飼い猫だが野良猫に拾われ駄目猫にされてしまうかもしれない(仮)   作:猫猫猫猫猫←

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2.野良猫、飼い猫のお世話をする

 

 

 

 

 ホークスに連絡したら大層心配され、見舞いに来ると言われた。いや事務所も違うし距離もかなり遠いし「表」の繋がりはインターンもどきをしたくらいだろうと制しをかけて誤魔化した。それはそうとして、流石にマンダレイの世話になったことを言うのは憚られた。

 色々理由はあるが、一番は彼女まで「こちら側」に巻き込みたくないからだ。

 

 彼女の笑顔は、どうしてか俺の里親を思いこさせる。

 そんな彼女の笑顔を曇らせるような話を、どうしても持ち込みたくはない。

 だから関わるにしても最低限、普通のヒーロー付き合いとして。それこそ先日の出来事など無かったことにして、である。

 

 だから今日、菓子折りを持って行く。これで口止めや打ち合わせもかねて、それでこのつながりは終了だと。

 とはいえ中々彼女が自宅に帰ってこないため、こちらも数日待たされることになったのだが。

 

 結成6年目のレスキューヒーローチーム「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ」。「マンダレイ」はその実質的な司令塔である。個性「テレパス」によりチームの状況や情報をいち早く共有。またその洞察力や観察眼は、実際に相対してかなり高いと思わされた。おそらくテレパスにより、その目の力で現場の状況を判断したものも共有しているのだる。

 そんな彼女たちだが、主な活動場所は山岳地帯でもそこだけが拠点というわけではない。自宅は都心部にあるし、休暇はこちらで寝泊まりしているらしい。

 

 ちなみに当然だが住所などはプライバシーなので非公開。俺はそんな彼女の自室の場所を知ってしまった数少ない男となってしまった。

 

 まあ、だからどうしたという話なのだが。特別悪用するつもりもないので、公安の忘却ヒーロー「アムネジア・エフェクト」の診察を受ける必要もない。

 

 そして自宅に彼女が帰っていることをマンションの外から確認し(部屋の明かりと窓のカーテンなど)、菓子折りを手に下げ一階の玄関へ。インターフォンの番号を押し、カメラ越しにこちらの顔を見せた。

 

『はーい、送崎ですけど』

「……いきなり名前を名乗るなアンタ、不審者だったらどうするんだ」

 

 先輩ヒーローらしくしっかりはしていると思うが、こういう所では警戒心が抜けているらしい。一応自分が美人だという自覚が薄いのかコイツ。

 思わず指摘してしまったが、彼女、マンダレイはこちらの顔を見て不思議そうな表情だ。

 

 まぁ、今はあの時と髪型も格好も違うのだ。もっと清涼感のある運動着に、長い前髪を左右に分けている。もっとも誰だか気付かないと流石に話が進まないと思い、自らの個性を頭頂部だけに纏う、というか「生やす」。

 

『あっ、そのネコミミはダーク君ね。どうしたのかしら?』

「一応はお礼と、後はまぁ……」

『わ! 袋、大きい。別に良いのに、結構律儀なのね。……わかったわ。上がって来てくれる?』

 

 ガチャリ、とロックが外れる音と共に、玄関口の自動ドアが開いた。

 特に何ら感慨も持たず奥のエレベーターに乗り、記憶通りに階のボタンを押して上昇。

 途中何か絡まれるようなことがあったわけでもなく、俺は彼女の部屋へとたどり着いた。

 

 送崎信乃――――そう書かれたネームプレートの玄関インターフォンを押そうとすると、ガチャリ、と押す前に解錠された。

 

 少し扉が開き、彼女が顔を覗かせる。恰好は少なくともタンクトップではなく、普通にポロシャツにジーンズだ。ただサイズが少しあっていないのか、胸の大きさに突き上げられて腹部が少し見えている。おへそがチラリ、というやつだ。

 

「はい、ダーク君。久しぶりね。一週間くらい? まあとりあえず、中に入って」

「いや、玄関先で……」

「玄関先で話すとまずいこともありそうだし、遠慮しない遠慮しない。こういう場合、先輩に任せるものよ?」

 

 実際暗号や吹聴が使えないので(彼女には伝わらないので)部屋の中でというのは色々助かるが、それにしたってもう少し色々と警戒してほしい。

 そもそも彼女は、格闘技など最低限は鍛えていてもサポートヒーロー。ましてやこちらは表も裏もゴリゴリの武闘派ヒーロー。

 何か些細なことで「間違え」ない保証はないのだから、そんな弟でも見るような目をやめてもらいたい。

 

 ……年齢差で言えば、彼女が雄英にいただろう時代に俺は小学生だったくらいだけど。

 

 とりあえず挨拶をして菓子折りを渡す。中身はどら焼きだ。「えっと、猫型繋がり?」と苦笑されたが、多めに買ったので仲間で分けて欲しいというと素直にお礼を言われた。

 とりあえずそれを開封し、一つずつ彼女は俺と自分に。そのままペットボトルの緑茶を一夫に注いで、薦めながら一口。

 

「あら、本当に美味しい……。何か色々悪いわね。大した事してないのに」

「いや、重体だったのを最低限消毒やら縫合やら固定やらしてくれたろ。どう考えても釣り合いが取れてないのはこっちだろ」

「いや、それは職業柄のようなものだし。私、レスキューヒーローだもの」

 

 にゃん♪ と言いながら両手を丸めて頭を傾げて、少しだけしなをつくるようなポーズ。

 なんとなく視線を逸らすこちらにクスクスと笑うマンダレイこと送崎信乃は、「それで?」と微笑みながら話を促した。

 

 話す事自体は、そんなに多くはない。あの夜の出来事、重体だった俺の状況、一体どれくらい身体損傷をしていたか、そういった諸々を黙ってもらえないかという交渉だ。

 

「もし断ったら?」

「あまりお勧めはしない。…………それこそ暗示とか、記憶操作系のヒーローにつながりがあるなら、俺との面識ごとあの日の出来事を忘れてしまうのが一番手っ取り早いけど」

「それは………………、何か勿体ないかしら」

 

 勿体ない? 疑問に思う俺に、彼女は首肯。

 

「何といえば良いかしら。ああいう、ちょっとドラマチック? な出会い方をしたのに、そのまま全部忘れ去っちゃうのもな、みたいな感じね」

「ドラマチックって……」

「ロマンチックって言っちゃうと少し変な意味になっちゃいそうだけど、同じ猫型? ヒーローなんだし。私たちのチームと、縁があっても不思議じゃないんじゃないかしら?」

「何でだ?」

 

 全然名前も売れていないぞ俺は、と。知名度的な話をすると、彼女は「そうじゃなくって」とくすくす笑う。

 

「黒くてクールな追加ヒーロー! って言うと、子供受け良さそうじゃない?」

 

 そういえばプッシーキャッツはメンバーそれぞれ色が戦隊ものみたいに違ったかと、思わず表情が引きつる。

 

「……いやアンタの所のチームには入らないからな、マンダレ――――」

「しの」

「は?」

「信乃で良いわ。私も君の事は、ミツメ君って呼ぶから」

「いやどうしていきなりそんな話に? いや、本当に俺の事チームに取り込もうとでもしてるのかアンタ?」

 

 オイオイとツッコミを入れるが、彼女はそれに答えずニコニコと微笑んで俺を見ていた。別に、決して色っぽい事情があると言う訳ではない雰囲気だが、それでも何かしらの理由でこちらと距離を詰めようとしているのが伺える。

 

「…………本当に約束は守ってもらえるんだよな」

「あっそれは大丈夫よ。と言ってもあまり信用できないだろうから、だから、仲良くなろうかと」

「仲良くねぇ……」

「仲良くなれば私がどういう女かもわかるでしょうし、そしたら私の言葉がどれくらいか信用できるか解るんじゃないかしら。だからその確信を持ってもらえるように、っていうところね。

 もちろん個人的に、他の猫型ヒーローと繋がっているっていうのはネタ的にもオイシイのだけれど」

「ネタ的に美味しいとか言うな。何だ、インタビュー記事とかのやつかそれ……」

 

 生憎「ダーク・ロー」はマイナーすぎるため、地域密着型のイベント会場とか精々メディア露出などそれくらいなのだ。しかも俺だけじゃない複数人。

 見た目や振る舞いがちびっ子受けしないものである(普段はもっと口数少なく冷徹っぽい風にしている)せいもあって、呼ばれない。

 

 まあこれについては公安側からのイメージ戦略指示があってのものなのだが。ウチの零細事務所にもちゃんとお金を入れてもらっているので、その指示に逆らう意味もない。

 

 俺の言葉に「それだけじゃないけれどもね」とくすくす微笑んだ後、彼女はまたどら焼きをかじり茶を一口飲んだ。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 翌日。

 今度の暗殺は比較的簡単だった。変身タイプのそのヒーローは恋人に告白し、ちょうど受け入れられたその瞬間。人生で最も幸福が自らに来た瞬間の高揚感を狙った。

 状況は同情に値するが実際やったことは個性を利用した横領だ。それも募金関係の。決して大掛かりなそれではない募金を、郁数百も奪ってのもの。

 国がそれをどう判断したかは分からないが、それでも俺に依頼が回ってくるくらいには何かヤバいことをしたのだろう。

 

 だから男が喜びいさんで彼女の肩に自分の頭を置いた瞬間「狙撃した」。個性をライフル状に変形させ、先端から黒い紐付き弾丸のようなものを、針のように伸ばして撃った。

 

 一撃で男の思考能力と生命活動をぐちゃぐちゃに破壊して引っ掻き回した感触が、手に残る。

 一瞬で眠るように息を引き取った男の姿を見た後、俺は足早に帰宅。

 

 とにかくこの感触に慣れない。吐き気を堪えるためにベッドへ倒れ、そして。

 

「はぁい、昨日ぶりねミツメ君」

「…………えっと、信乃、さん?」

 

 夕方。俺の自宅に堂々とやってきた彼女に、思わず唖然としてしまった。

 こっちは彼女の住んでいたマンションとは比べ物にならないくらいに金のかからない借家。キッチンが広めなこと以外は、辛うじて風呂がついているくらいしか語ることがない。

 そんな俺の部屋に「お土産持って来たから、上がるわね」と堂々と侵入してきた。

 あまりに自然体にするりとこちらに入ってきたものだから、混乱していた俺のリアクションは遅れが出る。

 

 いや何でアンタ来てるんだ、そもそも住所はどこで?

 

「後を着けたから。昨日、帰った後」

「いやいや、アンタ……」

 

 尾行されたのが今日でなくて良かったと、これほど心底思ったことはない。

 

「ミツメ君だってたぶん、私がいないときに部屋にいるかどうか毎日確認しに来てたでしょ。暗殺ヒーローの目撃情報、ちょっとあったわよ? 道すがら小学生とかお爺ちゃんお祖母ちゃんとかから、不審者扱いされていたし」

「まあ確かに直前までヒーローコスチュームではいたが……」

「あっ可愛い! 猫ちゃん。アンクちゃんだったかしら」

 

『――――?』

 

 俺から分離した個性「黒影(ダークシャドウ)」が形作った黒猫型モンスター。体躯は小さいが質量と膨張(ヽヽ)、変化率に関しては他の追随を許さないそのアンクを前に、彼女は愉しそうに頭を撫でた。

 特に嫌がる素振りを魅せず、俺を一瞥すると大きな欠伸をしたアンクは、そのままドロリと影に沈むように姿を消し、俺の元へと戻った。

 

 あまり触られると血の匂いを感じ取られかねない……、アンクもまだ洗っていないので、今は無条件に触らせるわけにはいかないのだ。

 

 しゃがんだ姿勢のまま俺を、少し悲しそうに見上げる彼女。

 

「……嫌われちゃたかしら?」

「眠かったんだろ。で、何の用だ? そのバッグ」

「あー、それは後でちょっと話したいことがあったんだけど…………、えっと、個性的なお部屋ね」

 

 放っておけ。

 そのそもアポ無しで人が来ることもないし、自宅に誰か招き入れたこともないのだ。

 

 個性的と揶揄されたが、俺の部屋は酷く散らかっていた。飲食物などのゴミ袋はないが、万一何か調べられても当たり障りのない程度の私物「に見えるもの」を散らかしている。本や着替えや、そういったものを色々。散らかっている形に整頓はされているだろう。

 唯一漫画本は趣味の限りを尽くした。こっちの方が何か聞かれても、こだわりを持って語れるので説得力が出る。ホークスならエンデヴァー関係のグッズが主になるだろうが、そういうことだ。

 

 ただ、特に交友関係の広くない仕事だけの、寝に帰っているだけの男所帯などこんなものだと思ったのだが、彼女的にはどうも違ったらしい。

 

「流石にこのままで寝泊まりしてるっていうのは、ちょっといただけないかしら。少し待ってて、お掃除するから」

「はっ?」

「えっ嘘、トイレ用具とか以外全然ない……!? これは相当、強敵ね」

「いやいやいやいや」

 

 そのまま「行くわよミツメ君」とか言われて腕をロックし引かれて、近所の大型スーパーで色々買わされ、ついでに「その調子だと料理もダメなんじゃない?」と言われてたりした結果、そのままズルズル連行されて色々買い物をし。

 

「さ、召し上がれ。味は可もなく不可もなく、何でしょうけど」

「意外と根に持つんだな、アンタ」

 

 ある程度物を整理させられ、掃除を二人して行い。

 その後適当にカレーを作られて、もう遅いし食べて行かせてとそのままちゃぶ台で二人して夕食をして、ついでとばかりに持って来ていたバッグからお惣菜(手作り)のタッパーを開けたりされ……、途中で冷蔵庫からビール缶を見つけて、後はもうあんまり覚えていない。

 

 結局何のために来たんだ、コイツ。

 

 

 

 

 

 


・ダーク・ローの自宅

 駅付近で月2万円以下の事故物件を優先的にピックアップして使用している! なにせ本人が事故物件筆頭の様なヒーロー、たいして気にならないらしいぞ! ペット禁止だろうと何だろうと個性なので猫(?)のアンク君は堂々と自宅で闊歩している! ネコ万歳!

 

 ちなみに家に置いてあるものは公安からの指示も勘案して色々購入しているが、家が散らかっているのは元々ズボラなせいだ!

 

 

 




次回、身の上話とか色々なんかしちゃったらマンダレイからとんでもない提案されちゃったりするかもねぃ!
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