推しの子-偶像になる少女と空想に生きる少年-   作:アルトサックス

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5/5、四話目加筆しました。

藍方石という宝石がある。
それはラピスラズリの主成分で、ラピスラズリは和名で瑠璃というらしい。

ラピスラズリの宝石言葉には永遠の誓いというのもある、何時か二人がそうなれたらいいね。







それぞれの想いⅡ

 

 

 

「今日はカレー~、瑠璃君のカレー本当に美味しいよねぇ」

 

 

そんな事を口遊みながら、私は苺プロダクションの事務所へと足を向ける。

瑠璃君のご飯はとっても美味しいし、一緒に囲う食事は楽しいし、何より温かい。

 

……施設に預けられる前、お母さんと一緒に居た時はそんな事を思う事はなかった。

 

ご飯の中にガラスが混じっていたりした事もあったし、そのせいで私は一時お米を食べるのが苦手だった。

 

それを見かねた瑠璃君は昔、お米を使わない料理を私によく作ってくれた。

 

彼の料理のレパートリーはかなり豊富だ。

何でも、お婆ちゃんが亡くなる前に徹底的に仕込まれたのだとか。

 

 

「…それにしても、私がアイドルに、かぁ。昔誰かに、向いてるんじゃない?とは言われた事あったけど」

 

 

今日の夜ご飯に期待を膨らませながら、そう言葉にする。

人の顔を覚える事が苦手だから、それが誰なのかは思い出せないけれど。

 

アイドルへのイメージは、皆に笑顔を振りまいて、皆を笑顔して、愛を贈る、純粋で輝いた存在。

 

……私は何かを愛するのが苦手だ。

私とは真逆で、だからこんな私は到底アイドルなんて向いてないと思ってた。

 

―――人を愛した記憶も、愛された記憶も無い、私にはアイドルなんて出来ないと。

 

そんな私ではきっとファンを愛せないし、愛されない。

佐藤?社長は、それでも良いんだと言った。嘘でも愛してると言っても良いと。

 

 

「アイドルは偶像、完璧な嘘を客は求める」

 

 

社長に言われた言葉を反芻する。嘘を吐ける事も才能なのだと。

スカウトされた時にした言葉のやり取りが脳裏を過る。

 

 

「色々言っているけど、君も人を、誰かを、愛したいって思ってるんじゃないか?」

 

「それに皆に愛してるって言ってる内に、嘘が本当になるかもしれん」

 

 

そう社長が言った言葉が、最初は断ろうとしていたアイドルへの階段を上る事を決めた。

 

 

「…嘘が本当になる」

 

 

―――私は誰かを愛したい、心の底から誰かに、愛してると言いたい。

 

 

「―――もしもそれが」

 

 

冗談めかして、君と良く愛してるとやり取りをするけど。

何時の日か、本当になるのだとすれば。

 

 

「……私にとってのそれが、君だったらいいなぁ」

 

 

 

 

―――〇●〇

 

 

 

 

「美味いか?」

 

「うん!やっぱり瑠璃君のご飯は美味しいよねぇ、毎日でも食べたい位」

 

「ほぼ毎日食べてるだろ、お前は。……ハァ」

 

 

夜、二人で食卓を囲む。今日の夕飯はアイの要望通りのチキンカレー。

それを心から美味しいと食べてくれる事は、作ってる側からしたら幸せ冥利に尽きる。

 

だというのにそれとは別に、思わず溜息が出てしまう。

 

 

「…瑠璃君、大丈夫?少し疲れてる様に見えるけど」

 

「大丈夫。想定外の事で体力を使ったというか、まあ、うん」

 

「……他の女の匂いがする」

 

 

逡巡する瑠璃の思考をアイは女の感というべきか、そう直観的に察知する。

 

 

「ノーコメントで」

 

 

アイの怪しく光る瞳から逃げる様に俺は視線を逸らす。

 

気分は妻に浮気がバレた夫の様な気分。

付き合っている訳でも、ましてや結婚している訳でもないが、何処かバツが悪い。

 

 

「…まあ、いいや。瑠璃君?今日は夜更かししないでちゃんと休んでね、倒れたりなんてしたら私も悲しいし」

 

「そうする。今日はどうだったんだ、事務所に行ったんだろ?」

 

 

自愛してというアイの真摯な言葉に頷き、そう返す。

 

 

「―――今日はね」

 

 

アイは語る。規約違反になる為に、部外者の俺に深い所までは語れはしないが。

社長が施設から引き取ってくれるのだとか、グループとしてデビューするのだとか。

 

そうして、何時もと変わらない柔らかな夕食の時間が流れてゆく。

 

それから三日後。

 

 

「……瑠璃、君?」

 

 

何時もの時間を過ぎても、全然起きてこない彼を不思議に思いアイは部屋の扉を開いた。

そこで見たのは、床に倒れこみ、動かない瑠璃の姿であった。

 

 

 




4000文字位でガチガチに文章を詰めるより、1500から2000位で楽に読める位が丁度いいじゃないかなぁ、と思ってきた。

感想等、お待ちしております。

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