インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
「【超高校級の絶望】…!?」
打田にミュージアムの隠し通路に連れて来られた俺は、そこで打田から俺達が誰も知らない真実を聞かされた。
俺が驚いていると、打田が頷いて話し始める。
「…そうよ。Ωが、『人類史上最大最悪の絶望的事件』が起こったって言ってたでしょ?『人類史上最大最悪の絶望的事件』を引き起こした張本人は江ノ島盾子だけど、奴は世界中に絶望をばら撒き、希望ヶ峰学園の生徒も絶望に汚染された。絶望に感染した生徒達は、【超高校級の絶望】と呼ばれ世界を壊した極悪人として恐れられる事になったの。そして、あたし達のクラスの中にも、【超高校級の絶望】は紛れ込んでた。あたしの任務は、自分のクラスに紛れ込んだ【超高校級の絶望】を殺す事」
「嘘だろ……?」
「あたしがこんな嘘つく理由がある?あんたに今話した事が、あたしが今まで失ってた10年間の記憶の一部」
打田の口から語られたのは、荒唐無稽な話だった。
【超高校級の絶望】だの、任務だの、打田の言っている事が何一つ理解できなかった。
だけど打田の話した事が本当の事だという事は、打田の表情を見れば理解できた。
打田は、冗談でこんな事を言う奴じゃない。
だけど、まともな頭で信じられる話じゃなかった。
打田だけその事を思い出したというのも、にわかに信じられない。
俺は何も覚えてないのに、何で打田だけ自分の任務や空白の10年間の事件を覚えてるんだ?
空白の10年の間に、何があったんだ?
聞きたい事は、山ほどあった。
「思い出したって…いつ記憶が戻ったんだよ?俺達が記憶を失った間の10年で、何があったんだよ!?」
「記憶の一部が戻ったのは、学級裁判が終わった後。ずっと頭の中でもやがかかってたものが、少しだけ思い出せたってだけ。10年の間にあたし達の身に何があったのかまでは…思い出せない」
俺が問い詰めると、打田は頭を抱えながら知っている事を全て話した。
打田の反応を見るに、これ以上は何も知らないというのは多分嘘じゃない。
それにしても、【超高校級の絶望】か…
打田に抹殺の依頼が来るって事は、それ程までに社会に甚大な被害をもたらす存在って事だよな。
そんな奴が、俺達の中にいるのかよ…
「じゃあお前は、その【超高校級の絶望】が、六道を襲ったって言いたいのか?」
俺は、核心に迫る事を打田に尋ねた。
もし【超高校級の絶望】が全ての元凶で、六道を襲ったのもそいつなら、一応六道を襲った理由は説明がつく。
コロシアイを防ぐ為にマリンブルー・シンドロームのクリア報酬の『動機』を独占していた六道から『動機』を奪い返してばら撒く為に、氷川の犯行に便乗して六道を襲った…って可能性が考えられる。
そもそも氷川を唆してリーゼを殺させたのも、そいつだったのかもしれない。
俺がそう考えていると、打田は首を横に振る。
「断言はできない。何しろ、あまりにも情報が少なすぎるからね…ただ、『六道を襲った犯人がまだ生きてる事』、『【超高校級の絶望】があたし達の中に紛れ込んでる事』、この二つは紛れもない事実。六道を襲った犯人が【超高校級の絶望】かもしれないし、そうじゃなくても危険人物があたしらの中にいる事には変わりない。このままだと、確実にまたコロシアイが起こる。呑気に仲良しごっこしてる場合じゃないって事」
打田は、右手の中指でメガネを上げながら話した。
打田の話が本当なら、俺達の中に積極的に人を殺そうと考えてる奴がいるって事になる。
…既に的凪っつう問題児はいるけど…
あいつ以外にも殺人を躊躇しない奴がいるなんて、考えたくないな…
でも、どうして打田は急に俺に話す気になったんだろう。
俺が信用されてるってのはわかったけど、そもそも何で人に話そうと思ったんだ?
打田の性格的に、自力で解決しようとしそうなもんだが…
「…尚更、わかんねぇよ。何で今俺に話したんだ?俺に話したところで、俺にできる事なんてたかが知れてるし…そう簡単に人を信用するような奴じゃなかっただろ?」
「……………」
俺が言うと、打田が若干眉間に皺を寄せた。
…やべっ、質問の仕方を間違えた。
失礼な事を言って打田の気分を害した事を後になって気づいた俺は、慌てて弁解した。
「あっいや、ごめん。別に貶すつもりはなかったんだけど…」
「いや、いいよ別に。事実だし。あたしはただ、何もせずに死ぬのが嫌なだけだから」
そう言って打田は、来た道を戻って階段を上った。
俺がその場に立っていると、打田が振り向いて俺に話しかけてくる。
「そろそろ戻らないと。長居してたら怪しまれる」
「あ…そうだな」
打田の言葉に、俺はふと我に返った。
いつまでもこんなところにいたら、他の皆を待たせちまう。
そろそろ、探索を終わらせて集合場所に戻らないと。
打田が隠し通路の扉を開けると、俺達がさっきまでいたミュージアムに戻ってきた。
その後もミュージアムの中を一通り見た俺と打田は、エレベーターに乗り込んで1階に降り、いつもミーティングをしているホテルのレストランへと向かった。
◇◇◇
探索を終えた俺達は、ホテルのレストランに戻り、酒蔵と梶野が作ってくれた夕食を食べた。
その後は、全員でミーティングを開いた。
梶野は、メモ帳を開いてメモを取る準備をしながら、俺達に話題を振る。
「ではミーティングを始めましょうか。まずは酒蔵様、ご報告を」
「ああ。バーは、小洒落た雰囲気になってて普通に酒とかも置いてあったぜ。あ、でもおじさん以外が酒を飲んだら校則違反だから気をつけろよ」
「酒…って、あんたまさか探索中に飲んだくれてたんじゃないよね?」
「流石にそんな事してねーよ!」
酒蔵が報告をすると神無月が詰ってきたものだから、酒蔵がすぐに否定した。
いくら酒蔵が酒好きだからって、探索中に酒を飲むような事はない…と信じたい。
「じゃあ、続けるぞ。3階の映画館は、入り口のとこにモノルナちゃんが店員をやってるチケット売り場があったぜ。そこでチケットを買うと、映画が見られるんだと。あ、でもものすごいぼったくり価格だから、皆気をつけろよ」
「ま、映画って言っても有名作品の脚本を切り貼りしただけの駄作だったけどね」
酒蔵が報告すると、的凪も続けて報告をした。
ぼったくり価格の上に駄作って…
そんなの誰も見ねーよ…
「…なるほど。ご報告ありがとうございます。次は東野様、打田様。ご報告を」
次は俺か…
「…あ、ああ。カジノは、トランプとかルーレットとか、色んなゲームが置いてあったよ。ホテルの娯楽施設にもゲームはあったけど、あれより種類も数も多かったぞ」
「…なるほど」
「ゲーム……」
俺が報告すると、梶野と六道が反応する。
…やっぱり、本気でカジノの探索をしたかったんだな。
「ミュージアムは、骨格標本とか美術品とか骨董品とかが置かれてて、何か手当たり次第って感じだった。あとはー…作業用の工房があったくらいかな」
「むっ、工房とな…!?どんな感じだったのだ?」
「そんなに気になるならあとで自分で行ってみれば?」
俺に続けて打田も報告をすると、早速安室が食いついてきた。
やっぱり【超高校級の原型師】としては気になるところではあるんだな。
「えーっと…俺からの報告は以上だ」
「あたしからも特にない」
「ありがとうございます」
結局、隠し通路の事と、俺が打田から聞いた話は皆には報告しなかった。
下手に話したら、またコロシアイが起こってしまうかもしれない。
皆の事を信用してないわけじゃないけど、打田からあんな話を聞かされた後じゃ、この場で皆に全てを話す気にはなれなかった。
俺達が話した情報がコロシアイに利用される事だけは避けたかったから、この事は俺と打田だけの秘密にする事にした。
「次は樺戸様と神無月様ですね。ご報告お願いします」
「ご報告っつったって…そんな報告できるようなもの、なかったよ?」
「とにかくデッケーコンサートホールだったぜ!以上!」
梶野が尋ねると、神無月と樺戸が報告した。
短いな…
まあでも、それ以上報告できる事が何もなかったんなら、しょうがないけど。
「あっ、そういえば何だっけ…変な機械がステージに置いてあったよ!」
「変な機械?」
「そう!あれ?何だったっけ、ド忘れしちゃった」
「あれだろ?アンプ」
「そうそう、それそれ!」
何を言おうとしたのか思い出せずに困っている神無月に樺戸がアシストすると、神無月が思い出したように指をさした。
神無月は機械音痴だから、機械の名前を覚えられなくても仕方ないけど…
「でね、何かそのアンプってやつに特別な機能があるってモノクマが言ってたよー」
「特別な機能?何なのだ、それは」
「さあねー。モノクマも、そこは詳しく教えてくれなかったよ。気になるなら自分で使ってみればって」
神無月の報告に対して安室が言及すると、神無月は自分のツインテールをいじりながら答えた。
特別な機能…か。
モノクマとモノルナの事だから、変な機能じゃないといいけど。
「オレらからはそれだけだぜ!」
「なるほど…では最後は私達ですね。まずは植物園の報告からしますね。植物園には、世界中のあらゆる植物が植えられていました。熱帯の植物と寒帯の植物が一緒に栽培されていたりしたので、おそらくコンピュータが24時間体制で温度管理をしているのでしょうね。あとは、園芸用品が物置に置いてあったくらいでしょうか」
「ククク…遊園地には漆黒の闇を纏いし盃、闇夜を駆け抜ける鋼の獣、運命の円環に囚われし鋼のペガサス、運命の輪が回りし時高く舞い上がる程に真実の恐怖が見下ろす棺、そして無限の疾風を司り絶対なる破壊の刃を秘めた鋼の龍の姿があったな…俺様が幼子の頃に訪れた魔界の遊園地を思い出すぞ…」
「遊園地には、コーヒーカップ、ゴーカート、メリーゴーラウンド、観覧車、ジェットコースターがありました」
梶野が植物園の報告をすると、次は安室が遊園地の報告をした。
相変わらず厨二ワールド全開だったので、梶野がわかりやすく噛み砕いて翻訳してくれた。
俺も少しは安室の言葉がわかるようになってきたけど、やっぱりまだ通訳がいてくれた方がありがたい。
っていうか何だよ、魔界の遊園地って。
別に今ツッコむところじゃないと思うが…
「おや、そういえば今朝六道様が、何か気になる事があるとおっしゃっていたと記憶しているのですが…六道様からは何かご報告はございませんか?」
「……一応、あの後もΩにハッキングを試させてた。そしたら、また色々わかった事がある…ってだけの話……」
梶野が尋ねると、六道が船を漕ぎながら答える。
六道は、ノートパソコンを開きΩを起動した。
するとパソコンの画面に、デフォルメ化された神風の顔が表示される。
『やあ、おはよう。俺は、新たに得られた情報を表示すれば良いのだな?』
そう言ってΩは、ノートパソコンの画面に調査結果を表示した。
Ωが表示した画面には、打田が言っていた【超高校級の絶望】に関する情報や、空白の10年間に関する情報が一部表示されていた。
打田の記憶の通り、前にΩが言っていた『人類史上最大最悪の絶望的事件』とは、【超高校級の絶望】が引き起こした世界的なテロ活動だったようだ。
希望溢れる存在だったはずの希望ヶ峰学園の生徒達は、江ノ島盾子という存在によって絶望に染まり、世界の破壊者と化した。
江ノ島の同級生だった78期生は、絶望の魔の手から逃れる為に校舎に籠城していたものの、江ノ島に校舎を乗っ取られて俺達と同じようなコロシアイに参加させられていた…
…いよいよ、前にΩが言っていた『世界が崩壊した』という言葉を、信じる他なくなった。
Ωの情報によると、殉前を除く俺達17名は、絶望の魔の手から逃れ、絶望に対抗する為に絶望的事件を生き延びたOB・OG達で構成された『未来機関』に所属していたという。
しかし空白の10年の間に、俺達の所属していた第十三支部のメンバーが、ある日突然音沙汰もなく姿を消した。
関係者は、【超高校級の絶望】に拉致、もしくは殺害されたものとみているが、捜査は難航を極めた末に打ち切られてしまった。
「何だよこれ…」
「あたい達が未来機関?失踪?何が何だか全然わかんないよ!」
Ωからの情報を聞いた樺戸と神無月は、頭を抱えて混乱していた。
そりゃあ、こんな荒唐無稽な話を突然されて、信じろっていう方が無理な話だ。
そんな中、いち早く情報を頭の中で整理した梶野が、顎に手を当ててΩに尋ねる。
「【超高校級の絶望】…デスゲーム…つまり、こういう事でしょうか?【超高校級の絶望】の残党が、未来機関のメンバーである私達を連れ去って、外の世界から隔離されたこの雪国に閉じ込め、全ての元凶である江ノ島が作ったデスゲームを再現したと?」
『そこまではわからない。何しろ、現時点で入手できた情報が少なすぎてな…そもそも犯人が【超高校級の絶望】かどうかすら、特定できていないのだ』
「は!?何それ、全然何もわかってないんじゃん!」
梶野の質問にΩが首を横に振ると、神無月が文句を言った。
『ただ、確実に言える事は、お前達が参加させられているデスゲームが、かつて江ノ島が自分のクラスメイトを巻き込んだデスゲームの模倣であるという事だ。これを見ろ』
「う゛っ…!?」
Ωが、パソコンの画面上に写真を表示した。
俺も含めて、ほとんど全員が、その写真の内容に吐き気を催した。
そこには、全身を殴打された遺体、真っ黒に焦げて潰された遺体、プレス機で潰された遺体の写真が表示されていた。
まるで、殉前や暗野、薬師寺…そして氷川が受けたおしおきのように、残虐な手口で殺されたのが窺える。
『これが、『コロシアイ』の全てだ』
「嘘だろ…?」
「あれと同じ事が、既に行われてたってのかよ…」
「…………」
Ωが語ると、樺戸と酒蔵が呆然とする。
俺達が今味わっているこの地獄を、78期生達は既に経験していた。
これには、さすがの打田も冷や汗をかいていた。
『そしてこれが、先日入手した『動機』だ』
そう言ってΩは、六道がゲームで手に入れた写真を表示した。
六道は『絶対に見つからない場所に隠した』って言ってたけど、データ化した写真をΩが預かってたのか…
「これは…」
Ωが表示したのは、何百枚もある写真のうち、俺達に見せても問題ないと判断したであろう数枚の写真だった。
リーゼと氷川が仲良さそうにケーキ作りをしていて神無月が二人の作ったスイーツをつまみ食いしている写真や、消灯寺と安室が二人で話しながらリーゼの誕生日プレゼントを用意している写真、神風と薬師寺が満面の笑みを浮かべながら赤ん坊を抱えている写真、運動会で内闘と樺戸が走っている隣で暗野が転びそうになっている写真、俺が山脇と一緒にベンチで本を読んでいる後ろで六道が猫と戯れている写真…
どの写真にも共通していたのは、俺達が皆仲良さそうにしているという事だ。
俺達が記憶を失ってコロシアイに参加させられ、憎しみ合い、殺し合う前は、皆こんなに仲良く過ごしていたんだ。
『お前達が希望ヶ峰学園で過ごした3年間、そしてその後の2年間を記録した写真だ』
「そんなの、あいつらの捏造かもしれないじゃん!」
『いや、それはない。これは希望ヶ峰学園の卒業アルバムから抜粋した写真だからな』
「……どうやら私達が希望ヶ峰学園で空白の3年間を過ごしたというのは、いよいよ本当のようですね」
Ωが言うと、梶野が口を開く。
神無月はまだモノクマとモノルナの捏造を疑っていたが、Ωがそれを否定した。
皮肉にも、モノクマとモノルナが配った写真が、Ωが語った外の世界の情報に真実味を持たせる事になった。
そんな中、頬杖をついて話を聞いていた的凪が口を挟む。
「…ふぅん。氷川さんが手に入れようとしてたのは、この写真だったのか。まあ、見なくて正解だっただろうね。あんなに嫌ってたリーゼさんが神無月さんと仲良くしてる写真なんか見つけちゃったら、絶対発狂してただろうし」
「ちょっと待て、手に入れようとしてたって…どういう事だ?何でてめぇがそれを知ってんだ!?」
「さぁね、風の噂で聞いたんだよ」
的凪の発言に引っかかった酒蔵が問い詰めると、的凪はのらりくらりと言及を躱した。
こいつ…自分から氷川に喧嘩を売っておいて、よくもまあいけしゃあしゃあとそんな事が言えたものだ。
俺が的凪に呆れていると、酒蔵が的凪の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけんな、今ここで話せ!!」
的凪の胸ぐらを掴んだ酒蔵は、至近距離で的凪に怒声を浴びせた。
するとヘラヘラ笑っていた的凪は、急に真顔になって、低い声で酒蔵に話しかける。
「痛いよ、酒蔵くん。離してよ」
的凪は、声を荒げたり暴力に訴えたりする事なく、静かに酒蔵を威圧した。
華奢な体格をしているというのに、直接威圧されていない俺すらも冷や汗をかく程の不気味な雰囲気を醸し出していた。
的凪に気圧されたのか、酒蔵は冷や汗をかきながら不満そうに的凪を解放した。
「チッ…」
酒蔵が舌打ちしながら的凪から手を離すと、的凪は普段の笑顔に戻り、シワについたジャケットをピンと張った。
場の空気を察した的凪は、六道に話しかける。
「何か空気悪くない?ねえ千春ちゃん」
「おまえのせいだろきえろちはるおまえきらい」
「わかった、じゃあ消えるね!」
いけしゃあしゃあと皆の地雷を踏み抜いておいてヘラヘラしている的凪に、六道が罵声を吐き捨てると、的凪はヒラヒラと手を振って出て行った。
すると打田も大きくため息をついて、席から立ち上がった。
「…あたしも出てく。話し合いは終わったんだから、もういいでしょ」
「打田…」
打田は、そう言ってレストランから去って行った。
最悪の空気の中、ミーティングはお開きとなった。
◇◇◇
「さてと…これからどうするかな…」
ミーティングが終わった後、俺は新しく解放されたラスベガスビルの中にあるモノクマハウスに向かった。
モノクマハウスの1階にあるカジノは、相変わらず煌びやかに輝いていた。
カジノに入ってすぐ、左手にスロットマシーンが並んでいるのが見える。
「スロットか…」
探索が終わって暇だし、試しにスロットで遊んでみる事にした。
メダルを入れてレバーを引くと、スロットのリールが勢いよく回転し始めた。
やがて回転速度が遅くなっていって、左から順番にリールが止まる。
三つのリールのうち、二つの模様が揃った。
あと一つが揃えば、景品がゲットできる。
別に景品がものすごく欲しいわけでもないが、揃ったら揃ったで嬉しいので、あと一つが揃え、と心の中で祈った。
するとリールの回転が止まり、スロットの絵柄が三つ揃った。
スロットからは、古いラジオが出てきた。
ラジオかぁ…
正直、使い道がないんだよな。
誰かにあげようかな…
「おや、東野様。何をしていらっしゃるのですか?」
俺がラジオの扱いに困っていると、梶野が後ろから話しかけてきた。
「梶野か。いや、暇だしちょっとスロットで遊んでみようかと思ってな。梶野も遊びに来たのか?」
「まあ…そうですね。遊びに来たというよりは、下見に来ました。新しく開放されたカジノがどんなものか、見ておきたかったので」
俺が尋ねると、梶野が笑顔を浮かべながら答える。
相変わらずのポーカーフェイスだが、心なしかはしゃいでいるように見える。
梶野は、俺が遊んでいるスロットを見て、俺に話しかけてきた。
「あの、もし良かったら一緒にゲームでもしませんか?」
「ゲーム?」
「ええ。一人で遊ぶより、二人で遊んだ方が有意義に時間を使えるかと思いまして。トランプ、ルーレット、丁半、牌九…何でも構いませんよ。どのゲームをやりたいですか?」
ゲームか…
こういうところでやるゲームって、やった事がないの多いんだよな。
ルールは何となく知ってるけど。
「えっと…じゃあ、トランプで」
「かしこまりました。ゲームはクローズド・ポーカーでよろしいですか?」
クローズド…
ああ、確か日本で一番メジャーなポーカーだったな。
「…ああ。じゃあ、それで」
俺は、梶野と一緒にポーカーで遊ぶ事にした。
何回か勝負したけど、結果は俺の惨敗だった。
メダルを賭けたゲームじゃなかったからまだ良かったけど、メダルを賭けたゲームだったら絶対破産してたよ…
「また負けた…お前、まさかとは思うけどイカサマとかしてないよな?」
「おや、では確かめてみますか?」
俺が確認すると、梶野が平然とした表情で言った。
一応梶野の服やトランプを調べるが、イカサマに使えそうなものは何一つ出てこなかった。
「クソッ、何も出てこねえ…初手からロイヤルストレートフラッシュとかあり得ねえだろ…」
「まあ、こればかりは経験の差ですね」
俺がしつこくイカサマを疑っていると、梶野が余裕の笑顔で言った。
「…なあ、ところでさ。梶野って、ラジオとか聴いたりするか?」
「はい?」
「いや、実はな?お前にあげたいものがあって…」
俺は、さっきのスロットで手に入れたラジオを梶野にプレゼントした。
すると梶野は、笑顔を浮かべてラジオを受け取った。
「これを私に?ありがとうございます」
梶野は相変わらずのポーカーフェイスだけど、どうやら喜んでくれたみたいだ。
俺は、梶野と一緒に過ごす事にした。
「梶野は何でディーラーになったんだ?」
「そうですね…やはり、父の影響でしょうか」
「父親の?」
「はい。私の父は、世界有数の規模を誇るカジノの経営者だったのです。私は幼い頃から父の経営するカジノに出入りしていたので、ディーラーとしての才能が開花したのはその影響でしょうね。日本で暮らしていれば普通はカジノにはあまり馴染みがないのでしょうけれど、幼い頃から父の背中を見て育った私にとっては、もはや生活の一部でしたね」
「なるほどな…」
梶野のディーラーとしての才能は、父親の影響だったのか…
親がきっかけっていうのは俺と同じだけど、梶野の場合は、親に圧力をかけられて超高校級になったわけではないみたいだ。
そこは素直に羨ましいと思った。
「双子の弟の宿命は、私とは道を違えて勝負師になる事を選んだようですが…志半ばで、亡くなってしまいました。不慮の事故に巻き込まれて…」
自分の才能の原点を語る梶野だったが、弟の名前を出した途端に、少しだけ表情が暗くなった。
梶野の弟は、本来なら梶野と一緒に希望ヶ峰学園に入学するはずだった。
だけど、ここにはいない。
その理由が気になってはいたけど、まさか事故で亡くなってたなんて…
「…なあ、梶野の弟って、どんな人だったんだ?」
俺は、弟の事を梶野に尋ねた。
梶野の話を聞いて、俺はもっと知りたくなった。
本来なら俺達のクラスメイトになるはずだった、梶野の弟の事を。
「性格は私と正反対で、私とは好みが何もかも合いませんでしたね。そのせいで意見の食い違いも多かったですが、それなりに仲は良かったですよ。昔はよく服装を交換して入れ替わりごっこをして遊んでいましたし」
「梶野にとって、弟は大事な家族だったんだな…」
弟の話をする梶野に、俺は共感していた。
俺も、家の中では妹が心の支えだったから。
俺が梶野に同情していると、梶野は俯いてポツポツと話し始める。
「…ええ。私にとって彼は、私の一部のようなものでした。彼が突然命を落とした時は、まるで自分の身体が裂かれたように心が痛みました。宿命を亡くした事故は、私の不注意で起こったのです。あんな事さえなければ、宿命は…」
そこまで言って、梶野は言葉を詰まらせる。
梶野は、自分が大切に思っている弟を事故で死なせてしまって、そのせいで自分を責めていた。
それ程に、梶野にとって弟は、かけがえのない存在だったんだ。
「そっか、それはつらいな…だけど、それは梶野のせいじゃないよ」
「東野様…」
俺は自分を責める梶野を見て、いてもたってもいられなくなった。
俺も、自分のせいで家族が傷つく痛みを、知ってるから。
昔、虐待に耐えきれずに自殺しようとしたのが母親にバレて、半殺しにされた事があった。
ヒステリックに俺を蹴りつける母を止めようとした妹が、母に突き飛ばされたはずみで大怪我を負った。
妹は、生死の境を彷徨ってもなお、俺のせいじゃないと言ってくれた。
あれ以来俺は、どんなに虐待を受けても、自分の意志で死ねなくなった。
家族を亡くした梶野と比べるのは失礼かもしれないけど、それでも少しでも梶野の心を軽くしてやりたかった。
「俺もさ、昔俺のせいで妹が大怪我して死にかけたんだ。でもあいつは、俺のせいじゃないって言ってくれたんだ。だからきっと梶野の弟も、兄貴のせいじゃないって思ってるんじゃないかな」
「…ありがとうございます。すみません、お見苦しいところをお見せしてしまい…ですが、お陰で少し気が楽になりました」
「そっか…それはよかった」
「東野様のおかげで、決心がつきました。私は、ここで死ぬわけにはいきません。弟の分まで、生きていこうと思います」
梶野は、笑顔を浮かべながらそう告げた。
大した事は言えなかったけど、少しでも梶野の気が楽になったのなら良かった。
「…暗い話になってしまいましたね。申し訳ございません。気分転換と言ってはなんですが、もう一ゲームやりません?」
「げっ、またポーカーかよ!?」
その後も俺は、気分転換と称して、またポーカーに付き合わされた。
言うまでもなく惨敗だったけど、梶野と仲良くなれたみたいだ。
その後は、部屋に戻って疲れた身体を癒して眠りについた。
《梶野運命との好感度が1アップしました》
〜モノクマ劇場〜
『やっほー!モノクマ&モノルナの!モノクマ劇場の時間だよ!』
『妹よ』
『何ですか?お兄ちゃん』
『ボクは思うのですよ。人生はギャンブルの連続だって』
『あー、確かにね。受験も、就職も、結婚も、どの選択が正しいかなんて、その時はわからないものだもんね。でも大当たりを引くと信じて、人生を賭けるしかない…完璧で究極のマスコットのアタシ達には関係ない話だけどね!』
『うぷぷぷ、画面の前のオマエラに言ってるんだよ』
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級の原型師】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
【サポートAI】アルターエゴ・Ω
ノコリ10人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン Chapter.3 シロ
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のグラシエール】
以上9人
推しがいたら教えてくんなまし
-
東野潤_小説家
-
暗野斬良_???
-
殉前詩乃子_ギャル
-
神風大和_司令官
-
薬師寺療香_軍医
-
リーゼロッテ_オルガニスト
-
安室明日奈_原型師
-
消灯寺霊庵_心霊学者
-
山脇ゆか_絵本作家
-
梶野運命_ディーラー
-
神無月椛_カルタ師
-
氷川みるく_グラシエール
-
酒蔵飛露喜_ソムリエ
-
樺戸ラムジ_カバディ選手
-
内闘力也_プロレスラー
-
打田清美_狙撃手
-
的凪梢_幸運
-
六道千春_ゲームプログラマー
-
モノルナ_引率教師