インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿   作:M.T.

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いけねえ焦りすぎてモノクマ劇場入れるの忘れてた







(非)日常編④

side YK

 

私は、自室のベッドで目を覚ました。

清潔なシーツに、清潔なベッド。

私の好みに合わせているのか、どうも眠りやすかった。

家具や部屋のレイアウトも、私好みに設計されている。

…何故か私の服まで置いてあったのは気味が悪かったけれど。

 

ふと時刻を確認すると、5時10分。

昼食作りまではまだ30分ある。

二度寝する気分にもなれなくて、着替えをして部屋の外に出た。

 

「…………」

 

部屋の外に出た途端、黄金色が私の視界全体に飛び込んでくる。

部屋で目が覚めた時は、一瞬どこかと混乱したけれど、この鬱陶しい黄金色が私に現実を教えてくれた。

私は…いえ、私達は、このコロシアイ合宿に強制参加させられて、今ここにいる。

目が覚めたらいきなりあんな胸糞悪い事が起こるんだもの、人生何が起こるかわからないものね。

 

「あ……」

 

廊下を移動していると、ふと隣の山脇さんの部屋が目に留まった。

もし彼女が生きていたら、泊まるはずだった部屋だ。

私は、申し訳ないと思いながらも、ドアノブに手をかけた。

 

「開いてる…」

 

ゆっくりとドアを開けて、中に入る。

その瞬間、視界に広がったのは、まるでアトリエのような部屋だ。

キャンバスや画材が置かれていて、家具はお菓子の家をイメージしたものになっている。

彼女の趣味だったのか、野鳥のぬいぐるみも置かれていた。

まるで彼女の人生を表現しているかのようだ。

 

「…山脇さん。ごめんなさい。守ってあげられなくて。せめて、安らかに眠ってね」

 

私は、誰にも届くはずのない言葉を呟いて、部屋を後にした。

いつになっても慣れないものね。

大事な人を失うという事は。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ん……」

 

俺は、自室のベッドで目を覚ました。

本がずらりと並んだ、書斎のような部屋。

ベッドは俺が好きな低反発素材の寝具だし、デスクの上の家具も俺が普段よく使っているものだ。

一瞬俺の自宅の部屋かと混乱したが、部屋の内装を見て現実に引き戻された。

 

…そうだ。

俺は、コロシアイ強化合宿に強制参加させられていたんだ。

昨日モノクマが新しい施設を開放したとか言い出して、それで新しい施設に連れて来られたんだ。

この金ピカのホテルに。

 

時間を確認すると、6時50分。

いつもならとっくに起きている時間なのに、疲れが溜まっていたからか、今日は寝覚めが悪かった。

 

「……とりあえず着替えるか」

 

俺は、昨日マーケットで手に入れた歯ブラシと歯磨き粉を使って歯磨きをした。

この粒が粗めのやつが好きなんだよな。

マーケットに置いてあって良かった。

 

歯を磨いた後は、クローゼットを開けた。

クローゼットには、俺が普段着ている服が何着か置かれていた。

俺の好きな歯磨き粉や歯ブラシが置かれていたのはまだわかる。

だが、どうして俺の制服や私服までクローゼットに置いてあるんだ…?

誰かがここに運んできたって事か?

何かますます気味悪いな。

 

そう思いつつも、俺は身支度をして、再び時間を確認した。

7時丁度。

朝食の集まりが7時半だから、今から行けばちょうどいいか。

 

「…そろそろ行くか」

 

俺は、電子生徒手帳を持ってレストランに向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

《ホテル 2F レストラン》

 

俺がレストランに行くと、既に何人か集まっていた。

朝食作りの係の薬師寺、氷川、梶野はもちろん、神風や酒蔵、樺戸、リーゼも来ていた。

樺戸に至っては、朝食が来るのを待ちきれなかったのか冷蔵庫のジュースを開けて飲んでいた。

 

「おはよう…」

 

「おはようございます、東野様。唐突な質問で大変恐縮ですが、本日の朝食は和食と洋食どちらになさいますか?」

 

「あ…と、じゃあ和食で…」

 

「かしこまりました」

 

俺が戸惑いながらも答えると、梶野は頭を下げて再び厨房へ戻っていった。

どっちも用意してくれてるのか…流石梶野だ…。

俺が適当な席を選んで着席してしばらく待っていると、時間丁度に安室と打田が来た。

 

「フッ…時は満ちた…」

 

「あんた朝からそのテンションなわけ?」

 

「俺様はいつも通りだが?それがどうした?」

 

安室が朝っぱらから厨二病全開でレストランに入ってくると、打田が呆れ返る。

何か、この二人が会話してるの初めて見た気がする。

それからしばらくして、酷い格好をした神無月と、眠たげな消灯寺が食堂に入ってくる。

すると神風がキッと二人を睨みつける。

 

「遅刻だぞ、貴様ら……」

 

「ふわぁぁぁ…ごめーん」

 

「ごめん…僕、低血圧で……」

 

神無月は、髪はぐしゃぐしゃで、寝巻らしき和装も脱げかけでほぼ半裸の状態だった。

おいおいおい、何て格好で来てるんだよ!?

ここには男子もいるんだぞ!?

 

「神無月っ!?お前、何て格好してるんだ!?」

 

「えぇ〜?だって、仕方ないじゃん。椛一人じゃお着替えできないんだもん!」

 

いや、仕方なくない!

半裸で食堂に来るなって!!

こいつ、今まで着替えとかどうしてたんだ!?

 

「ぐふふふ…神無月ちゃん、ロリでドSなだけじゃなくて痴女属性もお持ちだったとは…おじさん捗っちゃうy「黙れ貴様ァ!!」

 

酒蔵が何やら気色悪い事を言っていると、安室が鎖で酒蔵を刺して黙らせた。

…うん、これに関しては安室ナイス。

すると、自分が男子にどういう目で見られているのかを察したのか、神無月はいきなり大泣きし始めた。

 

「うわあああん!!椛が一人でお着替えできないのをいい事にジロジロ見るなんて、あんた達サイテー!!」

 

神無月は、泣きながら周りの男子達を責めた。

いや、お前がその格好でここに来たんだろ…?

俺達が困惑していると、薬師寺が神無月に話しかけた。

 

「神無月さん、着替えなら後で私が手伝ってあげる。とりあえず今は上に何か羽織ったら?」

 

「わーい!療香ちゃんは優しいね!」

 

薬師寺が言うと、神無月はケロッといつもの調子に戻った。

…こいつ、もしかして嘘泣きだったのか?

いや、疑うのはよそう。

というか、神無月の着替えは今まで薬師寺が手伝ってたのか。

やっと謎が解けた。

それより問題は、まだここに来ていない六道だ。

え?的凪?

いや、あいつはほら…アレだし。

 

「…来ないな」

 

「全く、何をしているんだ奴は…」

 

「このまま待っていてもご飯が冷めちゃうし、先に食べましょう。六道さんには来た時に用意してあげればいいわ」

 

「それもそうだねぇ」

 

薬師寺の意見に皆が賛成し、ひとまず六道の事は置いておいて先に皆で朝食を食べる事にした。

だが、全員が朝食を食べ終わっても、六道はまだ来ない。

…本当に大丈夫か、あいつ?

 

「な、なぁ…まさかとは思うけど、死んじゃってたり…してないよな?」

 

「ひぃっ!?え、縁起でもない事言わないで下さいよぉ!!」

 

「…いや、それは無いよ。この施設内に六道さんの霊はいないからね。あ、聞かなくてもいい事だと思うけど、的凪くんも無事だよ」

 

マジで聞かなくていい情報だったな…

というか、消灯寺の霊感って、ホテルの中からペンションまで感知できるのか。

だとしたらカバー範囲広すぎじゃね…?

 

そんな事を考えていたわけだが、六道が来ない理由について、俺はある可能性を思い浮かべた。

…あいつの事だから、大いにあり得るな。

 

「………なあ。もしかしてさ。六道の奴…ここに集まるの忘れてるんじゃね?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

俺が言うと、全員が無言で固まる。

どうやら皆も、『六道ならあり得る』と思ったみたいだ。

 

「あー……そういう事か」

 

「六道さんなら…うん、あり得るわね」

 

「だとしたら、電子生徒手帳にメッセージを送信しなかったわたくし達のミスでもありますわね」

 

「全く、普通忘れるか?昨日再三行ったはずなんだが…」

 

神風の言う通り、普通昨日の晩に三回も直接言われてたら忘れない。

それでも忘れるのが六道って事だろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

side R

 

よしっ、三周目クリア。

しっかし、昨日あのクソデカマシーンで手に入れたゲーム、マジでクソゲーだな。

おかげで三回もプレイしちゃったぞ。

ちはるが三週目をクリアしたその時、部屋のインターホンが鳴った。

……出るのめんどい。ねむい。

ちはるがスピーディかつ軽やかに部屋のドアを開けると、廊下にはやくしじが料理を持って立っていた。

 

「………なに」

 

もしかして、ルームサービスってやつですかね。

ごめん、生憎チップは持ってないんだ。

遊●王のカードで許してクレメンス。

 

「いや、『なに』じゃないわよ。あなた、朝食の集まり忘れてたでしょ?」

 

………。

 

……………。

 

……………………。

 

 

 

「…………………あ」

 

…あー、そういえば何か昨日かみかぜが300回くらい言ってた希ガス。

どうりで腹減ったのに飯が出てこないと思った。

 

「……そういえばお腹すいた」

 

「もういいわよ。私達はもう先にご飯食べちゃったから、これ食べ終わったらレストランに食器戻しといてね。それと、次からは忘れないでね」

 

「了解のすけ」

 

さーて、飯食うか。

ちはるはもうがめおべら寸前だからな。

一刻も早くHPを回復させねば。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

side HG

 

朝の報告会を終えた後、俺は昨日と同じようにホテルの探索をした。

探索中にメダルも溜まった事だし、何かに使うか。

俺は、適当に残りのメダルの数が丁度良くなるようにメダルを消費した。

購入したのは、武神のお守りと、玉串だ。

今日は誰と過ごそうかな…。

 

「消灯寺、何をしているんだ?」

 

「霊が好きそうな場所は無いかと思って、良さそうな場所をさがしてるんだ…こんな金ピカな場所じゃ、休まるものも休まらないと思うけど」

 

消灯寺は本当に幽霊が好きだな。

こうして話してみると、何だか消灯寺の話を聞きたくなってきた。

俺は消灯寺と過ごす事にした。

 

「消灯寺、良かったらこれ、いるか?」

 

俺は、さっき買った玉串を消灯寺にプレゼントした。

 

「これを僕に…?……まぁ、ありがとう」

 

消灯寺は、表情はほとんど変わらなかったけど、頬を掻きながら礼を言った。

喜んでくれた…って事でいいのかな?

 

「消灯寺は普段どんな仕事をしてるんだ?心霊学者…っていっても、あんまりピンとこなくて」

 

「そうだね…まあ、そういう人は多いよ。僕は、全国の心霊現象を調べて回っていて、発見した心霊現象の報告資料を作ってるんだよ。まあ、家業は霊媒師だから、普段は家業手伝ってるけどね」

 

「霊媒師の仕事って、やっぱりお客さんは来てくれるのか?」

 

「まあ、毎月ちらほら来てくれるよ。亡くなった人に会いたい、会えなくてもいいからせめて何かを伝えたい…そう思ってる人は今も昔もいるからねぇ。古代のお墓から類人猿の骨が発掘されたって話、知ってるかい?」

 

「え?ああ、そういやネットニュースになってた気が…」

 

「人には太古から、死者を弔う文化があったんだよ。生者に弔ってもらって、思い残す事がなくなった霊は、成仏できるんだ。でも世の中には、そうじゃない霊が大勢いる。生者に対して強い恨みを抱く霊は、成仏できずに悪霊になってしまうんだ。だから僕は、彼らが一人でも多く成仏できるように、全国の心霊現象を調査しているんだよ」

 

そっか…。

消灯寺が全国の心霊現象を調査していたのは、成仏できずにこの世に留まっている霊を成仏させてあげる為だったのか。

聞いた話によると、消灯寺が訪れた心霊スポットでは、それ以降心霊現象が起こらなくなるらしい。

そのせいで消灯寺の調査レポートは信じてもらえずに鼻で笑われる事も多いんだけど、心霊現象がピタリと止んだのは消灯寺のおかげでそこにいた霊が成仏したからだったんだな。

 

「…でも、だったらどうして調査レポートなんて書くんだ?普通に調査して、成仏させてあげればいいだけの話だけじゃないのか?そうすれば、世間から鼻で笑われたりする事もないだろうに…」

 

「あのね、東野くん。霊が心霊現象を起こすのは、生きている人に自分の存在を気付いてもらいたいからなんだよ。だから僕は、彼らが“そこにいた”っていう証を残してあげてるんだ。多くの人は笑うかもしれない。でも、僕の調査を信じてくれた誰かが、その霊の事を覚えてあげられるようにね」

 

なるほど、そういう事だったのか。

確かに、誰にも覚えてもらえずに消えていくっていうのも虚しいもんな。

消灯寺が心霊学者の仕事をしているのは、心霊現象を起こした霊を誰かに覚えてもらう為だったんだな。

 

「そういう仕事柄なのかな、僕は人の命を弄ぶ人や、心霊現象を面白がる人が大嫌いなんだ。このコロシアイだって、反吐が出るよ。あんな風に悪趣味な殺され方をしたんじゃ、成仏できるものもできないよ」

 

俺は、消灯寺の話を聞いて納得した。

消灯寺は、霊に携わる仕事をしているからこそ、誰よりも人の命を重んじる奴なんだ。

 

「なるほどな…。話してくれてありがとな、消灯寺」

 

「僕は、僕の話を真面目に聞いてくれる人なら大歓迎だよ」

 

「…あ、そうそう。そういえば消灯寺って、俗世との関わりを絶った暮らしをしてきたって聞いたんだけど、他の学者と話す時とかどうしてるんだ?」

 

「ああ…そういう時は、通訳をつけてもらってるんだ。外国語どころか、カタカナ語も怪しいからね…」

 

マジか…

消灯寺が俗世間に疎いって話、本当だったんだな。

でもそれだと、仕事の時困らないか?

幽霊だって、色んな国籍があるだろうし。

 

「あはは…でもそれだと、外国人の霊とかはどうするんだ?成仏させようにも会話が成立しないんじゃないか?」

 

「それなら心配ないよ。通訳の人も霊感が強いから」

 

最近の霊媒師って、そういうもんなのか…。

何だか、霊に関する世界にも色々あるんだな。

でも少し消灯寺と仲良くなれた気がする。

 

《消灯寺霊庵との好感度が1アップしました》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「…あ、そろそろ行かないとな」

 

「そうだね…」

 

そういえば、今日は俺達が昼食の当番だった。

自由時間を終えた後、俺と消灯寺は昼食を作りにレストランに向かった。

レストランに行くと、酒蔵が厨房にいた。

俺達が来るなり、酒蔵がニヤニヤ笑いながら話しかけてくる。

 

「ぐふふふ、来てくれて嬉しいよ東野クン、消灯寺クン。早速おじさんといい事をしようか」

 

「今日の昼食は何にしようか」

 

「無視かい!?」

 

うん、大分酒蔵のスルーにも慣れてきた。

今日の昼食は何にしようかな…。

話し合いの結果、今日の夕食は、菜飯、味噌汁、肉じゃが、揚げ出し豆腐の味噌そぼろあんかけに決まった。

 

「肉じゃがの肉はどうしようか?」

 

「え、豚だろ?」

 

「牛だよね……」

 

「「………」」

 

…気まずい。

見事に意見が対立してしまった。

するとすかさず酒蔵が俺達の間に入り、最善の案を出した。

 

「じゃあこうしないかい?二種類作っておいて、皆に好きな方を選んでもらうって事で」

 

「うん…じゃあそうしようか…」

 

そうか、その手があったか。

酒蔵ナイス。

…おい、やめろ。

ニヤニヤするな。

 

俺達は、分担して昼食を作った。

俺の担当は味噌汁作りだ。

三人で協力して食事を作り、集合時間ちょうどには人数分の食事が完成した。

 

俺達が昼食作りを終えた頃、ゾロゾロと他のメンバーがレストランに顔を出す。

相変わらず神風、薬師寺、梶野が早くて、六道が一番遅かった。

昼食を終えた後は、いつも通り報告会をした。

この日も、皆特に収穫は得られなかったようだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

《ホテル 4F トショカン》

 

昼食の後は、再び自由時間になった。

せっかくだし、今日は図書館に寄る事にした。

…しかし、本当に色んな本があるな。

何の本を読もうかな…

 

俺が本を選んでいると、神風が図書館にやって来た。

神風は、資料室で探し物をしていた。

俺は、神風に声をかけた。

 

「神風。探し物か?」

 

「ああ」

 

「手伝おうか?」

 

「いや、いい。この棚の一番上にある本だからな」

 

ああ、そうですか…。

何だろう、何だか悔しい…。

 

俺は、神風と過ごす事にした。

マーケットで買ったお守りをプレゼントしたら喜ぶだろうか?

俺は、武神のお守りを神風にプレゼントした。

 

「これを俺に…?くれるというなら、ありがたく受け取っておこう」

 

どうやら喜んでくれたようだ。

俺は、神風と話をして過ごした。

神風は、急ぎの用ではなかったようで、目当ての資料を手に入れると俺の話に付き合ってくれた。

 

「神風はどうして旭の司令官になったんだ?」

 

「どうして…か。考えた事もなかったな。俺の場合は、ならざるを得なかったからな」

 

「どういう意味だ?」

 

「俺は、孤児だったんだ。生まれてすぐに旭の養成施設に送られて、そこで幼少期を過ごした。旭では、行く宛のない子供を引き取って、模範国民として育てるんだ。要は孤児院のようなものだな。そこで過ごした者のうち、入学試験に合格した者のみが士官学校に進学し、他の者は高校に進学するか就職するかを選択するんだ。もちろん外部から入学した者もいるが、ほとんどが養成施設出身だ。俺の場合は、同期の中では一番成績が良かったから、教官の推薦で半ば強制的に士官学校に入れられたというわけだ」

 

強制的にって…

それって、自分の意思で進路を決めたわけじゃないって事だよな…?

それに模範国民って…小さい頃から英才教育を受けてきたって事か?

 

「自分の意思で進学したわけじゃないって事か…?しかも、模範国民として育てられたって…神風は、それでつらいとは思わなかったのか?」

 

「思わなかった。それ以外に生きる道が無かったからな。元々何もない孤児が、己の役割を与えられたんだ。むしろ、俺を推薦してくれた教官には感謝してもしきれないよ。少なくとも、国の矛となり盾となる事は、俺自身の意思で決めた事だ。それに今は、療香がいる。それ以上に何を望む事がある?…尤も、それも洗脳だと思う奴もいるだろうがな」

 

神風の話を聞いて、少し安心した。

もちろん、自分の思い通りにいかずにつらい思いをした事もあったと思う。

それを察せない程、俺も馬鹿じゃない。

神風は俺の手前、つらかった事を話さなかっただけだ。

それでも、神風の人生に光があったと知って、思わず安堵のため息を漏らした。

 

「神風は普段どんな仕事をしているんだ?ああ、もちろん、国家機密に関わる事は話さなくていいけど」

 

「…そうだな。恐らく、お前達が想像しているような仕事とは少し違う…と言っておくか」

 

「というと?」

 

「軍人といえど、あくまで自衛の為の組織だからな。何も毎日戦争をしているわけではない。普段は領海の見回りが主な職務だ。必要であれば本土や領海での救助活動、侵略者の撃退、同盟国の援護などもするが…警察や自衛隊が有事の際に動く組織であれば、我々は有事の前に動く組織、といったところだな。日本への危機を誰よりも早く察知し、直ちに解決の為に動くのが我々旭だ」

 

なるほどな。

普段はパトロールをしている部隊で、日本への侵略を企んでいる奴等が近づいてきたら軍隊として機能する組織って事か。

教科書とかの知識で概要を知ってはいたけど、やっぱり本職の話は違うな。

 

「なるほどな…なあ、ところで話は変わるけど…プライベートの話って、聞いてもいいのかな?」

 

「ああ…プライベートか…あまり深く気にした事はなかったが…強いて言うなら、天体観測が趣味だな。もしここから出られたら、その時は療香と共に星が見たい」

 

「星か…いいな。絶対、ここから出ような」

 

「ああ。元よりそのつもりだ」

 

俺が言うと、神風はフッと笑って頷いた。

…何だろう、神風が笑った顔って初めて見た気がする。

どうやら、神風と仲良くなれたみたいだ。

 

《神風大和との好感度が1アップしました》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

神風と話した後、俺は資料室で読みたい本を探した。

ん…?

希望ヶ峰学園76期入学生名簿…?

76期って…俺らの事だよな。

どうしてこんな場所に希望ヶ峰学園の名簿があるんだ…?

まあでも、モノクマも調べるのは自由っていってたし、調べてみるか。

俺は、名簿を確認した。

 

最初のページは、安室のプロフィールだ。

安室の顔写真と一緒に、本名や才能、出席番号、出身地、出身校、現住所、緊急連絡先なんかが細かく書かれている。

その他にも、性別、生年月日、身長や体重、血液型なんかが書かれていた。

裏は、才能の概要や授業の成績などが書かれた欄になっている。

重要な個人情報に関する欄は、マーカーか何かで黒く塗り潰されてるが…。

 

ページを捲ると、暗野のプロフィールがファイリングされていた。

暗野の才能の欄には、【超高校級のヒットマン】としっかり記載されていた。

これが本当に希望ヶ峰学園の名簿なら、モノクマや的凪が言ってた事は本当だったって事か…。

 

そのまま、ページをパラパラと捲っていく。

すると、打田のページの次のページに、気になるページがあった。

そこには、『【超高校級の勝負師】梶野宿命』と書かれたプロフィールがファイリングされていた。

梶野…宿命…?

あ、宿命って書いてカルマって読むのね。

すごい名前だな…。

プロフィールの紙に印刷された顔写真は、眼鏡の有無や前髪の分け方以外は梶野とそっくりだった。

同一人物がファッションを変えただけにしか見えないし、これで別人と言われても初見じゃ信じられないだろう。

それに、梶野とはほとんどのプロフィールの項目が一致している。

そういえば、双子の弟がいるって言ってたっけ。

梶野の弟も、俺達のクラスメイトとして希望ヶ峰学園に入学するはずだったのかな。

 

その後も、パラパラとページをめくっていく。

だが、もう一つ気になる事があった。

プロフィールは、1()8()()()()()()()()

梶野の弟の分も含めて、だ。

そこには、殉前のプロフィールだけが無かった。

ページが破れたのかな…?

いや、でも破れた跡なんてどこにもないし…

それに、このホテルには殉前の部屋だけが無かった。

一体、どういう事なんだ…?

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後も、図書館で調べ物をして、時間が丁度良くなったのでレストランに向かった。

今回は、リーゼ、氷川、梶野が夕食作りをしてくれた。

ちなみに梶野とリーゼは、昼食の後、的凪の分の食事を運びがてら様子を見に行っていたらしい。

的凪は、相変わらず憎まれ口を叩いていたようだ。

…まあ、憎まれ口を叩く元気はあるみたいで良かった…のか?

 

今日の夕食は、オムライスとコンソメスープとサラダだった。

ちなみにオムライスはただのオムライスではなく、デミグラスソースのかかったドレスドオムライスだ。

氷川達が作ってくれた料理は、どれも美味しかった。

サラダまで美味しいとは…流石【超高校級のグラシエール】だ…。

 

夕食が終わった後は、報告会をした。

今回も、俺が見つけた生徒名簿以外の収穫は何も無かった。

二日も捜査をしていて手掛かりが見つからないとはな…。

 

「…さて。今日の報告会はこの辺でお開きにするか」

 

「あ、じゃあ俺行ってくる」

 

「フッ…では俺様も行くとするか」

 

そう言って俺と安室は、的凪の拘束されている部屋に食事を運びに行った。

あれから、的凪の生存確認をしに行くのは、一日五回、二人ずつ交代制になった。

六道は当然行かせないものとして、打田と神無月も的凪の生存確認を嫌がったので、この三人以外でローテーションで様子を見に行っていた。

この生存確認は、的凪の食事や排泄の世話も兼ねていた。

流石に垂れ流しにするのもアレなので、俺達が世話をしているというわけだ。

まあ、俺達が来るまではトイレを我慢しなきゃいけない上に、他人にトイレを手伝わせるという屈辱を味わわせているわけだが、その辺はあいつ自身の自業自得と思う他ないだろう。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

《ペンション ダンシトウ 2F》

 

《ナイトウ ノ キャクシツ》

 

俺と安室は、的凪を拘束している客室に食事を運んだわけだが…。

 

「アハハ、ねえ千春ちゃん。今度は東野くんと安室さんが来てくれたよ」

 

「ヒッ!?」

 

…いかん、つい悲鳴を上げてしまった。

おまけに、せっかく氷川達が作ってくれた料理を落としそうになってしまった。

こいつ…幻覚を見てる…だと…!?

六道と隔離されてとうとう気がおかしくなったか…?

 

「なあ、的凪…お前、大丈夫か?その…色んな意味で」

 

「え?何が?僕は絶好調だよ?千春ちゃん達に囲まれて、とっても幸せだよぉ」

 

一人じゃない、だと…!?

ダメだ、こいつ重症だ。

こうなったらもう、【超高校級の軍医】の薬師寺でも完治は不可能だろう。

コレのどこが平均的な高校生なんだよ…。

 

「なっ…!?おい東野、このダンジョン、強烈な瘴気を感じるぞ!?禍々しく毒々しい瘴気がそこまで…」

 

ごめん、何言ってんのかわかんない。

 

「ひどいなぁ、たった丸二日風呂に入れなかったくらいで大袈裟だよ」

 

安室が後退りしながら鼻をつまんでいると、的凪が元気なく笑った。

……あっ、もしかしてさっきのって臭いって言ってたのか?

いや、確かに、ここにずっと閉じ込めてたから風呂に入れなかったのは事実だけど…そこまで大袈裟に言うほどか?

…ひょっとして安室って、潔癖のきらいがあったりするのか?

 

「ボク、そんなに臭わないと思うけどなぁ。千春ちゃんもそう言ってるよ。ほら」

 

「ギャアアアアッ!!寄るな!!そんなに俺様の漆黒焔獄鎖(ダークネス・ヘルチェイン)の餌食になりたいか!?」

 

「もうやめろ的凪。マジで」

 

自分を嫌がる安室を、的凪が面白がって揶揄ってきたので、流石にそれは俺がやめさせた。

もう今更すぎるけど、的凪ってすげえ性格悪くないか…?

 

夕食を届け終わった後は、風呂に入って自分の部屋に戻った。

図書館で借りた本を読んでいるうちに眠くなったので、そのまま自室のベッドで眠りについた。

今日も、名簿を見つけた事と、的凪がおかしくなっていた以外の変化は無く、強化合宿も三日目を終えた。

 

 

 


 

 

 

〜モノクマ劇場〜

 

『うぷぷ、妹よ』

 

『なあにお兄ちゃん?』

 

『パンダの白い毛って、実は白じゃないって知ってた?』

 

『え、そうなの?』

 

『パンダの白い毛は、実は透明なんだよ。毛が吸収した光を反射させてるから、白く見えるんだって』

 

『へ〜、じゃあお兄ちゃんの左半分も本当は透明なの?』

 

『ボクはパンダじゃないクマーっ!!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生存メンバー ーーー

 

【超高校級の小説家】東野(ヒガシノ)(ジュン)

 

【超高校級の司令官】神風(カミカゼ)大和(ヤマト)

 

【超高校級の軍医】薬師寺(ヤクシジ)療香(リョウカ)

 

【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン

 

【超高校級の原型師】安室(アムロ)明日奈(アスナ)

 

【超高校級の心霊学者】消灯寺(ショウトウジ)霊庵(レイアン)

 

【超高校級のディーラー】梶野(カジノ)運命(サダメ)

 

【超高校級のカルタ師】神無月(カンナヅキ)(モミジ)

 

【超高校級のグラシエール】氷川(ヒカワ)みるく

 

【超高校級のソムリエ】酒蔵(サカグラ)飛露喜(ヒロキ)

 

【超高校級のカバディ選手】樺戸(カバド)ラムジ

 

【超高校級の狙撃手】打田(ウチダ)清美(キヨミ)

 

【超高校級の幸運】的凪(マトナギ)(コズエ)

 

【超高校級のゲームプログラマー】六道(ロクドウ)千春(チハル)

 

ノコリ14人

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のギャル】殉前(ジュンマエ)詩乃子(シノコ) Prologue 見せしめ

 

【超高校級のプロレスラー】内闘(ナイトウ)力也(リキヤ) Chapter.1 シロ

 

【超高校級の絵本作家】山脇(ヤマワキ)ゆか Chapter.1 シロ

 

【超高校級のヒットマン】暗野(アンノ)斬良(キラ) Chapter.1 クロ

 

以上4人

 

 

 

 

 

推しがいたら教えてくんなまし

  • 東野潤_小説家
  • 暗野斬良_???
  • 殉前詩乃子_ギャル
  • 神風大和_司令官
  • 薬師寺療香_軍医
  • リーゼロッテ_オルガニスト
  • 安室明日奈_原型師
  • 消灯寺霊庵_心霊学者
  • 山脇ゆか_絵本作家
  • 梶野運命_ディーラー
  • 神無月椛_カルタ師
  • 氷川みるく_グラシエール
  • 酒蔵飛露喜_ソムリエ
  • 樺戸ラムジ_カバディ選手
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