インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
《ショクドウ》
食堂に行くと、二人いるのを見つけた。
一人は七三分けで眼鏡をかけた男子、もう一人はセーラー服を着た女子だ。
俺達が食堂に入ると、二人が俺達に気付いて振り向く。
「おや、あなた方は…」
「あ……東野くん…」
俺達に気付いた女子は、俺の方に歩み寄ってきた。
クリーム色の髪を羊の角のようなシニヨンにしていて、ピンク色の目をしていて、白と紺を基調としたセーラー服を着ている。
あれ…?
この子、何だか初対面じゃないような…
「あの…東野くん…私の事…覚えてる?」
んーーーと…
…あ!
思い出した!
あいつだあいつ!
「お前、もしかして山脇か?」
「あ……覚えてて…くれたんだ…嬉しい…」
良かった、そうだ、山脇だ。
いやぁ〜、こんな所で会うなんて奇遇だなぁ。
5、6年ぶりくらいか?
「え、何?知り合いなの…?」
「ああ。山脇とは小学校が一緒で、一回だけ同じクラスになった事があるんだ」
「はじめまして…私…【超高校級の絵本作家】…
【超高校級の絵本作家】
山脇は、今世間で注目を浴びている絵本作家だ。
幻想的な作風が特徴的で、子供だけじゃなく大人にも人気があるんだよな。
俺も同じクラスになった時は一緒に話を考えてたからよく覚えている。
「えっと…僕は暗野斬良だよ。よろしく。えっと…山脇さん…で合ってるよね?」
あ、ひょっとして、山脇の自己紹介ちゃんと聞き取れなかったかな?
元々声がちょっと小さいから仕方ないのか…?
「うん…。ごめん…私……声…小さい…から…聴こえにくい…かも…」
「あ、全然大丈夫だよ!僕だって声大きい方じゃないし…」
さっきあんな大声量で叫んでおいてよく言う。
それにしても暗野の奴、他の女子にはあんなに怖がってたくせに山脇は大丈夫なんだな。
「よろしく…暗野くん…」
「あ、う、うん…!」
しばらく山脇と話していた暗野は、若干照れ臭そうに戻ってきた。
どうやら仲良くなれたみたいだ。
「どうしよう、東野君…僕、女子と喋っちゃった…!」
えっ、今更…?
どんだけ女子に耐性無いんだこいつ。
俺が暗野に少し呆れていると、今度は一緒にいた男子が歩み寄ってくる。
「お取り込み中のところ申し訳ございません。次は私が自己紹介をしても?」
そう言ってニコッと微笑んだ男子は黒髪を七三分けにしていて、眼鏡の奥には細い目が覗いている。
カジノディーラーのような格好をしていて、紳士的な印象を抱かせる。
「ああ、悪い。えっと、あんたは?」
「申し遅れました。私、【超高校級のディーラー】
【超高校級のディーラー】
確か世界的に有名なカジノディーラーで、自分でカジノを経営してるんだよな。
世界中のありとあらゆるギャンブラーと交流を持っていて、今年入学する【超高校級のカルタ師】とも面識があるらしい。
双子の弟が凄腕のギャンブラーだとか、豪華客船で大金をかけたジャンケン大会を開催したとか色々と噂を聞くが、どれも真偽は定かではない。
「俺は【超高校級の小説家】、東野潤。よろしくな、梶野」
「存じております。東野様に暗野様ですね。私に何か御用がございましたら何なりと」
梶野は、笑顔を浮かべながら頭を下げた。
礼儀正しく礼をするその姿はまさに紳士だ。
「ところで…差し支えなければお聞きしたいのですが、暗野様の才能は一体どのようなものなのでしょうか?申し訳ございません、何分今年の新入生のデータに名前がなかったものですから」
「あー、悪い。暗野さ、自分の才能思い出せねえみたいなんだ」
「ごめんね…」
梶野が暗野に才能を尋ねると、暗野は申し訳なさそうに謝った。
まあ才能を思い出せないのは仕方ないよな。
梶野も暗野の苦労を察したのか、それ以上は深入りせずに暗野を安心させる言葉をかけた。
「なるほど、記憶喪失ですか。それはさぞご苦労なさったでしょう?私で良ければ何かお手伝いさせていただきますね」
「あ、ありがとう…」
暗野は、どうやら頼れる仲間ができて少し安心しているみたいだ。
すると梶野が思い出したように言った。
「ああ、そうそう。そういえば、厨房にいらっしゃる方達へのご挨拶がまだですよね?」
あ、厨房にも人がいたのか。
じゃあ厨房にも一応顔を出しておくか。
◇◇◇
《チュウボウ》
俺は、暗野と一緒に厨房に訪れた。
厨房には三人組がいて、俺達に気がついたのかこっちを見ている。
一人は和服を着た小柄な女子、一人は大男と見紛う程の筋肉質な巨女、そしてもう一人はマスコットのような見た目のヒゲ面の男だ。
「あれ〜?まだ人がいたんだ〜!あたいったらビックリね!」
最初に反応をしたのは、和服の女子だった。
オレンジ色のツインテールに琥珀色の目をしていて、赤、橙、黄色といった暖色を基調とした和服を着ている。
和服の柄や髪飾りは紅葉をモチーフにしていて、全体的に秋の雰囲気を感じさせる子だ。
「はじめまして。俺は【超高校級の小説家】東野潤。で、こっちは暗野斬良。君は?」
「へぇ〜、潤ちゃんに斬良ちゃんね!椛は【超高校級のカルタ師】、
【超高校級のカルタ師】
神無月は、大人が出場するような大会でも優勝するような腕利きのカルタ師だ。
百人一首や花札など、カルタの類なら彼女に敵う者はいないといわれている。
【超高校級のカルタ師】が今年入学するとは聞いていたけど…実物を見てみると、何というか…
見た目も中身も無邪気な子供なんだな。
「あー!今『子供っぽい』って思ったでしょ!?」
あ、ごめん。
って…今、しれっと心読まなかったか?
「あたい知ってるもん。大人はみんなそうやって椛の事バカにするんだよ。カルタじゃ一枚も取れないのにね!ぷーくすくす!」
「…………」
思い出した。
神無月は悪趣味で有名で、大会に出場する理由も『自分を馬鹿にしてくる大人を大衆の前でボロ負けさせて馬鹿にし返したいから』という中々に素敵な理由だったりするんだった。
「ねえねえ、ところで斬良ちゃんの才能は?何か暗そうだし、【超高校級の暗殺者】とかだったりして!」
「ひ、酷い…」
いきなり酷い決めつけだな。
ちょっと無神経すぎないか?
「あんまりいじらないでやってくれ。暗野は才能を思い出せないんだ」
「え〜!何それ!バカなの?死ぬの?」
「うぅ……!」
「あ、凹んだ!図体はおっきいのに中身がちっさいんだね!こういうの、ノミの心臓っていうんだっけ?」
「東野君…この子怖いよ…」
暗野が傷つくと、神無月は面白がってさらに毒を浴びせた。
こいつは多分、無邪気に人を傷つけるタイプだな。
神無月に全然悪気は無いんだろうけど、流石に言い過ぎだ。
俺が神無月に注意してやろうとしたその時、巨女が割り込んできた。
「あ、あの…!神無月さんがすみません…!本当は悪い人ではないんですけど…」
「みるくちゃんは黙っててよ。今は椛が話してるんだからさ!」
「ひぃいい…!すみませんすみません…!」
神無月が不機嫌そうに巨女を睨むと、巨女はビクビクと怯えて目に涙を浮かべた。
すごい強面なのに、メンタルは暗野以上に繊細なんだな…
これ以上女子が泣かされてるのを黙って見てるわけにもいかないし、ここは口を挟ませてもらおう。
「こら、神無月。無闇に人を泣かせるんじゃない」
「えー、あたい悪くないもん。こいつが勝手に泣いたんだよぉ」
「反省しろ」
「………むっすー…」
俺が注意すると、神無月は不服そうに俺を睨みながら頬を膨らませた。
可愛くないなこいつ。
俺は、仲裁に入った巨女の方に目をやった。
桃色の髪を三つ編みにしていて、黄緑色の目をしていて、赤いベレー帽と赤と白を基調とした制服、その上にエプロンを身につけている。
黒光りする筋肉質な巨体は、胸元と服装を見なければ男と間違えてしまいそうなほどゴツゴツしていた。
「悪いな。こういうの見ると、口を挟まずにはいられないんだ。えっと…あんたは?」
「あっ…えっと…わ、わたしは…ちょ、【超高校級のグラシエール】…
【超高校級のグラシエール】
氷川みるく…確か、今若者の間で話題のパティシエールだったよな?
超一流のパティシエールなんだが、特にアイス作りの才能は抜きん出ていて、パティシエの全国大会の氷細工部門で優勝したんだよな。
その時のスイーツが世界中で話題を呼んで、彼女が個人で経営しているジェラート専門店は数年先まで予約で埋まっているそうだ。
言っちゃ失礼だが、こんな人があんなに繊細な氷細工を作っていたとは…
「す、すみません…!わ、わたし、昔から図体ばかり大きくて度胸がないって言われてて…すみません、すみません!」
え、待って。
何もしてないのに泣きながら謝られてるんだけど…
うーん…この状況は非常にまずい。
とりあえず、一回氷川を落ち着かせよう。話はそれからだ。
「あー…とりあえず、一回謝るのやめてくれるか?」
「は、はいぃぃぃ…」
俺が落ち着かせようとすると、氷川はしゃくり上げながらも涙を拭った。
どうしてここまで自分を卑下するんだろうか。
「人には向き不向きがあるんだし、そこまで気にする必要ないんじゃないか?お前だって希望ヶ峰に選ばれた立派な超高校級なんだからよ」
「ふぅっ、ふぇええええ…!」
「えっ、俺今何か泣かせるような事言った?」
「だ、だっで…こんなに優しくじでもらっだごどなぐでぇ…!」
褒められただけで泣くほど普段からひどい扱いを受けてたのか…
何か可哀想になってきたな。
そんな事を思っていると、マスコットのような風貌の男が口を開く。
「ふぅん、これで一件落着…って感じかい?」
「どさくさに紛れてスカートの中を覗くな変態!死ね!!」
「はぐっ!!い、いい蹴り…」
「喜ぶなマジキモい!!」
マスコット男は、神無月にブチ切れられて思いっきり腹を蹴られていた。
腹を蹴られてむしろ喜んでやがる…やるなこいつ。
…じゃなくて、まあスカートの中覗いてたんだったら自業自得だわな。
「何やってんだあんた」
俺が声をかけると、マスコット男はゆっくり立ち上がった。
伸び切った坊主頭に無精髭、くたびれたシャツにズボンと全体的に見窄らしい印象を抱かせる。
「ふ、ふふ…自己紹介が遅れたね。おじさんは【超高校級のソムリエ】
【超高校級のソムリエ】
酒蔵飛露喜…確か一流レストランに専属してた事もある超一流ソムリエだったよな。
どんな種類の酒でも、一嗅ぎしただけで品種や製造年、産地等を一発で識別し、一度飲んだ酒の味は一生忘れない味覚を持っているといわれている。
それほどの人物が、どうしてこんなに見窄らしい格好をしてるんだろうか。
「あんた本当に一流レストランで働いてた事あるの?その汚い格好で?」
「ふん、おじさんにも色々あったのさ。詳しくは聞くなよ」
色々、ねぇ…
まあ多分良い事ではないんだろうな。
っていうか、酒蔵って絶対俺達より歳上だよな?
一人称『おじさん』だし、そもそもソムリエの才能の時点で多分成人してる。
「なあ。酒蔵って、一応成人してるんだよな?それってまさか…」
「そうとも。おじさんはね、あんちゃん達より人生の先輩なんだよ。人生相談とかあったら何でも聞くよ」
「何それカッコ悪い!それってさ、要はいい大人が何回も留年したって事でしょ?カッコ悪すぎ〜!」
神無月が図星を突くと、見るからに酒蔵の顔が引き攣った。
酒蔵には悪いが、俺も少し笑いそうになってしまった。
「ああ、いやいや。違うんだよ?ほら、仕事で忙しくて出席日数が足りなかったってだけで…別に頭悪くて落第したわけじゃないからな!?」
すごく必死に言い訳してるけど、多分成績も足りなかったんだろうな…
顔にそう書いてある。
「ほら、そんな事よりも早く別の人のところ回ってきな」
あ、あからさまに話題を変えた。
別の人、ねえ…
あ、そういえばまだボイラー室とトラッシュルームには行ってなかったっけか。
まだ誰かいるかもしれないし、一応寄っておこう。
「行こうぜ、暗野」
「うん……」
俺は、暗野と一緒に厨房と食堂を後にし、まずはボイラー室に向かった。
ーーー 登場人物 ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級の???】
【超高校級のギャル】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン
【超高校級の原型師】
【超高校級の心霊学者】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級のソムリエ】
アト5人