インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
「ん………」
強化合宿9日目。
俺は、相変わらず自分の部屋のベッドで目を覚ました。
時間を確認すると、5時過ぎ。
…そろそろ行くか。
この日の朝食係だった俺は、朝食を作りに、ホテルの食堂に向かった。
「おはようございます東野様」
「おはようございます、東野くん」
俺が厨房に顔を出すと、今日の朝食係の梶野と氷川が挨拶を返してくれた。
三人で朝食を作っていると、他のメンバーが集まってくる。
リーゼに着付けてもらった神無月は、リーゼと一緒に食堂に来ており、消灯寺、安室、酒蔵、樺戸も来た。
打田と的凪は相変わらずだったけど、今日は珍しく六道が時間通りに来た。
六道は、船を漕ぎながら新しいゲーム機でゲームをしていた。
「六道、何してるんだ」
「この前手に入れたゲーム、プレイしてる……ぐごぉ……」
「きゃはは!千春ちゃんは相変わらずゲーム中毒のナードだね!」
「なーど…」
神無月は相変わらず口悪いな……
いつも通りのメンバーが揃うと、俺達は朝食を食べ始めた。
今日も、氷川が作ってくれたジェラート付きだ。
昨日は和朝食に合わせてきなこと餅を使ったジェラートだったけど、今日はチョコレート味だった。
甘さ控えめだから、甘いのが苦手でもペロリと食べられる。
数ヶ月待ちのジェラートをタダで食べられるなんて、至福だなぁとつくづく思う。
◇◇◇
《スポーツセンター 1F スキージョウ》
朝食が終わった後、俺はこの日もスポーツセンターの探索をした。
すると、ゲレンデの近くに誰かがいるのを見つけた。
神無月だ。
「きゃはは、地味な顔がいると思ったら潤ちゃんじゃん!こんなとこで何してんの?」
開口一番失礼な奴だな…
「何か手掛かりがないか探しにきたんだよ。お前こそ、何してるんだ?」
「雪遊びしてるんだー。あのね、雪を集めて変態ヒロキの靴の中に入れてあげるの!」
何を言い出すかと思えば、やっぱりイタズラする気満々だったか。
「やめてやれよ、流石に気の毒だから」
「えー、何で?あいつがセクハラするのがイケナイんだよ?」
それはそうだけど…
「潤ちゃん今どうせ暇でしょ?椛が一緒に遊んであげる!」
え、えぇ…
俺に拒否権は無いのか…
俺は結局、小一時間神無月の遊びに付き合わされた。
メンコと源氏カルタで遊ばされたけど、結果から言うと惨敗だった。
「きゃはは、潤ちゃんよわぁ〜!ざぁこ、ざぁこ!」
「お前が強すぎなんだよ…」
「潤ちゃん負けたから罰ゲームね!椛に何かちょーだい!」
「え、えぇ……」
何か、って言われてもな…
何かプレゼントできそうなものあったかな。
あ、そうだ。
そういえば、六道からもらったクレーンゲームの景品があったな。
俺は、愛蔵リアクション芸集を神無月にプレゼントした。
「わーい、これ椛の好きなやつ!ありがとう潤ちゃん!」
良かった、喜んでくれたみたいだ。
えっと…何を話そうかな。
「カルタやってて楽しいか?」
「うん!楽しいよ!大人の負け面見るのがすっごく面白いんだよねー!」
おぉう…やっぱりいい趣味していらっしゃる…
…けど、神無月は何でこんなに大人を嫌ってるんだ?
そうさせる何かが、こいつにあったのかな。
「何でそんなに大人が嫌いなんだ?」
「………椛の人生をメチャクチャにしたからだよ」
…え?
「あたい、名家のお嬢様って周りには言われてるけど、本当は全然そんなんじゃないんだよね。あたい、クソ姉貴4人とクソ兄貴3人いるんだけど、あたいだけ母親が違うから家ではすっげーいびられてたんだ。お手伝いさん達は皆クソジジイにお金もらってたから誰も助けてくれなくって。……おばあちゃんだけは、あたいを心配して慰めてくれたけど。クソジジイは昔っから典型的な亭主関白野郎だったから、おばあちゃんにも偉そうな態度取っていじめてたんだよね。…多分おばあちゃんがあたいの事助けてくれたのは、あたいと同じだと思ったからじゃないのかな」
血の繋がった家族にそんな事を…
酷い話だな…
「昔はあたいも小さかったから、家族にいじめられてる事を何とも思ってなくてさ。それが当たり前だと思ってた。だけど、学校に通って初めて自分が置かれてる環境が異常だって気付いて、そこでやっと洗脳が解けたんだよね。その日の夜、クソジジイがクソ兄貴と話してるのをたまたま聞いちゃってさ。その時、あいつらこう言ってたんだよ。『あいつは世間知らずのガキだから何も気付かない』って」
「ひでぇ……」
「悔しかったよ。生まれてからずっとあいつらの思い通りになってたのが、悔しくてたまらなかった。その時決めたの。椛をコケにしたクズ達に復讐しようって」
「復讐って…」
「舐め腐ってた子供が自分達よりすごいって証明されたら、あいつらも悔しいでしょ?だからね、あたい、昔から得意だったカルタの大会に黙って出場して、優勝したの。そしたらあいつら、何て言ったと思う?」
「さ、さあ?」
「『良かったな。首の皮一枚繋がって』、だってさ。ホントふざけんなだよね。こっちはあいつらを完全否定する為に頑張ってきたのに、あいつらそれを屁とも思っちゃいないんだよ。だからあたい、決めたの。カルタの大会で世界チャンピオンになって、その瞬間あいつらにされた事全部バラしてやろうって。あいつらやたら世間体は気にする奴等だから、炎上したら外も出歩けないだろうな〜」
神無月は、無邪気な笑顔で言った。
神無月は、自分の人生を狂わせた奴等に復讐をする為に、カルタの大会で優勝し続けていたのか…。
血の繋がった家族に家族とも思われない苦痛は、俺にもわかる。
俺自身がそうだったから。
だけど、だからって関係ない大人まで憎んでしまったら、神無月が一番つらくなるだけだと思う。
…それに……
「…なあ、ひとついいか?」
「なに?」
「お前は本当に、カルタをしている時に復讐しか頭にないのか?それは、お前に真剣に挑んでくる相手に対して失礼な事だと思った事はないのか?」
「…ふん、勘違いしないでよね。あたいだって、そこまで落ちぶれてないよ。試合中は、あいつらの事なんか忘れて全力で楽しもうって決めてるから。いくら相手があたいよりずーっと格下だろうと、全力で楽しんで、全力で勝つ。だから面白いんじゃん。そうじゃなきゃ、今でも続けてないよ」
…ああ、そうか。
たとえ復讐心を燃やしていても、プロとして全力で楽しむ事を忘れない、それが神無月椛という人間なんだ。
意外とちゃんと自分の考えを持ってるんだな。
俺とは大違いだ。
「話してくれてありがとう、神無月」
「きゃはは!また遊ぼうね、潤ちゃん!そうだ、今度は甘いもの持ってきてよ!」
「…はいはい」
相変わらずだな、神無月は…
でも何だか少し神無月と仲良くなれた気がする。
《神無月椛との好感度が1アップしました》
◇◇◇
《スポーツセンター 2F クラブハウス》
午後は、2階の探索をした。
2階のクラブハウスにも、モノモノマシーンが置かれていた。
…メダル余ってるし、何か引いてみようかな。
俺が引いたのは、子猫のヘアピンだった。
ヘアピンか…
自分では使わないんだよな。
俺がそんな事を考えながら探索をしていると、人に会った。
氷川だ。
「あ…ひ、東野くん…」
「氷川。こんなところで何をしてるんだ?」
「あ、あの…ここのクラブハウスにも厨房があったので…調べてみようかと…」
氷川は、相変わらずオドオドした様子で話した。
俺は、氷川と過ごす事にした。
「…あの、もしよろしければ、何か作りましょうか?」
「いいのか?」
「わたし、お菓子作るのが好きなので…」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺が言うと、氷川はササっとスイーツを作ってくれた。
チョコレートをふんだんに使ったサンデーだが、下手なスイーツ店のそれより数倍美味しく感じられた。
氷川のスイーツだからなのか、頭を使う作業をしていたから身体が糖分を欲していたのか…多分両方だな。
「…美味いな」
「あっ、ありがとうございます!」
「そうだ。スイーツのお礼と言っちゃなんだが、プレゼントがあるんだ」
「プレゼント?わたしにですか…?」
俺は、さっき手に入れた子猫のヘアピンを氷川にプレゼントした。
「あ、あの…本当に受け取ってしまっていいんですか…?」
「俺が持ってるより、使う奴が持ってた方がいいだろ?それ、つけてみたら可愛いと思うぞ」
「あ、ありがとうございます…!」
氷川は、目に涙を浮かべながら震えていた。
喜んでくれた、のかな?
何を話そうかな…
「氷川は何でジェラート職人になろうと思ったんだ?」
「ええっと…わたしの家は、父も母もスイーツ職人なんです。だからなのか、小さい頃からスイーツに囲まれて育ってきて…それで、自然とわたしもスイーツを作るようになったんです。最初は色々挑戦してたんですけど、一番上手くできたのがジェラートだったので、ジェラート職人になりました」
親の跡を継いで、自分のやりたい事を見つけたわけか。
…でも、そう言う割には声色が暗いな。
「…すみません、こんなつまらない話しかできなくて…」
「いや、つまらなくないよ。俺が聞いたわけだし。…それより、これは答えたくなかったら答えなくていいんだけど、どうしてそうやってすぐに謝るんだ?お前ほどの才能があれば、人に怯えずに堂々としていられるだろ?」
俺が尋ねると、氷川は俯いてしばらく黙り込む。
…やっぱり、聞かれたくない事だったかな。
俺は、氷川に質問した事を後悔した。
だけど氷川は、涙を流しながらポツポツと話し始めた。
「……わたし、居場所がないんです。両親には虐待されてて、前の学校のクラスメイトにはいじめられてて…っ」
「え…?」
「わたし、見ての通り、生まれつきの病気でこんななりをしていて…それで、『お前じゃ客引きできないから外に出るな』って言われて、外に出ようとすると叩かれて…っ、学校でも、この見た目が原因で、トイレで水をかけられたり、服を汚されたり…っ、うっ、うぅっ…!」
「おい、もういいよ、話さなくて!」
俺は、慌てて氷川に話をやめさせた。
すると氷川は、泣きじゃくりながらも呼吸を落ち着かせる。
「…ありがとうございます。…でもこうなったのは、わたしが悪いんです。きっと、病気のせいだけじゃなくて、小さい子供でも当たり前に出来るような事でも何もできないから…親やクラスメイトや先生に、いつも愚図だ馬鹿だって怒鳴られて…わたしが、醜くて無能なばっかりに…ひぐっ、えぐっ…」
氷川は、肩を振るわせながら語った。
泣きながら語る氷川を見て、俺はかつての自分を思い出した。
気がつくと、俺は氷川の目の前に身を乗り出して声をかけていた。
「氷川、今までつらかったな。でも大丈夫だ。ここには、そんな事でお前をいじめる奴なんかいないから。………多分」
「東野くん…」
神無月とか打田とかはどうかわかんないけど…大丈夫だろ、多分。
「それにしても、見る目のない奴しかいなかったんだな」
「え……?」
「お前は醜くないし、無能でもないよ。あんなに美味いジェラートを作れるんだ、それってお前にしかできない事だと思う。それに、俺がスイーツを食べた時、幸せそうな顔をしてくれただろ?お前は、可愛いんだよ」
「っ…………」
俺が言うと、氷川は目を見開いてポロポロと泣き出した。
思った事言っただけなんだけど…そんなに泣くような事言ったかな。
「……すみません…ありがとうございます。おかげで気が楽になりました」
良かった、少し表情が明るくなったみたいだ。
「あ、そうだ。もう一つ聞こうと思ってたんだけど、お前、神無月とは知り合いだったんだよな?」
「…はい。中学時代のクラスメイトです」
「やっぱり、その頃から…「いじめられてません」
すごい食い気味だな…
でも、いじめられてないってどういう事なんだ?
俺には、神無月が氷川をいじって遊んでいるように見えたんだが…
「わたし、神無月さんにいじめられてなんかいません。むしろ神無月さんは、いじめられていたわたしを助けてくれたんです」
「助けてくれたって…でもお前、普段からいじられて…」
「神無月さんは、不器用なだけなんです。つらい事があった人だから、舐められないようにキツい態度を取ってるんです」
なんだ、そういう事だったのか。
何にせよ、お互い仲良くしてるつもりなら、俺がこれ以上口を挟む事もなさそうだな。
「氷川、話してくれてありがとな」
「こ、こちらこそ…わたしなんかの話に付き合ってくださって、あ、ありがとうございます…」
氷川は、頭を下げながら自信なさげに言った。
そんなに卑下する事ないのに…。
でも、氷川と仲良くなれたみたいだ。
その日は、そのまま氷川と一緒にレストランに戻って夕食作りをした。
氷川と一緒に作った夕食は、皆に好評だった。
夕食が終わった後は、部屋に戻って疲れた身体を癒して眠りについた。
《氷川みるくとの好感度が1アップしました》
〜モノクマ劇場〜
『やっほー!モノクマ&モノルナの!モノクマ劇場の時間だよ!』
『妹よ、アイスクリームって実は太りにくい食べ物だって知ってた?』
『え、そうなの?甘いし脂肪分とか入ってるし、太るんじゃないの?』
『身体が冷えると、体温を上げる為に代謝が活発になるから脂肪が燃焼しやすくなるんだって。あと、バニラアイスのバニラに含まれるバニリンは、食欲とか脂肪の蓄積とかを抑える効果があるらしいよ』
『そっかぁ、じゃあ今日から毎日アイスを12ダース食べれば安心だね!お兄ちゃん!』
『モノルナ…オマエ、天才か?』
「うぅ……」
今日も何だか変な夢を見た気がする。
合宿生活も、これで10日目だ。
そろそろこの金ピカのホテルも見慣れてきた。
いつもの時間に起きた俺は、着替えて食堂に顔を出した。
《スポーツセンター 1F モーテル》
マーケットで買い物を終えた後は、スポーツセンターの探索をした。
今日はモーテルを探索するか…
俺は、モーテルの設備を順番に見ていった。
モーテルには、宿泊施設だけじゃなくて休憩スペースみたいな場所もあって、モノモノマシーンも置いてあった。
モノモノマシーンを引くと、桜の花束が出てきた。
俺が宿泊施設に移動すると、既に誰かが探索をしていた。
リーゼだ。
「あら、東野さん。ごきげんよう」
「リーゼ。ここで何をしてたんだ?」
「少々調べ物を。…あの、わたくし、今までこのような場所に来た事がなくて…よろしくお願いします」
「あ、ああ」
何をよろしくすれば良いんだ…?
何というか、日本語が若干不自然な気が…
ああ、そういえば、リーゼって日本が好きって言ってたよな?
もしかして、桜も好きだったりするかな?
「リーゼ、プレゼントがあるんだが、ちょっといいか?」
「プレゼント?わたくしにですか?」
俺は、モノモノマシーンで手に入れた桜の花束をリーゼにプレゼントした。
するとリーゼは、パァっと表情を明るくして喜ぶ。
「まぁっ、これをわたくしに?ありがとうございますわ!」
ありがとうございますわ…?
やっぱり若干日本語が変なんだよな。
でも、喜んでくれたみたいだ。
俺は、リーゼと一緒に過ごす事にした。
「リーゼはやっぱり、実家が音楽一家だからオルガニストになったのか?」
「そうですわね…父も母も音楽家でしたので、それでわたくしも自然と音楽に興味を持ったのかもしれません。色々と楽器を試してみて、一番自分に合っていると感じたのがオルガンでしたので、オルガニストになりましたの。初めてお客様を招いて演奏した時は、大変喜んでいただけて嬉しかったのを今でも覚えています」
親が、ね…。
俺も母親が小説家だったから小説家になったけど、俺の家とは大違いだ。
きっと、優しくて気品のある両親に育てられたから、リーゼ本人も優しくて気品がある性格になったんだろうな。
「ちなみにどうして日本について勉強しようと思ったんだ?」
「お母様が昔日本に留学していて、今でも日本人のご友人と交流を持っているからですわ。お母様のご友人は皆さんとても良い方で、わたくしが今まで知らなかった事を教えてくださるのがとても刺激的で…わたくしもいつか日本に留学してみたいと考えたんですの。まさか、お母様の母校に通えるとは思いませんでしたけれど」
母校って…まさか、リーゼの母親も希望ヶ峰の…?
…あ、思い出した!
リーゼの母親って、確か世界的に有名なヴァイオリニスト、ローゼ・ベルゲングリューンだよな。
テレビで見た時は、リーゼと瓜二つの美人な貴婦人だったという印象を受けたが…確か、俺達が入学する24年前に【超高校級のヴァイオリニスト】としてスカウトされていたはずだ。
って事は俺達、親が超高校級同士って事か…
「数ある日本の学校の中でも、希望ヶ峰学園は最高峰の高校だと聞いておりますわ。何でも、最先端の設備が充実していて、才能を伸ばす為の研究ができるそうではありませんの!そんな学校にスカウトをいただけるなんて…まさに感謝感激雛あられですわ!」
「それを言うなら、雨霰、じゃないか?」
「あっ、それでしたわ!」
いや、どんな間違え方だ。
雛あられ食っておいしいな〜じゃないんだよ。
さっきから聞いてて思ったけど、ちょっとところどころ抜けてるとこあるよなぁ。
ううむ、これが本物の天然か…
「お見苦しいところをお見せしてしまい、ごめんあそばせ」
「ああ、いや、それは別に…」
「…それと、わたくしが日本に滞在したい理由は他にもあるんです」
「理由って?」
「知っての通り、わたくしは世界的に有名な音楽家の一族の一員ですの。普段からお見合いをさせられたり、大統領が出席する式典や他国の王室にお招きいただく事もあるので、気を遣わなければならない場面が多くて…もちろん、わたくし自身の才能や肩書きには誇りを持っていますし、それ自体を否定するつもりはございませんわ。ですがわがままを言えば、普通の女子高生として青春を楽しみたいんです。せっかく希望ヶ峰学園にスカウトをいただいたのですから、ここで出会った皆さんと青春ができればと思っていたのですが…」
まあ、そうだよな。
俺もそこそこ名の通った家に住んでるから友達からは羨ましがられるけど、名家には名家なりの苦労がある。
社会的地位の高い人間と顔を合わせる事が多いからマナーの勉強や社会情勢のチェックは必須だし、家によっては政略結婚をさせられる事だってある。
まあ俺の場合、今は缶詰めだからそんな事もなくなったけど…
俺ですら気疲れする事が多かったんだから、世界屈指の資産家のリーゼはもっと苦労してきたはずだ。
立ち振る舞いが洗練されているから大人びて見えるけど、本当は歳相応に青春に憧れる女の子なんだ。
「それにしても、日本は本当に素晴らしい国ですわ。特にサブカルチャーは他の国に決して真似できないものが多いです。ヱヴァンゲリヲン新劇場版なんて、もう20回は見ましたわ!」
20回!?
アニメ好きだとは聞いてたけど、どんだけ好きなのよ…
リーゼは何か安室と仲良さげだけど、アニメオタク同士何か分かり合えるものがあるんだろうか。
「ちなみに、前からちょっと気になってはいたんだが…その口調って、もしかしてアニメの影響?」
「はい!お嬢様キャラ?はこのような口調を使うとアニメで学んだので!」
なるほどな…
やっぱりアニメの影響だったのか。
何か、話しているうちにリーゼと仲良くなれた気がする。
《リーゼロッテとの好感度が1アップしました》
◇◇◇
そのまま2、3時間くらいスポーツセンターを探索していると、ちょうど昼飯時になった。
俺が探索を一度探索を切り上げてレストランに行こうとすると、酒蔵が話しかけてきた。
「東野クン、ちょっといいかい?」
「え、何だよ…」
正直、酒蔵が話す事といえばまともな事じゃない気がする。
まあでも、決めつけは良くないな…。
一応聞いてみるか。
「実はさっき、小耳に挟んだんだけどね?これから女子諸君がプールで女子会をしに行くみたいだからさ。一緒に待ち伏せに行かない?」
「え、いやいや…何で俺達が女子会に待ち伏せに行くんだよ」
「そりゃあ、カワイイ女子達の水着姿をこの目に収める為に決まってるだろ?」
いや、最低かこいつ!?
お前みたいなのがいるからこっそり女子会しようって話になってるんじゃないのか!?
それを待ち伏せって…最低か!?
とにかく、俺はそんなくだらない事に参加するつもりは毛頭ない。
…ないからな。
◇◇◇
《スポーツセンター 1F プール》
…はい、結局連れられて来ました。
いや、だってあまりにも酒蔵がしつこくて逃がしてくれなかったし…
断じて女子の水着に釣られたわけじゃないからな。
で、それはいいんだけど…
「何で全員いるんだよ!?」
いやいやいや、おかしいだろ!?
え、待って?
何で男子全員いるの!?
これ、女子会だよな?
樺戸と、多分六道目当ての的凪はまだわかる。
でも梶野に消灯寺、何でこういうの興味なさそうなお前らがここにいる!?
「ああ、オレが誘ったんだ!ヒロキがプールでトレーニングしようって誘ってくれたから一緒に来ないかって!」
「僕は別にトレーニングしたかったわけじゃないけど…」
なるほど、酒蔵の奴、樺戸を誘う為にトレーニングするって嘘ついたのか。
でもこれじゃもう女子会じゃないだろ…
何だか女子に申し訳ないな。
俺がそんな事を考えていると、更衣室の方から楽しそうな話し声が聴こえてくる。
「きゃははは!早く来なよ〜、みるくちゃん!」
「ま、待ってください神無月さん…!」
話し声が聴こえてくると、酒蔵は目の色を変えて更衣室の方を振り向いた。
早速、更衣室から二人が出てくる。
神無月と安室だ。
神無月は、黄色とオレンジ色のグラデーションがかかったフリルの水着を、安室はタンクトップとスパッツを合わせたような黒地に紫のラインが入った水着を着ていた。
「はぁ!?ちょっと、何で男子がいるんだよ!?意味わかんない!死ね!!」
「貴様ら…まさか待ち伏せしていたのか?」
神無月と安室は、ゴミを見るような目で俺達を見てきた。
…まあ、そうだよな。
俺が二人の軽蔑の眼差しに心を痛めていると、今度は氷川がやってくる。
「ま、待ってください二人ともぉ…!」
氷川は、ピンクのフリル付きのビキニを着ていた。
おぉ、すごい筋肉…
「ロリ体型の神無月ちゃんと安室ちゃん…ムキムキマッチョの氷川ちゃん…どっちも悪くない」
うん、酒蔵はいつも通りだな。
俺が酒蔵に呆れていると、今度は打田がやって来る。
「こいつら何バカやってんの」
打田は、ウェットスーツを着ていた。
普段露出度高い格好してるから、こうして露出度低い格好してこられると逆に新鮮というか、何というか…
「ウェットスーツだと…!?悪くないじゃない」
「殺すぞ」
酒蔵は、打田にものすごく殺気を向けられていた。
うん、これ以上は何も言わないでおこう。
「打田、きてたんだ…」
「別に。暇だったし。つーか、何であんたらここにいるわけ?男がいるとか聞いてないんだけど」
「う…」
仰る通りですね…
つーか、元々女子会の予定だったのに何やってんだ俺達。
「まあまあ、打田さん。今から帰ってもらうのも悪いですし、一緒に遊びませんこと?当初の予定とは違ってしまいましたが…」
次に来たのは、リーゼだ。
リーゼは、スクール水着を着ていた。
何というか、ただのスクール水着のはずなのに、背徳感凄くて直視できないな…。
「あえてのスクール水着っ…!?」
「死ね変態!!」
酒蔵は、案の定安室に刺されていた。
まあ、これ以上は深く言わないでおこう。
「ねむい………」
最後に来たのは、六道だ。
六道は、白いフリルのビキニを着ていて、リュックを背負っていた。
何というかその、胸が…
「真打の登場だぜぇ!!」
「うおおお…!」
「千春ちゃんが一番可愛いなぁ」
酒蔵はすごくはしゃいでいて、樺戸は顔を赤くして六道の胸を凝視している。
的凪は…うわっ、すごい写真撮ってる。
お前、それは流石にやばいからな…?
「何して遊ぶー?」
「では水球はどうでしょう?」
「ねる…ゲーム」
女子達は、プールにあったボールで水球をして遊んだ。
六道はずっと浮き輪の上でパソコンいじってたけど…
「尊い…僥倖…っ、顔が良くてありがとう千春ちゃん…っ!」
的凪は…うわ、ボロ泣きしてる…
俺、もうこいつの情緒が理解できねえよ…
「ぐへへ…よりどりみどり…」
うわっ、こっちもキモいな。
本人達の許可なく写真撮るなよ酒蔵…
俺が引き気味に酒蔵を見ていると、酒蔵がこっちを振り向いて話しかけてきた。
「おっ、東野クン。悪いけど、おじさんの背中にオイル塗ってくれないかい?」
俺は、酒蔵を無視してその場を離れた。
あいつ、誰でもいいんじゃねえか。
というか、何で室内なのにオイル塗る必要があるんだよ。
俺が酒蔵から離れると、女子達の会話が聞こえてくる。
「でも6人だけじゃつまんなくない?」
「おまけに、6人中4人はスポーツ未経験者だしな。せめてあと二人欲しいな…」
「でしたらわたくしがお誘いしてきますわ!」
「え、いいんですか…?」
「ええ、どすこい!ですわ!」
「ねえねえ、それを言うならどんとこいじゃないかなー?」
女子達が微笑ましい会話をしたかと思うと、リーゼが樺戸と消灯寺に話しかける。
「樺戸さん、消灯寺さん。向こうで一緒に遊びませんこと?」
「え…でも僕、運動苦手なんだけど…」
「大丈夫ですわ!わたくしも得意ではありませんから」
「それじゃダメじゃん」
「楽しそうだな!オレはやるぜ!」
「…僕も行く」
「お二人とも…」
「…別に、他にやる事ないし」
消灯寺は…ああ、完全に堕ちたな。
二人は、リーゼに誘われる形で女子達に混ざった。
…わけなんだが。
「おい、リーゼロッテ。何故此奴を連れてきた…あと貴様も貴様だ、何故来た」
「は?別に僕の勝手でしょ」
「貴様では足手纏いだ。己の実力を客観視できないとは、哀しいな」
「安室さん…僕、君嫌いだよ」
うわぁ、安室と消灯寺すごいバチバチしてる…
あいつら、リーゼの事になると途端に仲悪くなるな。
樺戸は…
「えー、なになに?ラムジちゃん来たのー?」
「よろしくお願いします…」
「らむじ遊戯王カードあげる」
「うわああああああ」
「お、おじさんも混z「くたばれ」
うん、樺戸は案の定女子達のおもちゃにされてる。
正直羨ま…ゲフン、こればかりは日頃の行いだな。
俺は断じて酒蔵のように見境ない奴じゃないからな!
その後も、俺達はプールで遊んだ。
何だか、皆と仲良くなれた気がする。
◇◇◇
プールの後、昼食を食べて探索を再開していると、今度はホテルのレストランからキャッキャと騒ぐ声が聞こえてきた。
そして何やら、甘い香りも漂ってくる。
気になってレストランを覗こうとすると、リーゼが出てきて話しかけてくる。
「あら、ごきげんよう東野さん」
「ああ、リーゼ。えっと…何してるんだ?何か甘い匂いがするんだが…」
「ああ、今、女子全員でお菓子作りをしているんです。氷川さんが提案してくださって…」
そう言ってリーゼがレストランの扉を開けると、何やら女子達が楽しそうにお菓子作りをしている光景が目に飛び込んでくる。
「フッ…見事な腕前だぞ、氷川…うまっ」
「きゃはは、みるくちゃんはお菓子作りだけが取り柄だもんねー!」
「重曹うめえ」
「あっ、皆さん…!つまみ食いしないで…!」
「くだらない………うまっ」
「う、打田さんまで…!」
…うん、俺が見た限り、真面目にお菓子作りしてるのは氷川だけだな。
他の奴等はお菓子食ってるだけだし、六道に至っては重曹をそのまま舐めてやがる。
「氷川さんの提案で、女子全員でお菓子を作って皆で一緒にいただきましょうって事になったんです。元々出来上がったら男子の皆さんもお誘いするつもりでしたし、その、もしご迷惑でなければ男子の皆さんを呼んできていただきたいのですが」
「ああ、それは構わないけど…そのお菓子、すごい勢いで減ってるけど大丈夫か?」
「えっ!?」
俺が言うと、リーゼが慌てて振り向く。
さっきまでテーブルの上に綺麗に並んでいたお菓子は、瞬く間に食い尽くされた。
「ねえみるくちゃん、おかわりまだ?」
「ああっ、せっかくあんなに作ったのに…!これじゃあスイーツビュッフェできないですよぉ!」
「氷川さん、まだオーブンにザッハトルテが入っていますわ!それで何とか乗り切りましょう!」
うーん…何かバタバタしてるけど、大丈夫かな。
◇◇◇
小一時間が経った頃、俺が男子を集めてレストランに戻ると、テーブルの上には花瓶とザッハトルテが一個ちょこんと乗っているだけだった。
俺がみた感じだと、ジェラートやショートケーキ、シュークリーム、プリン、チーズケーキ、フルーツタルト、カップケーキなんかもあったはずだが…女子達が全部食っちまったみたいだな。
「これはまた随分と…華やかなスイーツビュッフェですね」
「すみません、すみません…!」
「こいつらがつまみ食いしたのが悪い」
「打田!貴様、我等を裏切るつもりか!?」
梶野が目元をひくつかせながら言うと、氷川が平謝りした。
打田と安室は言い争ってるけど…お前ら二人とも食ってたろ。
つーか六道に至ってはずっとこっち見ながらシュークリーム食ってるし…せめてバレないように食えよ。
俺達の微妙な空気を察してか、リーゼがテーブルの上のザッハトルテを勧めてくる。
「あの…わたくし、氷川さんに作り方を教わって…何回も失敗しましたが、これでもそれなりに上手くなりましてよ?」
リーゼがおずおずとケーキを勧めてくると、俺達は自分の分のケーキを取り分けた。
十二等分にしたから一人あたりの取り分はだいぶ少なかったけど…
ホイップクリームをつけて、口に運ぶ。
…あ、美味い。
高級レストランとかケーキ店で出せるかは微妙だけど、多分喫茶店とかで出てきたら何の文句もなく完食できるクオリティだ。
「うお、何だこれ!?すげえ美味え!」
「紅茶によく合いますね」
「リーゼちゃん、普段からお菓子作りはするのかい?」
「ええ、まあ…趣味の範疇ですし、とても人にお出しできる腕ではありませんが」
「そんな事ないよ、キミ才能あるよ」
「………」
他の男子達にも、ケーキは好評だった。
元々少食な上に和食しか食べない消灯寺も、無言であっという間にケーキを完食した。
反応からして、多分気に入ったんだろう。
…ただ一人を除いては。
「グラズールの再結晶化が甘いなぁ。ザッハトルテはチョコレートの甘味や苦味とアプリコットの酸味が生み出す複雑な味わいが売りだけど、何よりグラズールのシャリシャリした食感が命なのに。あ、まさかとは思うけど、温度管理に温度計使ったりしてないよね?本当に素人のしょうもないこだわりなんだけどさ、ボク、料理にいちいち温度計使うのは…「クソなぎだまれおまえのうんちくは誰も聞いてない」
的凪…お前、ちゃんと完食しておいて何言ってんだ。
あとどうでもいい事だけど、メチャクチャスイーツに詳しいな。
そういやこいつ、甘党だったっけ。
「きゃはは、リーゼちゃんって意外とお菓子作れるんだね!あたい、てっきり箱入りのお嬢ちゃまだから包丁握った事もないとか言い出すのかと思い込んでたよ〜!」
「一言二言多いぞ貴様」
「また今度お菓子作ってよ!そしたら花札教えてあげる!」
「はい、是非!」
神無月とリーゼは、俺が知らない間にすっかり仲良くなっていた。
異文化を理解するっていうのが、お互いに良い刺激になったんだろうな。
何だか、一日で皆との距離が一気に縮まった気がする。
こうして、俺達は今日一日楽しい時間を過ごした。
〜モノクマ劇場〜
『やっほー!モノクマ&モノルナの!モノクマ劇場の時間だよ!』
『お兄ちゃん…』
『妹よ。一体どうしたというのだこんな時間に』
『アタシ…寝れないみたいなの。お兄ちゃんのせいだからね?責任取ってよね!』
『そうかそうか、眠れないのか。なら、お兄ちゃんが妹の為に最高にロックでちょっとエッチな子守唄を歌ってやろう。今夜は寝かさないぞ』
『きゅん…っ』
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン
【超高校級の原型師】
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
【サポートAI】アルターエゴ・Ω ← New‼︎
ノコリ13人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
以上6人
推しがいたら教えてくんなまし
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東野潤_小説家
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暗野斬良_???
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殉前詩乃子_ギャル
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神風大和_司令官
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薬師寺療香_軍医
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リーゼロッテ_オルガニスト
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安室明日奈_原型師
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消灯寺霊庵_心霊学者
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山脇ゆか_絵本作家
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梶野運命_ディーラー
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神無月椛_カルタ師
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氷川みるく_グラシエール
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酒蔵飛露喜_ソムリエ
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樺戸ラムジ_カバディ選手
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内闘力也_プロレスラー
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打田清美_狙撃手
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的凪梢_幸運
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六道千春_ゲームプログラマー
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モノルナ_引率教師