インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
コロシアイ強化合宿13日目。
俺は、自室のベッドの上で目を覚ました。
この合宿も、始まってからもうすぐ二週間が経とうとしている。
今ではここでの生活にも、慣れてきてしまっている。
時計を見ると、午前5時を指していた。
…そういえば、今日は俺が朝食当番だったな。
普段から食事を作ってくれていた薬師寺や氷川は、もういない。
料理ができるメンバーが梶野と酒蔵、そして俺しかいない今、今日からは俺も積極的に飯の準備に加わらなきゃいけない。
俺は、軽く身支度を整えてから、ホテルのレストランに向かった。
「おはよう」
「おう、おはよう東野クン」
「おはようございます、東野様」
俺が挨拶を返すと、酒蔵と梶野が返事をしてくれた。
早速三人で、朝食を作り始める。
和食と洋食、両方作らないとな。
えっと…今日の朝食は、和食がご飯と味噌汁と焼き魚と煮物、洋食がトーストとサラダとコーンスープとベーコンエッグか…
俺達が三人で朝食を作り始めたその時、樺戸がレストランに来た。
「おはよー!」
樺戸は、レストランに来るなり大きな声で話しかけてきた。
相変わらず、朝から元気いいな…
「ああ、おはよう樺戸。悪いけど、食器並べといてくれるか?」
「任せとけ!」
俺が言うと、樺戸はテーブルの上に食器を並べ始めた。
樺戸が来てしばらくして、朝食の準備が大方終わった頃、安室と神無月がレストランに来た。
「ククク…待たせたな」
「ふわぁ〜あ、おはよぉ〜…」
安室は相変わらずの厨二病ワールド全開で、神無月は眠そうにあくびをしながら入ってきた。
樺戸にやってもらっていた食器の配膳に安室と神無月も加わって、6人で朝食の準備をしていると、ちょうど朝食の時間になった。
打田、六道、的凪の三人は、時間を過ぎても来なかった。
打田はいつもの事として、六道は…多分また寝坊でもしたんだろう。
的凪が来ないのは、多分六道が寝坊したからだろうな。
…仕方ない、六道には後で朝食を届けに行ってやるか。
「ごちそうさまでした」
朝食を食べ終わった俺達は、そのまま解散する事になったわけだけど…
酒蔵は、六道の為に残しておいた朝食をトレーに乗せて、六道の部屋に運びに行こうとした。
「よし、じゃあおじさんが六道ちゃんの分の朝ごはんを届けに行ってくるよ」
「ああ、いや、いいよ。俺が届けに行く」
「えっ」
俺が代わりに運びに行こうとすると、酒蔵がわかりやすくショックを受ける。
いや、だってほら…
悪いけど、酒蔵ってあんまり信用ないし…
俺は、酒蔵から六道の分の朝食を受け取って、六道の部屋まで運びに行った。
六道の部屋のインターホンを押し、起きてるかどうかを確認する。
「六道、起きてるか〜?」
俺がインターホン越しに声をかけると、部屋のドアが開く。
部屋の中からは、髪をボサボサにした六道が眠そうに出てくる。
六道はダボダボのTシャツを着ていて、どこがとは言わないが今にも溢れ出そうで目のやり場に困る。
「………ねてた」
寝てたって…
まさか、ずっとゲームでもしてたのか?
俺がそう考えていると、六道がのそっとドアの隙間から顔を出して、俺が運んできた朝食を受け取った。
しばらくすると、六道が空の食器が乗ったトレーを部屋の中から差し出してくる。
「ごちそうさま」
食べるの早っ。
手品かよ。
そういやこいつ、マリンブルー・シンドロームをプレイしてた時もすごい勢いで飯食ってたけど、ちゃんと噛んでんのか?
「おやすみ」
そう言って六道は、扉を閉めてまた自分の部屋に引き篭もった。
『おやすみ』って…
もう朝の8時なんだけど…
六道が食べ終わった食器を受け取った俺は、レストランに空の食器を戻しに行った。
今から昼飯の時間まで、特にやる事もないし、昨日六道達が探索してくれた遊園地でも行ってみようかな。
外に行く用事ができた俺は、身嗜みを整えてホテルを出発し、ラスベガスビルに向かった。
◇◇◇
《ラスベガスビル ユウエンチ》
ラスベガスビルに行くと、すぐそこに遊園地があった。
遊園地には、安室が報告してくれた通り、コーヒーカップとゴーカート、メリーゴーラウンド、観覧車、そしてジェットコースターがある。
観覧車の乗り場には、ホテルに置いてあったのと同じモノモノマシーンが設置してあった。
…せっかくだし、アトラクションを見て回る前に引いておこうかな。
俺は、昨日のカジノで稼いだ分のメダルを使って、モノモノマシーンで景品を引いた。
出てきたのは、『華麗な王子さま』という名前のカレーだった。
カレーかぁ…
正直、どっちも持ってても困るんだよな。
別に今日カレーって気分でもないし。
誰かにあげようかな…
俺がそんな事を考えていた、その時だった。
「おっ、ジュンじゃねーか!こんなとこで何してんだ?」
後ろから、樺戸が大きな声で話しかけてきた。
相変わらずすごい元気がいいな…
「ああ、せっかく遊園地が開放されたから、どんなものか見てみようと思ってな。樺戸もか?」
「おう!ここって、楽しそうなアトラクション色々あるだろ?でもまだやってないアトラクションもあるから、今から遊ぶとこだったんだ!」
やっぱり、樺戸は遊園地に遊びに来たのか…
まあ確かに、屋内にこんな大規模な遊園地があるのなんて珍しいもんな。
「なあ、せっかくだしジュンも一緒にやらねーか!?」
「いいけど…どれで遊ぶんだ?」
「これ!!」
樺戸が選んだのは、ゴーカートだった。
…そこはかとなく不安を感じるのは俺だけだろうか。
「…おい、大丈夫なのかそれ?やった事あるのか?」
「やった事ねーけど、やってみたらどうやんのかわかるだろ!」
そう言って樺戸は、ゴーカートに乗り込んだ。
さすが体育会系…
俺がそう思っていると、次の瞬間には、勢いよく発車した。
「えっ、いや、ちょっと待ってぇええええええ!!?」
「イェエエエエエエイ!!!」
あまりのスピードに、俺はシートにしがみつくので精一杯だった。
一方で、運転席に座っている樺戸は、平然としている。
樺戸の運転するゴーカートは、猛スピードでコースを一周し、元の場所に戻った。
「あー、面白かった!次はアレやろうぜ!」
「た、頼む…ちょっと休憩させてくれ…」
まだ元気が有り余っている樺戸は、既にヘトヘトの俺を引っ張って、次はコーヒーカップに乗り込んだ。
ようやく一息ついけるとコーヒーカップに座り込んだ次の瞬間には、コーヒーカップがものすごいスピードで回転した。
「ちょ…速っ!?ストッ…あぁあああああああ!!!」
「フゥウウウウウウウウ!!!」
樺戸は、楽しそうに笑いながらコーヒーカップを思いっきり回した。
おかげで俺は、コマ回しみたいにものすごい勢いでぶん回され、投げ出されないようにしがみつくので精一杯だった。
樺戸が満足するまでぶん回された俺は、降りる頃には平衡感覚を失い、吐き気に悩まされながらヨロヨロと下へ降りる羽目になった。
「う゛ぇ゛ぇ゛…ぎぼぢわるい…」
「楽しかったなー、ジュン!」
今にも吐きそうな俺とは反対に、樺戸はピンピンしている。
ホント三半規管どうなってんだお前…
やっぱり、体育会系の才能持ちとは基本性能が違うとつくづく思う。
俺は胃の中がミキサーでかき混ぜられるような不快感を覚えつつも、そういえば樺戸がカレー好きだった事を思い出した。
「…なあ、樺戸って確かカレー好きだったよな?」
「ああ、カレーは大好きだぜ!特に甘口のやつ!それがどうしたんだ?」
「実は、お前にプレゼントしたいものがあるんだ」
「えっ、オレにプレゼント!?」
俺がプレゼントの事を伝えると、樺戸が食いついてくる。
俺は、華麗な王子さまを樺戸にプレゼントした。
すると樺戸は、目を輝かせながら大喜びした。
「うわぁ、これオレが好きなカレーじゃねーか!!ありがとな、ジュン!」
樺戸は、満面の笑みを浮かべながら俺に礼を言った。
喜んでくれたみたいだ。
俺は、樺戸と一緒に過ごす事にした。
「樺戸は何でカバディ選手になったんだ?」
「何でって、そりゃあ小さい頃からずっとやってたからだな!オレの父ちゃんの故郷じゃ、みんなやってるスポーツだぜ!オレの父ちゃんは、昔村の代表だったって事もあって、休みの日はいっつもカバディをやってたんだ。オレがカバディをやるようになったのも、父ちゃんの影響かもな!」
俺が尋ねると、樺戸は元気いっぱいに答える。
樺戸はインド人の父親と日本人の母親を持つハーフで帰国子女なんだよな。
でも父親が昔カバディの代表選手だったっていうのは、初耳だぞ。
「まあ、一番の理由は、妹のためだけどな」
「妹?樺戸にも妹がいるのか?」
「おう!アイラっつってな、今年で8歳なんだ。…あ、もう外では10年経ってるっつってたから、生きてれば18歳か。こんな事になってなけりゃ、今頃アイラと一緒に飯食ってたはずなんだけどな」
妹の為、か…
俺も妹がいるから、外で待っててくれてる妹の身を案じる気持ちは痛いほどわかる。
でもそれとカバディと、何が関係あるんだろう?
「そのアイラちゃん?とカバディが、どう関係あるんだ?」
「アイラは、村の中で一番歌が上手くて、歌手になるのが夢なんだ。でも歌手になるのって、金がかかるだろ?オレん家は、あんまり金がねえんだ。父ちゃんが引退してからは、稼ぎが減っちまってな。母ちゃんにこれ以上無理させるわけにもいかねえし、オレがカバディで頑張って金稼いで、アイラを歌手にしてやりてえんだ」
「………」
「あっ、何だよ、そんな顔すんなよ!別に今の暮らしが苦しいって言ってるわけじゃねえぞ!?オレはカバディを好きでやってるし、俺が好きなカバディで頑張ればアイラの夢が叶うかもしれねえんだから、Win-Winってやつだろ!」
俺が樺戸に同情の眼差しを向けると、樺戸は笑顔で語った。
俺は、屈託のない樺戸の笑顔を見て、樺戸に内心同情していた自分が恥ずかしくなった。
樺戸は、自分の家が貧乏なのをこれっぽっちも苦しいとは思っていない。
自分の好きなカバディで金を稼いで妹の夢を叶えるのが最高の幸せだと本気で思ってる、そういう奴なんだ。
俺は、俺なんかよりずっと立派な生き方をしている樺戸を、羨ましいと思った。
俺が樺戸に尊敬の念を抱くと、樺戸はベンチから立ち上がって、両腕を上げて気合いを入れた。
「こんな話してたら、アイラの歌が聴きたくなってきたな。となりゃ、絶対生きてここを出ねえとな!」
「この姿で会ったら、ビビられちまうかもしれないけどな」
「それはそうだけどよぉ!」
何もかもが10年前のままの俺達が会いに行っても、10歳食ってる妹に会ったらビビられちまうだろ、俺がそうツッコミを入れると、樺戸は頭を掻きながら笑った。
もう世界が滅んでいて、妹には会えないかもしれない、そんな事は考えなかった。
「話してくれてありがとな、樺戸。おかげで楽しかったよ」
「オレもな!」
俺が礼を言うと、樺戸が満面の笑みを浮かべる。
まるで、歳の近い弟ができた気分だ。
「なあジュン、せっかくだからもう一回アレやらねえ?」
「アレは流石にちょっと…」
樺戸が目を輝かせながらコーヒーカップを指差すものだから、俺は苦笑いを浮かべながらやんわりと断った。
流石に俺にはもう、アレをもう一回やるだけのバイタリティはない。
でも何だか、樺戸と仲良くなれた気がする。
《樺戸ラムジとの好感度が1アップしました》
◇◇◇
樺戸と自由時間を過ごした俺は、昼食の準備をする為に、レストランへ足を運んだ。
梶野や酒蔵と一緒に、皆の分の昼食を作っていく。
今日の昼食は、チャーハンと中華スープだ。
「おーい皆、昼飯できたぞー!」
昼食の支度ができると、酒蔵が他の皆を呼んだ。
すると安室、樺戸、神無月、六道の4人が、真っ先にレストランに駆けつけてくる。
「おおっ、うまそうだ!」
「めし……」
樺戸は俺達が作った昼飯を見て目を輝かせ、六道に至っては船を漕ぎながら涎を垂らしていた。
的凪と打田以外の全員が揃ったので食べ始めようとしたその時、的凪がレストランに来た。
「あー、お腹すいたなぁ。ねえ、ボクの分はないの?」
的凪が言うと、さっきまで和んでいた場の空気が一気に澱んだ。
特に安室、神無月、六道の女子三人は、的凪への嫌悪感を剥き出しにしている。
「貴様は生ゴミでも食っていろ」
「ちょっと誰か塩撒いてよ塩!」
「ごま塩しかない……」
安室と神無月は的凪に罵声を浴びせ、六道は塩の代わりにごま塩を撒こうとした。
的凪も的凪だけど、お前らも殺気剥き出しで怖えよ。
「キミ達クラスメイトに対してひどくない?これっていじめじゃないのかな?あーあ、クラスの絆ってのはこんなにも脆いものだったんだね」
「元はと言えばてめぇのせいだろうが!!」
「俺様が貴様を嫌いなのは、今に始まった事ではないが…?」
的凪が余裕そうな表情を浮かべながら嫌味を言うと、酒蔵と安室が的凪に敵意を示した。
すると的凪は、肩をすくめながら六道以外を見下したように笑う。
「あーあ、何か完全に歓迎されてないって感じだねぇ。まあいいよ、この場はボクが悪いって事で引いてあげる。千春ちゃんの可愛い顔と、君達の大層素敵な馴れ合いを見られただけでボクは満足だからね」
そう言って的凪は、ヘラヘラ笑いながら手を振ってレストランを去っていった。
見事に地雷原踏み荒らしてったな…
「最初から最後まで嫌味全開で帰ってったぞアイツ…」
「全く気分が悪い…次姿を見せたら、俺様が断罪の鎖で裁きを下してやる」
「間違っても、殺すなよ…」
樺戸が呆れ、安室が鎖を握りながら物騒な事を言うものだから、俺が安室を宥めた。
的凪を殺したせいで誰かがクロになるなんて馬鹿馬鹿しいし、それこそモノクマとモノルナの思う壺だ。
俺はこれ以上、犠牲者を出したくない。
「それよりも皆様、早く昼食を戴きましょう。冷めてしまってはもったいないですし」
「そ、そうだな…」
梶野が言うと、皆自分の昼食を食べ始めた。
梶野は切り替え早いな…
◇◇◇
昼食を食べ終わって皆で片付けをした後、俺はまたラスベガスビルに向かった。
昨日俺が梶野と話をしたカジノに、今度は安室がいた。
安室は何やら、カジノのスロットと睨めっこをしているようだ。
「クソッ…どうなってるんだこの台は…!完全にクソ台じゃないか!」
どうやら当たりが出なくて苦戦しているらしい安室は、苛立ちのあまり台パンしていた。
側から見ていて何か可哀想だったから、声をかけてみる事にした。
「安室、どうしたんだ?」
「東野か…俺様は今、未だかつてない強敵と一戦交えているのだ。魔界騎士団団長には、何を賭してでも戦わねばならない時があるのだよ…」
俺が声をかけると、安室はスロットで遊びながら答えた。
どう見てもスロットで惨敗しているようにしか見えないが…
特にやる事もないので、安室の隣でスロットをしてみた。
すると一回目から絵柄が揃い、景品が出てきた。
「おっ」
俺のスロットから出てきた景品は、美少女戦士のフィギュアだった。
フィギュアかぁ…
正直、そんなに嬉しくないんだよなぁ。
どうせなら、ペンとか欲しかったよ。
俺がそう思っていると、安室がいきなり飛びついてくる。
「きっ、貴様ああああ!!?そ、それは『もちプリ』の限定版フィギュアじゃないか!!どうやって手に入れたのだ!?」
「どうやってって…普通に今スロットやったら出てきただけなんだが……あ、良かったらこれやろうか?」
「『やろうか?』って…もちプリの限定版フィギュアだぞ!?本当に手放していいのか!?」
「いや、俺が持ってても困るだけだし…安室が欲しいなら、安室が持ってた方がいいんじゃないのか?」
「は……!」
俺が言うと、安室は目と口を外れそうな程かっ開いて驚いた。
そんなにすごいものなのか、このフィギュア…
「ま、待て!そうだ、こうしないか!?俺様が今からスロットを引いて、必ずいい景品を出す!それで等価交換といかないか!?」
そう言って安室は、スロットに有り金を全て注ぎ込もうとした。
どんだけ欲しいんだ、このフィギュア。
「等価交換って…だから、そんなのいいからやるって」
俺がフィギュアを差し出すと、安室は混乱するあまり目を白黒させながらブツブツと早口で何かを呟いた。
だけど数秒ほどそのリアクションを続けた末に、安室は戸惑いながらフィギュアを受け取った。
「あ、ありがとう…」
安室は、聴こえるか聴こえないかくらいの声で、俺に礼を言った。
どうやら、喜んでくれたみたいだ。
俺は、安室と一緒に過ごす事にした。
2階にあるミュージアムを散策しながら、俺は安室の話を聞いた。
「安室はどうして原型師になったんだ?」
「…知りたいか?俺様の伝説を」
俺が尋ねると、安室はジ◯ジョ立ちしながらドヤ顔をかました。
何だ、今の溜めは。
あと俺は何を見せられてるんだ。
「あれは8000年前、未だ人類が文明を持たなかった頃の事…」
えっ、はっ、8000年前?
何の話をしてるんだ…?
「とまあ冗談はさておき、俺様は全ての人類の祖先、ノアの血を引いているのだ。故に俺様が魔界騎士団を率いる事は、因果律の定めだった…それだけの事」
「えっ…?」
…ごめん。
さっきのくだりが冗談だったのはいいけど、まだ何言ってんのか全然わからない。
人類の祖先?魔界騎士団?
何を言ってるんだ安室は…
「造船技術者の家に生まれたんだ私は!だから原型師という仕事に興味を持つのは必然だったと言っている!」
「あ、ああ…」
安室が自分でさっきの言葉を解説して、ようやく意味を理解した。
いや、わかるかぁ!!
つーか普通に喋れるんなら、最初から普通に喋れよ…
流石にこのままだと話が進まないし、そこは言っておくか。
「…なあ安室。頼むから、普通に話してくれないか?俺が普段使ってる言葉との乖離があまりにもありすぎてついていけん…」
「何っ…!?貴様、俺様の言葉を理解できないと申すか!?くっ…仕方あるまい、貴様ら人間の言葉で話してやろう。俺様は魔界と俗世の均衡を保つ使命を背負っているからな…人の言葉を話す事など、造作もない事…」
俺が言うと、安室はショックを受けつつも咳払いをした。
そして、素の態度で話し始める。
「私、父親が造船技術者なの。それで、昔からお父さんが船の模型作るところを見て育ったのよ。だからなのかもしれないけど、私も小さい頃から模型を作るのが好きだったの。母親は学校で美術の先生をやってて、小さい頃は一緒に絵を描いたり工作したりもしてたわ。私が原型師って仕事に興味を持ったのは、4歳の頃よ。お父さんが、私がその頃好きだったアニメのおもちゃを誕生日プレゼントに買ってくれて、『あっ、これ私作れるかも』って思ったの。今思えば、それが私の原型師としての才能の原点だったのかもしれないわね」
安室は、俺がプレゼントしたフィギュアを懐かしそうに眺めながら語った。
やっぱり、好きなもので才能を開花させて、それで超高校級になれるって、すごい事だよな。
「私は、自分で作ったアニメのフィギュアが欲しくて、毎日フィギュアを作る練習をしてたの。初めて作ったフィギュアが、かなり出来が良かったらしくて、たくさんの人に私が作ったフィギュアを見てもらう為に、お母さんが個展を開いてくれたの。最初は子供が作ったおもちゃだって誰も相手にしてくれなかったけど、そのうち多くの人が見てくれるようになって、アニメ会社からも声がかかるようになったってわけ。初めて仕事をもらったのは、小3の頃よ。私が作ったフィギュアが世に出回った時は、本当に嬉しかったなぁ」
安室は、原型師として注目されるようになった経緯を、誇らしげに語った。
安室にとって両親は、憧れの存在であり、自分の才能を開花させてくれた恩人なんだろう。
本当に、いい親御さんに恵まれたんだな。
「安室は、ここから出たらやりたい事とかあるのか?」
「そうね…まずは、家に帰ってお父さんとお母さんに会いたいかな。私がいきなりいなくなって、心配してるだろうし…顔を見せて安心させてあげないと。それから、今は世界が崩壊してそれどころじゃないけど、混乱が落ち着いたらお父さんとお母さんを連れて行きたいアニメのイベントがあるの。それだけじゃないわ。私の作品を待ってくれてるファンの人達の為にも、生きてここから出ないと」
「…そっか。安室は優しいんだな」
「な、何よ!家族やファンを大事にするのは当たり前の事でしょ!?」
俺が言うと、安室は照れ隠しをするかのようにキツい口調で返した。
安室は、普段の言動がアレだからそうは見えないけど、本当は真面目で仲間想いな奴だ。
普段は見せない一面を見せて本音で語る安室の事が、ほんの少し可愛いと思った。
だけど、その直後だった。
「ぐ…ぐぁあっ…!?」
安室が、急に眼帯をつけた左眼を押さえて苦しみ出した。
大丈夫かな…?
「ぐ…うぅっ…み、左眼が疼く…鎮まれ、俺様の左眼…!」
「おい、大丈夫か?」
「…はっ、いかんいかん…どうやら邪悪に身体を乗っ取られていたようだ。立ち去るのだ、俺様が正気を保っているうちに…!」
「は、はぁ…」
安室は、いつもの厨二病モードに戻った。
何だったんだ、今のは…
本当に左眼の調子が悪いんじゃないかと本気で心配しちゃったよ。
でも何だか、安室と仲良くなれた気がする。
《安室明日奈との好感度が1アップしました》
◇◇◇
俺と安室は、その後もしばらくミュージアムを見て回った。
するとそこへ、酒蔵が駆けつけてくる。
「おぉ、いたいた!」
「酒蔵、どうしたんだ?」
「いや、実はな?梶野クンに『皆でカジノゲームに参加しないか』って誘われたんだよ。東野クンと安室ちゃんも参加しねえか?」
「ゲームねぇ…」
酒蔵が急にゲームに誘ってくるものだから、俺と安室は顔を見合わせる。
安室は、完全に酒蔵を疑ってかかっていた。
「ふん、そんな事を言って、くだらない事を考えているのではあるまいな?」
「ひでえや、俺そんなに信用ねえの!?ガチで梶野クンからの誘いだって!チャット見ろよ!」
安室があまりにも疑うので、酒蔵はチャットを確認するよう言った。
チャットを見てみると、本当に梶野からメッセージが来ていた。
ミュージアムを見てて確認するの忘れてたな…
「で、だ。これはおじさんが梶野クンから直接言われた事なんだが、参加する奴は正装で来てほしいんだと」
「正装?」
「ああ。『本場ではふさわしい服装で来るのがマナーだ』ってさ」
ふさわしい服装、ねぇ…
俺が前にカジノに行った時は、梶野にそんなこと言われなかったけどなぁ。
まあでも、梶野がそう言うならちゃんとした服探してくるか…
◇◇◇
「…変じゃないよな?」
正装に着替えに部屋に戻った俺は、鏡で自分の姿を確認する。
鏡には、臙脂色のスーツを着て、伸びきった髪を後ろで結んだ自分の姿が映った。
その格好でカジノに行くと、既に的凪以外の男子は集まっていた。
「よぉ東野クン!似合ってるじゃねえの!」
酒蔵は、モスグリーンのジャケットを羽織り、有名ブランドのパロディと思われるアクセサリーをつけていた。
「何気にオレこういうの初めてだな-」
樺戸は、サスペンダー付きの焦茶のズボンに、紫色の蝶ネクタイをつけている。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
梶野は、いつものきっちりとした服装をしている。
これで、会場には的凪以外の男子全員が揃った。
あとは女子が来るかだな…
俺がカジノ内を歩きながら待っていると、一人カジノ内に駆け込んできた。
「やっほー、来てやったよ-!」
会場に駆け込んできたのは、長い髪を頭の後ろで括り、オレンジと赤を基調とした和風のミニドレスを着た神無月だった。
「ククク、刻は来た…」
続けて、逆十字や黒い羽根なんかの厨二病っぽい装飾がついた紫色のドレスを着た安室が来た。
普段の眼帯の代わりに、黒のレースがついた眼帯をつけている。
「ねみぃ」
最後に、オレンジがかったピンク色のドレスを着た六道が会場に来た。
セミロングの髪を編み込んで、後ろで纏めている。
「うひょおお!!キタアアア!!」
女子達が来ると、酒蔵が露骨に喜んだ。
酒蔵…お前まさか、これが目当てだったのか?
「千春ちゃんが一番可愛い…それはわかりきった事だよね」
うわっ、びっくりした!?
的凪…お前いつからいたんだよ?
マジで六道がいるところにはどこにでも付いてくるんだなこいつ。
「打田は?」
「あー、何か興味ないからいいってさ」
「ちぇっ、何だよ混ざればいいのに!」
「まあでも、ほとんど全員が揃ってんだからいいんでねえの?ほら言い出しっぺ、始めてくれ」
「かしこまりました。では…皆様、ようこそお越しくださいました。今宵は、【超高校級のディーラー】として、皆様に最高のお饗しができるよう、多種多様なゲームをご用意しました。それでは皆様、存分にお楽しみくださいませ」
酒蔵に促された梶野は、司会の挨拶をした。
こうして、カジノパーティーが始まった。
「ククク…喰らえ、神のフルハウスだ!!」
「ふっ…あまいな、フォーカード」
「何ィっ!!?」
「さすが千春ちゃんだなぁ」
安室、六道、的凪の三人は、梶野と一緒にポーカーをして遊んでいる。
どうやら、六道が圧勝しているらしい。
「うおっ、すげえ!メッチャ回る!」
「きゃはは!面白ーい!」
樺戸と神無月は、ルーレットで遊んでいる。
…多分ルールわかってないだろうけど。
「これ向こうに運んでくれるかい、東野クン」
「わかった」
俺は、バーで酒蔵が作った軽食を会場に運んだ。
酒蔵は、皆をイメージしたオリジナルのノンアルコールカクテルを作ってくれた。
この日は、皆夜が明けるまで遊び呆けた。
勝ちまくってメダルをがっぽり稼いだ奴、大負けして悔し涙を呑んだ奴、ルールがわからなくても雰囲気で楽しんだ奴…色々いたけど、皆カジノを思う存分楽しんだみたいだ。
できればこの楽しい時間がずっと続いてほしい、そう願いながら俺は部屋に戻った。
〜モノクマ劇場〜
『やっほー!モノクマ&モノルナの!モノクマ劇場の時間だよ!』
『さあ〜て、次回のモノクマ劇場は!』
『名探偵だぞえ!モノルナちゃん』
『モドキッド死す』
『犯人はモノダム』
『以上の三本でお送りします!それじゃあ皆いくよ〜!モノクマじゃんけんじゃんけんポン!』
『絶望的に愛らしいマスコットのボクは、グーしか出せないのであった… と見せかけて実はチョキを出していたのでした!』
『それじゃあ皆、またね〜!』
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級の原型師】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
【サポートAI】アルターエゴ・Ω
ノコリ10人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン Chapter.3 シロ
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のグラシエール】
以上9人
推しがいたら教えてくんなまし
-
東野潤_小説家
-
暗野斬良_???
-
殉前詩乃子_ギャル
-
神風大和_司令官
-
薬師寺療香_軍医
-
リーゼロッテ_オルガニスト
-
安室明日奈_原型師
-
消灯寺霊庵_心霊学者
-
山脇ゆか_絵本作家
-
梶野運命_ディーラー
-
神無月椛_カルタ師
-
氷川みるく_グラシエール
-
酒蔵飛露喜_ソムリエ
-
樺戸ラムジ_カバディ選手
-
内闘力也_プロレスラー
-
打田清美_狙撃手
-
的凪梢_幸運
-
六道千春_ゲームプログラマー
-
モノルナ_引率教師