すうすうと膝の上で寝息をたてるフクロウを見て、フラミンゴは優しく微笑んだ。時刻はお昼過ぎ、庭園に来た時点でうつらうつらとしていたフクロウは、ベンチに座るとすぐに眠ってしまった。
「お疲れ様、フクロウ」
起こさないように小さく呟く。日々の任務にレポート、更にはカラーコーディネートなどの勉強、駄目なヤツなんて自分を卑下するけれど、誰かの為に頑張れるフクロウは、フラミンゴにとって自慢の幼なじみだ。
「アナタが思ってるよりずっと、アナタって凄いんだよ」
なんて、本人に言っても、素直に受け取って貰えないのが、少し歯痒い。自分の『好き』がもっと届いて欲しいと思う反面、本当に全て伝わってしまうのは、それはそれで困ってしまう。
「ん…」
ふと、フクロウが身をよじり仰向けになる。顔が向き合い、フラミンゴはほんのりと顔が熱くなるのを感じた。惚れた贔屓目を抜きにしても、整っているとフラミンゴは思う。いつも被っているフードが無ければ、もっと色んな人の視線を集めていただろう。それが惜しくもあり、逆に良かったという気持ちもあって、友情と独占欲がフラミンゴの胸中でグルグルとかき混ぜられる。
まじまじとフクロウの顔を眺めていると、つい魔が差して、フクロウの唇に指を近づける。
「こんなのダメ、だよね」
自分を戒める様に呟き、寸でのところで指を止める。ただ、欲望というのは厄介なもので、手を引っ込めようとしては戻して、ふらふらと行き場もなくさ迷う。
柔らかそう、触りたい、そんなのダメ、でも、とフラミンゴが葛藤する中、
「フラミンゴ、大好き…」
ポツリ、と漏れたフクロウの寝言に、頭の中が真っ白になった。心臓が跳ねる、顔が更に熱くなって、好きが溢れていく。理性が上手く働かなくなり、指先が唇に近づいて。
「これからもずっと、友達、で…」
フクロウのその言葉に、まるで氷柱を心臓に打ち込まれる様な感覚に陥った。あともう少しで触れるところだった指先は、力なく離れていく。
「そう、だよね」
普段から自分に言い聞かせていた事が、重くのしかかる。どこまでいったって自分達は『一番の友達』でそれ以上は望むべくも無いのだと。
「ワタシも大好きだよ、フクロウ。ずっと、友達だよ」
フクロウにかけているはずの言葉は、自分にも向けられていて、痛いくらいにフラミンゴの胸に突き刺さった。
◆
「ごめん、フラミンゴ!折角の休日だったのに台無しにしちゃって」
空が赤く染まり出した頃、目を覚ましたフクロウは顔を青くして、フラミンゴに謝罪した。
「気にしないで。ワタシ、フクロウと一緒にいれて嬉しかったよ」
困った様に笑うフラミンゴは、どこか元気が無いように見えて、フクロウはどう償えばいいのかと頭を悩ませる。すると、突然フラミンゴが抱きついてきた。
「ホントだよ、一緒にいてくれるだけで、幸せだよ」
突然の行動に戸惑いながらも、フクロウもフラミンゴを抱き締め返す。
「わ、私もフラミンゴと一緒にいれて、嬉しいよ」
しっかりと思いを口にすると、フラミンゴの抱きつく力が強くなる。
「だから、その、これからも一緒にいてくれると嬉しいな。もちろん、フラミンゴがいいなら、だけど」
「…うん!ずっと、ずっと一緒だよ!」
フラミンゴの声が、心なしか弾んだものに変わる。顔を見れば、太陽みたいに眩しい笑顔が、いつものとおりそこにあった、
「ねえ、今日は一緒に寝ない?」
「え、でも私、こんな時間まで寝ちゃったし、夜眠れないかも…」
「じゃあ、眠たくなるまでお喋りしてようよ!ワタシ、今日はずっと一緒にいたいんだけど、ダメ?」
そう言われてフクロウが断われるわけもなく、
「ううん、ダメじゃないよ。今日は、一緒に寝よう」
「~っ!うん!」
返事を貰ったフラミンゴは、フクロウから見ると、すこし大げさなくらい嬉しそうで、二人で歩く帰り道は、いつもよりも楽しくて、満ち足りた時間になった。