インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
「ん………」
俺は、自室のベッドで目を覚ました。
…ここに来てもう4日目か。
この部屋にももう慣れてきたな。
時計を確認すると、時刻は5時40分。
今日は俺が朝食作りの当番だったよな。
俺は、眠い目を擦りながらも厨房に向かった。
◇◇◇
「おはよう…」
「おはようございます、東野様」
「やあ、おはよう東野クン。今日はぐっすり眠れたかい?」
俺が厨房に行くと、梶野と酒蔵が声をかけてきた。
「ん…ああ」
俺は、あくびをしながらも二人の朝食作りを手伝った。
酒蔵は主に和食を、梶野は主に洋食を作るみたいだ。
俺は簡単にささっと作れそうなものを、和食と洋食両方作った。
今日は、和食がご飯と味噌汁、鯵の開き、きんぴらごぼう、温泉卵。
洋食がクロックマダム、ポタージュ、サラダ、キャロットラペだ。
…よし、できた。
「おはよう」
俺達が朝食の準備をしていると、神風と氷川が来て、朝食の準備を手伝ってくれた。
しばらくしてリーゼと樺戸が、そして薬師寺と神無月が来た。
「きゃはは、皆おはよー!」
「おはよう、皆」
神無月は、今日は遅れずにちゃんと来たみたいだ。
薬師寺が着付けを手伝ったからかな。
そして時間通りに打田、安室、消灯寺が来た。
昨日は遅れて来た消灯寺も、今日は時間通りに来た。
…そして案の定と言うべきか…六道は今日も遅刻した。
まあ、10分遅れで済んだだけマシ…なのか?
「…貴様、時間通りに来いと言ったはずだが」
「ごめん、寝過ごした……ぐぅ」
いや、反省したなら寝るなよ。
本当に、こんな状況でもこいつは相変わらずだな…。
全員で朝食を食べた後は、今日の係が的凪に朝食を届けに行った後、報告会を開いた。
「ここでの生活も板についてきましたね」
「僕はいまだに落ち着かないんだけど……」
梶野はすっかりここでの暮らしにも慣れたようだが、消灯寺はまだ落ち着かないようだ。
俺は……だいぶ慣れはしたが、まだ落ち着かない部分はある。
俺が紅茶のカップを見つめながら考えていると、唐突に神風が口を開く。
「……妙だ」
「妙って、何がだ?ヤマト」
「俺の制服には通信機器がついている。この通信機器にはGPSが内蔵されているから、俺の部下が探せないはずがないんだ。俺を探し出すのに三日以上かかったのはこれが初めてだ」
そう言って神風が見せたのは、袖に付いているバッジだった。
するとその時、奴等がどこからか現れた。
『うぷぷぷ、な〜にをそんなオモチャをアテにしてるんですかね!』
『キャハハハ!そんなもの頼りにしたってしょうがないのにね!』
「ひっ………!」
「食堂で汚物を晒すな…!」
モノクマとモノルナが現れると、氷川が顔を真っ青にし、安室が殺気を剥き出しにしながら鎖の先の刃物の鋒を向けた。
うん、気持ちはわかるけど落ち着け安室。
『あれれ?その態度は何ですか?せっかくオマエラの為にプレゼントを持ってきたのに?』
「あんたらのプレゼントなんかどうせクソみたいなものなんでしょ!!あたい知ってるんだから!!」
『ムキーッ!!クソとは何だクソとは!!完璧でカワイイモノクマがクソをプレゼントするわけないだろーっ!!』
いや、ロクなものを持ってきてくれた試しがないだろ。
もう呆れてツッコむ気力すら起きない。
「で、何の用?さっさと用件済ませて消えてほしいんだけど」
『オマエラ、もう最初の殺人から3日目だよ?まだコロシアイしないの?』
「お前らが何を言おうと、俺達はもうコロシアイをしない」
『ふーん、あっそ。まあでも1日2日で4人も死なせるなんて偉業を成し遂げたのは、アンタ達が最初で最後だと思うけどね!ゲラゲラゲラ!』
「っ………!!」
こいつら…どこまで死んだあいつらの事を弄べば気が済むんだ…!!
『でも暗野クンのおしおきを最後に誰もコロシアイしてくれなくなっちゃったし、いい加減誰か死ねよって圧を感じるので、オマエラに頑張ってコロシアイしてもらえるような動機を持ってまいりました!』
「動機だと…!?」
『ジャジャーン!動機ビデオ〜!』
そう言ってモノクマが取り出したのは、俺達の名前が書かれたビデオテープのケースだった。
モノクマとモノルナは、テーブルの上に的凪を除いた13人分のビデオテープをばら撒いた。
『ちゃんと自分の名前が書かれたテープを取って下さいね!ここにはいない梢クンの分は後で配ってあげるけど!そのビデオは部屋のテレビで見られるよ!あ、言っとくけど見ないのはナシだからね?』
モノルナが脅すと、俺達はそれぞれビデオを持っていった。
するとモノクマが思い出したように口を開いた。
『あ、そうそう。あともう一つプレゼントがあります!』
「今度は何ですの…?」
『ジャジャーン!暗視スカウター!』
そう言ってモノクマが取り出したのは、サングラスのような機械だった。
何だアレは……?
「暗視スカウター?」
『簡単に言うと、暗視ゴーグルのスカウター版です!これを使うと暗いところでもハッキリものが見えます!』
「おい。戦闘力は見えないのか。そこ一番大事なとこだろうがよ」
いや、六道。
それ今一番どうでもいい事だから。
『このホテルのどこかに隠しておくので、是非コロシアイに活用して下さいね!それじゃ〜ね!』
そう言ってモノクマとモノルナは、どこかへ消えていった。
残ったのは、13個のビデオだけだった。
すると氷川が、ビデオを手に持ちながら恐る恐る口を開いた。
「あの…これ、見るしかないんですよね……?」
「そんなの聞くまでもないでしょ?」
氷川が尋ねると、打田が呆れたように口を開いた。
でもこれ、どうしたらいいんだ…?
モノクマやモノルナの事だから、何かビデオに仕掛けをしている気がしてならない。
上手く言えないけど、何だか嫌な予感がする。
俺が不安を募らせていると、神風が口を開き、全員にハッキリと聞こえる声で言った。
「…よし。ではこうしよう。今から一斉にビデオを見て、見終わった奴からここに来るように」
「そうね。それと、念の為ボディチェックもしましょう。彼等の事だから、私達に変な気を起こさせるようなビデオを見せるくらい平気でしてきそうだしね。最初に見終わった二人はお互いにチェックをして、それ以降の人達はチェックを受けてからここに入る、でいいかしら?」
「…ああ、問題ない」
神風と薬師寺は、コロシアイを避ける為の案を出した。
…この二人は凄いな。
こんな状況でも冷静に考えられて。
俺は…そんな風にはなれない。
◇◇◇
食堂で別れた俺達は、そのまま自分のビデオを持って部屋に戻った。
…どうしても見なきゃいけないんだよな。
………よし、見るぞ。
俺は、何回か深呼吸をしてから、ビデオをデッキにセットした。
テレビの電源をつけてしばらく待っていると映像が始まる。
ーーー
『よし、ちゃんと映ってるよね。お兄ちゃ〜ん!元気にしてる?』
……え?
みゆき……?
何で、俺の妹がビデオに映ってるんだ…?
ビデオに映ってるのは…みゆきの学校の寮…だよな…?
『私はねぇ、元気にやってるよ!何だか寮に入ってからストレスが無くなって毎日楽しいの!お兄ちゃんに会えないのは寂しいけど……』
「みゆき……」
俺は、映像の中で元気に笑っている妹の顔を見て、安心した。
正直、何で妹がビデオに映ってるんだとか、俺の今の状況を知ってるのかどうかとか、疑問は色々あった。
それでも、あいつが今幸せなら、それだけで俺にとっては十分救いだ。
俺はあいつに兄貴らしい事は何もしてやれなかったから…
『もう友達できた?あ、そうだ!今度の夏休み、帰って来れるよね?友達紹介してよ!私ッ、tttttあのsssssssミニ、しttttル、か……rrrrrrrrr…………』
ん…?
何だ?
映像が乱れて…
――ザッ……
――ザザッ……
――ザーーーーーーー…………
「っ………!?」
砂嵐が晴れた。
だけどそこにあったのは、さっきまでとはまるで違う光景だった。
映っていたのは、血まみれの部屋で、さっきまでいた妹の姿はどこにもない。
「み……ゆき………?」
何だこれ…?
何でみゆきの部屋が血まみれになってるんだよ!?
みゆきはどうなったんだ…!?
「っ……!!」
次の瞬間、ビデオに映ったのは、血塗れで倒れているみゆきのクラスメイトの女子達だった。
皆瞳孔が開き切っていて、表情に生気が感じられない。
………死体だ。
何で…?
何で、みゆきの友達が死んでるんだ…?
何で、何で、何で…!?
みゆきは、無事だよな…!?
「っ…」
いない。
映像のどこを探しても、みゆきはいない。
良かった、みゆきは無ーーーー…
「 」
その瞬間、画面の端に髪飾りが映った。
見逃がすはずがない。
俺が誕生日にプレゼントした髪飾りだ。
『はいはーい、映像はここでおしまいでーす!続きが知りたいですか?このビデオの続きは、卒業して自分の目で確かめてくださいね!』
ーーー
「………………」
何だよこれ…?
作り物…だよな……?
そうだ、このビデオに何一つ信憑性なんて無い。
これは、モノクマが俺達に殺人をさせる為に捏造した悪趣味なビデオだ。
みゆきも、あいつの友達も、本当は今頃普通に学校で過ごしてて…
絶対そうに決まってる。
…でも、だけど。
もし、これが本物だったら…?
もし、本当にみゆきの友達が皆殺しにされて、あいつ自身にも危険が及んでいるとしたら…?
あのビデオには、みゆきの姿は映ってなかった。
まだ生きてるかもしれない。
今頃、殺されまいと必死に逃げているかもしれない。
今帰れば、まだ手が届くかもしれない。
………待て。
このビデオが本物だって証拠はどこにもない。
それなのに俺は今…
誰かを殺そうと考えたのか…?
「っっっっっ………クソッ!!!」
俺は、感情に任せてビデオテープのケースを床に投げつけた。
クソッ、クソックソッ…!!
俺にどうしろっていうんだよ!?
「……………クソ…!」
………やっぱり嫌だ。
みゆきが…あいつが死ぬの
俺は、物心ついた時から母親に才能を搾取されて生きてきた。
母親は文豪界隈では名の通る有名人で、俺と同じ才能でスカウトされた、希望ヶ峰学園の卒業生だった。
名家といっても今では名ばかりの貧乏貴族だったのに、文豪として名を馳せてたった一代で巨万の富を築き上げた凄い人だが、俺はどうしてもあの人の事だけは好きになれなかった。
あの人は、俺を自分の後釜として希望ヶ峰学園に入学させる為に虐待紛いの指導をしてきた。
すごく世間体を気にする人だから、自分の才能を引き継いだ俺が希望ヶ峰学園に入学しなきゃ気が済まなかったんだ。
あの人の納得のいく作品を書かなければ何度もハンガーで殴られる、ベランダに放り出されるなんて事は当たり前だった。
父親は気の弱い人だから、いつも見て見ぬふりで、俺を助けてくれた事はなかった。
でもみゆきだけは違った。
あいつは、母親にいじめられてた俺を何度も庇ってくれた。
家の中では、みゆきだけが味方だったんだ。
母親の呪縛から逃げたくて、死のうとした事は何度もあった。
でも、死ねなかった。
俺が死んだら、みゆきがあの最低な母親のもとに一人遺されてしまう。
それが一番怖かった。
小学校で友達ができるまで、俺にとっては、みゆきだけが生きる理由だった。
あいつがいてくれたから、俺は今日まで生きられた。
あいつが俺より先に死ぬなんて、そんな事、絶対あっちゃいけないんだ。
「みゆき……」
俺は、ミニキッチンからあるものを取り出して、レストランに向かった。
もう、こうするしかないんだ……
◇◇◇
《ホテル 2F レストラン》
俺がレストランに行くと、先客がいた。
六道だ。
六道は、自分の席に座ってゲームをしていた。
俺がレストランに入ると、六道が顔を上げて、一瞬目が合ったかと思うと、すぐにゲーム画面に視線を移してゲームを続けた。
「六道…お前もしかして、ずっと一人でここにいたのか?」
「うん。ボクのビデオくっそ短かったから」
「そっか……」
…六道は相変わらずだな。
こんな状況でもゲームか…。
俺もそれくらい図太く生きられたらどんなに良かったか。
「……………あ」
六道は、ゲームをセーブしてから、思い出したように席から立ち上がった。
「おい。壁に手をつけ。まさぐるぞ」
言い方………。
俺が六道の誤解を招きかねない言い方に呆れていると、六道の指先が俺のシャツのポケットに触れた。
「……ん、おい。何だこれは」
……あぁ、やっぱり見つかるよな。
まあ別に疚しい事があるわけじゃないし…こいつになら話してもいいか。
「…………精神安定剤」
「は?」
「…俺、こういう仕事柄ストレスかかる事多いから、よく飲むんだよ。あんなビデオ見せられた後だし、変な気起こしそうで怖くてさ…」
「………ふーん、ならいいけど」
別に何も疚しい事は無い…はずなのに、六道のボディチェックが終わって安堵している自分がいた。
俺は、部屋のミニキッチンから取ってきた水で精神安定剤を飲んでから、六道に話しかけた。
…あんなの、俺一人じゃ抱え切れない。
今は誰でもいいから、誰かに聞いてもらいたい。
「…なあ」
「何?」
「あんなの見せられた後だと、ちょっと俺の頭じゃ整理し切れなくて…話させてくれるか?」
「………なうろーでぃんぐ」
六道は、ゲームをしながら答えた。
…話していい、って事だよな?
俺は、六道にさっき見た映像の事を全部話した。
「………ぐぅ」
「人が話してるのに寝るなよお前…」
「だってちはるの役に立つ話じゃなかったし…あ、最初から話し直さなくていいよ。寝ながら聞いてたから」
こいつ……
「…お前はよく普段通りでいられるよな。お前も動機ビデオ見たんだろ?何か精神的に追い詰められるようなものは見なかったのか?」
「別に何も。モノクマもちはる様のSAN値を削るような超弩級のビデオは用意できなかったようだな。……で?」
「え?」
「おまえはそのビデオを本気にしてるのか?」
「それは……」
本気にしてない、と言ったら嘘になる。
そりゃあ、あんなもの信じたくない。
でも、あんなもの見せられたら、どうしても『もしかしたら』って考えちまう。
『本気にしてる』って言ったら、こいつは笑うかな。
「まあ別にちはるも100パー嘘とは言えないし、信じるなら勝手にすれば?って思ってるよ。でも仮にビデオが本物だったとして、おまえの妹を救えるって保証はどこにある?殺人をした後で、実はとっくに死んでました、なんてオチかもしれないだろ」
「っ………でも…」
「断言しとく。おまえがここで人を殺して裁判に勝ったところで、おまえに妹は助けられない」
「お前……っ!!」
「今すぐここから出たところで、おまえにできる事は何もない。じゃあやる事はひとつしかない、違う?」
六道の言葉を聞いた途端、俺は自分でも驚くほど冷静になった。
…そう、だよな。
俺がここで行動を起こしたところで、俺に出来る事なんて何もない。
あんな映像嘘に決まってるし、もしあの映像が万が一本当だとしても、俺が動くまでもなく警察や救助隊が動いてくれるはずだ。
「……ありがとう。お前のおかげで少し頭が冷えた。このまま一人で抱えてたら、取り返しのつかない事をするところだった」
「あっ、でっかくなるキノコゲット」
…六道は本当にいつも通りだな。
でも、こいつを見て安心した。
そうだ、俺が真に受け過ぎてただけなんだ。
少し頭を冷やそう。
◇◇◇
その後、他の皆も映像を見終わってレストランに集まっていた。
反応は様々だった。
神風、薬師寺、梶野、打田はいつも通りだった。
でも樺戸や氷川は、俺達の説得を受けるまで動機映像を本気で信じていたらしく、怒りを抱いたり泣いたりしていた。
「クソッ、モノクマの奴……!」
「ひっぐ、うぅっ、ぇぐっ…」
「何泣いてんだよ!!あんな映像本気にするとかバッカじゃない!?」
「ちょっと、神無月さん。氷川さん、大丈夫よ」
映像を真に受けて泣いている氷川を神無月が責めていると、薬師寺が氷川の背中を撫でて落ち着かせた。
「薄汚い食肉類め…余程奈落の底に封印されたいらしいな……!」
安室も、平静を装っているが見るからに顔色が悪くなっていて、モノクマに怒りを抱いていた。
一方でリーゼは、顔色を悪くしつつも消灯寺に話しかけていた。
「あの…消灯寺さんのお力なら、映像の真偽を確認する事はできませんの?」
「無理。二、三里の範囲内でしか霊を探知した事ないから。つーかこれが限界」
「ですわよね……」
「二、三里でも十分凄い気がしますが…」
「馬鹿馬鹿しい…」
消灯寺の発言に対して梶野がツッコミを入れると、打田がそのやりとりに呆れた。
神風は、動機映像を見て取り乱している様子の皆を見て、はぁっとため息をつく。
「…参ったな。探索を…などという空気ではないな」
神風がどうしようかと考えていた、その時だった。
突然酒蔵が口を開く。
「じゃあよ、パーティーなんてどうだい?」
「何?」
「はぁ!?こんな状況でパーティーとか、あんたバカなの!?このスカタンが!!」
「あひんっ、いい蹴りっ!!」
うわぁ、痛そう……
そして酒蔵、お前もお前だよ。
なんでお前四つん這いになって尻蹴られる準備してんの…?
「ほ、ほら、こんな事があって皆気が滅入ってると思うしよ。こんな状況だからこそ、パーティーでもして士気を上げるべきなんじゃないのかい?せっかくパーティー会場もあるし。どう思うかな、神風クン」
「…うむ、一理あるな」
酒蔵がもっともらしい事を言うと、神風が考え込む。
だが神無月は、二人の意見に納得していなかった。
「はぁ!?ちょっ、何勝手に決めてんだよ!?もし殺人を企んでる奴がいたらどうすんの!?パーティーで浮かれてる奴なんて格好の的じゃない!!」
「お前は先程氷川に『あんな映像を本気にしてるのか』と言っていたのに、殺人が起こると思っているのか?」
「ぅぐ……!」
「安心しろ、万が一にも殺人が起きないよう対策はする。お前達はもう誰一人コロシアイで死なせない」
「っ……ふんっ、じゃあ勝手にすれば!?」
神風が言うと、神無月はそれ以上反対しなかった。
これは完全に論破されたな…
すると、パーティーと聞いてか、先程まで暗い顔をしていた樺戸がパァッと明るい表情を浮かべた。
「っしゃあ、そうと決まれば、パーティーの準備しなきゃだよな!」
◇◇◇
こうして、俺達はそれぞれの担当に分かれてパーティーの準備を始めた。
俺、薬師寺、梶野、酒蔵、氷川が調理担当。
安室、神無月、樺戸、リーゼ、六道が装飾・余興担当。
神風、消灯寺、打田が見張り担当だ。
全員ボディチェックをし、パーティーの準備を始める。
「あっ、待って東野くん。それは別にしてもらえるかしら」
「え、いいけど…何で?」
「大和が桃アレルギーなの。万が一の事もあるから、大和のは別にしておいて」
「あ、うん、わかった」
そっか…神風にも食べられないものがあったんだな。
じゃあ神風のは別にしておかなきゃな。
俺が前菜を作ってると、樺戸がひょこっと現れて覗き込んできた。
「うわぁあ〜美味そ〜…!なあこれ、まだ食っちゃダメなのか?」
「樺戸様、開宴時刻はまだ1時間先ですよ」
「いやぁ、それはわかってんだけどよ。ほら、最初にちょこっとだけ食う料理あるだろ?」
「オードブルの事かい?」
「そうそれ!オードブルを今食って、メシはパーティーで食うってのはアリか?」
「ナシよ!」
樺戸がつまみ食いしようとすると、薬師寺に怒られた。
樺戸、いくらなんでも食い意地張りすぎだろ…
一方で、氷川がケーキを作っていると、神無月がひょこっと現れて覗き込んでくる。
氷川のケーキは、美しい飴細工とジェラートでデコレーションされたアイスケーキだ。
「きゃははは!みるくちゃんのケーキかわいい〜!みるくちゃんはお菓子作りだけが取り柄のクソデカメスゴリラだもんねぇ!」
「ひっ、ひぃっ、すみません…!」
神無月が氷川を揶揄っていると、氷川がビクッと肩を跳ね上がらせた。
すると薬師寺が神無月を止めに入る。
「神無月さん、氷川さんをいじめないの。あと、あなたと樺戸くんは装飾担当でしょ?自分の持ち場に戻りなさい」
「ぶぅー、言われなくてもわかってますー!」
薬師寺が注意すると、神無月は走って自分の持ち場に戻っていった。
装飾係は、既にパーティー会場の装飾を始めているようだった。
美術系才能の安室が監修をしている事もあって、会場の装飾は豪華絢爛で、まさにこのパーティーの雰囲気に相応しい装飾だった。
「安室さん、お花はここでよろしいんですの?」
「フッ…貴様、中々良い腕前をしているな。盟友よ」
「あむろ…後で皆でやると思って、ゲーム色々持ってきた」
「ほう…!」
デカ…!!
おい、六道。
そのゲーム機、どうやってここに持ってきたんだ?
一方で、神風は、皆から没収した危険物を収納したジュラルミンケースを部屋の端に置いて警戒態勢を万全にしていた。
「よし。危険物は大方このケースに入れておいた。流石に調理器具までは収納できなかったがな」
「…ねえ、いい加減あたしの銃返してくんない?」
「僕の剃刀も返してよ。あれ、降霊術の儀式に必要なんだけど…」
「駄目だ。万が一の事があるかもしれないだろ」
いや…打田、消灯寺。
確かに神風の携帯態勢は若干神経質すぎる気もするし、気持ちはわからんでもないが、そんなものパーティー会場に持ってくるなよ。
◇◇◇
2時間ほどで準備が終わり、始まったパーティー。
食事は、和食に洋食、中華など、豪華な食事がたくさん並んだ。
俺の好きなカツ丼もある。
飲み物も、六道達が持ってきたジュース類が並んでいた。
リンゴ、ブドウ、モモ、オレンジ、烏龍茶、緑茶だ。
「へえ、じゃあリーゼちゃんはピアノをやってくれるのかい?」
「はい!舞台裏にピアノがありましたので、後で演奏しようかと!」
「それはいいわね」
リーゼはピアノを弾いてくれるのか。
オルガニストだから、ピアノも上手いんだろうな。
楽しみだな。
「んめぇ〜!!どれもうめえな!!」
「ぐぅ……もぐ、ぐぅ…もぐ………ぐぅ………」
樺戸と六道は、さっきから食ってばっかだ。
特に六道に至っては、寝て食いながらゲームしてる。
…忙しないな、どれか一つにしろよ。
「運命ちゃん!後で花札やろーよ!あたい花札持ってきたんだ!」
「ええ、是非」
「大和ちゃん!このお茶変な味するからあげるー!」
「ジュースを飲んだコップに入れるからだろう…」
俺達は、それぞれパーティーを楽しんでいた。
だが、その瞬間だった。
バツンッ!!
「!?」
突然、パーティー会場が真っ暗になった。
至る所から、皆の騒ぐ声が聞こえてくる。
「キャアアアアアアアアッ!!?」
「て、停電!?」
「ぐへへへセクハラチャンs…「黙れ!!」ぎゃああ!!目が!!目があああ!!」
「痛いっ、足踏まないでよ!!」
「皆、落ち着いて!きっとブレーカーが落ちただけよ!」
皆が混乱して騒いでいると、今度はピアノの演奏が大音量で聴こえてきた。
この曲…確かショパンの『華麗なる大円舞曲』だよな…?
って、今はそんな事どうでもいい!
何でこのタイミングでピアノが!?
「ヒィイイイイッ!!?」
「こ、今度は何だぁ!?」
「ぐへへへ若い子達の黄色い声は最高のスパイs…ぎゃあああ!!耳があああ!!」
「っ…!リーゼロッテさん、舞台裏にピアノがあるって言ったわよね!?確認してきてもらえる!?」
「わ、わかりましたわ!」
混乱が混乱を呼んで、至る所でドタドタと足音がする。
どれくらいの時間が経っただろうか。
体感時間では30分くらい経った気がする。
そんな中、30分間ずっと動じていない奴がいた。
「あ。金のリンゴゲットした」
「だからどうしたのよ!?こんな時にどうでもいい事すんな!!」
「っ…、でかしたわ六道さん!ゲーム機の明かりを頼りにブレーカーを上げてきて!」
「わからんけどわかった」
六道は、携帯ゲーム機の明かりを頼りにブレーカーを上げに行った。
だが、その直後だった。
「っ…ぐ!?ゲホッ、ガハッ…!!ゲホッ、ゲホッ…!!」
「神風…っ!?」
今の、神風の声だよな!?
何だ、何が起こってる!?
「大和…!?どうしたの、大和!!」
「おい、待て!この匂い、まさか血じゃねえか!?」
「ひぃいいいいっ!!?」
「もうやだ!!帰る!!」
ダメだ、皆パニックになってる。
しばらくして、会場の明かりがつく。
会場は、椅子やテーブルが薙ぎ倒されて、至る所に料理やジュースが散らばっていた。
そして、パーティー会場の中心では――。
「ガァッ…!!ガハッ、ゲホッ!!」
――神風が、全身を掻き毟り、血を吐き散らしながら暴れ回っていた。
え、え、え?
おい、嘘だろ…!?
何だよこれ…?
どうなってんだよ!?
「キャアアアアアア!!?」
「か、神風クン!?」
「大和!?大和!!しっかりして!!」
俺達が混乱している中、薬師寺は血相を変えて神風に駆け寄り、神風の容態を確認した。
そして、左腿のレッグポーチからエピペンを取り出すと、迷わずエピペンを神風の左脚に打ち込んだ。
だが……
「ゲホァッ!!」
神風は、激しく吐血して身体を大きく跳ね上がらせた。
神風は、聴こえるか聴こえないかくらいの声で何かを呟く。
「……ょ…か………み……………」
神風は、薬師寺に向かって手を伸ばし、薬師寺の側で何かを呟いた。
そしてその直後――。
神風は、だらん、と力なく腕を床に落として、そのまま眠るように力尽きた。
その瞬間だった。
ピーンポーンパーンポーン
『死体が発見されました!一定の捜査時間の後、学級裁判を執り行います!』
「そんな…嘘でしょ……!?いやっ、いやああああああっ!!」
まるで現実を突きつけるかのように、死体発見アナウンスが鳴り響く。
薬師寺は、神風の遺体の前で膝をついて泣いていた。
会場にはアナウンスと、薬師寺の悲痛な叫び声が反響した。
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン
【超高校級の原型師】
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
ノコリ13人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
【超高校級の司令官】
以上5人
推しがいたら教えてくんなまし
-
東野潤_小説家
-
暗野斬良_???
-
殉前詩乃子_ギャル
-
神風大和_司令官
-
薬師寺療香_軍医
-
リーゼロッテ_オルガニスト
-
安室明日奈_原型師
-
消灯寺霊庵_心霊学者
-
山脇ゆか_絵本作家
-
梶野運命_ディーラー
-
神無月椛_カルタ師
-
氷川みるく_グラシエール
-
酒蔵飛露喜_ソムリエ
-
樺戸ラムジ_カバディ選手
-
内闘力也_プロレスラー
-
打田清美_狙撃手
-
的凪梢_幸運
-
六道千春_ゲームプログラマー
-
モノルナ_引率教師