幻想郷の深夜食堂   作:アルティメットルパン三世

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 幻想郷にある一件の飲食店『幻』。此処では人も妖怪も関係無く賑わう場所。

 記念すべき最初のお客(常連)は博麗の巫女である少女『博麗霊夢』。
何時も最初に来店しては豚汁定食を頼み店主も何も言わず彼女に豚汁定食をタダで提供する。
その行為に魔理沙達は店主から理由を話させようと騒ぎ出し店主は仕方なく話すのであった。

 コレは店主と霊夢との出会…おっと、この先は未来のお話でしたね…それではご覧あれ。



博麗の巫女と豚汁の思い出

 

 語り手:店主

 

 

 雲もなく月が夜空を照らすこの日、今日も俺の一日が始まる。

 

 夜の9時、仕事着に着替えた俺は店である1階に降りてまず最初に作るのは豚汁だ。

 大根や人参等の根菜、椎茸や油揚げを包丁で切りこんにゃくは手で1口大にちぎる。

 大鍋に油をひいて豚バラ肉を火が通るまで炒めその次に根菜類と油揚げとこんにゃくを入れて軽く炒める。

 そこに出し汁を入れ沸騰させた後に赤と白の合わせ味噌を溶いて出し汁に馴染ませ煮つめて完成。

 

 後は他の料理の仕込みを軽くし、それからは布巾でカウンターを拭いたり箒で床のゴミを払って綺麗にしていく。

 

 コレをしていると時間は11時55分になっている。掃除をし終えた俺は店から出て提灯に火を灯し明かりをつけた後にのれんを掛ける。

 

 ボ──ンボ──ン

 

 音を鳴らしながら振り子時計が12時を知らせる。

 深夜食堂『幻』、今日も開店してるよ。

 

 

 『博麗の巫女と豚汁の思い出』

 

 

 ガララッ

 

「マスター! 今日も来たわよ、いつもの頂戴!」

「はいよ」

 

 霊夢はこの幻想郷と外の世界の境目にある『博麗神社』の巫女であり妖怪退治を稼業としている女の子だ。

 

「置いてくなよ霊夢! あっオッチャン、私もいつもの頼むぜ! 後ビールも!」

「今日は箒に乗ってやって来てんだろ、酒はダメだ」

「えー、いいじゃんかケチおや……「じゃあ帰りな」わかった! わかったから! キノコ定食だけでいいから!」

「はいよ」

 

 霊夢の後からやって来たこの金髪の女の子は彼女の友人である魔理沙。ここから少し離れた魔法の森という森で『霧雨魔法店』を営んでいる『普通の魔法使い』だ。

 

 魔理沙に返事しながら俺は霊夢の豚汁定食を準備し終え豚汁の入った大きめのお椀とご飯の入ったお茶碗を持って霊夢の前に置く。

 

「はい、豚汁定食お待ち」

「きたきた! ありがとうねマスター」

 

 豚汁定食

 

 野菜や豚肉は勿論、椎茸に油揚げとこんにゃくが入った栄養満点の豚汁とおかわり自由のご飯のセット。値段は600円(現代通貨で例える)

 

「いただきます」

 

 手を合わせいただきますを言い霊夢は豚汁定食を食べ始める。

 始めに取ったのはメインの豚汁。割り箸で具を挟み口に運ぶと何度も噛みながら味わってから「ゴクン」と喉に通した。

 

 具の次に霊夢はお茶碗に入ったご飯を一気にかき込んで食べる。

 

 フゥ〜っと息を吐き、霊夢はお椀を持って汁を飲む。

 鰹出汁の旨みと味噌のコクが口いっぱいに広がり夜風で冷えた体を温める。

 飲むのを一旦やめると霊夢は笑顔で俺の豚汁に舌鼓を打った。

 

「はぁ〜何時食べても飽きないわマスターの豚汁は……って何よ魔理沙? 人の顔を見てクスクス笑って」

「いやぁいつもムスッとしてるくせにオッチャンの豚汁定食を食ってる時だけは笑顔だなぁって?」

「悪かったわね笑わなくて……」

「そう意地悪してやるな魔理沙。霊夢はあんまり食えてないんだしウチの豚汁定食に満足してくれてコッチも嬉しいしな」

「わかってるじゃないマスター! あっご飯のおかわり頼むわね」

「はいよ。それと魔理沙、キノコ定食お待ち」

「おっ! 待ってました! 」

 

 お盆に乗せたキノコ定食を魔理沙の前に置くマスターに霊夢は空のお茶碗を彼に渡した。

 

 キノコ定食

 

 キノコをふんだんに使った魔理沙が俺に提案した彼女専用の定食。基本内容は日替わりである。

 

 この日のキノコ定食は小鉢にほうれん草とエノキのおひたし、メインはきのこのバター炒め、ナメコの味噌汁とご飯といった4品。

 コチラもお値段は600円(現代通貨で例える)

 

「今日はバター炒めかぁ、美味しそうだぜ。いただきます!」

 

 手を合わせていただきますを言い魔理沙も食事を始める。

 最初におひたしを食べる魔理沙、エノキとほうれん草の食感と醤油ベースの調味液が良い味を出している。

 

 口直しにご飯を食べた魔理沙はきのこのバター炒めを食べる。しめじや椎茸、舞茸が口いっぱいに広がりバターと醤油の絶妙な相性に魔理沙は舌鼓を打ちながら最後にナメコの味噌汁を飲む。

 

「……ハーッ! うめぇー! 今日も最高だぜオッチャン!」

「おう、ありがとよ」

 

 魔理沙の声に俺は一言言いタバコを吸う。

 

「あっそうだ、聞いてよマスター! 魔理沙ったらまた森に生えた変なキノコ持って来て食わされたのよ!」

 

 キノコで思い出した霊夢は今日の出来事を俺に愚痴を吐く。

 

 

 それから時間が経ち店の中は常連さん達で賑わっていた。

 常連さんといっても人ではない、ウチに来るのは妖怪や吸血鬼、鬼や神様といったとんでもない連中……しかも殆ど女ときた。

 

「マスター! 酒おかわりー!! ///」

「コッチも頼むよ!」

「だからよ萃香に勇儀……ウチは酒は3杯までだって言ってんだろ?」

「なんだとー! これっぽちじゃ酔いも来ないぞー!! ///」

「マスターのドケチー!」

 

 鬼の伊吹萃香と星熊勇儀が酒の要求をしてくるがウチは酒は3杯までと決めているので出す気は無い。

 

「まぁまぁ落ち着きなさいな萃香ちゃんに勇儀ちゃん。後でアタシの店で飲み直せば良いじゃない」

「う〜ん……ま、それでいいか」

「じゃあ後で行こうなこすずさん! ///」

 

 コスズさんは外の世界から来たオカマの外来人。人里でオカマバーを経営しており酒呑みの萃香に勇儀とは親友でもある。

 

「ふぅ……それじゃ私は先に帰るわね」

「ん? もう帰るのか霊夢?」

「朝早いしね。それじゃマスターご馳走様、また明日も来るわね」

「おう、また来な」

 

 お茶を飲み終えた霊夢は店から出て行った。霊夢が帰ったのを確認した魔理沙は俺に問いかけてきた。

 

「……そういやオッチャンって霊夢にタダで豚汁定食出してるよな」

「そういえばそうね、どうしてなのかしらマスター?」

 

 魔理沙の質問に興味を示したのは彼女と同じく魔法使いで人形使いの少女アリス・マーガトロイド。

 

「アタシも気になるわねぇ……話しなさいよマスター?」

「そうだそうだ! 酒の代わりとして話せー!! ///」

 

「「「は・な・せ! ・は・な・せ!」」」

 

 いつの間にか客の皆が手拍子しながら俺に話せコールをしてくる。

 話さない限りやめろと言ってもやめないと察し俺は話すことにする。

 

「はぁ……霊夢には言うなよ?」

「もちろん! さあさあ話してくれよ!」

「……アレは霊夢がまだガキで俺がまだ前職をしていた頃だったな」

 

 ──────────

 

「あ? 子守りだ?」

「そうなのよ、今回の依頼がちょっと手強くて一日じゃ済まなさそうで……頼めるかしら」

「ったく、俺は保育士じゃないんだぞ……今日だけだからな?」

「じゃあ決まりね! 霊夢、おじさんの迷惑にならないようにね」

「うん……」

 

 妖怪ハンターを営んでいた俺は別の意味で同業である霊夢の母親に一日だけ自分の娘の子守りを頼まれた。

 同業で偶に協力して依頼解決していた事も多かったから俺は仕方なくそれを受領し霊夢の面倒を見る事にした。

 しかし、子守りなど無縁な俺は何すればいいのか分からずにいたのだが

 

 ぐうぅ〜

 

 突然腹が減ったという知らせをする音がした。勿論これは俺ではなく霊夢から鳴った。

 

「……豚汁食うか?」

「豚汁? それって美味しいの?」

「ああ、ちょっと待ってろ」

 

 俺は立ち上がり台所へ向かいご飯と豚汁を作る。

 それから時間が経つと豚汁が出来上がりご飯も炊き上がったのを確認し俺は自分と霊夢の分の箸と椀と茶碗を用意。椀に豚汁、茶碗にご飯を入れて霊夢の元へ戻る。

 

「はい豚汁とご飯、お待ち」

 

 俺が来たのを見て霊夢はちゃぶ台の前に待機した。

 それを見て俺は苦笑いしながら料理の入った椀と茶碗を自分と霊夢の前に置いた。

 

「それじゃいただきます」

「いただきます」

 

 向かい合いながら俺と霊夢は手を合わせていただきますを言い食べ始める。

 ……うん、相変わらずのお味だ。そう思いながら食べる俺はチラッと霊夢の方を見ると目を輝かせながら豚汁とご飯を交互に食べる。

 

「美味いか?」

「っ! (ブンブン!)」

「そうかそうか、おかわりもあるからゆっくり食え」

 

 初めて俺の豚汁を食べた時の霊夢はまるで餌を無我夢中に食べる小動物だったな。

 それからは香霖堂から購入したトランプやオセロ、家にある将棋や囲碁で時間を潰してると霊夢が頭を使い疲れたのかあくびをした。

 

「眠くなったか? 」

「うん……」

「じゃあ布団敷いてやるから待ってな」

 

 そう言い俺は囲碁の台を片付けちゃぶ台を立てかけてから敷き布団を敷いて枕を置く。

 

「俺の匂いが付いてるけど我慢してくれ」

「それぐらいは大丈夫……おやすみなさい……」

「おう、おやすみ」

 

 そう言い霊夢は目を閉じて眠り始める。

 

「さてと、台所の洗い物でもするか」

 

 霊夢が寝てる内に俺は昼飯で使った食器と鍋を洗うのであった。

 

 

 時が経ち、オレンジ色の空がタバコを吸っていると空から先代巫女が降りて来た。

 

「早かったな。今日は帰れないって言ってたんじゃないのか?」

「それがさー依頼主の話とは全く違ってその妖怪かなり弱かったのよ? スピードが取り柄で他はまるっきし雑魚だったわ……ま、賞金はそのまま貰ったけどね」

「ハハハ、そりゃあ良かったじゃねぇか」

 

 タバコを片手に話していると突然鼻をスンスンと嗅ぎ始める先代巫女。

 

「この匂い……豚汁ね!」

「相変わらずお前の嗅覚は鋭いな……だが残念だったな。その豚汁は俺と霊夢が食い尽くした」

「はぁ──!? 何2人で全部食べちゃってんのよー! ずるいずるい! 私にも作れー!」

「おい! タバコ持ってんだから危ないだろ! また今度作っといてやるから叩くな! それよりも霊夢寝てるからサッサと帰りな!」

「約束だからね! ったく……」

 

 ホント顔が似てりゃ食い意地も似てるなあの親子は……

 そう思いながら俺はタバコの吸殻を片付けると先代巫女が霊夢を連れてやって来た。

 

「おはよう、よく眠れたか?」

「うん……ありがとう」

「おう、それとコレで帰りに何か食って帰りな」

「いいの! ありがとねー!」

 

 嬉しそうに先代巫女は俺から金をシュバッ! と取った。

 この銭ゲバが……と苦笑いしてるとズボンを引っ張られるのを感じ下を見ると霊夢が傍に来ていた。

 

「おじちゃん……また来てもいい?」

「……ああ、暇な時にまた来な。豚汁でも作って待っててやるよ」

「っ! うん!」

 

 俺の言葉に霊夢は初めて俺に笑顔を見せてくれた。

 

「それじゃ帰るわよ霊夢ー?」

「はーい! おじちゃんそれじゃあね!」

「ああ」

 

 母の手を握りながら帰る霊夢は振り返りもう片方の手を元気よく振り俺も軽く手を振り返すのであった。

 

 

 ──────────

 

「……ま、これが俺と霊夢が出会った日であり彼女に豚汁定食を食べさせてる理由だな……って何で泣いてんだ?」

 

 俺が話を終えると店の中ははすすり泣く声が聞こえていた。

 

「だっでよぉ……そんな話聞いたら……誰だって泣くだろうがよぉ……」

「アンタ泣きすぎよ……ほら、ハンカチで拭きなさい……」

「おう……オカマのくせにいい所あんじゃねぇか……ズビーッ!」

「このおバカ! 鼻まで噛むんじゃないわよ!」

 

 コスズさんのハンカチを涙と鼻水で濡らした魔理沙。

 

「でもまぁコレでわかったわ、霊夢にとってマスターの豚汁は思い出の味って訳ね」

 

 そう言いアリスは熱燗を一口飲む。

 彼女の言葉に魔理沙達は納得し微笑みを浮かべながら残ってる酒を飲む……がココで萃香が爆弾発言をした。

 

「でさ! マスターは霊夢と結婚しないのかー?」

 

「「「ブフゥ──ッ!!?」」」

「……」ビショ濡れ

 

 萃香の言葉に飲んでいた酒を吹く魔理沙達。そしてその吹いた酒は俺の顔にかかった。

 

「ゲホッゲホッ! ……す、萃香! オメェ何言ってんだ!」

「えー? だって人間の言葉で私に毎日味噌鍋をって言うの聞いた事あるじゃん?」

「それを言うなら私に毎日味噌汁を作って でしょ?」

「そう! それそれ!」

 

 萃香の間違ってる言葉を訂正するコスズさん。

 

 ガララッ

 

「ごめんマスター。ちょっと忘れ物……って何よこの状況」

 

 忘れ物をした霊夢が店に戻って来るとカオスな状況に困惑している。

 

「おう、戻ってきたか霊夢」

「ってマスター!? どうしたのよその姿! しかも酒臭ッ!」

「なに、ちょいとしたトラブルさ……」

 

 ビショ濡れの俺を見てビックリする霊夢に軽くそう言った。

 

「おーい霊夢! お前何時になったらマスターとけっ」

「おいバカ! さっきの話がバレるだろ! 「ふーん? さっきの話って何かしら?」ゲッ……逃げろ!!」

「あっ! 待ちなさい魔理沙ー!!」

 

 萃香を黙らせようとする魔理沙だったが口を滑らせた事が霊夢の耳に入り視線が其方に入る。

 汗だくになりながら魔理沙は素早く箒を取り店から逃げ出し霊夢は魔理沙を追いかけた。

 

「おい魔理沙、お代……」

「いいわよマスター、私が代わりに出しておくから」

「悪いなアリスちゃん……将来は魔理沙の良い嫁さんになれそうだな?」

「おっ! お嫁……私はマスターのお嫁さんになりたいんだけどね(小声)///」

「ん? 何か言ったか?」

「なんでもないわよ(相変わらず鈍いわね……けどま、その性格が私や皆を惹かせるのよねぇ……///)」

 

 顔を赤らめながらアリスは残った熱燗を一気飲みする。

 

「『鈍感店主 恋せよ乙女 三途川』…人生なめんなよ」

 

席の隅で浪人の男『カタギリ』がピーナッツを肴にポリポリ食べていた。

 

 

 幻想郷の深夜食堂『幻』は今日も平和であった。





豚汁定食を用意しているマスターを見ている霊夢、すると彼女がコチラへと顔を向け話し出す。

霊夢「豚汁は肉と野菜が両方採れる汁物料理。具材も良いけどやはり出汁と味噌が決め手ね。」
店主「はい、お待ち」

丁度そこへ店主が豚汁定食を持って霊夢の前に置く。

霊夢「きたきた。(スゥ-)う〜ん、やっぱりコレね…それじゃおやすみなさい」


次回、『赤いウインナーと卵焼き』。

――――――――――
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