは見習ってほしいものだ。
って、話がどんどんくだらない方向に流れていってないか?
「コホン、話が脱線してしまったわね。4階の図書館だけれど、まるでブエノスアイレスの図書館をモチーフにしたような造りになっていて、蔵書も把握し切れない程の種類と数があったわ。CDやDVDもあったわね。あとは、資料室に資料があったくらいかしら。ただ……」
「ただ?」
「何故か、新聞や雑誌は置かれていなかったの。おそらく、外の世界の情報を遮断して、日にちの感覚を狂わせる為だと思うわ」
日にちの感覚を狂わせる為、か。
確かに、新聞や雑誌さえ無い現状、今が何月何日かさえもわからないもんな…
でも、そんな事をして犯人は一体何がしたいんだ…?
「ふふふふ……おまえら…よく聞け。ちはる様がとっておきの朗報を持ってきてやったぞ」
「あんたさっきから寝てばっかじゃん。何がしたいのよ」
「図書館に必ずあるもので、情報を効率的に収集するための文明の利器…何か思い当たるものがあるはずだぞ」
図書館にある文明の利器…
…あっ、もしかして。
「パソコンか!!」
「ふっ……パーフェクトだ」
「そうですわ…!【超高校級のゲームプログラマー】の六道さんなら、パソコンで外の情報を入手する事もできるのでは!?」
「あっ、その手があったか!!お手柄だぜ六道ちゃん!!」
「まあ、見つけたやつはオフラインだったけどな」
だっ!?
…思わずズッコケてしまった。
というか、リーゼ、神風、薬師寺、消灯寺、梶野、打田以外は皆ズッコケていた。
「こ、これがジャパニーズズッコケ…!」
おいおいリーゼさん。
そこは感心するとこじゃないと思うぞ。
つーかオフラインならオフラインって最初に言えよ…ぬか喜びさせやがって。
「ちょっと調べてみたんだけど、図書館の中にある蔵書調べるくらいしかできないっぽい。今のところは」
「まあ、私達をここに閉じ込めた犯人がそう簡単に通信手段を渡すはずがありませんからね…ですが、パソコンそのものがあるというだけでも希望はありますよ」
「そうなのか、六道」
「ぐごぁー…すぴぃー……」
「おい」
待て待て待て、まだ肝心なとこ聞いてないのに寝るな。
よくこの状況で寝られるなこいつ…
「えーと、では次はわたくし達ですわね。レストランは、皆さんもご存知の通りですわ。梶野さんと酒蔵さんはもうご存知でしょうけど、ペンションには無い設備も多く設置されていましたわ」
「パーティー会場は、とにかく広くて舞台みたいなものもあったよ。あとは舞台裏に控室みたいなものがあったくらいかな」
パーティー会場か…
今は正直、パーティーって気分じゃないけどな…
「じゃあ次は椛達の番だねっ!個室は、皆の才能や趣味に合わせた部屋になってたよ!中は金ピカじゃなかったから安心していいよ!」
「6階の私達の個室もそのような感じでした。部屋は完全防音で密閉性が高く、セキュリティの観点からも問題なさそうです」
「ただまあ、部屋の中にまで監視カメラがあったのは癪だったけどなぁ」
まじかよ。
部屋の中にまで監視カメラがあんのかよ…
何か生活を24時間監視されるのって嫌だな……
「俺様からも一ついいか?此の黄金郷の五層には我らの寝床が8つあった。無論、カタストロフィを迎えた山脇の分もだ。…だが、コロシアイ強化合宿なるものが始まった時には、俺様達陰の者は9人だったはずだ。…一人分足らぬのだよ」
「えっと、安室さんは『元々女子が9人だったはずなのに8部屋しかなかった』と仰っていますわ」
「その言葉から察するに、足りなかったのは殉前の部屋か?」
「フッ、その通りだ」
部屋が8つしかない…?
それはおかしい。
だって、ペンションで誰が死ぬかなんて、モノクマは事前に把握できなかったはずだ。
まさか、今日の昨日でホテルが建つなんて事無いだろうし。
殉前が生きてここに来る可能性だってあったはず。
モノクマは、最初から殉前がペンションで死ぬ事を知ってたのか?
…いや、もしくは……
殉前の死は、仕組まれたものだったのか……?
「…報告はそれで全部か。さて…そろそろ行かなければな」
「えっ、行くってどこに?」
「決まっている、的凪のところだ。いくら人の命を弄んだ愚か者といえど、見殺しにするわけにはいかんからな。食事と排泄の世話くらいはしてやらねば」
あ…
確かに、言われてみればそうだ。
的凪は、山脇を殺す計画を実行した上に、内闘と暗野が殺し合うよう仕向けた張本人だ。
その事は許すつもりはないし、一生許せないと思う。
でも俺は…ここで出会った誰かを見殺しにする、なんて事はしたくない。
「それに、これで餓死でもしたら、私達がクロになってしまう可能性もあるものね」
「確かに…そのような場合は、クロの判定はどうなるのでしょうか?」
『キャハハハ!何か呼ばれたみたいだから来たよ〜っ!』
うわっ、出た。
どこから這い出てんだよこいつら。
まさかどっかから滲み出したりしてないよな…?
『えーっと、梢クンが餓死したらクロの判定はどうなるのか、という話でしたよね?その場合は、アンタ達が梢クンをご飯も食べられない状況に追い込んだ事が死因となるので、当然殺人が成立します!つまり、梢クンを拘束した大和クンがクロになりま〜す!じゃ〜ね!』
そう言ってモノルナは、どこかに消えていった。
神出鬼没だな、こいつら…
俺がそんな事を考えていると、神風は妙に納得した様子で腕を組んだ。
「……やはりな。俺はどんな理由があろうとここにいる誰かを見殺しにするつもりはないし、見殺しにしたくてもできないというわけだ」
「そのようですね。的凪様のお食事はご用意しておりますので、お持ちしますね」
そう言って梶野は、取り分けておいた食事をトレーに乗せて運んだ。
…何か、いくら的凪でも放って置けないな。
俺も何かするべきだろうか。
「…なあ、俺も行ってもいいか?その…さ、何て言うのかな、他人事とは思えないっつーか…」
「好きにしろ。ついてくるだけなら構わない」
良かった、ついていくのを許してもらえた。
とりあえず、飲み水とタオルは持っていってやらないとな。
確かマーケットにあったはずだ。
俺はまず、マーケットで的凪の分の飲み水とタオルを入手しに行った。
◇◇◇
《ペンション チュウオウトウ 1F》
俺と神風と梶野は、ペンションとホテルを繋ぐ長い廊下を通ってペンションに戻ってきた。
何か、あの全部金色のホテルを見た後だと、このペンションもいくらかマシに思えてくるな。
「行くぞ」
「あ、ああ」
中央棟を通って、男子棟に向かう。
2階の向かって左側の奥から2番目の客室だったはずだ。
《ナイトウ ノ キャクシツ》
「おい、的凪。生きているか。食事を持ってきたぞ」
神風は、一言声をかけてから内闘の客室を開けた。
内闘の客室、そこにいたのは…。
「やあ、わざわざ食事を持ってきてくれたのかい?ははは、ありがたいね」
ベッドに横たわって憎まれ口を叩く的凪だった。
的凪は、手首に手錠をかけられて手を前で拘束され、鎖でベッドに縛り付けられていた。
床に放置せずにベッドに寝かせたのは、神風なりの優しさだろう。
的凪は、俺達が到着するなり、早速注文をつけてきた。
「あ、その前にトイレに連れてってくれよ。誰かさんのせいでもうかれこれ6時間もトイレ我慢してるんだからさぁ。ああ、それともこのまま膀胱炎か感染症引き起こして死んでもいいんだ?」
「………チッ」
的凪が言うと、神風は舌打ちしながら鎖を外して的凪をトイレに連れて行った。
…こいつ、この口ぶりから察するに、今ここで自分が死んだら神風がクロになるのをわかってるな。
わかった上で、強気に出ているんだ。
現状生殺与奪の権を握られているのは的凪の方なのに、何でこんなにも余裕綽々としていられるんだ…?
「あースッキリした。それで?食事を持ってきてくれたんでしょ?早く食べさせてくれないかな、ボクお腹すいちゃってさぁ」
的凪が挑発するような口調で言うと、神風は苛立ちながらも的凪に食事を差し出した。
的凪は、手錠をかけられたまま器用に食事を平らげた。
…何だろう、正直心配して損したって思ってしまっている自分がいる。
「ねえ、ボクってこのまま千春ちゃんに会う事もできないのかな?」
「…貴様、いい加減にしろ」
「まあ会えないなら会えないで別にいいよ。会えない時間がより一層愛を強くするものだからね。ボクは、千春ちゃんが生きてここにいてくれてるってだけで十分なんだよ」
こいつ……
全然反省してないな。
口を開けば千春ちゃん千春ちゃんって…
何がそんなに的凪を六道に執着させるんだろうか。
俺は、梶野に鎖で拘束されている的凪に目を向けながら、疑問に思っていた事を尋ねた。
「…なあ、的凪。お前、本当にこのまま大人しく捕まっているつもりなのか?」
「ん?どういう意味?」
「いや…お前、やけに大人しいなって思ってさ。あれだけ好き勝手やってた奴が、こうもあっさり拘束されたりするか…?」
「あはは、なぁんだそんな事を気にしてたのか。簡単な事だよ。ボクが何もしなくても、君達が勝手に面白い事を起こしてくれそうな気がするからね。ボクはその時をただ待つだけだよ」
…何だろう、何かが引っ掛かる。
的凪のこの余裕は一体何だ…?
…まさか、もう既に次の計画を実行する準備が整ってるって事じゃ…
……いや、そんなはずはない。
的凪は、ずっとここに閉じ込められていて、俺達に干渉する余地なんて無いはずだ。
もし奴の方から何かしてくるなら、とっくにそうしているだろうしな。
……そのはず、だよな…?
「東野様。そろそろ行きましょう」
「ねえ、次は甘いもの持ってきてくれないかな。できればイチゴのショートケーキか生クリームの入ったプリンがいいなぁ。ボク、甘いもの食べないと頭回んなくてさぁ」
まだ言ってる…
こいつ、本当に自分の置かれている状況がわかってるんだろうか。
いや、分かってるからこそのこの余裕っぷりなのか。
「黙れ。脱出する時まで、俺が貴様を解放する事はない。もうこれ以上、貴様の思い通りにはならんぞ」
「脱出…ねぇ。本当にそんな事できると思ってるんだ、面白いね」
神風が的凪を威圧すると、的凪はクスクス笑い出した。
本当にもう、何なんだよこいつ…
俺は、不安を胸に抱えながらも、的凪の近くにペットボトルとタオルを置いてその場を去った。
◇◇◇
その後も、俺達は手がかりを探し続けた。
だが、有益な情報は何ひとつ出てこなかった。
…そういえば、個室があるって言ってたな。
一応歯ブラシとか歯磨き粉とか、必要なものはいくつか貰っとくか。
必要な日用品を揃えてマーケットを出ようとすると、モノモノマシーンが置いてあるのを見つけた。
あ、ホテルにもあるんだな。
メダルはまだまだあるし、試しに一回回してみるか。
俺は、モノモノマシーンを回してみた。
出てきたのは、小さめのカプセルだった。
これは…オブラートか?
何に使えばいいんだろうか。
俺がそんな事を考えていると、誰かがマーケットに来た。
薬師寺だ。
「あら、奇遇ね。東野君も何か探しに来たの?」
「まあな。日用品を少し…薬師寺は?」
「衛生用品を取りに来たのよ。誰かが怪我をした時、すぐに手当てできるように備えておかなくちゃ」
「そうか。薬師寺は仕事熱心だな」
俺は薬師寺と過ごす事にした。
俺は、薬師寺にさっきモノモノマシーンで引いたオブラートをプレゼントした。
「……これを私に?ふふ、嬉しいわ。ありがとう東野君」
良かった、喜んでくれたみたいだ。
えっと…何を話そうかな。
「薬師寺はどうして軍医になったんだ?」
「……そうね。私の場合、なるべくしてなった、と言った方が正しいかもしれないわね」
「…というと?」
俺が尋ねると、薬師寺は少し神妙な面持ちで話し始める。
「私、親がいないの。私は中国の山奥で生まれ育って、父と母と祖父との4人で暮らしていたわ。両親は二人ともお医者様で、貧しい村の人達に治療をしていたの。私は、そんな二人を親に持った事を誇りに思っていたし、幸せに暮らしていたわ。ある時までは…」
「え……?」
「私の故郷の近くに、日本人差別が根強く残ってる村があったの。物心つくかつかないかくらいの時、私達家族はその村の住民に目をつけられて、毎日迫害を受けて育ったわ。このままだと私も殺されると思ったんでしょうね、父と母は私と祖父を連れて日本に帰ろうとしたの。その途中、私達の乗っていた飛行機が海に墜落して、私と祖父以外の乗客は皆亡くなったわ。私の両親も含めて、ね……」
「そんな……」
物心つく前に迫害を受けた上に、事故で両親を失った、か…
薬師寺は俺達が思っていた以上に重いものを背負っていたんだな。
「私は、生身のまま海に放り出されて、数時間生死の境を彷徨ったわ。もう全身の感覚はほとんど残っていなかったんじゃないかしら。そんな時、奇跡的に旭の艦隊が通りかかって、隊員の方が私達を救助してくれたの。私と祖父を助けてくれた隊員には感謝してもしきれないわ。あと少しでも救助が遅れていたら、私はここにいなかったでしょうから」
「そっか…」
「全身重傷で行く宛もない私達は、その日からは旭のお世話になったわ。祖父は事故の後遺症で半身不随になってしまったけれど、薬学の知識があったから、旭の軍医に抜擢されたの。私も、祖父が持っていた薬学書を絵本代わりにして育ったから、成り行きで旭に入隊して軍医になったわ。私達を助けてくれた人達に恩返しがしたかったし、尊敬する祖父と同じ仕事がしたいという思いもあったしね」
薬師寺が軍医になったのは、命の恩人への恩返しの為だったんだな。
何というか…薬師寺らしいな。
「神風とは、どんな風に出会って今の関係になったのか、って…聞いてもいいのかな」
「そうね。私が士官学校に入学したての頃、同期からいじめ…とまではいかないけど、私をよく思わないような態度を取られていた時期があったのよ。多分、女で、しかも事故で顔に酷い傷を負った私が昇格していく事にやっかんだんでしょうね」
「酷い話だな…」
「ええ。でも、大和だけは私を疎む事も、同情する事もなかった。私の能力を妥当に評価してくれたし、私を必要としてくれたわ。私は、そんな大和に惹かれていった。私が17の頃、大和の方から告白してくれて恋人同士になったのよ。空っぽだったものが満たされていく感じがして、本当に嬉しかった」
それを聞いた時、俺は思った。
俺は、薬師寺の事を勘違いしていた。
薬師寺は、重いものを背負ってきたんじゃない。
何もなかったんだ。
何もなかったから、『何か』を与えてくれた神風に惹かれたんだ。
「そっか。話してくれてありがとな」
「ええ、こちらこそ。湿っぽい話に付き合わせちゃってごめんなさいね」
「いや、話聞きたいって言ったのは俺だし…」
「でも、東野君と話していたら何だか気が楽になったわ。またお話に付き合ってくれる?」
「ああ、もちろん」
俺は、薬師寺とまた話す約束をして、この日の自由行動を終えた。
何だか薬師寺と仲良くなれた気がする。
《薬師寺療香との好感度が1アップしました》
◇◇◇
《レストラン》
気がつくと、時刻は18時になっていた。
自由時間の後は、再びレストランに集まって、夕食兼報告会を開いた。
このホテルで新たに発見した事などを皆で共有するのだ。
俺達は、酒蔵と氷川と消灯寺が作ってくれた夕食を食べた。
今日の夕食は、炊き込みご飯、焼き魚、味噌汁、煮物といったシンプルなメニューだった。
昼は洋食だったし、和食が食べたいと思っていたところだったからありがたいな……。
食事を食べ終わり、俺は後片付けを手伝った。
明日は俺が作る当番だからちゃんと何があるのか把握しとかないとな…。
「にしても、消灯寺があんなに料理上手かったとは意外だな…」
「意外って何?君、失礼だね」
「あ、悪い」
いけね、つい口に出てた。
考え事してるとついポロッと口に出ちゃう事あるんだよな。
俺が反省していると、消灯寺はポツリと呟いた。
「…まあ、別に作る機会が無かったわけじゃないし。作れるのは和食だけだけど」
「え、そうなのか?」
「そうそう。消灯寺クンねぇ、洋食や中華はまるで作れないんだよ。今日だって、マヨネーズとマスタードの違いも分かってなかったもんねぇ。今日の夕食も、消灯寺クンに合わせて和食にしたってわけ」
「……洋風のものって横文字が多くて嫌い。噛みそうになるよ」
………マジですか。
何かクラスメイトの新たな一面が垣間見た気がする。
俺達が皿洗いを終えると、報告会の時間となった。
今回も、神風が議長となって議論を始める。
「それでは、報告会を始める。新たに何か発見があった者は?」
神風が全員に尋ねるけど、発言した奴は誰もいなかった。
…まあ、それもそうか。
たった一日で何か手掛かりが見つかるとも思えないしな。
俺は少し落胆しつつも、冷静に考え直した。
「何か疲れたな…温泉でも行ってくるか」
あの金ピカのモノクマ像の前まで行かなきゃならんのか…。
何か急に憂鬱になってきたな。
俺がそんな事を考えていると、誰かが声をかけてくる。
「やあ、東野クン、何か思い詰めた表情をしているね。おじさんで良かったら…」
「ちょっと本読んでくる」
「えっ、あっ、無視!?」
俺は、話しかけてきた酒蔵を無視してレストランを離れた。
何だろう、今、こいつには関わるなって俺の本能が言ってた。
何か酒蔵って他のメンバーを見る目がいやらしいし、昨日だって女子風呂を覗こうとしてたし。
こういう言い方しちゃ何だが、水回りで酒蔵と絡むと碌な事にならない気がする。
俺は、温泉に入ってから、ホテル内を散策した。
地下にあった温泉は、金ピカで不快なモノクマ像があった癖に、温泉自体は気持ちよかった。
…悔しいが、つい長居してしまった。
………閑話休題。
俺は今、ホテルの6階を散策している。
何だかこのまま眠ろうにも眠れなくて、廊下をうろうろしていたら、暗野の部屋が目に留まった。
もし暗野が生きていたら泊まるはずだった部屋だ。
少し緊張気味に、部屋のドアノブに手をかける。
――ガチャリ。
開いた。
鍵はかかっていなかった。
俺は、少し申し訳ないと思いながらも、暗野の部屋に入った。
「………え」
暗野の部屋は、何の特徴もない部屋だった。
簡素なシングルベッドに、普通の家具。
装飾の類は何も置かれていない。
まるで、何もなかったあいつの人生を表しているようで、何だか居心地が悪かった。
でもよく見ると、デスクの引き出しが半分開いていた。
中には、あいつが持っていたであろうナイフが入っていた。
刃先が欠けていて、錆びたナイフ。
血がこびりついていて、ろくに手入れもされていなかった。
…暗野だって、本当は人殺しなんかしたくなかったはずなんだ。
本当は、俺達と同じように、普通に友達と青春を送って、普通に過ごしていたかったんだろう。
なのに、大人達の勝手な都合で、殺人鬼に仕立て上げられた。
このナイフは、まるであいつ自身の写し鏡のように思えた。
「…暗野。俺、お前ともっと話したかったよ。裁判で追い詰めるような事をしてごめんな」
誰にも届くはずがないのに、俺はポツリと呟いた。
せめて、あいつが安らかに眠れる事を祈って。
俺は、ナイフを引き出しに戻して、部屋を後にした。
「……あ」
自分の部屋に向かう途中、隣の内闘の部屋に目がいく。
暗野に殺された、あいつの部屋だ。
「………」
俺は、自分の部屋に行く前に、内闘の部屋に寄った。
供養してやらなきゃいけないのは、暗野だけじゃない。
口火を切ったのは内闘だったとはいえ、内闘もコロシアイの被害者だったんだ。
俺は、やるせない気持ちを抱きながら、内闘の部屋のドアを開けた。
内闘の部屋は、あいつ自身の趣味や才能をイメージしたものになっていた。
部屋にはサンドバッグやプロレスのポスターがあって、ベッドもプロレスのリングを模したものになっている。
もしあいつが生きていたら、この部屋を見て喜んだのかな。
…いや、あいつの事だから、どのみち外に出たがっていただろうな。
「内闘。俺は、お前と一緒に外に出たかった。今更こんな事を言っても仕方ないかもしれないけど、俺、お前の事結構好きだったんだよ」
俺は、生前言えなかった言葉を、誰にともなく呟いた。
最初は嫌な奴だと思ってたけど、本当の事を打ち明けてくれた時のあいつは、何だか俺と重なって見えたから。
こんな形じゃなくて、もっと普通に出会えてたら、親友同士になれていたのかな。
…今更、こんな事を考えても仕方ないっていうのに。
俺は、内闘に伝えたい事を伝えて、内闘の部屋を後にした。
その日は、そのまま探索をする気にもなれなくて、自分の部屋のベッドで眠りについた。
〜モノクマ劇場〜
『やっほー!モノクマ&モノルナの!モノクマ劇場の時間だよ!』
『この度は、『インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿』をご購入いただきありがとうクマ!』
『つーかお兄ちゃん!アタシ達、1章で全然活躍できなかったんだけど!?あいつらマッハでコロシアイするんだもん!このままノンストップでいくんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたよ!』
『うぷぷぷぷ、妹よ。それはRTAだよ。コロシアイも今はRTAの時代だよ』
『そっかぁ、RTAならしょうがないね!…てか、RTAって何の略?』
『さぁ……?
『いやラブホはLでしょ!』
『うぷぷぷ。尺もそろそろ無いしここいらで、そんじゃばいならー!』
『キャハハハハ!みんな、また明日ー!』
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン
【超高校級の原型師】
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
ノコリ14人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
以上4人
推しがいたら教えてくんなまし
-
東野潤_小説家
-
暗野斬良_???
-
殉前詩乃子_ギャル
-
神風大和_司令官
-
薬師寺療香_軍医
-
リーゼロッテ_オルガニスト
-
安室明日奈_原型師
-
消灯寺霊庵_心霊学者
-
山脇ゆか_絵本作家
-
梶野運命_ディーラー
-
神無月椛_カルタ師
-
氷川みるく_グラシエール
-
酒蔵飛露喜_ソムリエ
-
樺戸ラムジ_カバディ選手
-
内闘力也_プロレスラー
-
打田清美_狙撃手
-
的凪梢_幸運
-
六道千春_ゲームプログラマー
-
モノルナ_引率教師