インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
コロシアイ強化合宿14日目。
部屋のベッドで目を覚ました俺は、身嗜みを整えて、部屋の鏡に映った自分の姿を眺める。
コロシアイ生活が始まってから2週間が経ち、既に9人もの犠牲者が出てしまった。
それに、打田が言っていた【超高校級の絶望】の存在も気になる。
もし打田の言う通り、俺達の中に積極的にコロシアイを起こそうとしている奴がいたら…?
次に狙われるのは俺かもしれない。
そう考えると、ぞわりと背筋が寒くなる感じがした。
だけど、もし俺達の中にそういう奴がいたとしても、俺はそいつに死んでほしいとは思わない。
俺はこれ以上、クラスメイトが死ぬのは嫌だ。
…ダメだ。
これ以上、悪い方向に考えるのはよそう。
俺の悪い癖だ。
とりあえずまずは、頭を冷やさないと。
俺は顔を洗ってから、朝食を作りにレストランへ向かった。
◇◇◇
俺がレストランの厨房に行くと、既に梶野と酒蔵がいた。
俺も、急いで朝食作りに加わる。
しばらくして、朝の運動を終えた樺戸が来て、時間通りに安室と神無月が、だいぶ遅れて六道と的凪が来た。
相変わらず、打田は来なかった。
…まああいつは俺達が世話を焼かなくても一人で何とかしてるだろうし、別に俺が心配する事でもないんだけどな。
打田以外の全員が揃い、朝食を食べようとした、その瞬間だった。
『おはクマー!!』
『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!美少女戦士モノルナちゃんの登場よん☆』
よりによって飯の前に、目障りな奴等が現れた。
モノクマとモノルナが、謎のポーズをしながら大袈裟に登場した。
するとほとんど全員が、嫌悪感を剥き出しにする。
「食事前に汚物を見せるな!!」
「そうよ、朝っぱらから汚いツートンカラーなんか見たくないんだけど!?」
「ぐぅぐぅ」
安室と神無月が、モノクマとモノルナを罵倒した。
一方で六道は、こんな状況にもかかわらず爆睡している。
『はわわっ!?校長に向かって何ですかその態度は!?最近の若いのっておっかないねぇ』
「うるせえ、今に始まった事じゃねえだろ!」
モノクマがわざとらしい茶番で俺達を煽ると、酒蔵が怒りを露わにしながらモノクマを指さして叫ぶ。
そんな中、酒蔵の隣にいた梶野が、ため息をついてモノクマとモノルナに話しかける。
「今度は何をしに来たのですか?」
『うーん、それなんだけどね?全員の前でしなきゃいけない話なので、ぼっちの清美チャンにも来てもらわないとね!』
『というわけで打田サン!今すぐ『ホテル・エルドラド』のレストランに来てください!15分以内に来ないとおしおきだよ!』
モノクマは、建物全体に向けてアナウンスをした。
すると数分後、打田がレストランにやって来る。
打田は頭を掻きながらレストランの扉を開けると、不機嫌そうに口を開く。
「うるっさいわね…朝から耳障りな声でアナウンスしないでくれる?」
打田が言うと、モノクマが左眼を赤く光らせて笑った。
『うぷぷぷ、やっと全員揃ったね』
モノクマが笑うと、打田は不愉快そうに舌打ちをして空いている席に座る。
席に座った打田は、たった今モノクマとモノルナから話があると聞かされた俺達に話しかける。
「で、あたしは何で呼び出されたの?」
「それが、私達もまだ聞かされていないのですよ。まあどうせ、動機の発表とかでしょうけど」
『あーちょっと!?運命クンってば何で先に言っちゃうのかな!?っていうか、『とか』って何よ『とか』って!!ぷんぷん!!』
梶野が呆れた様子で尋ねると、モノルナが梶野を指さして怒る。
口で『ぷんぷん』って言う奴初めて見た…
『そーですよ!動機ですよ動機!胸がドキドキする動機です!』
『前回は、千春チャンのせいで全員が動機を確認する前にコロシアイが起こっちゃったからね!夜しか寝ずに動機を考えたアタシ達の身にもなって!』
『まったく、動機も見ずにコロシアイが起こるなんて…ちょっとは他の作品の生徒達を見習ってよね』
…いや、コロシアイしてほしいのかしてほしくないのかどっちなんだよ。
というか何だよ、他の作品って。
他にも色々ツッコみたい所はあるけど、時間の無駄な気がするし、これ以上は口を挟まないでおくか…
『というわけで、せっかちなアンタ達の為に、今回は早めに動機を配るのよん♪』
モノルナは、ステッキを振り回してウインクをしながら言った。
『動機』、その言葉が重く俺の心にのしかかった。
こいつらの事だ、絶対碌なものじゃないに決まってる。
じわじわと、確実に、俺達の心を弄んで壊し、殺人を犯させる…それがこいつらのやり方だ。
俺は、こいつらが何を出してくるのか、警戒して身構えていた。
するとだ。
『ムーンプリズムパワー!メイクアーップ!』
モノルナがステッキを掲げると、ステッキの先端についたクリスタルが輝く。
次の瞬間、モノクマとモノルナがキラキラしたピンク色の光に包まれ、モノルナの服が破れピンク色のリボンがモノルナの身体に巻き付く。
分かってはいたけど、マジで茶番としか言いようがないなこれ。
色んなところから怒られるぞ。というかもういい加減怒られろ。
つーか、動機を出すならスッと出せ。
変身シーンとかいらないから。
俺が心の中で色々ツッコミを入れていると、モノルナの身体を包んでいたピンク色のリボンが解ける。
モノルナは、白と黒に分かれたフリル付きのセーラー服を着ていた。
そしてモノクマは何故かムキムキの姿に変身し、黄金色のオーラを放っていた。
モノルナがステッキを振りかざすと、ピンク色の光が舞い上がり、モノクマがピンク色の光を掴む。
するとモノクマが掴んだ光が、懐中電灯のような形をした道具になった。
『テッテレ〜!お〜も〜い〜だ〜し〜ラ〜イ〜ト〜!』
モノクマが掴んだライトを掲げると、どこかで聞いた事ある音楽が流れる。
マジで今までの時間何だったんだ…
「思い出しライト…?」
『ズバリお答えしましょう!このライトを人に当てると、その人の記憶を思い出させる事ができるスグレモノなのよん♪今回は、アタシ達がお預かりしちゃってるアンタ達の記憶をお返ししちゃうわ!』
『10年間に何があったのか、全部教えてあげるよ。ただし、記憶を返すのは最初に誰かを殺したクロだけです!』
なん…だと…!?
誰かを殺したら、記憶が戻るだと…!?
「はぁ!?何だそれ!?」
「記憶が戻るだと?そんなんで人殺しをする奴なんて、いるのか!?」
「いや…いないとは言い切れませんよ。この中に、誰かを殺してでも記憶を取り戻したいと考えていらっしゃる方がいてもおかしくありません」
そう言って梶野は、的凪の方を見る。
すると的凪は、ヘラヘラ笑いながら肩をすくめる。
「あ、ボクの方見て言うんだ?やだねぇ、事あるごとにボクを悪者にされちゃあさ。ボクはただ、千春ちゃんの為に危険を排除してるだけだっていうのに」
「だまれちはるおまえきらい」
的凪が悪びれずに言うと、六道が眉間に皺を寄せて露骨に嫌がる。
危険を排除って…そんな事の為に、山脇を殺そうとして、氷川の心を壊したってのかよ…
そりゃあ、六道がこんな奴好きになる道理がねえよ…
『うぷぷ、オマエラ今『そんなので人殺しする奴なんていない』って思ったよね?オマエラ、そんな甘い考えだからコロシアイを防げなかったんじゃないの?』
「うるせえ!!」
モノクマが笑いながら俺達を煽ると、酒蔵が怒鳴る。
認めたくないけど、モノクマの言う事は正しい。
『コロシアイなんか起こるわけがない』、その油断がコロシアイを招いてしまったんだ。
こいつらの悪どいやり方は、いやと言うほど見てきたはずなのに。
『キャハハ、見せてもコロシアイが起こらないものを、アタシ達がわざわざ動機にすると思う?断言したっていいわ。コロシアイは、数日以内…早ければ明日にでも起こるかもね』
モノルナは、小馬鹿にしたように見下して笑いながら断言した。
その言葉が俺達の心に重くのしかかり、張り詰めた空気が流れる。
モノクマとモノルナは、逃げも隠れもするけど、嘘をついた事はなかった。
今回もこいつらの言う事が本当なら、そう遠くないうちにまた殺人が起こる。
また、大事なクラスメイトが死んでしまう。
それだけは、何としてでも阻止しないと。
『それじゃ、ボク達はこれで!』
『バイバ〜イ!』
言いたい事だけを言い切ったモノクマとモノルナは、手を振って去って行った。
レストランには、俺達生徒だけが取り残され、さっきまでの楽しい食卓が嘘のように静まり返っていた。
「クソッ、アイツら…!」
「数日以内にコロシアイが起こるだと…!?ふざけんなよ!」
樺戸は、テーブルを叩きながら、モノクマとモノルナへの怒りを露わにした。
酒蔵も、俺達を侮辱するようなモノクマとモノルナの発言に、憤りを覚えていた。
もう、朝飯を食べようという空気じゃなくなっていた。
あいつら、マジで空気を読むって事をしねえよな…
「もぐ…もぐ……ぐぅ」
モノクマとモノルナに楽しい空気をぶち壊されて皆が俯いて座っている中、六道はずっと寝ながら朝飯を食っていた。
こいつ、この空気の中でよく寝ながら飯食えるな…
…いや、この空気の中じゃなくてもだけど。
「六道、お前ずっと食ってたのか…」
「だって…早く食べないと冷めるし…すやぁ」
俺が話しかけると、六道は寝ながら答える。
テーブルを見ると、モノクマとモノルナのせいですっかり冷めた食いかけの朝食が並んでいた。
「そう…だな。あいつらに言われた事を気にしてたってしょうがないしな…」
「おう…オレはジュンに賛成だぜ」
「冷めちまったらもったいないもんな!さ、食おう食おう!」
「俺様は魔界騎士団の団長だぞ?あれしきの揺さぶりで動じるわけがなかろう」
俺が朝食を食べ始めると、樺戸や酒蔵、そして安室も朝食を食べ始める。
皆、モノクマとモノルナの言葉を真に受けないように必死に平静を繕っていたけど、さっきまでのような覇気が感じられなかった。
あんな事を言われて、気にするなと言う方が無理な話だ。
そんな中、打田が腕を組んでため息を吐いてから口を開く。
「何か空気読まない事言うようだけど…あたしそろそろ帰っていい?別に食事しに来たわけじゃないし」
「なっ…キヨミ、お前なぁ!」
打田がレストランを出て行こうとすると、樺戸が止めようとする。
だけど打田を止めようとしたのは、樺戸だけだった。
「本人が帰りたいって言ってんなら…いいんじゃないの?」
「別に、強制ってわけでもないしな…」
神無月と酒蔵は、むしろ打田が帰る事には賛成だった。
合宿生活が始まった頃は、引き留めたりもしてたが、今となっては打田の単独行動に口を出すのも今更感が大きい。
それに今は、帰りたいって奴を相手に食い下がる気力もないしな…
「あっそ、なら帰る」
誰も引き留めないとわかったからか、打田はすぐにレストランを出て行った。
それからというもの、俺達はほとんど会話を交わさなかった。
あれだけ楽しかったはずの食事は結局、どんよりとした最悪の空気の中終わった。
◇◇◇
《モノクマハウス 3F エイガカン》
食事が終わった後、俺は気分転換の為にまだ探索していないコンサートホールと映画館、そして植物園の探索をする事にした。
まずはモノクマハウスの3階にある映画館から見てみようという事で、今はシアターの前のチケット売り場にいる。
チケット売り場には、カーホップの格好をしたモノルナが、映画のチケットと飲食物を売っている。
飲食物は、ポップコーンとポテトチップス、あとはコーラを売っているみたいだ。
『TICKET』と書かれた看板の上にはモニターが設置されていて、映画館の上映作品の一覧が表示されていた。
「これが今上映してる映画か…」
俺は、上映中の作品のラインナップを確認した。
…うん、タイトルを見ただけでチケット買う気が失せた。
どう見ても、駄作の予感しかしない。
こんなの見る奴なんて、いるのか?
…あ、酒蔵と的凪は、映画館の探索の為に仕方なく見たんだったな。
つーかチケット代高えよ。
何だよ、メダル3万枚分って。
良作駄作関係なく、普通にチケット代足りないんだわ。
俺が映画を見るのをやめてチケット売り場から立ち去ろうとすると、後ろからモノルナが話しかけてきた。
『おやおや?潤クン、映画見ていかないの?冷やかしに来ただけですか?』
「そういうわけじゃないけど…生憎、今は手持ちが無いんだよ」
『あららぁ、せっかくアカデミー賞をロビー活動で受賞しようとした事がある名作を上映してるのに!まあでもメダル持ってないならしょうがないか!貧乏人はつらいねぇ。プークスクス!』
俺がその場を立ち去ろうとすると、モノルナがこれでもかというほど煽ってくる。
アカデミー賞で不正しようとしたって…それもう駄作ってレベルじゃないだろ。
もうそれを映画って呼ぶ事すら、全世界の映画関係者に失礼だよ。
俺は、モノルナの煽りに心の中でツッコミを入れつつ、チケット売り場から去ってエレベーターに乗り込んだ。
◇◇◇
《モノクマハウス 4F コンサートホール》
映画館の探索を終えた俺は、エレベーターで1階分上がって4階に来た。
エレベーターを降りると、そこはすぐコンサートホールになっていた。
コンサートホールは、中央のステージを囲むようにぐるっと席が並んでいる。
ステージ上には、神無月と樺戸が言っていた音響機器が置いてあって、ステージ上のスピーカーからはクラシック音楽が聴こえてくる。
見上げると、天井には星空が広がっている。
だけど星空は本物じゃなくて、どうやら精巧に作られたプラネタリウムのようだ。
広さも、雰囲気も、音の響き方も、ライブや演奏会をするのにピッタリだ。
もしリーゼが生きていたら、このホールに興味を示していたのだろうか。
最後に一度くらいは、生であいつのオルガン演奏を聴きたかった。
今となっては、一生叶わない事だけど。
ホール全体を見渡した後、近くの席に目を向ける。
割とゆったりしたシートの造りのようで、背もたれがかなり後ろに傾いている。
俺は試しに、一番近くの席に腰を下ろしてみた。
「うわっ」
コンサートホールのシートは思いの外座り心地が良くて、身体を預ければそのまま眠ってしまいそうだった。
軽く背もたれに寝そべって天井を見上げると、満天の星空の映像が映し出される。
そしてどこからか、リラクゼーション効果のある音楽まで聴こえてきた。
リラックスして音楽を聴きながら、天井に映し出された星空の映像を見ていると、夜空に瞬く星で『何でホールになんか来たんですかねぇ?』と喋るモノクマのイラストが描かれた。
それを見た俺は、一気に気分が萎えて、座っていたシートの背もたれを起こした。
モノクマとモノルナってマジでしょうもない嫌がらせばっかしてくるな…
おかげで、せっかくのリラックス気分が台無しだよ。
あいつらのせいで気分を害された俺は、そのままコンサートホールを後にした。
これで、モノクマハウス内の施設は全て見て回ったはずだ。
あと調べてないのは、植物園だけだな。
モノクマハウスでの探索を終えた俺は、次は植物園に行ってみる事にした。
◇◇◇
《ショクブツエン》
「……すげぇな」
植物園には、梶野が言っていた通り、世界中のあらゆる地域から持ってきたであろう植物が栽培されていた。
熱帯の植物と寒帯の植物が一緒に生えていたりして、珍しい植物もある。
どうやら梶野が言っていた通り、コンピュータが一括で温度や湿度の管理をしているみたいだ。
奥の方に行ってみると、梶野が言っていた物置きが設置されていた。
物置きを開けると、中には園芸用品とかの備品が置かれている。
俺が植物園を探索していると、奥の方からゴソゴソと物音が聴こえる。
「ばなな…ばなな…」
見ると六道が、熱帯の植物のエリアで何かを探していた。
脚立に乗って上の方を探しているが、脚立が不安定で今にもバランスを崩しそうになっていて、見ているこっちがハラハラする。
俺は、六道に声をかけてみることにした。
「何してんだ六道?」
「ちはるバナナたべる」
俺が話しかけると、六道は上の方を指差した。
上には、まだ青いバナナが生っていた。
まさかアレを食う気か…?
絶対生で食ったら美味くないやつだろ。
「いや、まだ青いし…つーかバナナが食べたいならレストランに行けば…?」
「ちはるはあのバナナがくいたい。ひがしの…手伝え」
「えっ」
あー、そう来るか…
俺は断ろうとしたけど、六道に無言の圧力をかけられて、結局バナナの収穫を手伝わされた。
六道がバナナを探している間、俺は六道が乗っている脚立を押さえた。
パンツ見えそうなんだよな、こいつ…
スカートのまま高いとこ登るんなら、せめて下に何か穿けよ。
「くっ…しぶといバナナめ…」
「大丈夫かー?」
どうやら六道は、バナナ狩りに苦戦しているらしい。
俺は、脚立の上の六道を凝視しないようにしつつ、バナナを探している六道に声をかけた。
「ちはるをなめるな」
俺が声をかけると、六道が答える。
大丈夫か…?何か不安だな…
最初は苦戦していたみたいだけど、六道は意外にも器用にバナナを収穫した。
「とったどー」
青いバナナを獲った六道は、自慢げにバナナを掲げる。
だけど、その直後だった。
「あっ」
六道はバランスを崩して、脚立から落ちる。
こいつ、言ったそばからフラグ回収しやがった!?
うわ、ヤバいこれ…
俺の方に落ちてきてんぞ!?
「ぎゃっ」
ドシン、と音を立てて、六道が俺の上に落っこちてきた。
その拍子に、足を滑らせて仰向けに倒れ込む。
「いったた…おい六道、だいじょ…」
両手に、むにっと柔らかい感触がした。
ゆっくりと目を開けると、六道が俺の上に覆い被さっていた。
思いの外端正な六道の顔が、俺の顔を覗き込む。
俺の右手は六道の胸を、左手は尻をガッツリ掴んでいた。
「わっ、ご、ごめん!!」
俺は慌てて、謝りながら六道から手を離した。
何やってんだ俺、キモすぎんだろ!
俺は酒蔵みたいな奴と同類にはなりたくないんだが!?
というか、あの高さから落ちて六道は大丈夫なのか…?
「だ、大丈夫か…?」
「………」
てか、六道お前さっきから何無言でこっち見てんだよ。
不可抗力とはいえ、身体触られてノーリアクションってお前…
六道は、じっとこっちを見ながら、収穫したてのバナナを剥いた。
「むしゃあ…」
六道は、俺を見ながらバナナを食った。
えっ、この状況でバナナ食うの?
これ、俺はどうリアクションするのが正解なんだ…?
「ねえ東野くん…何をしてるのかな?」
「ひっ!?」
いきなり声をかけられたので振り向くと、俺の後ろに生えていた二本の木の間から的凪が顔を覗かせていた。
怖っ!?
お前それ、シ◯イニングかよ!?
ビックリしすぎて変な声出ちまったじゃねえか、どうしてくれんだ!?
こいつマジで六道のいるところにはどこにでも来んな!?
「楽しそうだったね、東野くん」
「いや、違うから!不可抗力だから!」
「楽しそうだったね」
「二度目!?」
的凪は、ニコニコと笑顔を浮かべながら話しかけてくる。
あらぬ誤解を解こうとするけど、的凪はお構いなしに笑顔を浮かべながら話しかけた。
こいつ怖っ!?
マジで何考えてんだ?
おい、その木に顔を挟みながらニコニコ笑うの一回やめろ!
「やあ千春ちゃん、バナナが食べたいならボクが手伝うよ」
「うわきも」
「千春ちゃんはどんな顔をしてても可愛いよ」
「おまえにいわれてもうれしくない」
木の間から顔を覗かせる的凪を見て、六道が眉間に皺を寄せてドン引きする。
的凪は、木と木の間に顔を挟んだまま、ぐりんっと顔を俺の方に向けて話しかける。
「それにしても、バナナ狩りかぁ。楽しそうだね。ボクも混ぜてよ」
「ひがしの…ちはるこいつきらい」
的凪が笑顔で話しかけると、六道は顔をしわくちゃにして嫌がり、さりげなく俺を盾にした。
笑顔で威圧してくる的凪と、俺を盾にしてくる六道との間で、俺は板挟みになった。
こいつら…俺を何だと思ってるんだろう。
結局、六道と的凪のせいで、植物園の探索はろくにできなかった。
ちょうど昼時になったので、俺は皆の分の昼食を作りに、レストランへ向かった。
◇◇◇
酒蔵や梶野と一緒に昼食を作っていると、他の皆が集まってきた。
相変わらず打田は昼食にも来なかったが、気にしても仕方がないので、打田以外の8人で昼食を食べた。
皆で昼食を食べた後、片付けをしていると、梶野が口を開いた。
「あの、私から皆様に提案があるのですが」
「提案?またカジノパーティーか?」
「いえ…今日は、ラスベガスビルの遊園地に行ってみませんか?」
遊園地?
正直、梶野の口から出てくる提案じゃないな。
何で今遊園地なんだろう?
「遊園地?なんでまた!運命ちゃんがそんな事言うなんて意外〜」
「皆様、先程の動機発表でご不安を抱えている事だろうと思いまして…その不安をこのような催しで少しでも解消できたらと考えたのですが。カジノは昨日行ったので、今日は遊園地で気分転換でもどうでしょう?もちろん、強制ではありませんが」
そういう事だったのか…
そういえば、神風がいなくなった後俺達を引っ張ってくれたり、気分転換ができるように図ってくれたのは梶野だったな。
やっぱり今回も、俺達が絶望に呑まれないように、楽しい催し物を考えてくれていたんだな。
でも、この状況で遊園地に行きたい奴なんているのかな?
問題は、皆が行きたいかどうかだけど…
「賛成ー!!オレは行くぜ!!」
「そういう事なら、おじさんは付き合うよ」
「ククク…闇のゲームの始まりだ」
樺戸、酒蔵、安室の三人は、遊園地に行くのに賛成だった。
「ボクは千春ちゃん次第だよ」
「ついてくんな…きもちわるい」
的凪は、六道が行くか行かないかで決めるらしい。
そんな的凪を見て、六道は露骨に嫌そうな表情をうかべている。
…まあ、的凪が普段からストーカー紛いの事ばっかりやってるからなんだけど。
「ちはるは…行ってもいい……ぐぅ…」
「ったく、しょうがないわね!だったら椛も行ってあげる!」
六道と神無月も、結局行く事に決めたようだ。
他の皆が行きたいんなら、俺も行こうかな…
「だったら…俺も行くよ」
「よっしゃ、これでここにいる皆は全員参加だな!あっでもキヨミは?どうすんだ?」
「チャットで伝えておけば良いのでは?」
「何なのだ彼奴は…ノリが悪いな」
樺戸がここにはいない打田について尋ねると、梶野が答えた。
食事にも昨日のカジノにも来なかった打田に対し、安室は呆れたような表情を浮かべる。
一応打田も、チャットで遊園地に誘ってみる事にした。
…まあ打田の性格的に、誘っても来ないだろうけど。
案の定、打田にチャットを送ったら一言だけ『遠慮しとく』と返ってきた。
結局、遊園地には打田以外の8人で行く事にした。
◇◇◇
梶野に遊園地に誘われた俺達は、皆で遊園地のアトラクションを楽しんだ。
コーヒーカップ、ゴーカート、メリーゴーラウンド、観覧車の順に回って遊んだ。
途中で樺戸と神無月がものすごい勢いでコーヒーカップをぶん回したり、ゴーカートで六道の運転が荒すぎて激しく酔ったりはしたが、あれはあれで楽しかった。
4つのアトラクションを終えた後は、皆でジェットコースターに乗る事になった。
「千春ちゃん、一緒に乗ろ」
「やだ」
「あたい、変態ヒロキとクソ凪の隣だけは絶対嫌だから!」
的凪は六道と一緒に座ろうとしたが、光の速さでフラれた。
神無月は、酒蔵と的凪を指さして文句を言った。
誰がどの順番で座るのかがなかなか決まらないでいると、梶野が手を挙げて提案する。
「では、乗る順番はクジで決めませんか?」
「クジ?」
「ええ。それなら、公平に決められるかと思いまして」
「確かにな…よし、皆、誰と一緒になっても恨みっこなしだぞ!」
ジェットコースターに乗る順番は、結局クジで決める事にした。
俺と酒蔵が最初、神無月と樺戸が二番目、梶野と的凪が三番目、そして安室と六道が最後だ。
「よりによって最初かよ…」
「心配いらないぜ東野クン、おじさんが隣にいるからね☆」
俺が憂鬱のあまりため息をつくと、酒蔵がウインクをした。
酒蔵には悪いけど、別の意味で不安だよ俺は。
全員がジェットコースターに乗ると、ジェットコースターがひとりでに動き出した。
最初はゆっくりとした動きで、徐々に上に上がっていく。
この時間が俺、一番嫌なんだよなぁ…
そんな事を考えていると、ジェットコースターがピタッと止まった。
そしてその直後だった。
「ぁぁぁぁぁああああああああああ!!?」
ジェットコースターが、ものすごい勢いで降下した。
心の準備ができていなかった俺は、情けない悲鳴を上げた。
待ってこれ、思ってたよりスピード速いぞ!?
これはあと何回続くんだ…!?
俺が恐怖で足をガクガク震わせていると、ジェットコースターがトンネルエリアに突入した。
真っ暗なトンネルの中を、ジェットコースターが走る。
トンネルの中からは、時々炎が噴き出す。
結構本格的だな…
「…あれ?」
気のせいか…?
今、音がしたような気がするんだけど…
「おい見ろ、カルシファーだ!」
「ねむい……」
安室と六道も、楽しんでいるようだ。
というか六道お前…
ジェットコースター乗ってるときによく寝れるな…
ジェットコースターは、長いトンネルの中を走っていたが、目の前に出口が見えてくる。
「おい見ろ、カルシファーだ!」
「ねむい……」
また同じ事言ってるし…
俺は、後ろの方ではしゃいでいる安室と六道の会話を聞き流しつつ、次の落下に備えた。
そんな感じで、急降下したり振り回されたりする事約10分。
ジェットコースターが元の場所に戻り、安全レバーのロックが外れる。
俺がシートから立とうとした、その時だった。
「うわあああああああああああ!!?」
「キャアアアアアアアアッ!!!!」
後ろから、樺戸と神無月の悲鳴が聴こえた。
恐る恐る後ろを振り向く。
「あ…ああああ…」
「うそ…だよな?」
「何よこれ…どうなってんのよぉっ!?」
後ろの席に座っていた樺戸と神無月は、顔面蒼白になってパニックを起こしている。
俺の隣に座っていた酒蔵も、顔を真っ青にして立ち尽くしていて、梶野は冷や汗をかいて息をのんでいた。
一番後ろの席に座っていた六道は、服や顔を真っ赤に染めて、わずかに目を見開いている。
六道の隣には…ありえないものが見えた。
「ッーーーーーーーーーー!!?」
その席に座るそいつは、首から上がなくなっていて、服やシートが真っ赤に染まっていた。
どうしてお前が…!!
そこにあったもの、それは……
【超高校級の原型師】安室明日奈の遺体だった。
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
【サポートAI】アルターエゴ・Ω
ノコリ9人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のヒットマン】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン Chapter.3 シロ
【超高校級の心霊学者】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級の原型師】
以上10人
推しがいたら教えてくんなまし
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東野潤_小説家
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暗野斬良_???
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殉前詩乃子_ギャル
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神風大和_司令官
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薬師寺療香_軍医
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リーゼロッテ_オルガニスト
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安室明日奈_原型師
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消灯寺霊庵_心霊学者
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山脇ゆか_絵本作家
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梶野運命_ディーラー
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神無月椛_カルタ師
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氷川みるく_グラシエール
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酒蔵飛露喜_ソムリエ
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樺戸ラムジ_カバディ選手
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内闘力也_プロレスラー
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打田清美_狙撃手
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的凪梢_幸運
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六道千春_ゲームプログラマー
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モノルナ_引率教師