インフィニティダンガンロンパ6 ようこそぼくらのコロシアイ強化合宿 作:M.T.
気味の悪いダミ声のアナウンスを受け、俺達は戸惑いつつも全員ロビーに集合した。
ロビーには、既に他の14人が集まっていた。
「えっと…これで全員かな?」
「ぐぅぐぅ」
「いい加減起きろって六道」
この状況でよく寝られるな…
というか皆が見てる前でよだれを垂らすのをやめなさい。女子だろ。
「ったく、何なの?こんなところにあたし達を集めて」
「チッ……」
「早く帰って心霊学の研究がしたい」
「ねー、いつまでこうしてればいいわけ?あたしもう飽きたんだけど」
打田と内闘は苛立ちを見せ、消灯寺に至ってはこの状況でもオカルトの事を第一に考える図太さを見せ、殉前に至っては待たされ過ぎて飽きたのか大きなあくびをしていた。
そんな中、氷川がオドオドしつつも恐る恐る口を開いた。
「あ、あの…わたし達、やっぱり誘拐されたんでしょうか…?」
氷川が言うと、その場にいた大半がどよめく。
まあ、この状況でこんな事言われたらそりゃあな…
「ゆ、誘拐…!?わたくし達、そんな事に巻き込まれたんですの?」
「フン、魔界騎士団団長の俺様を誘拐とは…犯人は余程痛い目に遭いたいらしいな」
「わーーーん!!誰でもいいからおウチに帰してよぉ〜!!」
「ど、どうしよう東野君…!?」
リーゼは少し戸惑った様子を見せ、安室も余裕そうにしてはいたが顔を青くし、神無月に至っては子供のように泣き喚いた。
多くのメンバーが戸惑いを見せていた、その時だった。
「落ち着け」
ロビーに威圧感のある低い声が響き、その場がしん、と静まり返った。
俺が声のした方を振り向くと、神風が腕組みをして立っていた。
「お前ら、仮にも希望ヶ峰にスカウトされた超高校級だろう?超高校級ならば、その名に恥じぬ行動をしろ」
神風は、全員を威圧するように命令を下した。
神風の放つ圧倒的なオーラに、その場にいた誰もが口を出せずに黙り込んだ。
しばらく静寂が続いた後、梶野が徐に口を開く。
「それにしても、一体誰なのでしょうか?私達をここに連れてきたのは…」
「そりゃあさっきの放送の奴でしょ?」
「いえ、私が言いたいのはそういう事ではなく…」
「大体、何なんださっきの悪趣味な放送はよぉ…!」
梶野と殉前が会話を交わし、内闘が不機嫌そうにぼやいた、その直後だった。
『悪趣味?内闘クン、それってキミの格好の事?』
『キャハハハハ!なにそれケッサクだねぇお兄ちゃん!』
突然、どこからかダミ声と女の子の声が聞こえた。
全員が声のした方を見ると、ロビーに置いてあったテレビの電源が一人でについた。
そこには、白黒のクマのぬいぐるみと、そのぬいぐるみを抱えて高級感のある椅子に座っている小中学生くらいの女の子がいた。
女の子は白黒の髪をツインテールにしていて、左目につけた眼帯にはぬいぐるみの左目と同じ模様が描かれていた。
さらには、セーラー服とスク水を合体させたようなレオタードにダボダボの袖とルーズソックスといったぶっ飛んだ格好をしていた。
突然の出来事に、殉前は目を丸くして驚く。
「ぎゃあ!?ぬいぐるみが喋った!?」
「と、何だあのようj…痴女は」
『ぬいぐるみじゃないよ。モノクマだよ。希望ヶ峰学園の学園長なのだ!』
『誰が痴女だぁ!アタシはモノクマお兄ちゃんの妹、モノルナだよ〜!キミ達の担任の先生なんだよ〜!』
殉前と酒蔵が驚いていると、モノクマとモノルナが自己紹介をした。
酒蔵は、モノルナのぶっ飛んだ格好に驚きつつもご満悦なのか鼻血を垂らしている。
何なんだこの茶番は…
『とりあえずオマエラ、起立!礼!おはようございます!』
「おはよう!!」
「お、おはようございます…!」
「ご機嫌よう」
モノクマが挨拶をすると、樺戸、氷川、リーゼが律儀に挨拶を返した。
いや…この状況で挨拶するのかよ。
「馬鹿馬鹿しい…こんなぬいぐるみと子供が学園長と担任な訳ないでしょう?そんな話聞いた事ないし」
『今聞いたの!ほら!』
打田が呆れながら言うと、モノクマがビシッと打田を指さす。
進行がグダついてくると、消灯寺が手の中で数珠をいじりながら口を開く。
「それよりさ…さっさと本題に移ってくんないかな。もう飽きた」
『ガーン』
『もう、お兄ちゃんったら!それより前に言う事があるでしょ?』
『そうでした!えー、76期新入生の皆さん!ご入学おめでとうございます!オマエラの入学祝いに、希望ヶ峰学園からささやかな催しを企画させていただきました!その名も、『コロシアイ強化合宿』!』
「こ、コロシアイ!?」
「何かしら?その『コロシアイ強化合宿』というのは」
物騒な単語に暗野がビクッと肩を跳ね上がらせ、隣にいた薬師寺が冷静な口調で尋ねる。
薬師寺は、戦場を潜り抜けてきただけあってこんな時にも冷静だな。
『その1!世界の希望であるオマエラには、その才能をより高めるため、このペンションで共同生活をしてもらいます!その2!共同生活の期限はありません!エターナル!フォーエバー!インフィニティ!』
『タイトル回収だね、お兄ちゃん!』
「うるせえ!!さっきから何なんだテメェら!!」
「期限が無いって…一生ここにいろって事!?嫌だよそんなの!早くおウチに帰してよ!」
「オレ達にそんな事をして、何がしたいんだオマエは!!」
モノクマとモノルナがおちゃらけていると、内闘が怒りを露わにし、神無月も駄々を捏ね、樺戸はごもっともな疑問をモノクマにぶつけた。
すると、先程まで黙って聞いていた山脇が徐に口を開いた。
「まさか…コロシアイ…って…ここから…出る…ために…人を…殺せ…って事……?」
『ギックゥ!?もーヤダヤダ何で全部言っちゃうかなぁ山脇サン!ハイその通りです!誰かを殺したクロだけが、ここから出て帰る事ができます!』
「っ………!?」
え…?
こいつ、今なんて言った…?
『殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺射殺絞殺溺殺惨殺電殺呪殺毒殺爆殺扼殺凍殺轢殺病殺磔殺禁殺…手段は一切問いません!とにかく、誰かを殺せばここから出られるよー!』
「マジかよ…殺人しなきゃ出られねえとか…マジで言ってんのかよ!?」
「そんな…!ああ、どうしよう…超高校級の皆を殺すなんて、とてもじゃないけどボクにはできないよ!ボクはどうしたらいいんだ…!」
モノクマが言うと、酒蔵と的凪が慌てた。
他の皆も、いきなりのモノクマの悪趣味すぎるゲームの提案に動揺を隠せずにいた。
「東野君…!」
俺の後ろでは、暗野が不安そうに俺の服を掴んでいた。
ここから出る為に人を殺すなんて…
そんな事、誰がするかよ…!
俺が拳を握りしめながらモノクマを睨んだ、その時だった。
「バカバカしい…何が『コロシアイ強化合宿』よ!いきなりそんな事言われたって、誰かを殺したりなんかするわけないでしょ!?常識的に考えて!」
『…おや?』
モノクマを指さしながら声を荒げたのは、殉前だった。
…気のせいだろうか。
今一瞬、モノクマの眼光が鋭くなったような気がしたのは。
「もうやってらんない!あたしは嫌だからね、こんなクソゲーに参加するのだけは!」
「……同じく」
殉前が言うと、打田が銃を取り出し、内闘もゴキゴキと拳を鳴らす。
二人とも、完全にモノクマを排除すべき敵と見做している。
殉前が反発すると、モノルナがニヤリと不気味な笑顔を浮かべた。
『んーっと、詩乃子チャン!それって、コロシアイ合宿への参加を拒否するって事でいいのかにゃ?』
「そうよ!文句あんの!?」
モノルナが尋ねると、殉前がキツい口調で答えた。
するとモノルナは、ニィッと口角を吊り上げる。
…何だろう、何か嫌な予感がする。
『んー、それはキミの勝手だけどさ。詩乃子チャン、何か言っておきたい事はない?』
「殉前さん…ダメ…!それ以上は…!」
「あんた達、人をおちょくるのもいい加減にしろよ!あたしはあんたらの思い通りになんか絶対ならないんだから!」
山脇の忠告も聞かず、殉前はモノクマとモノルナを挑発した。
するとモノルナは、ニコッと笑いながら口を開く。
『そっかぁ。でもホントにいいの?』
「は?」
『
「っ…………!?」
モノルナが言うと、殉前の顔からサァッと血の気が引いていく。
最期の言葉って…まさかこいつら…!
『うぷぷ!コロシアイ合宿への参加拒否はルール違反だよ?よって、殉前サンにはとびっきりエクストリームなおしおきが執行されます!』
「は…?えっ、ちょっと、何なのよおしおきって!?」
『今回は、【超高校級のギャル】殉前詩乃子サンのために!』
『スペシャルな!!おしおきを!!ご用意しました!!!』
『『ではでは、おしおきターイム!!!』』
突然の出来事に慌てている殉前をよそに、モノクマとモノルナが気味の悪い宣言をした。
そしてモノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーでピコン、と押した。
するとどこからかアームが伸びてきて、殉前の首をガッチリと掴んだ。
「えっ、な、何…!?やだっ、やだやだやだ…!いやあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「殉前さん…!」
「殉前ぇぇぇぇぇ!!!!」
首を掴まれた殉前は、そのまま天高く持ち上げられた。
俺達は、持ち上げられた殉前を助けようと動いた。
だが、伸ばしたその手は殉前には届かなかった。
ボタンに付いている画面に、ドット絵の殉前をモノクマとモノルナが連れ去る様子が映っていた。
ーーー
GAME OVER
ジュンマエさんがルールいはんをしました。
おしおきをかいしします。
ーーー
テレビの画面が切り替わり、そこにはロケットのコックピットのような椅子に座らされている殉前がいた。
ガッチリと鋼鉄の拘束具で拘束されていて、顔を真っ青にしながらキョロキョロしていた。
隣の操縦席には、宇宙飛行士の格好をしたモノクマが座っていた。
するとそこで画面が切り替わり、星空にネオンライトで書かれた文字が現れる。
ーーー
いちばん星みつけた
【超高校級のギャル】殉前詩乃子 処刑執行
ーーー
画面が殉前の座っているコックピットに切り替わり、モノクマが手元のドクロマークのボタンを押す。
すると殉前が閉じ込められているロケットのエンジンが火を吹き、ロケットは爆速で発射していく。
そのまま大気圏に突入し、ロケットからは激しく火が上がる。
そこで画面が切り替わり、火に囲まれて暑さで顔を真っ赤にしながら何度も瞬きをしている殉前が映し出される。
再び画面が切り替わり、どこかの軍事施設が映し出される。
軍服を着たモノルナは、上空で光り輝くロケットを見て、撃墜しようとミサイルを飛ばす。
モノルナが発射したミサイルは、ロケット目掛けて一直線に飛んでいき、そしてついにロケットに激突した。
その瞬間、ロケットが大爆発を起こす。
空中で大爆発を起こしたロケットの破片は、そのまま下へ下へと落ちていく。
落ちた先は、ゴミ処理場だった。
殉前が乗っていたロケットの破片が落ちてきたゴミ処理場は、一瞬カッと光ったと思うと大爆発を起こしてキノコ雲を上げた。
ゴミ処理場があった場所はあたり一帯が更地となり、ロケットの破片は大量のゴミと灰の中に埋もれた。
その中から宇宙飛行士の格好をしたモノクマが這い出てきて、『爆発オチなんてサイテー!』と書かれたプラカードを掲げた。
『『エクストリィィィイイイーーーーーーーーーーム!!!!』』
「いやあああああああ!!!」
「うわああああああああああ!!?」
「嘘だろ…!?マジで殺りやがった…!」
「そんな…殉前さんが…!」
「何という事を…」
「下衆めっ…」
「何、これ…こんな惨い方法で殺されるの……?」
「あ、ああああ……」
「「………」」
神無月と樺戸は泣き叫び、酒蔵と的凪は青ざめて呆然とし、梶野と安室はモノクマとモノルナを睨み、消灯寺はおしおきの内容に慄き、氷川に至っては卒倒しそうになっていた。
殉前と一緒にモノクマとモノルナに敵意を向けていた打田と内闘は、言葉を失っていた。
「殉前…さん…!」
「じゅんまえ…」
「嘘でしょ…こんな…こんなのって…!」
山脇は珍しく目を見開いて口を手で覆い、暗野は画面から目を逸らしながら泣き、先程まで寝ていた六道は目を伏せて俯いていた。
「悪趣味だな、貴様ら」
「ええ、同感」
「どうして…どうして殉前さんがこんな目に遭わなければならなかったのですか!?何もここまでやる必要無かったでしょう!?」
神風と薬師寺はモノクマとモノルナに嫌悪感を示し、リーゼは涙を流しながら訴えかけた。
するとその時だった。
『どうして?そんなの決まってんじゃーーーん!』
先程のテレビとは違う方向から、モノクマの声が聴こえてくる。
俺がモノクマの声のした方を見ると、二つの物影が飛び出してくる。
『とーーーーーうっ!』
「いやあああああ!!?」
「出たぁああ!!?」
いきなり飛び出してきたモノクマとモノルナがポーズを取ると、神無月と酒蔵が叫び声を上げた。
スポットライトが当たった場所には、モノクマと、アイドルのような衣装を着たモノルナが立っていた。
『モノクマ&モノルナ参上!いやー、やっぱり本人が出ないと締まらないよね!』
「オマエラ…!よくもシノコを!!」
モノクマがおちゃらけた様子で言うと、樺戸がモノクマを睨んだ。
当然だ。
殉前をあんな風に殺した奴等を許せるわけがない。
『えー、何言っちゃってるんですかね。そもそも殉前サンがルール違反したのがイケナイんだからね?』
『ああ、そうそう!清美チャンと力也クンは詩乃子チャンに感謝した方がいいよ!』
「あぁ!!?」
『だってそうでしょ?詩乃子チャンが真っ先にルール違反をしなきゃ、同じ目に遭ってたのはキミ達だったかもしれないんだから』
「「……!」」
モノルナが笑いながら言うと、二人は僅かに目を見開く。
モノルナの一言で、内闘は安堵のため息を漏らし、打田は構えていた銃を懐にしまった。
悔しいが、モノルナの言う通りだった。
もし殉前が真っ先に反発しなければ、今頃あのモニターの向こうにいたのは二人のどちらかだったかもしれない。
皮肉にも、二人は殉前の死によって命を救われたんだ。
『アレを見て、まだボク達に逆らう奴はいる?』
モノクマが左目を光らせながら言うと、全員が黙り込む。
もしモノクマに逆らったら、自分達も殉前のように殺される。
それをわかっていてなお逆らおうとする奴は、誰もいなかった。
『ふっふ〜ん!皆、わかればいいんですよわかれば!あ、ちなみにアタシ達モノクマ&モノルナへの暴力行為はルール違反だよ!もし破ったら、さっきみたいなエクストリームなおしおきをプレゼントするよ〜!』
「うっ………」
モノルナが笑顔を浮かべながら言うと、酒蔵が顔を青くして退く。
殉前の処刑シーンを思い出してしまい、吐き気を催したのだろう。
『みんな、ルールを守って仲良くね!』
「……本当に…それ…だけ?」
ほとんど全員が黙り込む中、山脇が口を開いた。
山脇の発言に、全員が注目する。
「本当に…殺人が…起これば…犯人は…外に…出られる…それだけ…なの…?」
「そ、それは僕も思ってたよ…い、今みたいな悪趣味な事、する奴が…本当に人を殺せば帰してくれる…とは、思えないよね…?」
山脇と暗野の発言に、俺達はハッとさせられた。
考えてみればそうだ。
あそこまで大掛かりな装置を使った処刑は、おそらく外部の何者かに対して向けられたパフォーマンスだ。
つまりこれは、誰かが見る事を想定した
そんな事悪趣味な事を企画するような奴が、人を殺した奴をあっさり帰してくれるわけがない。
そんな俺の考えを答え合わせするかのように、モノルナが無邪気に笑う。
『キャハハハ!ゆかチャンも斬良クンも勘がいいね!もちろん、人を殺した
「なっ…てめぇらが誰かを殺せば外に出られるって言ったんじゃねえか!!」
『まあまあ、物事には順序ってものがあるんだよ。人の話は最後まで聞かなきゃいけませんって習わなかった?』
「まずおまえは人じゃない」
モノクマが言うと、六道がツッコミを入れた。
六道、今ツッコむところそこじゃないと思うぞ…?
『えー、殺人事件が起きた場合、一定の捜査時間を設けます!その後、全員参加の学級裁判が行われます!』
「何だそりゃあ!?そんな話聞いてねえぞ!!」
『今言ったんだよ!』
「てめぇ…!!」
「いちいち反応するな。話が進まん」
モノクマが説明をすると、内闘が怒鳴り声を上げた。
さらにおちょくってくるモノクマに対して内闘が怒りを露わにすると、神風が内闘を落ち着かせた。
完全にヒートアップしている内闘に呆れつつ、打田が面倒臭そうに口を開く。
「その学級裁判って何?弁護士とか検事とか、そういうのいんの?」
『キャハハハ、ズバリ学級裁判では、『誰がクロか』を話し合ってもらいます!学級裁判では、全員が被告人で、弁護士で、検事なんだよ!』
『そして議論の結果、最終的にクロだと思った人に投票をしてもらいます!そしてその結果が正解だった場合、クロをおしおきします!』
「なっ……!?」
モノルナとモノクマが言うと、場がどっとどよめく。
俺も困惑した。
クロだって事がバレたら処刑されるなんて…
こんなの、最初に聞いてた話と違う。
俺が戸惑っていると、薬師寺が腕を組んだままモノクマに尋ねる。
「もし、不正解だった場合はどうなるのかしら?」
『うぷぷぷぷ…その時は、クロは約束通りここから出る事ができます!ただし、それ以外の全員はおしおきとなります!』
モノクマがそう言うと、他の皆はさらにどよめく。
皆の気持ちを代弁するように、酒蔵が大声をあげて抗議した。
「はあああああああ!?何だよそりゃあ!?」
「という事は…殺人が起きたら、最低でももう一人は誰かが死ぬって事!?そんな、そんなのって…!」
「犯人が死ぬか、犯人以外が死ぬか…生き残る為には、何が何でも犯人を見つけなければならない…という事ですよね?」
『そうでーす!』
暗野は顔を青くしながらガタガタと震え、梶野はポーカーフェイスを崩さずにモノクマに確認をした。
そんな事急に言われたって…
人が死ぬミステリーならいくらでも書いてきた。
でも俺は警察でも探偵でもない。
実際に起こる殺人事件の犯人を見つけるなんて、そんな事できるわけがない。
できるわけが…
「そんな悪趣味な事をしたいのは勝手だけれど、こんなところに閉じ込めたくらいで私達は殺人なんかしないわよ」
俺達が困惑していると、薬師寺が冷静な口調で言った。
…そうだ、俺は何を殺人が起こる前提で考えていたんだ。
こんなところに閉じ込められたくらいで、ここにいる誰かを殺すわけがない。
それは皆だって同じはずだ。
『うぷぷぷ…いや、するね。早ければ明日…いや、今日にはもう死人が出てるかもね!』
「あぁ!?どういう意味だコラ!!」
モノクマが俺達をおちょくると、内闘はモノクマに向かって叫んだ。
いきなりこんな事言われて不安なのはわかるけど、いい加減うるさいぞ…
『それはオマエラの胸に手を当てて考えて下さいね。あ、そうそう。大事なものを渡すのを忘れていました!』
そう言ってモノクマは、スマートフォンのようなものを取り出すと、それを俺達に投げ渡した。
見た目は普通のスマートフォンと変わらないが、背面には希望ヶ峰学園の校章が描かれている。
何だこれは……?
「何だこれは」
『電子生徒手帳です!この強化合宿に参加する上ですごく大事なものだから、絶対失くさないでよね?また作るのめんどくさいし!』
電子生徒手帳、ねぇ…
さしずめ、俺達生徒用の端末っていったところか。
『キャハハハ、じゃあ早速電源を入れてみてくださーい!』
電源…
普通に横のボタンを押せばいいのかな。
あっ、電源がついた。
ーーー
ようこそ
【超高校級の小説家】東野潤 サマ デ マチガイ アリマセンカ?
ーーー
俺は、画面の指示に従ってホーム画面を開いた。
すると、色々なアプリが並んでいる画面に行き着いた。
「ねえ、これどうやって操作するの」
「あたいったらサッパリね!」
「ぼ、僕も…」
どうやら、消灯寺と神無月、それから暗野が苦戦しているようだ。
…嘘だろ?
現代日本にスマホの電源を入れられない10代なんて存在したのか…
「クハハ!貴様の眷属の封印を解けば良いのだな!?そういう事なら、俺様に任せるがいい!」
「わたくしも出来る範囲で良ければお教えしますわ」
「じゃあリーゼさん、お願い」
「俺様は!?」
消灯寺の方は、リーゼと安室が教えるみたいだ。
神無月の方は…
「あ、あのっ…神無月さん…!わたしやります…」
「わーい、ありがとうみるくちゃん!みるくちゃんって意外と役に立つよね、メンタルゴミでメスオーガみたいな見た目のくせにさ!」
「ひぇえええ…!ごめんなさぁぁい…!」
おい神無月。
教えてくれる奴に対してその態度は無いだろ。
俺が注意しようとしたその時、神風が神無月に注意をした。
「おい神無月。氷川を虐めるな」
「は?いじめてないし!どこをどう見たらいじめに見えるの?」
神風が神無月を注意すると、神無月が逆ギレした。
向こうはだいぶ苦戦してるみたいだな。
暗野は…
「あの、東野君…えっと、電源の入れ方、教えてほしくて…」
「まずは横のボタンを押してみろ」
「えっと…これ?」
「違う。それは音量ボタン。反対側のボタンを長押し。やってみろ」
思ったより先が長いな…
とりあえず、電源を入れるところまではいったけど。
「あっ、電源がついた…」
「じゃあ次はその確認画面のとこ、OK押してみろ」
「うん」
「はい、これでアプリとか使えるようになったな」
「ありがとう東野君…!」
電源入れてホーム画面開くだけでここまでかかるとは。
どんだけ機械音痴なんだこいつ…
『はーい、全員画面を開きましたね?この生徒手帳には、色々な機能があります!是非合宿生活で活用して下さいね〜!』
『じゃあボク達はこれで。バイバーイ』
そう言って、モノルナとモノクマは去っていった。
ロビーには、ついさっき殺された殉前を除いた17人が残った。
「うっ、うぅ…!ごめんなさい…殉前さん…殉前さぁん…!」
氷川は、その場に崩れ落ちて啜り泣いた。
それを皮切りに、他の人達も何人か泣き出した。
「殉前さん……」
「シノコぉ…!!」
「我が盟友よ…」
「ご遺体を弔って差し上げる事もできないなんて…!」
「胸糞悪いモン見せやがって…」
「嫌だよ…あたいはこんな風に殺されるのなんか、絶対嫌なんだから…!」
リーゼと暗野、それからラムジが涙を流していた。
安室は泣いているリーゼに寄り添いながら殉前の死を悔やみ、梶野と山脇と消灯寺はモニターを眺めながら、神風は制帽で目元を隠しながら黙祷を捧げていた。
六道は何も言わずに俯きながら突っ立っていて、的凪は六道に寄り添いつつ悲しそうにモニターを眺めていた。
酒蔵と神無月は、ギリっと歯を食い縛りながらモニターを睨んでいた。
俺が皆に声をかけようとすると、薬師寺が肩を掴んで止めた。
「今はそのままにしてあげましょう」
「…ああ。そうだな」
皆、あんな形で殉前が殺されて、悔やんでも悔やみ切れないんだ。
今だけは…そっとしておいてやろう。
俺も、しばらくはここで祈っていよう。
せめて向こうで、殉前が安らかに眠れるように。
殉前…
最初はうるさい奴だと思ってたけど、でも、明るくて仲間想いな奴だった。
真っ先にこのゲームを拒否したのだって、俺達に仲間を殺させようとするモノクマ達を許せなかったからだ。
あいつが殺されていい理由なんか、どこにも無かったんだ。
それなのに、どうして……
「ねえ、いつまでそうしてる気?」
「てめぇら、どうかしてんだろ。ついさっき会ったばっかの相手だぞ?」
俺達が殉前の死を悔やんでいると、打田と内闘が空気の読めない発言をした。
すると酒蔵が二人を睨みながら嫌味を言い放った。
「一歩でも間違ってりゃあ死んでたのはお前らの方だったのに、よくそんな口が叩けるな」
「だから何?あたし、無駄な事に時間使うの嫌いだから」
「あの女がバカやらかしたから殺されたんだろ」
「何だと!!?」
酒蔵と二人が喧嘩をしていると、内闘の言い方にカチンときた樺戸も喧嘩に加わった。
するとその時だった。
「もうやめて下さい!!」
突然、氷川の声がロビーに鳴り響いた。
何の前触れもなく響いた氷川の声に、俺達は呆気にとられる。
「私…もう、嫌です…!誰かが死ぬとか、殺すとか…そんなの、もう耐えられないです…!」
氷川は、その場で大粒の涙を流して泣いた。
俺も、もう嫌だよ…
これ以上、殉前のように誰かが死ぬところを見たくなんか…
「東野くん…」
「!」
山脇の声で、我に返った。
ふと前を見ると、殉前の死を悔やんで泣いている暗野がいた。
…何をやってんだ、俺は。
山脇も、暗野も、俺なんかよりずっと不安に決まってる。
俺がしっかりしなくちゃ…希望を持っていなくちゃいけないんだ。
この時、俺は知らなかったんだ。
まさかこの時の出来事が、この後起こる悪夢へと連鎖していくだなんて…
Prologue おいでよぜつぼうの館 完
➡︎Next Chapter.1 いけにえと雪のカルテット
ーーー 生存メンバー ーーー
【超高校級の小説家】
【超高校級の???】
【超高校級の司令官】
【超高校級の軍医】
【超高校級のオルガニスト】リーゼロッテ・ベルゲングリューン
【超高校級の原型師】
【超高校級の心霊学者】
【超高校級の絵本作家】
【超高校級のディーラー】
【超高校級のカルタ師】
【超高校級のグラシエール】
【超高校級のソムリエ】
【超高校級のカバディ選手】
【超高校級のプロレスラー】
【超高校級の狙撃手】
【超高校級の幸運】
【超高校級のゲームプログラマー】
ノコリ17人
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のギャル】
以上1人
推しがいたら教えてくんなまし
-
東野潤_小説家
-
暗野斬良_???
-
殉前詩乃子_ギャル
-
神風大和_司令官
-
薬師寺療香_軍医
-
リーゼロッテ_オルガニスト
-
安室明日奈_原型師
-
消灯寺霊庵_心霊学者
-
山脇ゆか_絵本作家
-
梶野運命_ディーラー
-
神無月椛_カルタ師
-
氷川みるく_グラシエール
-
酒蔵飛露喜_ソムリエ
-
樺戸ラムジ_カバディ選手
-
内闘力也_プロレスラー
-
打田清美_狙撃手
-
的凪梢_幸運
-
六道千春_ゲームプログラマー
-
モノルナ_引率教師