インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿   作:M.T.

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Chapter.4 かっこうのなく頃に
(非)日常編①


「お前さ、山脇の事好きなんだろ?」

 

「えっ……?」

 

気がつくと、俺はまた屋上にいた。

屋上には、俺と暗野がいた。

俺は自分自身と暗野を、第三者の視点から見ている。

 

「だったらさっさと告って付き合っちまえよ。あいつもお前の事、嫌いじゃないだろうしさ」

 

「む、無理だよそんなの…!というか山脇さんは東野くんの事が好きなんじゃないの…?山脇さんの幼馴染みは東野くんなわけで…僕なんか、出る幕じゃないよ…」

 

俺が暗野に話しかけると、暗野は俯きながら自信なさげに言った。

すると俺は、暗野の胸ぐらを掴んで、ぐぐっと詰め寄りながら叫んだ。

 

「出る幕とか、そんなの関係ねぇよ。お前が、あいつを幸せにしてやらなきゃいけないんだよ!!」

 

俺は、暗野に向かって、いつになく感情を剥き出しにして叫んだ。

すると暗野も、負けじと俺を押し返す。

 

「な…!そ、それは、幼馴染みの君の役目だろ!?それに、僕なんかじゃ、山脇さんが可哀想だよ…東野くんは、僕と違って優しいし、頭がいいし、器用だし…やっぱり君が彼女と付き合うべきだと、僕は思う…」

 

「……無理なんだよ、俺なんかじゃ…俺じゃ、山脇を幸せにできない。あいつの幸せを願ってくれるなら、お前があいつの隣にいてやってくれ…頼むよ…」

 

俺は、暗野にしがみつきながら、絞り出すように言った。

そんな俺を見て、暗野は戸惑いの表情を見せる。

 

もう、わかってる。

これは、夢だ。

俺の中にある、存在しないはずの記憶が作り出した、幻影。

仲間を失ったショックで、俺は今、長い夢を見ている。

夢から覚めたら…現実と向き合わなきゃいけないんだ。

あまりにも無慈悲で、つらい現実と。

 

 

 

 

 

『オマエラ、おはようございます!朝7時になりました!起床時間です!今日も元気に殺し合いましょう!』

 

寝起き早々、不愉快極まりないアナウンスが部屋に響く。

何というか、この耳障りなダミ声を聞くと、いやでも現実に引き戻される。

 

「………何つーか…もはやお決まりの展開だな…」

 

ホテルの自室で目を覚ました俺は、頭を掻きながら、誰にともなくそんな事を呟いた。

裁判が終わった後、モノクマとモノルナがスポーツセンター以外のエリアを開放してくれて、俺はホテルの自室に戻ったんだった。

 

また、殺人が起こってしまった。

ちゃんと事件が起こらないように、対策をしていたにもかかわらず。

しかも前回は、死人が出ただけじゃなく、六道と的凪までもが重傷を負った。

的凪は、自分を襲ったのが氷川だとは言ってたけど、氷川が六道を襲ったとは一言も言ってなかった。

六道を襲った犯人が別にいる可能性もあり得る。

それに六道と的凪の言及していた、氷川の共犯者というのも気になる。

 

人が死んだ後だというのに、冷静に状況を整理できてる自分がいる。

誰かが殺し、殺される…そんな異様な状況に、俺ももう慣れてきてしまっているのかもしれない。

そんな漠然とした不安が、俺の中に巣食っていた。

 

部屋を出て、いつものように食堂に行こうとした俺は、ふと消灯寺の部屋のネームプレートを見た。

もう、消灯寺はいない。

リーゼと消灯寺が氷川に殺され、その氷川はモノクマ達に処刑された。

たった一日で、3人もクラスメイトを失っちまった。

殉前、内闘、山脇、暗野、神風、薬師寺、リーゼ、消灯寺、氷川…

9人も死んじまった。

いつまで、こんな事続けてりゃあいいんだよ…

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

食堂に行くと、そこにはテーブルセッティングをしている梶野と樺戸と安室、朝飯を運んでいる酒蔵、そして的凪がいた。

食堂に来て早速、梶野が話しかけてくる。

 

「おはようございます、東野様」

 

「ああ、おはよう…」

 

梶野が挨拶をしてきたから、俺も挨拶を返した。

打田、神無月、六道の姿はない。

 

「まだこれだけか?」

 

「ええ…打田様、神無月様、六道様はまだ来ていらっしゃらないようです」

 

俺が尋ねると、梶野が答える。

…まあ、こいつらが遅れてくるのはいつもの事だし、六道に至っては昨日襲われて怪我してるから仕方ないんだが。

 

「早速ですが、朝食は和食と洋食、どちらになさいますか?」

 

「えっと…じゃあ和食を…」

 

「畏まりました」

 

俺は、今の自分の体調と気分を考えて、和食を選んだ。

やっぱりまだ肉はちょっと、な…

 

梶野の質問に答えたその時、朝食を運んできた酒蔵が目に留まる。

梶野も酒蔵も、クラスメイトが死んだ後だというのに、いつもと変わらない調子で俺達の為に朝食を作ってくれた。

1回目も、2回目もそうだった。

 

「何つーか…その、ありがとな…こんな状況だってのに、食事を用意してくれて…」

 

「…こんな状況でも、腹は減るもんでな…」

 

俺が二人に礼を言うと、酒蔵が自嘲気味に言った。

俺も何か手伝おうと思ってふとテーブルに目を向けると、見慣れないものがテーブルの上に置いてあった。

 

「あれ…?」

 

ちょうどリーゼが生前座っていた席には、人形が置いてあった。

それも、ただの人形じゃない。

顔が精巧に造形されていて、綺麗な着物を着せられている。

着物には、お経のようなものが書かれた帯が縫い付けられていた。

まるで、降霊術の儀式で使われる形代としての人形だ。

俺は、近くにいた梶野にこの人形が何なのかを尋ねた。

 

「なあ、この人形どうしたんだ?」

 

「ああ、それはですね…」

 

「俺様が作ったのだ。此奴は、我が魔界騎士団の副団長…といったところかな」

 

梶野が俺の質問に答えようとすると、安室が相変わらずの厨二病ワールド全開で答えた。

確かに、この中でこういうものを作れそうなのは安室しかいないが…

…もしかして、昨日夜なべして作ったのか?

 

「安室…お前もしかしてこの人形、夜なべして作ったのか?」

 

「むっ、左様だが?何だ貴様、見る目があるじゃないか。そんなに我が魔界騎士団に入団したいとな?」

 

俺が尋ねると、安室はドヤ顔をしながら答える。

どうやらこの人形は、安室の自信作だったらしい。

でも、どうしてまた夜なべしてこんな人形を作ったんだろうか。

こういうのを好みそうなのって、どちらかというと消灯寺だと思うんだけど…

 

「…この形代はな、消灯寺の資料を拝借して作ったのだ。それにしても奴め、混沌より這い寄りし俺様よりも混沌に満ちた怪文書を生み出しおって…おかげで創造の魔術を覚えるだけで闇の帳が解けるかと思ったぞ」

 

えっと…

『よくわからない資料書きやがって、おかげで作り方を覚えるだけで夜が明けるかと思った』、って言いたいのか?

何というか…安室が消灯寺と波長が合わないのは、相変わらずなんだな。

だったら尚更、何で消灯寺の部屋の資料を使って人形を作ろうだなんて思ったんだ?

 

「あのさ…聞いちゃまずい事だったら悪いんだが、何で消灯寺の資料を参考にしたんだ?何というか…お前、そういう幽霊とか信じる奴じゃなかっただろ?」

 

俺は、気になった事を安室に尋ねた。

安室は、幽霊や心霊現象を信じている消灯寺との仲が悪くて、今まではお互いの発言を悉く否定し合っていた。

…まあ、消灯寺がリーゼと仲が良かったからっていうのもあるんだろうけど。

だからこそ、その消灯寺の資料に書かれていた形代を作ったというのが意外だった。

ひょっとして、裁判が終わった後の出来事が関係してるのかな…?

 

「…勘違いするな。俺様は、幽霊などといったものは信じない」

 

「だったら何で…」

 

「リーゼロッテが、奴の妖術に惹かれていたからだ。消灯寺の事は好かんし、奴の妖術を信じる気など毛頭ないが、あんな形で肉体を滅ぼされた盟友への、せめてもの手向になればと思ったのだよ。俺様の盟友は、若くしてカタストロフィーに侵されてしまった。ここから出たら、我が魔界騎士団のアジトに連れて行ってやる約束をしていたのだがな…」

 

「安室…」

 

「リーゼロッテはかつて、貴様らと共に過ごす刻が何よりの宝だと言っていた。俺様はこう見えて寛大だからな。貴様ら人間の言葉で言ってやると、『寂しくなったらいつでも戻って来い』といったところかな」

 

安室は、リーゼの形代を見ながら、フッと笑った。

『寂しくなったらいつでも戻って来い』…か。

安室にとって、リーゼは友情以上の絆で結ばれていたんだ。

それこそ、彼女の為なら、毛嫌いしていた消灯寺の事も労われるくらいに。

 

…いや、それだけじゃない。

生前は仲の悪かった二人だけど、きっと安室も、心の底から消灯寺を嫌悪していたわけじゃなかった。

どんなに考えが合わなくても、安室にとっては消灯寺も大切なクラスメイトの一人だったんだな。

だからこれはきっと、消灯寺への手向けでもあるんだと思う。

一番の親友を亡くしても誰かを労わる為に才能を発揮できる、それが安室明日奈という人間なんだ。

 

「フ…長話をしてしまったな。俺様らしくもない。さて、狂宴の支度をしようか」

 

そう言って安室は、カトラリーをテーブルの上に置いた。

安室は、リーゼを失ったというのに、いつもと変わらない顔色で朝食の配膳を手伝っていた。

何考えてるのかわからない奴だとは思ってたけど…裁判の時はあんなに氷川に対して怒ってた安室が、一晩で元通りに…いや、むしろ毛嫌いしていた消灯寺の価値観をも尊重できる奴になっているのが、にわかに信じられなかった。

もしかして無理をしているんじゃないか、どうしてもそんな気がしてならない。

 

「安室…お前、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫?何の事だ?貴様…よもや、この俺様が、盟友を亡くした苦しみを抱え、いずれ我が身に訪れるカタストロフィーに怯えているのではないか…などと考えていたのではあるまいな?」

 

「えっ?いや…」

 

相変わらず厨二病全開だが、だんだん安室が何を言っているのかわかるようになってきた気がする。

俺は、安室の言う通り、リーゼを失ったショックで安室が自責の念に駆られているんじゃないか、次殺されるのは自分だと怯えているんじゃないかと思っていた。

安室にとって、リーゼは大切な人だったんだ。

そう簡単に、忘れられるはずがない。

 

「クハハハッ!!笑止!!俺様を一体誰だと思っている!?幾千もの修羅場を乗り越えてきた、魔界騎士団の団長だぞ!?盟友の屍のひとつやふたつ乗り越えられずして、我が団員達を導けようか!!」

 

安室は、いつもと変わらない調子で、高らかに笑っていた。

だけど心なしか、声のトーンが少し低く、弱々しいように思える。

大切な人を亡くして、何も感じずにいられるはずがない。

それでも安室は、俺達が絶望しないように、気丈に振る舞っているんだ。

そう思っていると、安室が徐に口を開く。

 

「…真実を語るとな、俺様は未だに氷川が憎い。きっと、許せる時など一生来ないと思う。だが俺の盟友は、俺様や貴様らが憎しみに駆られて立ち止まる事など、望んでいない。故に俺様はもう、奴を責めるのはやめた。氷川の苦しみに気づけなかった我等にも非があるという貴様の考えにも、同意できる部分はあるしな。俺様は、この先どんな障壁が立ち塞がろうと、前に進む事にしたのだよ」

 

安室は、自分の本心を語った。

安室の本心を聞いた俺は、勝手に安室が落ち込んでいるんじゃないかと思い込んで、余計なお節介をした自分が恥ずかしくなった。

身の程知らずにも程がある。

安室は、俺が思っていたよりもずっと強い人間だった。

俺も、こんな風になれるだろうか。

…絶望なんかに、負けちゃいけない。

俺がそう決意したその時、その時、身体に包帯を巻いた的凪が割り込んでくる。

 

「ふぅん、立派だね。ところでさ、この茶番はいつまで続くのかな?」

 

的凪は、腕を組んだまま、主に安室を馬鹿にしたように笑った。

こいつが何を考えていようと、親友の死を乗り越えて前に進もうとしている安室を馬鹿にしていい理由なんて何一つない。

俺は、安室を馬鹿にした的凪を睨んだ。

 

「的凪、お前…!」

 

「やあおはよう東野くん。まあ別に、君は生きてても死んでてもどっちでもいいんだけどさ」

 

的凪は、相変わらずヘラヘラと笑いながら話しかけてきた。

俺は、前回の裁判でこいつがした事を、まだ忘れてない。

こいつは、六道が殺されるのを回避する為だけに、リーゼを生贄に差し出し、氷川をわざと挑発して自分をも殺させようとした。

そして裁判中は、氷川が犯人だと知った上で、記憶喪失のフリをして氷川を挑発してボロを出させた。

クロを欺いて俺達を勝利に導いた事は評価するが、やり方がいただけない。

…というか、回復早すぎないか?

前回の裁判前に重傷を負ったというのに、この有様だ。

お前の才能、本当に【超高校級の幸運】で合ってるか…?

 

「いやぁ、それにしても良かったよ。千春ちゃんが生き残ってくれて。別に他の奴はどうなろうと知ったこっちゃないけど」

 

「コズエ、テメェ…!」

 

的凪がジュースを飲みながら言うと、樺戸が的凪を睨みつける。

すると、その時だった。

 

「やめておけ。ソイツを相手にするのは時間の無駄だぞ」

 

食器を並べていた安室が、樺戸に向かって言った。

その直後、食堂の扉が開く。

神無月と六道が、食堂に入ってきた。

 

「ふわぁ〜あ、おはよぉ…」

 

「………くそねみ」

 

二人は、眠たそうに入ってきたかと思うと、好きな席に座った。

二人とも、来てくれたのか…

六道は怪我してるし、神奈月は昨日あんな事があったのに…

 

「六道様。お怪我はもう大丈夫なのですか?」

 

「ちはるをなめるな」

 

梶野が話しかけると、六道は何ともない様子で答える。

六道の首にはガーゼがテープで貼られているが、他にはこれと言って悪いところはないみたいだ。

的凪といい、こいつも回復早くないか…?

 

「神無月ちゃん…キミ、もしかしてその格好…自分で着替えたのかい?」

 

「そうよ。何か文句ある?」

 

酒蔵が神無月に声をかけると、神無月がぶっきらぼうに答えた。

神無月は、自分で和服を着てきたみたいだ。

正直ぐちゃぐちゃで、お世辞にも上手いとは言えない出来栄えだったけど、それでも前回みたいに半裸でくるよりはだいぶマシな格好になっていた。

 

「…しょうがないじゃん。療香ちゃんも、リーゼちゃんも、いなくなっちゃったんだもん…自分の事は、自分でできるようにならなくちゃ…」

 

神無月は、少し恥ずかしそうに言った。

すると酒蔵が、少し驚いた様子で神無月に尋ねる。

 

「キミ、もしかしてずっと、着付けの練習を1人でしてたのかい…?」

 

「そうよ」

 

酒蔵が尋ねると、神無月は若干キツい口調で答えた。

今まで着付けをしていた薬師寺やリーゼがいなくなって、自分の事を自分でできるようになりたいと思うようになったのか、神無月は裁判が終わった後、誰の手も借りずに一人で着付けの練習をしていたらしい。

何か、暴言とセクハラ発言なしでこの二人の会話が成立してるのって、何気に珍し…

 

「そういう事なら、言ってくれれば良かったのに。おじさんがいつでも手伝ってあげるよ?」

 

「うるせえ黙れこの変態ロリコンエロジジイ!!」

 

「あべしっ!!」

 

酒蔵がニヤニヤしながらセクハラ発言をすると、神無月が酒蔵に暴言を吐きながら目潰しをした。

この二人のやり取りも、もはやお約束だ。

 

「なあ、もう食っていいか?オレもうハラ減っちまったよ!」

 

「ちはるも…」

 

「そうですね。打田様以外は全員揃った事ですし、食事を始めましょうか」

 

樺戸が腹を鳴らしながら言い、六道も涎を垂らしていると、梶野が俺達全員に声をかけた。

安室も、梶野も、樺戸も、神無月も、酒蔵も、六道も、皆大切な人を亡くして、それでも自分なりに前を向こうとしている。

いつまでも前に進めないでいるのは、俺だけだ。

 

「…いただきます」

 

他の皆が、梶野と酒蔵の作った朝食を食べ始めたから、俺も朝食に箸をつけた。

相変わらず二人の作ってくれた和朝食は、高級旅館で出てくる朝食並みのクオリティーで、俺の荒んだ心を癒してくれた。

 

「ねむい……」

 

六道は、いつも以上に眠たそうにしていた。

いや、こいつが隙あらば寝るのはいつもの事なんだけど。

 

「六道、お前どうした?いつも以上に眠そうだけど」

 

「ちはるはおまえらとちがってヒマじゃない。Ωの事でちょっと気になる事があったから、夜通し作業してたんだよ」

 

俺が尋ねると、六道が船を漕ぎながら答えた。

そういえば…六道があんな事になっちまったから前回の裁判ではほとんど出番がなかったけど、六道が作ってくれたΩが俺達の新しい仲間になったんだった。

 

「さすが千春ちゃん!そこらの凡人とは才能が違うよ」

 

「うるさいきえろかす」

 

的凪が相変わらずの発言をすると、六道が的凪に暴言を吐いた。

このやりとりにも、もう慣れてきてしまっている自分がいる。

それにしても、六道の言ってる『気になる事』って、何なんだろう…

俺は思い切って、六道に聞いてみた。

 

「なぁ、六道。『気になる事』って言ってたけど、Ωに何か変わった事があったのか?」

 

「それは……」

 

俺が六道に尋ねようとした、その時だった。

 

 

 

『え?なになに?我が愛しの妹のスリーサイズが知りたいって?』

 

『キャハハ、ちょっとやめてよお兄ちゃん!それセクハラ!』

 

唐突に、奴等が現れた。

だがもう、俺達は驚かなかった。

同じ事が3回も起これば、何が起こるのかはいやでも察しがつく。

 

「チッ、相変わらず空気読まねぇなお前ら」

 

『キャハハ!飛露喜クン、空気は読むものじゃなくて吸うものよん?』

 

「うるせーわかってるよ」

 

酒蔵の発言をモノルナが揶揄うと、酒蔵が面倒臭そうに舌打ちをした。

モノルナのウザ絡みには、流石の酒蔵もうんざりしているらしい。

モノルナを適当にあしらった酒蔵は、モノクマとモノルナに目を向ける。

 

「で、今回もどうせ新しいエリアの開放だろ?」

 

『ギ、ギクゥ!?な、なんでわかったのさ!』

 

酒蔵が言うと、モノクマはオーバーリアクションをしてみせた。

…うん。

どう見ても茶番なんだが。

そう思っていると、俺と同じ事を思ったであろう神無月が口を開く。

 

「そりゃ、同じ事繰り返してたらわかるに決まってんじゃん。アンタ達バカ?」

 

『ボクはウマでもシカでもなくてかわいいモノクマだクマー!』

 

「いや、聞いてないんだけど」

 

神無月の言葉にモノクマが反論すると、神無月が呆れた。

 

『キャハハ、なーんかどっかから早く進めろよって声が聴こえる気がするし、もう詳しい説明は要らないよね?それじゃ皆、今から15分以内にホテルの玄関に来て下さい!来ないと月にかわっておしおきよん☆』

 

モノルナは、某美少女戦士のポーズをしながら俺達にアナウンスをした。

…もう、ツッコむ気すら起きない。

俺達は、渋々ながらも一階に降りた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

《ホテル 1F ゲンカン》

 

俺達が1階に着くと、打田も来ていた。

だけどどこか、打田の様子がおかしかった。

何だか、そわそわしているというか…俺達と視線を合わせたくないように見える。

 

「打田。お前、今日何か様子が変じゃないか?」

 

「……別に」

 

俺が話しかけると、打田はぶっきらぼうに答える。

相変わらずの一匹狼だな…

なんて思っている間にも、全員が揃った。

今回は、六道のノートパソコンの中に入っているΩも一緒だ。

全員が揃うと、どこからかモノクマとモノルナが飛び出てくる。

 

『うぷぷぷぷ!皆さん集まりましたね?それじゃ、とっとと外に出やがってください!』

 

モノクマとモノルナは、俺達に扉の向こうに出るように急かしてきた。

このやりとりも、もう3度目か…

今度は俺達をどこに連れて行く気だ?

そんな事を考えつつも、薄暗い動く通路を進んでいく。

長い廊下をひたすら歩いていると、扉が見えてきた。

イルミネーションで装飾された、見るからに豪華な扉だ。

例の如く扉が上下に開く。

 

 

 

「……何だこれ」

 

思わず、そんな事を口走った。

目の前に広がっていたのは、遊園地と、上に球体が乗ったオブジェのような建物だった。

建物の前には、巨大な噴水がある。

勢いよく噴き出している噴水の水は、イルミネーションの光を反射して、キラキラと虹色の光を放っていた。

 

ここ、室内だよな…?

何で部屋の中に、遊園地があるんだよ。

 

「すげえ!遊園地があるぞ!」

 

「今、俺様の目の前に混沌が広がっているぞ…」

 

「どうなってんだこりゃあ…」

 

新しいエリアを見た樺戸と安室と酒蔵は、わかりやすいリアクションをしていた。

するとモノルナとモノクマが説明を始める。

 

『キャハハ、どう?驚いた?』

 

『オマエラ、そろそろ新しい遊びがしたくなってきた頃でしょ?そんなオマエラの為に、新しい施設を開放しました!ここが第四の施設、『ラスベガスビル』なのだ!』

 

『ラスベガスビル』か…

そういえば、そんな施設があるってΩが言っていたな。

言われてみれば確かに、遊園地とか、目の前に聳え立つ建物とか、ラスベガスの街並みを模しているように見える。

 

「今度は北アメリカか…」

 

皆がラスベガスビルの内装に圧倒されている中、六道がボソッとつぶやく。

この施設は、七大陸をモチーフにしているらしいが…

確か、これでまだ開放されてないのはあと『ルクソールタワー』と『ソロモン神殿』の2つだけだよな。

…まさか、あと2回学級裁判を乗り越えないと、全ての施設が開放されないって言うんじゃないだろうな。

 

『このビルの中は、色んな娯楽が盛り沢山!カジノに遊園地、コンサートホール、映画館なんかもあるよ!』

 

「カジノ…?」

 

モノクマが言うと、梶野が反応する。

ディーラーという職業柄なんだろうけど、適応早くないか…?

 

『それじゃ、皆思う存分殺し合ってね!バイバ〜イ!』

 

そう言って、モノクマとモノルナはどっか行った。

相変わらず、癇に障る奴等だ。

…っと、まずは新しい施設に何があるのかを確認しないとな。

 

新しい施設は…

カジノ、遊園地、コンサートホール、植物園、映画館、ミュージアム、バーがあるみたいだ。

目の前の建物をぐるっと囲む形で、遊園地と植物園がある。

建物の中には、カジノとコンサートホール、映画館、ミュージアム、バーが入ってるらしい。

 

「どうすっか?」

 

「とりあえず、今回も探索をしましょう。せっかく新しい施設が開放されたのですから、何があるのかくらいは確認しておきたいでしょう?」

 

樺戸が尋ねると、梶野が答えた。

梶野は相変わらずのポーカーフェイスだけど、心なしかワクワクしているように見えなくもない。

梶野お前まさか、カジノに行ってみたいだけだったりしないよな…?

 

「それじゃあ、さっさと分担決めて解散しちゃおうよ。当然ボクは千春ちゃんと一緒に探索するから、他の皆は適当に決めていいよ」

 

的凪は、ヘラヘラ笑いながら勝手に仕切ってきた。

…やっぱりこいつの中では、六道と一緒に探索するのは確定なんだな。

こいつの凶行に付き合わされる六道が不憫でならないんだが。

そう思っていると、酒蔵が呆れた表情を浮かべながら的凪に話しかける。

 

「何言ってんだ、お前なんかと一緒にするわけねぇだろ」

 

「は?」

 

酒蔵が言うと、的凪は貼り付けたような笑顔を浮かべて、マネキンみたいにぐりんっと酒蔵の方に顔を向けた。

酒蔵は、的凪に対して嫌悪感を剥き出しにしながら言った。

 

「お前は、俺と一緒だ。どうせ誰もお前と一緒になりたくないだろうからな」

 

「何でキミが勝手に決めるの?キミはボクと千春ちゃんの行動を決められるほど、偉いんだっけ?」

 

酒蔵が言うと、的凪はギギギっと錆びたブリキの人形みたいに首を傾けながら反論した。

笑顔だし、口調も穏やかなのに、めちゃくちゃ怖い。

これ、絶対酒蔵に何かしようとか思ってるだろ。

 

「酒蔵…その、大丈夫なのか?的凪を怒らせたら、何をしでかすか…」

 

「おっと、心配してくれるのかい東野クン?もしかしておじさんに惚れちゃった?そういう事ならおじさんはいつでも大歓迎…」

 

「いや、違うけど」

 

酒蔵が気持ち悪い事を言ってきたものだから、俺は即座に否定した。

誤解されたら困るし、こういうのはハッキリ言わなきゃいけない…と思う。

 

「これ以上、六道ちゃんに余計なストレス与えられるかよ。年長者として、問題児の世話を焼くのは当然の務めだろう?」

 

酒蔵は、妙にかっこつけながら言った。

確かに、的凪が怖いからって、これ以上六道と一緒にしたら、六道が可哀想だ。

正直全然不安が拭えないけど、ここは酒蔵の言葉に甘えとくか…

 

酒蔵と的凪以外の7人は、話し合いでグループを決めた。

探索のグループが決まった後は、誰がどこを探索するのかを決める事になったわけだが…

 

「俺とクソ凪はバーと映画館を探索するぜ。皆はどうしたい?」

 

「えっと、じゃあ…」

 

俺は打田の方を見てから、自分の行きたい場所を言った。

 

「「カジノを…」」

 

俺が言うと、六道と被った。

 

「おいひがしの…ちはるはカジノを調べる。おまえはどっかいけ」

 

「そうだよ東野くん。千春ちゃんが探索したいって言ってるんだから、キミが譲りなよ」

 

「私もカジノを探索したいですね。職業柄、探索に向いているかと」

 

「いや、お前ら1人多いんだから外の探索しろよ」

 

「やだ」

 

六道、的凪、梶野の三人が俺に圧をかけてくる。

お前ら、3対1はいくらなんでも卑怯だろ。

打田、安室…お前らも何か言ってやってくれよ。

 

「俺様はどこでも構わんのだが…」

 

「あたしも」

 

…クソっ。

 

「じゃあせめてジャンケンで決めさせてくれよ。その方が公平だろ?」

 

「まあ…そうですね」

 

「ちはるにジャンケンで挑むだと…?おまえ、いい度胸してるな…」

 

俺が言うと、梶野と六道が納得してくれた。

結局、俺と六道がジャンケンをして、勝った方がカジノの探索をする事になったわけだが…

 

「勝った…!」

 

「…くそが」

 

俺が勝って、カジノの探索をする事になった。

俺と打田がカジノとミュージアムを、樺戸と神無月がコンサートホールを、酒蔵と的凪がバーと映画館を、安室と梶野と六道が遊園地と植物園を探索する事になった。

皆が解散して、俺と打田だけが入り口付近に取り残された。

 

…すげぇ気まずい。

打田って人とあんまり話さないタイプだし、何を話したらいいのかわかんねぇ。

でもとりあえず、まずはカジノの探索をしないとだよな。

 

「えっと…それじゃ、行こっか」

 

俺は、様子を窺う感じで打田に声をかけた。

すると打田は、俺の耳元で、思いがけない事を口にした。

 

「……東野。あんたに話したい事がある。昨日の事件の事で…」

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生存メンバー ーーー

 

【超高校級の小説家】東野(ヒガシノ)(ジュン)

 

【超高校級の原型師】安室(アムロ)明日奈(アスナ)

 

【超高校級のディーラー】梶野(カジノ)運命(サダメ)

 

【超高校級のカルタ師】神無月(カンナヅキ)(モミジ)

 

【超高校級のソムリエ】酒蔵(サカグラ)飛露喜(ヒロキ)

 

【超高校級のカバディ選手】樺戸(カバド)ラムジ

 

【超高校級の狙撃手】打田(ウチダ)清美(キヨミ)

 

【超高校級の幸運】的凪(マトナギ)(コズエ)

 

【超高校級のゲームプログラマー】六道(ロクドウ)千春(チハル)

 

【サポートAI】アルターエゴ・Ω

 

ノコリ10人

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のギャル】殉前(ジュンマエ)詩乃子(シノコ) Prologue 見せしめ

 

【超高校級のプロレスラー】内闘(ナイトウ)力也(リキヤ) Chapter.1 シロ

 

【超高校級の絵本作家】山脇(ヤマワキ)ゆか Chapter.1 シロ

 

【超高校級のヒットマン】暗野(アンノ)斬良(キラ) Chapter.1 クロ

 

【超高校級の司令官】神風(カミカゼ)大和(ヤマト) Chapter.2 シロ

 

【超高校級の軍医】薬師寺(ヤクシジ)療香(リョウカ) Chapter.2 クロ

 

【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン Chapter.3 シロ

 

【超高校級の心霊学者】消灯寺(ショウトウジ)霊庵(レイアン) Chapter.3 シロ

 

【超高校級のグラシエール】氷川(ヒカワ)みるく Chapter.3 クロ

 

以上9人

 

 

 

 

 

推しがいたら教えてくんなまし

  • 東野潤_小説家
  • 暗野斬良_???
  • 殉前詩乃子_ギャル
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  • 薬師寺療香_軍医
  • リーゼロッテ_オルガニスト
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  • 消灯寺霊庵_心霊学者
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  • 梶野運命_ディーラー
  • 神無月椛_カルタ師
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  • 酒蔵飛露喜_ソムリエ
  • 樺戸ラムジ_カバディ選手
  • 内闘力也_プロレスラー
  • 打田清美_狙撃手
  • 的凪梢_幸運
  • 六道千春_ゲームプログラマー
  • モノルナ_引率教師
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