インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿   作:M.T.

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(非)日常編⑤

合宿生活11日目。

 

「おい。何だこの手は。リーゼロッテはこれから俺様とアニメを見るのだよ」

 

「は?そんな予定ないんだけど。リーゼさんはこれから僕と心霊現象の調査をするんだよ」

 

安室と消灯寺は、相変わらず目の前でバチバチしていた。

こいつらホントに水と油だな…

当のリーゼは困惑してるし…

これが俗に言う『私のために争わないで!』ってシチュエーション…いや、そういう事軽々しく言える空気じゃないな。

二人とも殺気すごいし。

 

「あの、お二人とも。わたくし、午前中は神無月さんにカルタを教えてもらう約束をしておりますの」

 

「きゃははは、昨日お菓子食べたからそのお礼!」

 

「「………」」

 

ああ、うん。

そんな気はしてた。

いや、そんな目でこっち見るなお前ら。

 

「お、おじさんも混ぜて…「死ね変態!!」あひんっ、いい蹴り!」

 

酒蔵が出しゃばってくると、案の定神無月にキツい蹴りをお見舞いされた。

こいつ…脛を蹴られて笑ってる…だと?

どんなメンタルしてたらそんな笑顔ができるんだよ…。

 

「千春ちゃんっ、喉渇いてない?」

 

「だまれ今エロゲでいそがしい」

 

「六道様、お茶要りませんか「もらう」

 

向こうも向こうでカオスだし…

俺、よくこのメンツと今まで一緒に過ごしてこれたな。

いや、マジで。

俺がそんな事を考えていた、その時だった。

 

『えー、オマエラ!今すぐスポーツセンターに集合してください!』

 

何だ…?

死体発見アナウンスとも違うしな。

朝っぱらから何だっていうんだよ…

俺達は、疑問に思いつつも身支度を整えてスポーツセンターに向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺達がスポーツセンターに行くと、ぴょこんっとモノクマとモノルナが現れる。

流石に、もう慣れすぎてリアクションも出てこない。

 

『お、やっと全員来ましたね!』

 

「ぐぅぐぅ」

 

「寝るなって六道」

 

「私達をここに集めて、一体何の用です?」

 

梶野は、腕を組んだまま早く終わらせてほしいと言わんばかりに尋ねる。

するとモノクマが不気味に言い放つ。

 

『うぷぷぷ、オマエラには今日からこのオリンピア・スポーツセンターで生活してもらいます!』

 

「はぁ!?いきなり何言い出すかと思いきや、何だよそりゃあ!?」

 

「ふざけんじゃないよ、なんであたいがここで暮らさなきゃいけないわけ!?」

 

モノクマが言うと、酒蔵と神無月が反論する。

するとモノルナがヘラヘラ笑いながら話を続ける。

 

『いやー、最近アンタ達コロシアイにやる気ないみたいだからさ。ちょっとはやる気出してもらおうと思って!アンタ達は、コロシアイが起こるまでここから出られないよ〜!』

 

「ふん、くだらない。こんなところに閉じ込めたって、今更何か起こると思うわけ?」

 

モノルナが言うと、打田が呆れたように言い放つ。

確かに、ここにはクラブハウスもモーテルもあるし、暮らす上では何の不都合もない。

行動制限をしたところでコロシアイが起こるとは思えない。

すると、俺達がそう考える事さえも見透かしたようにモノクマが言い放つ。

 

『ん?オマエラ何か勘違いしてない?誰がここで過ごすのが今回の動機だって言った?』

 

「まさか…」

 

嫌な予感がした。

こいつらは、また俺達がコロシアイをする為のきっかけを作るつもりなんだ。

神風と薬師寺がそうだったように。

 

『今回の動機はコレです!テッテレ〜!ゲ〜ム機〜!』

 

モノルナが魔法のステッキを振り回すと、キラキラと輝く煙が現れる。

煙の中からは、ゲームのアーケード筐体が現れる。

 

「わーい、筐体だぁ」

 

そこ、喜ぶとこじゃないと思うぞ六道…

 

「ゲーム機だと?それがどう動機になるのだ」

 

『オマエラには、ボク達が作ったオリジナルゲーム、『マリンブルー・シンドローム』をプレイしてもらいます!』

 

「トワイライト・シンドロームじゃなくて…?」

 

『このゲームはね、実在の人物をモデルにした推理アクションゲームなのです!全部で三章構成になってて、章をクリアするごとに難易度が上がっていくよ!一番簡単な一章はゲーム初心者でも30分もあればクリアできるくらい簡単だけど、一番難しい三章はプロのゲーマーが30時間かけてやっとクリアできるくらい難しいからね!』

 

『キャハハハ、アンタ達、千春チャンがいて良かったね!そうじゃなかったら一生クリアできなかっただろうから!』

 

「で、全部クリアするとどうなるわけ?」

 

『『で』って言うなクマー!』

 

打田が尋ねると、モノクマがプンスカと怒る。

 

『そうです、マリンブルー・シンドロームを全部クリアした時にゲットできる報酬こそが、今回の動機です!三章をクリアしたら、オマエラが今喉から手が出るほど欲しいであろう情報をプレゼントします!』

 

喉から手が出るほど欲しい情報だと…!?

それが、今回の動機……?

 

『ただし!報酬をゲットできるのは、最初に全部の章をクリアした人だけです!』

 

なん…だと…!?

 

『どうしても情報が欲しい人は、そうだなぁ。最初にクリアした人に交渉でもすればいいよ。別に協力してクリアしてもいいしね』

 

『あっ、それと、今回はルールを追加するよ!』

 

モノルナが言うと、電子生徒手帳に校則が追加される。

 

 

 

十六、三度目の殺人が起こるまでは、スポーツセンターから出られません。

 

十七、スポーツセンター内でのポイ捨てを禁じます。ゴミはゴミ箱に捨てましょう。

 

十八、スポーツセンター内のゴミの回収は三日に一回行います。計画的にゴミを捨てましょう。

 

十九、『マリンブルー・シンドローム』の破壊・持ち出しを禁止します。

 

 

 

『それじゃ、ボク達はこれで!』

 

『キャハハハ、皆バイバ〜イ!』

 

そう言ってモノクマとモノルナは、上機嫌で去っていった。

俺達は、お互いの顔を見合わせる。

ゲームが動機って…どうすればいいんだよ、これ…

 

「な、なあ…これ、どうすりゃいいんだ?」

 

「このゲーム機が動機っつってたよな?じゃあ、これをぶっ壊せばいいんじゃないのか?」

 

酒蔵が不安そうに口を開くと、樺戸が提案する。

するとすかさず梶野が反対した。

 

「それはやめた方がいいと思います」

 

「え、何でだよ!?」

 

「新しく追加されたルールがあるじゃないですか。『マリンブルー・シンドローム』の破壊・持ち出しを禁止すると…」

 

「あっ…そういやそうだな」

 

梶野が説明すると、樺戸が納得した。

すると今度は氷川が提案する。

 

「あの、でしたらあのゲーム機に誰も近付かないようにするというのは…」

 

「無理だろうな」

 

「えっ、ど、どうしてですか…?」

 

「そんなの、ルールを破って俺様達が把握できていないところで勝手にプレイする奴が出てくるに決まっているからだ。モノクマは、『協力プレイもアリだ』と言っていた。つまり、俺様達全員で一つのゲームデータを持っているという事だ。抜け駆けする奴が何人もいて、そいつらが少しずつゲームをプレイすれば、いずれはゲームを勝手にクリアされてしまう可能性もゼロではない。どのみち、ゲームに触らない約束なんて得策じゃないんだよ」

 

「じゃあ、どうすれば…?」

 

氷川の提案を安室が否定すると、氷川は困惑する。

確かに…ゲームに触らないって口約束をしたところで、破る奴がいないなんて保証はどこにもない。

じゃあ、どうすれば…

 

 

 

「じゃあボクがプレイする」

 

「六道さん…?」

 

六道が名乗りを上げると、全員が六道の方を見る。

 

「ボクがプレイして情報を隠しておけば、殺人を防げるかも…ちがう?」

 

「なるほどね。それは名案だよ、千春ちゃん」

 

六道がゲームをしながら言うと、的凪がパチパチと手を叩く。

すると打田が六道に懐疑の目を向けながら言い放つ。

 

「は?そんな事言って、あんたが抜け駆けする気じゃないの?」

 

「いえ、それはないと思います」

 

「何で?」

 

「もしこれで殺人が起これば、六道様が真っ先に疑われるからです。そんなに情報が欲しいなら、少なくともここで自分がクリアすると明言しないでしょう」

 

「仮に情報を狙ってる奴がいたとしても、千春ちゃんがゲームをクリアするまでは行動を起こさないと思うよ。だって、自分でゲームをクリアするより、千春ちゃんにゲームをクリアしてもらってから情報を奪う方が楽だもの」

 

「では、六道さんが『マリンブルー・シンドローム』をクリアするまでは、殺人が起こる可能性が低いと…?」

 

「まあ、あくまでこの中に、動機がなくても殺人をしようと考えている方がいなければの話ですが」

 

リーゼが尋ねると、梶野はクイッと眼鏡を上げながら答える。

 

「それじゃあ…頼んだぞ、六道」

 

「うす」

 

俺が声をかけると、六道は早速ゲームを始めた。

六道がゲームをプレイしている間、氷川がコソッと話しかけてくる。

 

「でも…大丈夫なんでしょうか…?その、プロでも30時間はかかるんですよね…?」

 

「舐めんな今日中にクリアしてやる」

 

氷川が不安そうに言うと、六道はゲームをプレイしながら答える。

六道がゲーム画面と睨めっこしてひたすらアクションゲームをしていくので、不安になったのか、酒蔵は六道に話しかける。

 

「六道ちゃん、あんまり焦んなくていいからなー。おじさん達は気長に待つし…」

 

「……………」

 

…おぉう。

すげえ。

始めてからたった数十秒しか経ってないのに、もう周りの声が聴こえてない。

集中力が常人とは桁違いだ。

これが才能ってやつか…

 

「よし、一章クリア」

 

早っ!?

えっ、まだ初めてから1分も経ってないよな!?

瞬殺かよ…

 

「エナジードリンクとゼリーかいこんどけ。今日はずっとこれやってるから」

 

「あ、はい。かしこまりました…」

 

「フレーフレー、千春ちゃ「だまれジャマおまえ」

 

的凪が空気の読めない言動をすると、六道にバッサリ切り捨てられた。

一旦ゲームは六道に任せて、俺達は今後の方針を話し合った。

 

「で、どうすんの。泊まるとことか」

 

「そうですね…では、モーテルで泊まるのは如何でしょう?あのゲーム機がある場所に一番近いですし、建物もそこまで広くないので人の出入りが把握しやすいのでは?」

 

「確かに、それが良さそうだな!」

 

打田の疑問に対して梶野が提案すると、樺戸が賛成する。

確かに、それでいったらモーテルで泊まるのが良さそうだな…。

だが、賛成しない奴が約二名いた。

 

「えー、椛あんなしょぼいとこで泊まるのやだよー!」

 

「僕も、日本家屋じゃないと落ち着かないんだけど…」

 

「貴様ら我儘を言うな!」

 

神無月と消灯寺が文句を言うと、安室が怒鳴った。

…もしかして、リーゼが神無月や消灯寺とも仲良くしてるからイライラしてんのかな。

 

俺達は、一旦モーテルに行って今後の部屋割りを決めた。

ちなみに話し合いの結果、部屋割りは

 

 

 

酒 梶 消 リ 安 六

 

的 東 樺 椛 氷 打

 

 

 

といった具合になった。

その後は、昼食と夕食の時間を決めてそれまでは各自自由に過ごした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺達がスポーツセンターに来てから、6時間が経過しようとしていた。

六道はゲーム進んでるかな。

結局、昼食には顔を出さなかったけど…

俺は、軽食を持って六道の様子を見に行った。

六道は、例のアーケード筐体の前に立っていた。

…どれくらい進んだかな。

 

「六道、どうだ?進捗は」

 

俺は、筐体の前にいる六道に話しかける。

すると何やら、いびきのような声が聴こえてくる。

 

「………ぐぅ…………ぐぅ」

 

六道は、ゲームを進めるどころか、涎を垂らしてアホ面で寝ていた。

いや、こんなところで寝るなし…

そりゃあ、ずっとゲームばっかりやってたら疲れて眠くなるはするだろうけどさ。

 

「おーい、こんなところで寝るなー」

 

俺が六道の肩を掴んで揺すり起こそうとした、その時だった。

突然、六道がぐるんっ!っとこっちを向いたかと思うと、すごい勢いでこっちに手を伸ばしてきた。

そして、俺が持ってきた軽食を瞬く間にひったくると、それをがつがつと貪り始めた。

何つー女だ、こいつ寝ながら食ってやがる…

 

「げぇっぷ………ふぅ」

 

俺が持ってきた軽食を食い尽くした六道は、ふぅっと息を吐いて腹を摩る。

そして俺の方を見たかと思うと、しぱしぱと二、三回瞬きをして眠たげに口を開く。

 

「んあ、ひがしの、いたんだ」

 

「いや、いたんだ、じゃねえよ。こんなところで寝てたら風邪引くぞ」

 

「ちはるは風邪ひかないもん」

 

風邪を引かないのは馬……いや、これ以上は何も言わないでおこう。

 

「…なあ、ゲームは今どうなってる?二章はもうクリアしたのか?」

 

「………はらへった」

 

「え?」

 

「はらへってて思考がまとまらない。まずめし食わせろ」

 

「いや、今食ったじゃ「すくない」

 

六道は、口の端から涎を垂らしながら、ずいっと俺に詰め寄ってきた。

結局俺は、六道に付き合わされる形で一緒にモーテルに戻った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「はふはふはふはふはふ」

 

モーテルに戻った六道は、モーテルにあったカップ麺や缶詰といった非常食を片っ端から食い尽くしていった。

テーブルの上に山積みになった非常食をものすごい勢いで食い尽くしていく六道を見て、俺達はドン引きするしかなかった。

 

「すげえ食いっぷり…」

 

「カップ麺一口で食う奴初めて見た」

 

「いっぱい食べる千春ちゃんも可愛いなぁ」

 

俺達は、約一名を除いて、六道の食いっぷりに驚愕し、もはや恐怖すら抱いていた。

30分間食い続けてた六道は、ようやく満腹になったのか、持っていた割り箸を放り出して椅子の背もたれにもたれかかる。

 

「………げぷっ、あー食った食った」

 

「あの…それで、六道様。頼んでいたゲームの進捗はいかがでしょう?」

 

「ああ、あれ。終わった」

 

ああ、何だ。

もう終わったのか。

それは良かっ………

 

…………………。

 

…………………。

 

…………………。

 

「……………え?」

 

ちょっと待て。

今、何て言った?

 

「三章まで?」

 

「うん」

 

「全部?」

 

「うん」

 

「本当に?」

 

「さっきからそう言ってる」

 

嘘だろ!?

プロゲーマーですら攻略に30時間かかるゲームを、たったの6時間で終わらせやがった!?

さっき今日中に終わらせるって言ってたけど…まさか有言実行するとは…

 

「マジか!?すげえ!!」

 

「さすが千春ちゃん、凄いよ!そこら辺の凡人とは訳が違うって事を証明してくれたって事だよね!?」

 

「うるせえ」

 

樺戸と的凪も、六道がもうゲームをクリアしたという功績に驚いていた。

…的凪は毒を吐かれてたけど。

すると氷川が、俺達が頭の隅で気になっていた事を尋ねる。

 

「あの…それで、報酬は…?」

 

「手に入れたよ。もう既に絶対見つからない場所に隠しといた」

 

「ねえねえ、その絶対見つからない場所って、どこなんだい?もしかして、おま「それ以上言ったら爪にカルタの角ぶち込むぞ変態!!」

 

氷川の質問に答える六道に対して酒蔵が何か言おうとすると、神無月が怒鳴り散らして黙らせた。

俺、酒蔵が何を言おうとしてたのかわかっちまった自分が憎い。

多分皆も俺と同じ気持ちなんだろう。

酒蔵、わかってるか?

お前今、ほとんど全員からゴミを見るような目を向けられてるぞ。

 

「そういうわけで、ちはるを殺して報酬奪い取ろうとしても無駄だから。じゃ、ちはるは寝てくるよ」

 

そう言って六道は、ヒラヒラと手を振りながら、ひと足先にモーテルの自分の個室へ向かっていった。

 

「じゃ、あたしも」

 

六道に続けて、打田も自分の個室へ戻っていった。

まだ3時前か…

これからどうしようかな。

その後は、引き続きスポーツセンターを探索したり、梶野と酒蔵が作ってくれた夕食を食べたりして各々自由時間を過ごした。

気がつくと、時刻はもう8時台になっていた。

そんな中、安室が、キョロキョロと見渡しながら尋ねる。

 

「むっ…そういえば、リーゼロッテは?」

 

「ああ、プールにあるお風呂に向かわれましたよ。ここのシャワールームより広いですし…」

 

「そうか」

 

そっか、リーゼはプールの方の風呂に行ったのか。

確かにあっちの方が広いし…お嬢様だからな。

俺が妙に納得していると、氷川が口を開く。

 

「皆さん、そろそろお休みになっては?明日も早いですし…」

 

「それもそうだな」

 

氷川が言うと、俺達はそれぞれ自分の個室へ戻った。

まだ夜時間より少し早いけど、俺は自分の個室のベッドで眠りについた。

 

 

 

 

 


 

 

 

〜モノクマ劇場〜

 

『やっほー!モノクマ&モノルナの!モノクマ劇場の時間だよ!』

 

『妹よ、フェレンゲルシュターデン現象って知ってる?』

 

『ああ、猫がどっか一点を見つめるやつね。それがどうしたの?』

 

『あれね、猫の視線の先の温度を測ったら、その場所だけ温度が低い事がわかったんだって。その実験をしたシュターデン博士と、愛猫のフェレンゲルからついた名前らしーよ』

 

『そうなんだ〜!』

 

『…フフフ、実はもう一つ驚くべき事が…』

 

『え、なになに?』

 

『今の話、全部ウソです』

 

『えー何それ!?』

 

『良い子の皆は、くれぐれも今の話を人に教えないように!』

 

 

 


 

 

 

 

 

「………ん」

 

俺は、狭い個室で目を覚ました。

身体を起こすと、ギシ、とスプリングの音が聴こえる。

部屋を見渡すと、ホテルの個室よりも幾段とグレードが下がっていた。

…ああ、そうだった。

俺達、あの後結局モーテルで寝泊まりする事にしたんだった。

時計を見ると、4時30分。

まだ朝食までは時間あるけど…どうしようかな。

このまま寝直す気分にもなれないし、ちょっと散歩でもするか。

 

俺は、自分の個室を抜け出して散歩に行こうとした。

するとその途中で、氷川にばったり出会した。

 

「氷川、おはよう」

 

「あっ…ひ、東野くん…おはようございます…」

 

俺が何の気なしに声をかけると、氷川はビクッと肩を跳ね上がらせて、何かに怯えるようにオドオドした様子で口を開く。

そういえば、最初見た時は気にならなかったけど、何だか髪が濡れてるし、肌も湿ってる気がする。

シャワーでも浴びてたんだろうか。

 

「…なあ、お前シャワーでも浴びてたのか?」

 

「あ、はい…わたし、汗っかきなので…朝はシャワー浴びないと気持ち悪くて…」

 

「そうだったのか。まあでも確かにな、朝はシャワー浴びた方がスッキリするよな。俺も徹夜明けとかー…」

 

氷川がオドオドした様子で話すと、俺は氷川の話に乗っかった。

まだ朝食作りには早いはずだし、一言二言くらいの駄弁りなら許されるだろう、そんな軽い気持ちだった。

だが氷川の反応は、思ったよりも冷淡だった。

 

「あの…もういいですか?」

 

「え?あ、悪い」

 

氷川が話を切り上げようとしてきたので、俺は思わず後退りして氷川に道を譲った。

よくよく考えてみれば、朝っぱらからいきなり話しかけられても迷惑だったかもしれない。

そこら辺よく考えてから話しかけるべきだったな…

 

俺は、氷川とすれ違った後、モーテル周辺を散歩して過ごした。

……あ。

そういえば、六道がプレイしたゲームって、どんなゲームだったんだろうか。

俺は、つい好奇心に駆られてゲームを調べに行った。

 

俺がゲームを調べに行くと、相も変わらずアーケード筐体が鎮座していた。

早速電源を入れてみる。

するとすぐにゲーム画面が表示される。

ゲームは、モノクマが言っていた通り、『一章』『二章』『三章』に分かれていた。

……ん?

何だこれ。

 

ゲームのプレイ画面の下の方に、『クリア特典! ダイジェスト版』という項目があった。

…これもしかして、一度ゲームをクリアすると、ゲームのストーリーをダイジェストで確認できる仕様になってるのか?

流石に今から一からプレイするのは骨が折れるし、ダイジェスト版だけ確認してみよう。

俺は、ゲームのダイジェスト版を再生した。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

『マリンブルー・シンドローム 第一章 〜女王蜂より愛を込めて〜』

 

黒い画面に、おどろおどろしい赤い文字でタイトルが表示される。

ゲームの舞台は、窓から群青色の海が見える常夏のペンションらしい。

ペンションには、12人の男女が泊まっていた。

 

ミステリー好きのA男、ゲームオタクのB子、偏執狂のC男、お嬢様のD子、大人しくてマイペースなE男、不思議系のF子、自信なさげで幸薄なG子、口の悪いH子、ミステリアスで聡明なI男、セクハラ男子のJ男、元気溌剌なK男、クールなL子の12人だ。

どうやら、この12人が殺人事件に巻き込まれるストーリーらしい。

 

しばらくはメンバーが雑談をしながら過ごすわけだが…少しずつギスギスした雰囲気が漂ってくる。

そんな中、マイペースでゲーム好きのB子が『先に寝る』と言って自分の部屋に戻っていった。

 

そして迎える二日目。

メンバーが発見したのは、首から大量の血を流して横たわるB子の姿だった。

B子は、アイスピックのような刃物で首を一突きにされて殺された。

B子の手元からは、B子が大事そうに抱えていたパソコンがなくなっていて…

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

そこで一章分のダイジェストが終わった。

……何だこれ。

これ、俺達が今置かれている状況にそっくりじゃないか。

外が雪国か常夏かの違いはあれど、閉鎖空間で人が死んでいくってところはまさにこの状況だ。

 

「何なんだよ…気味悪い…」

 

俺は、そう思いつつも、今度は第二章のダイジェストを再生した。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

『マリンブルー・シンドローム 第二章 〜偏執は甘く我が身を焦がす〜』

 

第二章は、片想い中だったB子を殺されて憤慨したC男が発狂し、周囲の和を乱していくところから始まる。

元々C男の空気の読めない行動に嫌気が差していたメンバーは、C男に嫌悪感を抱きつつも、何とかC男を鎮めようとする。

 

C男は、B子を殺されたショックからか、メンバーに対して虚言を吐き続ける。

そしてC男はみるみるうちに狂っていき…とうとう自分の身体をフォークでメッタ刺しにし始めた。

メンバーは、一旦はC男の奇行をやめさせたが、C男の虚言は止まらない。

メンバーの間では、ギスギスした空気が強くなっていく。

 

そして迎えた三日目。

メンバーが発見したのは、頭から大量の血を流し、ロッカーに閉じこもって息絶えたC男の姿だった。

ロッカーの近くには、砲丸が転がっていた。

C男の手元からは、C男が大事そうに抱えていたカメラがなくなっていて…

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

そこで第二章のダイジェストが終わった。

一章よりもグロテスクで、複雑な内容だった。

二章でさえこれなんだから、三章はもっと凄惨な内容になっているに違いない。

そんな気がしてしまった。

俺は、三章のダイジェストを再生しようとした。

するとその時、事前に設定していたアラームが鳴る。

 

…ああ、そういえばもう朝食の時間だった。

…遅刻は良くないよな。

三章のダイジェストは、飯の後で見よう。

俺は、ダイジェストを二章までで見るのをやめて、モーテルに戻った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

例の映像を見終わった俺は、モーテルに戻って食堂に顔を出した。

食堂では、既に梶野、酒蔵、氷川が朝食の準備を大方終えていて、樺戸が待機していた。

しばらく待っていると、打田と神無月も来る。

神無月は、甚平のままで食堂に顔を出した。

 

「神無月、お前どうしたんだよ。寝巻きじゃないか」

 

「…………」

 

俺が少し気になって話しかけると、神無月は不機嫌そうに唇を尖らせる。

そして、ボソッと聞こえるか聞こえないかくらいの声で吐き捨てた。

 

「…だって、しょうがないじゃん。リーゼちゃんに着付けてもらう約束してたのに、約束の時間に来ないんだもん」

 

え……?

リーゼが約束の時間に来ない?

…おかしい。

六道はともかく、リーゼはちゃんと時間は守る奴だ。

その時たまたま遅れたって事はあるかもしれないけど、責任感の強いリーゼが神無月との約束をすっぽかすなんて事、するだろうか。

俺が疑問に思っていると、梶野が徐に口を開く。

 

「…あの。先程から気になってはいたのですが…もう集合時刻だというのに、いくら何でも集まりが悪くありませんか?」

 

「あ…」

 

俺達は、梶野の発言をきっかけに、全員顔を見合わせる。

ここにいないのは、安室、消灯寺、的凪、リーゼ、そして六道の5人だ。

いくら慣れない環境とはいえ、5人も来ないのは流石に集まりが悪すぎる。

そしてさらに俺達の不安に拍車をかけるように、樺戸が鼻をスンスンっと鳴らしながら呟く。

 

「んん…?気のせいか…?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや…なぁんか血の匂いがする気がすんだよな」

 

「ひぃっ、血…っ!?」

 

…嫌な予感がした。

もしかしたら、5人に何かあったのかも知れない。

そんな気がしてならなかった。

俺は、恐る恐る口を開いた。

 

「なあ…もしかして、5人とも何かあったんじゃ…」

 

「…ふむ、そうかもしれませんね」

 

「じゃあ全員で手分けして探そうぜ!!」

 

樺戸の提案で、俺達は5人を探した。

俺と打田がモーテル内を、それ以外の5人でモーテルの外を捜索する事になった。

俺と打田は、くまなくモーテルの隅々まで探していく。

俺が5人がいそうな場所を徹底的に探していると、打田が声をかけてくる。

 

「……ねぇ」

 

打田が俺のシャツの袖を引っ張って話しかけてくるので、俺は何かと思い振り向く。

打田は、その場に膝をついて床を調べていた。

床には、赤いカーペットが敷かれていて、よく見ると同じような色合いのシミがついている。

これって…まさか……

 

「な…!?」

 

おい、嘘だろ…!?

これ、血痕…だよな…?

じゃあ、本当に、あいつらの中の誰かが…!?

 

「…調べるぞ」

 

「あ、ああ…」

 

俺と打田は、血痕を辿って血の出所を探る。

やがて血痕は、一つの部屋の前に辿り着いた。

家事室だ。

俺は、覚悟を決めて家事室の扉を開けた。

その瞬間……

 

 

 

 

 

「うわぁああああああああっ!!!?」

 

 

 

 

 

思わず、悲鳴を上げた。

床には、血が飛び散っていて…家事室のちょうど中央には、首に小さな穴を開けられて血を流した――

 

 

 

 

 

――【超高校級のゲームプログラマー】六道千春の姿があった。

 

 

 

 

「六道!?おい、何があった!?しっかりしろ!!」

 

俺は、床に倒れている六道の肩を必死で揺すった。

だが六道は、起きる気配はない。

嫌な予感がして、手首を取って脈を測る。

 

……良かった、脈はある。

でも、どのみち危ない状態だって事に変わりはない。

早く手当てしないと…

 

「………」

 

俺が六道に応急手当てをしていると、打田が顔を上げる。

打田は、じっと黙ったまま、家事室の中にあるロッカーを睨んでいた。

ロッカーには、見るからに六道のものとは違う血がついていた。

打田は、ロッカーの扉を勢いよく開ける。

その瞬間――

 

「っ………!?」

 

「な……………!?」

 

俺と打田は、思わず目を見開いて言葉を失った。

そこには、あるはずのないものがあった。

そいつは、全身に虫刺されみたいな小さな穴を開けられ、頭から血を流した状態でロッカーの中に蹲っていた。

そこにいたのは、

 

 

 

 

 

【超高校級の幸運】的凪梢だった。

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『死体が発見されました!一定の捜査時間の後、学級裁判を執り行います!』

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

side KJ

 

東野様、打田様と一旦分かれた後、私達はモーテルの外に出ました。

しかし…これだけ広い敷地内から5人を探すのは骨が折れそうです。

一体どこから探せばいいのやら…

私達が途方に暮れていた、その時でした。

 

 

 

「キャアアアアアアアアアッ!!!!」

 

突然、叫び声が聞こえてきました。

叫び声がした方を振り向くと、安室様が血相を変えてプールから飛び出してきたではありませんか。

ひとまず、安室様の無事は確認できましたので、これで安心…とは言えませんね、これは。

 

「いかがなさいましたか、安室様」

 

「あっ、あああ…あああああ…!」

 

私が尋ねると、安室様は顔面蒼白で、明らかに取り乱した様子でプールを指差しました。

プールで、何か見てはいけないものでも見たのでしょうか…?

 

「…ふむ。私は樺戸様、酒蔵様と共にプールを調べて参ります。神無月様、氷川様は安室様をお願いします」

 

「わ、わかりました…!」

 

「早く行こうぜ!!」

 

私は、すぐにお二人を連れてプールへ向かいました。

私達がプールのエントランスに入った、その瞬間でした。

 

 

 

 

 

「「うわああああああああああああっ!!!!?」」

 

「っ………!」

 

樺戸様と酒蔵様は、同時に悲鳴を上げました。

私も、流石に動揺を禁じ得ませんでした。

それ程までに、あり得ない光景が目の前に広がっていたのです。

プールのアクアリウムの中に、それらは漂っていました。

赤く濁った水の中で…まるで身を抱き寄せ合うように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級の心霊学者】消灯寺霊庵様と、【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン様が、そこに居たのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

ーーー 生存メンバー ーーー

 

【超高校級の小説家】東野(ヒガシノ)(ジュン)

 

【超高校級の原型師】安室(アムロ)明日奈(アスナ)

 

【超高校級のディーラー】梶野(カジノ)運命(サダメ)

 

【超高校級のカルタ師】神無月(カンナヅキ)(モミジ)

 

【超高校級のグラシエール】氷川(ヒカワ)みるく

 

【超高校級のソムリエ】酒蔵(サカグラ)飛露喜(ヒロキ)

 

【超高校級のカバディ選手】樺戸(カバド)ラムジ

 

【超高校級の狙撃手】打田(ウチダ)清美(キヨミ)

 

【サポートAI】アルターエゴ・Ω

 

ノコリ?人

 

 

 

ーーー 生死不明 ーーー

 

【超高校級の幸運】的凪(マトナギ)(コズエ)

 

【超高校級のゲームプログラマー】六道(ロクドウ)千春(チハル)

 

以上2人

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のギャル】殉前(ジュンマエ)詩乃子(シノコ) Prologue 見せしめ

 

【超高校級のプロレスラー】内闘(ナイトウ)力也(リキヤ) Chapter.1 シロ

 

【超高校級の絵本作家】山脇(ヤマワキ)ゆか Chapter.1 シロ

 

【超高校級のヒットマン】暗野(アンノ)斬良(キラ) Chapter.1 クロ

 

【超高校級の司令官】神風(カミカゼ)大和(ヤマト) Chapter.2 シロ

 

【超高校級の軍医】薬師寺(ヤクシジ)療香(リョウカ) Chapter.2 クロ

 

【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン Chapter.3 シロ

 

【超高校級の心霊学者】消灯寺(ショウトウジ)霊庵(レイアン) Chapter.3 シロ

 

以上8人

 

 

 

 

 

推しがいたら教えてくんなまし

  • 東野潤_小説家
  • 暗野斬良_???
  • 殉前詩乃子_ギャル
  • 神風大和_司令官
  • 薬師寺療香_軍医
  • リーゼロッテ_オルガニスト
  • 安室明日奈_原型師
  • 消灯寺霊庵_心霊学者
  • 山脇ゆか_絵本作家
  • 梶野運命_ディーラー
  • 神無月椛_カルタ師
  • 氷川みるく_グラシエール
  • 酒蔵飛露喜_ソムリエ
  • 樺戸ラムジ_カバディ選手
  • 内闘力也_プロレスラー
  • 打田清美_狙撃手
  • 的凪梢_幸運
  • 六道千春_ゲームプログラマー
  • モノルナ_引率教師
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