インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
(非)日常編①
………あれ?
ここは…。
俺は、何してたんだっけ。
気がつくと、何かの建物の屋上にいた。
見覚えのない場所だが、学校の屋上だという事はぼんやりとわかる。
屋上には、そこにいるはずのない男子生徒が二人いた。
一人は俺、そしてもう一人は暗野だった。
目の前にいる俺は、今の俺より少しだけ背が高く、声も少し低い。
俺は、俺自身と暗野を、第三者の視点から眺めていた。
「暗……」
俺は、暗野に声をかけようと手を伸ばす。
だがその時初めて、目の前の俺と暗野が口論になっている事に気付く。
内容までは聞き取れなかったけど、俺が暗野に掴みかかって何かを叫んでいた。
暗野は、戸惑いながらも負けじと俺に何かを反論していた。
俺が二人に歩み寄ろうとした、その時だった。
「東野くん」
突然女性の声が聞こえて、俺が振り向くと、クリーム色の長い髪を靡かせた女性が立っていた。
逆光で顔は見えなかったけど、小柄な割に女性らしい姿はどこか懐かしさを覚えた。
何だか、どこかで聞いた事があるような声だ。
女性は、薬指に指輪をはめた左手を俺に差し出してきた。
「今、行く」
俺は、女性の手を取りながら、男の声で返事をした。
「ん………」
気がつくと、今となってはもう見慣れた天井が目に飛び込んでくる。
……夢か。
それにしても、変な夢だったな。
えっと、俺、あの後どうしたんだっけ……
……思い出した。
裁判が終わった後、俺は疲れ果てて部屋に戻り、そのまま眠ってしまったようだ。
時計を見ると、時計は午前3時を指していた。
まだ3時間しか経っていない。
それでも寝直す気分にもなれなかったので、夜時間が終わるまでは部屋で過ごす事にした。
「…………」
ふと、部屋の鏡に目をやる。
……うわ、俺、こんなに酷い顔をしていたのか。
だけど、こんな顔になるのも無理はない、と自分で自分に言い聞かせた。
神風と薬師寺が死んだんだ。
いつでもリーダーシップを発揮し俺達を導いてくれた神風。
そして、いつでも俺達の力になろうとしてくれた薬師寺。
その二人が、俺達の前からいなくなってしまった。
心の支えを失ってしまった今、本当に俺達に未来はあるんだろうか。
しかも、入学から10年も経ってるなんて聞かされて、もう何が何だかわかんねえよ…。
だったら、俺が入学してからの10年はどこに行ったんだ。
…どこに行ってしまったんだ。
せっかく希望ヶ峰学園に入学したら今までの地獄の生活から解放されると思ってたのに、こんなのあんまりだろ。
ふとポケットを漁ると、何かが指先に触れる。
俺は何の気はなしにそれを取り出して見つめた。
薬師寺が生前大切にしていたイヤリングだ。
…そっか、俺、あの後着替えもせずに寝たのか。
俺は、薬師寺が生前語っていた娘の事を思い出した。
薬師寺が俺達や、一番愛していたはずの神風を犠牲にしてまで守りたかった、たった一人の娘。
既に死んでしまったのか、今もどこかで生きているのかは、俺達にはわからない。
だけど確かに、二人の帰りを待っていた娘がいたんだ。
俺は、イヤリングを大事に保管しておく事にした。
万が一…いや、億が一にももしここから出られたら、これを外に持っていこう。
確かに、俺達を殺して一人生き延びようとした薬師寺を到底許す事はできないし、あいつに投票した事は後悔してない。
あいつがそこまでして『生』にしがみつこうとした事、ここから脱出しようとした事、その思いだけは汲んでやらなきゃいけない。
せめて、あいつが大切にしていたものだけは、外に持っていってやろう。
それが、あいつを見捨ててしまった俺達にできる償いだと思いたかった。
…ああ、もう4時か。
そういえば、今日は俺が朝食を作る事になってたっけ。
行かなきゃ。
◇◇◇
《レストラン》
数時間後、全員分の朝食が完成した。
今日の朝食作りに参加してくれたのは、梶野と消灯寺、そしてリーゼだ。
朝食の集まりに来てくれたのは、俺を含め朝食を作った4人以外だと、安室、酒蔵、樺戸、的凪、そして六道だった。
六道はだいぶ寝坊してたけど…。
打田はまあ元々馴れ合いが嫌いな奴だし無理はないけど、神無月と氷川は心配だな…
「…あんな事があった後だと、この金色が鬱陶しいですね」
梶野は、いつものポーカーフェイスは崩さず、紅茶を嗜みながら呟いた。
あまり自己主張をするタイプじゃなくて、今までは神風と薬師寺の影に隠れてあまり目立たなかったけど、この状況で表情を崩さずいられるところを見れば、頭の回転が早くて冷静な奴だと思い知らされる。
事実、神風がいなくなった後の学級裁判も、俺は六道と梶野に助けられた。
「おはよう、千春ちゃん。今日も千春ちゃんはかわいいね」
「ちはるは牛丼が食いたかった」
「申し訳ございません。昨日の事もありますし、肉料理は避けた方が良いかと思いまして」
「……ちっ」
皆、徹底して的凪を無視している。
まあ、無理もない。
正直、俺もこいつの事は大嫌いだし、顔も見たくない。
未遂とはいえ山脇を殺そうとし、暗野に内闘を殺させた異常者となんて。
的凪が何食わぬ顔で食堂に来た時、酒蔵が怒鳴った。
「てめぇ、出てけよ!メシが不味くなるんだよ!!」
口には出さなかったけど、皆が同じ意見だったと思う。
だけど俺達は、的凪が次に言った一言を聞いて、奴を追い出す事ができなくなった。
「あっそ、出てっていいんだね?ボクが何もしなくても神風くんと薬師寺さんを死なせた無能なキミ達が、ボクを放置なんかして制御し切れるというなら、是非ともそれを証明してほしいな」
こいつは、自分の客観的な立ち位置を完璧に理解していた。
以前、仕事の関係で取材をした時、そこそこ名の通った弁護士の先生が語っていた事を思い出した。
『自分を客観的に見る事ができる狂人が一番恐ろしい』と。
思えば、的凪は幼い頃に父親を失って母子家庭である事以外は至って平凡な高校生だった。
否、平凡すぎたんだ。
普通、人というものは、必ず何かしらの分野で得意不得意が出るものだ。
たとえそれが微々たるものだったとしても、全てにおいて平凡な人間なんてこの世にはいないと思ってる。
だけどあいつは、今までの人生の全てにおいて、まるで何かの調整力が働いたかのように平均値を取ってきた。
奴の経歴を見た時は疑問に思う程度だったけど、ここ数日こいつと過ごして疑問は確信に変わった。
的凪は、決して『平均的な高校生』なんかじゃない。
少なくとも、普通の高校生よりずっと頭の回転が速い。
話してるだけで頭が痛くなるくらい頭が悪い奴が仕事関係にいるからわかるが、的凪はは決して凡人なんかじゃなく、凡人の振りをしている頭の切れる奴だ。
それが真実だとすれば、こいつは15年間、誰にも悟られる事なく無害な凡人を演じてきたという事になる。
俺はその事実に、思わず背筋が凍った。
俺達は、こいつの異常性を身をもって知る事となった。
だが的凪を監禁しても事件が起こってしまった以上、こいつを監禁しておくというのも得策じゃない。
俺は、寒気がするのをなんとかしたくて、強引に話を逸らした。
「それよりさ…神無月と氷川、心配だな」
「氷川さんは、昨日の事があってまだ食事が喉を通らないそうですわ。神無月さんは…」
俺が話すと、リーゼが心配そうに答える。
するとその時だった。
「ひっぐ、ぐずっ…」
レストランの扉が開き、神無月がレストランに入ってくる。
神無月は、上手く袴紐が結べずにぐちゃぐちゃの格好で、鼻を赤くして泣いていた。
こんな状況だというのに、酒蔵は興奮気味に神無月に話しかける。
「か、神無月ちゃん…!?どうしたのその格好!?」
「見るんじゃねえロリコンエロジジイ!!」
「えっもう一回言っt「滅びろォ!!」
酒蔵が興奮気味に神無月に絡むと、神無月は酒蔵を罵倒し、安室は酒蔵の顔面に鎖の先の楔を突き刺した。
変態を成敗したところで、神無月は泣きじゃくりながら語る。
「だって、しょうがないじゃん…!療香ちゃんが…療香ちゃんが…うわぁああああああん!!」
神無月が大泣きすると、俺はハッとした。
そうだ。
神無月は、今まで薬師寺に着付けをしてもらっていたんだ。
今思えば神無月は、服を着るのを手伝ってくれて世話を焼いてくれた薬師寺によく懐いていた。
そんな大事な友達がいなくなって、心細くないはずがない。
「神無月…」
俺は、神無月の力になってやりたかった。
だけど男の俺には、神無月の着替えを手伝ってやる事も、背中を摩って落ち着かせてやる事もできない。
もどかしくてたまらなかった。
…こんな時、神風ならどうしたかな。
「あの…わたくしで良ければお手伝いしますわ」
そう言って手を挙げたのは、リーゼだ。
俺達は、自然とリーゼに目を向けていた。
安室に至っては、ぱちくりと瞬きをしながらリーゼに話しかけていた。
「リーゼロッテ…?」
「わたくし、以前着物の着付けを本で勉強した事がありますの。大体の手順は覚えていますので、薬師寺さんのようにとはいかなくてもお手伝いできればと…」
そう言ってリーゼは、神無月に歩み寄る。
神無月は、着付けを手伝ってくれるリーゼには流石に悪態をつけなかったのか、泣きながらも大人しくしていた。
リーゼは、男性陣の目につかないところに神無月を連れてから着付けをしたのだが、声だけは聞こえていた。
「あれ…?おかしいですわね…確か、ここをこう…」
リーゼは、聞いてるこっちが不安になるような事を口にしていた。
この様子だと、だいぶ梃子摺っているようだな。
俺は、待っていられなくなって、部屋の外から声をかけた。
「あの、俺手伝おうか…?」
「触るな見るな来るなロリコンクソアンテナ!!」
「…ごめん」
話しかけるなり、すごい剣幕で罵られた。
まあ今のは俺に非があるけど、あそこまで言われるとくるものがあるんだが…
「ふぅ、何とかできましたわ!」
その後、何とかリーゼは神無月の着付けをした。
だがリーゼが着付けをしてすぐ、神無月の袴がズレた。
「あれっ!?」
「うわああああああん!!」
「ご、ごめんなさい!おかしいですわね、確かに手順通りに…」
袴がズレると神無月が泣き出し、リーゼが慌てふためく。
すると梶野は、袴がズレた原因に心当たりがあるのか、咳払いをしてリーゼに話しかける。
「…あの、リーゼロッテ様。もしかして、ヘラを差すの忘れてません?」
「…………あ」
梶野が言うと、リーゼがハッとする。
その後リーゼは、梶野に手伝ってもらいながら着付けをやり直した。
正直見栄えがいいとは言えないが、生活に支障はなさそうだ。
俺が神無月の分の食事も用意しようとした、その時だった。
『うぷぷぷぷ!おはようございます、オマエラ!』
『キャハハ!モノクマ&モノルナ参上〜!』
あの耳障りな声が聴こえてくる。
正直、もうリアクションをするのもくたびれてきた。
だが酒蔵と安室は、相変わらずモノクマとモノルナに敵意を向けていた。
「うるせえ消えろ!!」
「全くもって不愉快だ。地獄の業火で消し炭にしてくれる」
『あれ?そんな口利くんだ?せっかくオマエラが楽しみにしてるであろうご褒美を持ってきてあげたのにさ!』
酒蔵がバンッとテーブルを叩き、安室が鎖の先についた楔を突きつけると、モノクマがとぼけたように話す。
「ご褒美…?」
「今回もエリアの開放?」
消灯寺がキョトンとしていると、六道が眠そうに尋ねる。
するとモノルナは、ぴょんっと飛び上がってケタケタ笑う。
『キャハハ、千春チャン冴えてる〜!そろそろ本領発揮しちゃう感じ?』
「うっさい…さっさと案内だけしてきえろ。ちはるはここ最近ずっと作業をしてて夜しか寝てないからすこぶる機嫌が悪い」
いや、夜寝ればもう十分だろ…
どんだけ寝る気なんだよ。
というか、作業って何だ…?
『ったく、しょうがないなぁ。それじゃあオマエラ、今から15分以内にホテルの玄関に来て下さい!来ないとおしおきだからね!サボり魔二人にも伝えておくからね!』
モノクマは、一方的に要件だけ伝えて去っていった。
…行かないとおしおきっていうのは本当だろうな。
俺達は、渋々ながらも一階に降りた。
◇◇◇
《ホテル 1F ゲンカン》
俺達が1階に着くと、打田と氷川も来ていた。
打田はいつも通りだったが、氷川は心なしか窶れていた。
俺は、氷川が心配になり、氷川に声をかけた。
「氷川…大丈夫か?」
「はい…すみません、ご迷惑をおかけして…」
俺が話しかけると、氷川は暗い声で答える。
良かった、まだ元気はないみたいだけど返事はしてくれた。
全員が揃うと、どこからかモノクマとモノルナが飛び出てくる。
『うぷぷぷぷ!皆さん集まりましたね?それじゃ、とっとと外に出やがってください!』
口悪いな……
いや、ツッコむだけ野暮か。
俺が呆れ返っていると、モノクマとモノルナは俺達に扉の向こうに出るように急かしてきた。
外っつっても、この先はペンションに繋がる通路しかなかったはず…
俺はそんな事を考えつつ、外に出た。
外に出ると、やっぱり薄暗い動く通路しかなかった。
…もしかして、俺達が知らない間に別の場所に繋がってたりするのか?
いや、そんなわけないか。
俺がそんな事を考えながら長い廊下をひたすら歩いていると、扉が見えてきた。
ギリシャ建築の要素を取り入れたと思われる大理石の扉だ。
例の如く扉が上下に開く。
「……え?」
目の前に広がっていたのは、広い空と芝生だった。
そしてよく見ると、さらに奥には建物や山が見える。
「何じゃこりゃあ!?」
「お、オレ達ついに外に出たのか!?」
酒蔵と樺戸は、遂に外に出られたのかと喜んでいる様子だった。
だが打田は、二人に対して辛辣な一言を浴びせる。
「んなわけないでしょ、バカ共」
「なっ…!?」
打田がため息を吐きながら言うと、酒蔵が呆然とする。
すると的凪と梶野も続けて口を開く。
「あのさ、外は極寒の吹雪なんだよ?外に出られたんなら、こんな芝生が広がってるわけないよね?よく見たら人工照明だし」
「芝生も、本物に似せて精巧に作られた人工芝ですね」
『御名答!オマエラもそろそろ身体を思いっきり動かしたくなってきた頃だと思いましてね。特別に思いっきり身体を動かせる場所を用意してあげたのさ!その名も『オリンピア・スポーツセンター』!』
オリンピア、か。
オリンピック発祥の地といわれるギリシャの地名だったはず。
アジア、南アメリカときたら次はヨーロッパか。
これ、もしかしなくても七大陸をモチーフにしてるんじゃないか?
『じゃ、バイバ〜イ!』
そう言って、モノクマとモノルナはどっか行った。
「この建物は、1階がアリーナ、ゲレンデ、運動場、更衣室、プール、トレーニングジム、ボウリング場、道場、2階がゴルフ場、山岳エリア、スカイタワーからなっているようです」
梶野は、マップを確認しながら言った。
本当に行動早いな…。
「千春ちゃん、一緒に探索しよ」
「ひがしの、カモン」
「…わかったよ」
この二人はホント水と油だな。
まあ10:0で的凪が悪いんだが。
探索の組は、話し合いの結果、俺と的凪と六道、安室と打田、梶野と樺戸、酒蔵と消灯寺、そして神無月と氷川とリーゼといった組み合わせになった。
そして探索場所は、神無月達が運動場と女子更衣室とプール、酒蔵と消灯寺がゲレンデと男子更衣室とスポーツジム、俺達がアリーナとボウリング場と道場、樺戸と梶野がゴルフ場、安室と打田が山岳エリアとスカイタワーを調べる事になった。
今回は流石に探索範囲が広すぎるので、各自ホテルから昼食を持ち寄って昼食を食べながら探索をし、報告会は夜7時の夕食のタイミングで開く事となった。
◇◇◇
《アリーナ》
俺は、的凪と六道と一緒にスポーツセンターの入り口から真っ直ぐに歩き、アリーナへ向かった。
目の前には、白い神殿状の建物が建っていた。
扉は、建物の建築様式には似合わず、体育館によくある両開きの引き戸だ。
扉を開けると、驚くべき光景が目に飛び込んできた。
東京ドームくらいの広さはある巨大なアリーナが目の前に広がっていて、天井も10mくらいはありそうだ。
これだけの広さがあれば、殆どの室内競技は網羅できそうだ。
「ひんやりしてて気持ちええ」
「寝るな」
俺はアリーナの床で寝転がっている六道に声をかけ、隣の部屋に向かった。
アリーナの隣にある部屋は、倉庫になっていた。
倉庫の中には、ボールやネット、得点板といった、スポーツに使う道具が収納されている。
◇◇◇
《ボウリングジョウ》
アリーナの探索を終えた俺達は、ボウリング場に来ている。
ボウリングのピンの形をした外観が特徴的だ。
……のはいいんだけど。
「千春ちゃん」
「……………」
馴れ馴れしく話しかけてくる的凪に対し、六道は見るからに不愉快そうな顔を向けていた。
すっげえ気まずい。
予想はしてたけど、ここまで地獄みたいな空気になるとは…
というか的凪、お前ちょっとは自重するって事を覚えろよ。
それはさておき、ボウリング場の施設だが、ゲームコーナー、ボウリングレーン、ダーツ、ビリヤード、コミックコーナーがあるらしい。
まるでラ●ンドワンだな。
「まるでラウ●ドワンだな」
あっツッコミ被った。
「ゲームセンターなんて、まさに千春ちゃんにピッタリの場所だよね!あ、もしかして自分の専門分野だから、凡人じゃ気付けないような発見が出来るかもしれないと思ってここを選んだんだね?流石は千春ちゃん!」
「ひがしの、こいつ黙らせろ。不愉快」
的凪が発言する度に、六道は不快そうな表情を浮かべる。
うん、これは俺がついてて正解だったな。
「とりあえずさ、ゲームコーナーから調べるか?」
「ん…そうする」
俺が尋ねると、六道は眠そうな目をしぱしぱさせながら答える。
俺達はとりあえず、1番近いゲームコーナーから調べる事にした。
《ゲームコーナー》
「…凄いな」
俺は、ゲームコーナーに足を踏み入れた瞬間にポツリと呟いていた。
ホテルの娯楽施設にもゲームはあったが、それより全然種類も数も多い。
eスポーツなんかもできるみたいだ。
見た事ないようなのもあるな…
六道的には、こういうのってやっぱり嬉しいんだろうか。
って、あれ?六道は?
「ひゃっほう、早速クソゲー探すぜ」
いつの間にあんなところに!?
足速っ!
何つー無駄のないフォームで走りやがる!?
あんな眠たげな奴のどこからあんなエネルギーが湧くんだよ!?
そこは鈍くあれよ、インドア派として。
つーか真面目に探索やれよ。
「ゲームではしゃいでる千春ちゃんも可愛いなぁ」
こっちもこっちで色々やばいし。
六道はクソゲー探しに熱中してるし。
もう探索どころじゃねえわ、これ。
仕方なく俺が二人を見張りながらゲームセンターの中をざっと探索していると、六道はクレーンゲームの前で足を止める。
「………ん」
六道は、クレーンゲームをじっと見つめていた。
もしかして、何か見つけたのか?
「どうしたんだ?」
「ん」
俺が話しかけると、六道は何かを指差した。
六道が指を差したのは、マリンブルーのパッケージが特徴的なゲームソフトだ。
他のぬいぐるみに埋もれていて、簡単には取り出せそうにない場所にある。
「ひがしの。メダル貸せ。5枚でいい」
「自分のメダルでやればいいだろ」
「使い果たしてもうない」
は?
嘘だろ?
裁判に勝ってあんなにメダルが増えたのに?
それをたった一晩で全部消費したっていうのか?
どうやったらあの大量のメダルを全消費できるんだよ。
いくらなんでも浪費癖酷すぎるだろ…
俺が呆れていると、的凪が出しゃばってくる。
「千春ちゃんっ!ボクのメダルで良ければあげるよ!」
「ひがしの、貸せ」
的凪が出しゃばると、六道は鬱陶しそうに俺に話しかけた。
これ完全に俺緩衝材扱いされてるよなぁ…
「ああもう、わかったよ。後で返せよ」
「サンガツ」
俺がメダルを渡すと、六道はメダルをクレーンゲームに入れて遊び始めた。
…凄い集中力だな。
まだ全然時間経ってないのに、もう周りの音が耳に入ってない。
六道は少しずつ周りのぬいぐるみを動かし、目当てのものを穴に落とした。
「取れた」
六道は、目当てのゲームと、もう一つ愛蔵リアクション芸集をゲットしたようだ。
六道は、しばらくリアクション芸集と睨めっこしたかと思うと、リアクション芸集を俺に押し付けてきた。
「ひがしの、これおまえにやる」
「え?」
「メダルの借り」
そう言って六道は、心なしかホクホク顔で別のゲームを探し始めた。
……いや、『借り』って。
これで済まされるとそれはそれで複雑なんだけど。
まあでも、ありがたく受け取っておくか。
「東野くんいいなぁ、千春ちゃんにプレゼント貰えるなんて」
怖っ!!
近っ!!
びっくりした、至近距離でいきなり話しかけてくんなお前!
まだ心臓バクバクいってるし…
そういや、六道はどこに…
「うさぎー、うさぎー」
六道は、ウサギの顔がついたロデオマシンに乗って遊んでいた。
あの問題児、ちょっと目を離した隙にあんなところまで…!
おかげでほとんど探索できなかった。
「お前なぁ…遊びに来たわけじゃないんだぞ。そろそろ6階の探索行くぞ」
「なんだ、情けないぞおまえ」
それを言うなら『情がない』、だろ。
こいつ本当に大丈夫かな。
《ボウリングコーナー》
ボウリングコーナーには、巨大なボウリングレーンが鎮座している。
ボウリングのレーンは全部で20本あって、それぞれにボウリングの球とピンが設置されている。
しかも、ボウリング用のシューズが入ったロッカーもある。
これなら全員で来ても楽しめそうだな。
…って、楽しむ為に来たんじゃないんだが。
何か手掛かりがあるかもしれないし、探索しないと。
……うーん、特に重要そうなものは何もなかったな。
本当にただのボウリング場なのか…
「じゃあ次は向こう行こうぜ」
「………ぐぅ」
寝てるし。
いびきで返事かよ。
いくら何でも自由すぎだろ…
《プレイコーナー》
ボウリングコーナーの次は、プレイコーナーに向かった。
プレイコーナーは、ダーツとビリヤードが設置されていて、まるでバーみたいに薄暗くお洒落な内装が特徴的だ。
ビリヤードが6台、ダーツが14台か。
全員で来ても十分遊べそうだ。
娯楽施設にもあったけど、こっちはダーツやビリヤードの数が多くて、どうやらプレイエリアといってもスポーツに特化しているらしい。
見たところ飲み食いができそうなテーブルもあるし、遊び場としては悪くない。
俺がダーツやビリヤードを調べていると、後ろからぐぅぅ、と音が鳴る。
振り向くと、六道が腹を摩っていた。
「はらへった」
六道は、腹を抱えながら気怠げに訴えた。
13時10分か。
確かに、これ以上長引くと夕食とくっついちまいそうではあるんだよな。
「確かにもういい時間だな。昼飯にするか」
「うん」
俺達は、腹拵えにホテルから持ち寄った昼食を食べた。
「ごちそーさまでした」
昼飯を食い終わった俺達は、最後にもう一回だけプレイコーナーの探索をした。
プレイコーナーには特にめぼしいものはなかったので、そのまま最後のコーナーに向かった。
《コミックコーナー》
最後に訪れたのは、コミックコーナーだ。
その名の通り、あらゆるジャンルの漫画が揃えられていて、まるで漫画喫茶だ。
漫画はホテルの図書館にも置いてあったけど、ここは漫画に特化しているようだ。
スポーツセンターなのに漫画…ラ●ンドワンじゃねえか。
俺がそんな事を考えながら探索をしようとすると、六道と的凪は漫画を手に取って読み始めた。
「おいっ」
こいつら、マジでさっきから邪魔しかしてないな。
探索の意味わかってんのか?
六道も、作業があるとか言ってたくせにさっきからずっと遊んでるし。
……あ。
そうだ、作業。
あいつが言ってた『作業』って、一体何だったんだろう。
「なあ、六道」
「………なに」
「お前さ、作業があるって言ってただろ?睡眠時間削ってまで何をしてたんだ?」
「知らん。今おまえに教える事は何もない」
冷たいな……
もう他人同士じゃないんだし、そんな言い方しなくたって…
………いや、違う。
『今教える事はない』っていうのは、『ここでは教えられない』っていう意味にも取れる。
もしかして、脱出に繋がる重要な手掛かりを掴んだのか…?
それを悟られないように、わざと遊んでいるフリをして、黒幕を油断させようとしている……?
……いや、まさかな。
どう見ても遊んでるようにしか見えないし。
こいつ、たまにすこぶる鋭いとこがあるからもしかしてって思ったんだが…俺の考え過ぎかな。
「次は道場行こうぜ」
「……ちっ」
いや、探索より漫画優先かよ。
舌打ちしたいのはこっちだから。
そろそろ真面目に探索しないと梶野に詰られるぞ。
◇◇◇
《ドウジョウ》
俺達は、巨大な木造の建築物の前に来た。
ここが道場でいいんだよな…
「おぉ…」
扉を開けた俺は、思わず声を漏らした。
目の前には木の床でできた道場と、桜の木が植えられた弓道場があった。
道場は『モノクマ道場』と書かれた看板が飾られていて、弓道場には弓道用の的が並んで立っている。
この桜、本物か…?
いや、まさかな。
流石に偽物か。
「桜うめぇ」
「何してんだ腹壊すぞ」
後ろを振り向くと、六道が無表情で桜の花びらを食ってた。
ホントこいつさっきから何してんだ。
さらに奥には、畳でできたスペースと相撲場、あとは倉庫のようなものがあるらしい。
道場の廊下を歩いていくと、畳でできた部屋が見えてきた。
どうやら寛げるスペースになっているらしい。
障子や丸い窓があって、日本人心擽るものがある。
「わー畳だ」
おい、六道。
畳の縁踏むな。
この非国民が。
「広いね」
非 国 民 二 人 目 。
何的凪まで踏んでんだよ。
お前らもしかしてわざとやってる?
「遊んでないで行くぞ」
「ちっ」
俺は、的凪と六道を無理矢理連れる形で畳部屋を後にした。
さらに奥へ進むと、今度は相撲場が見えてきた。
ちょうど中心には少し盛り上がった土俵があり、その真上には屋形が吊るされている。
本当に色んなスポーツができる施設になってるんだな。
「塩うめえ」
土俵に撒く塩舐めるな。
つーかどこから持ってきたんだよそれ。
さっきから全然真面目に探索しないじゃねえかこいつ。
「はぁ、もういいよ。次行こうぜ」
俺は、遊んでる二人を連れて隣の倉庫に行った。
倉庫には、武道に必要な道具が収納してある。
ひとまず、片っ端から調べるか。
えっと…こっちが竹刀で、こっちが弓矢で…
「はぁ…結局、脱出に繋がりそうなものは何も無かったな。戻ろうぜ」
「…………うん」
結局、重要な手掛かりは何も見つからなかった。
担当のエリアを全て探索した俺達は、ホテルに戻る事にした。
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン
【超高校級の原型師】
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
ノコリ12人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
以上6人
推しがいたら教えてくんなまし
-
東野潤_小説家
-
暗野斬良_???
-
殉前詩乃子_ギャル
-
神風大和_司令官
-
薬師寺療香_軍医
-
リーゼロッテ_オルガニスト
-
安室明日奈_原型師
-
消灯寺霊庵_心霊学者
-
山脇ゆか_絵本作家
-
梶野運命_ディーラー
-
神無月椛_カルタ師
-
氷川みるく_グラシエール
-
酒蔵飛露喜_ソムリエ
-
樺戸ラムジ_カバディ選手
-
内闘力也_プロレスラー
-
打田清美_狙撃手
-
的凪梢_幸運
-
六道千春_ゲームプログラマー
-
モノルナ_引率教師