とある山村近くにある名もなき山の奥深くに位置する天然の鍾乳洞内に居を構えることにした宗次郎と玉ちゃんは、とりあえずこの世界の現状把握に勤めることを第一の目標に考えることにした。
例のドラゴンと対峙したのが、今から約3日前。それから(驚いたことに)僅か半日程度(日の傾き具合で把握した)で現在いる山の麓の村を発見したのだ。
到着するなり宗次郎は、目に付いた村人に片っ端から質問をぶつけた。
しかしここが、ど田舎過ぎて大戦が起きていることを把握していないのか、それともそもそも大戦自体起こっていないのか、村人達からはなんら有益な情報を得ることができなかった。
そして現在、宿のない村内を移動して仕方なく山奥に籠もっているというわけだ。
「はぁ…なかなか上手く事が運ばんねぇ…」
『そう? こうして住むところも確保できたし割と上々じゃないかしら』
「…玉ちゃんって思ったよりプラス思考だよね」
『いやぁん。そんなに褒めらると私…私……!』
「ダ、ダメ‼︎ 玉ちゃん、落ちつ『ビリビリしちゃう‼︎』ギャァァァァァア‼︎‼︎」
説明しよう! 玉ちゃんはおべっかに滅法弱く照れるとついつい電撃を発しちゃうのだ。
加えて説明させてもらうと、卑怯な事が大嫌いでそのような行為をした者には、電撃を光線に変えて粛正せずにはいられない性質(たち)なのである。
ぷすぷすと丸焦げになった宗次郎がうつ伏せに倒れ伏す。
『あ、あら。私ったらまたやっちゃったわ。ごめんなさい! 宗次郎』
「い、いえ……避けれなかった僕の修行不足ですから………」
『それもそうね』
アッサリ。
その後は、玉ちゃんの『ならやることは一つよ!』の一言で魔法球内部に入ることになった。
この魔法球、なにを隠そう玉ちゃんの中なのである。このことに気が付いたのは、つい昨日の事であった。
しかも有難い事にこの魔法球、中での一日が外では僅か一時間に設定されているのである。
加えて魔法球に入ると自動的に装着されるミニ玉ちゃん入り不老の指輪(通信機能プラス電撃アシスト機能付き)が実にナイス!
ただ一つだけ気になる仕様が…………
「……なんでこの指輪、左手薬指なの?」
『⁇ なんでってなんで?』
寧ろ尋ねられても困ってしまうが、宗次郎は何か諦めた様子でこの話題をさっさと切り上げることにした。
魔法球内部は実に殺風景で山と大地と空のみで区切られていて、それ以外は地平線の彼方まで何も見えない。
ただしこの中には、無数の生物達が生息しており、玉ちゃん曰く、『最初から住んでいたんだから仕方がない』とのことらしい……うん、考えちゃダメ、考えちゃ。
宗次郎はもっぱらそれらの生物の協力を得て特訓を敢行するのだが、これがキツイのなんのって……
玉ちゃんの電撃アシスト(という名の愛の?鞭)と相まって宗次郎の心身を激しく苛め抜いていくのである。
特訓も今回で5回目となるが、中々どうして慣れないものである。
……果たして今回は無事、生き残れるのか…………
「ははは……嘘だろ?」
宗次郎のすぐ目の前に立ちはだかる、全長にして10mは有にあろうかと言うほどの巨大な生き物の姿がそこにあった。
『ふっふっふ。驚いた? 今日の対戦相手は、ジャジャ〜ン! ティラノザウルスで〜す‼︎』
「ガァァァァァァア‼︎‼︎‼︎」
「死ぬわぁぁぁぁぁぁあ‼︎」
襲い来るティラノザウルスから必死に逃げる宗次郎。
常に『縮地』を使用し続けているにも関わらず少しも引き離せないのは、ここのティラノザウルスが異常なのか、それとも自分がトロいのか……とにかく今、確実に言えることが一つだけある。
それは『このままでは確実に殺されてしまう』と言うことだ。
(このままだと僕の体力が先に尽きてしまう…! こうなったらやるしかない!)
絶壁に囲まれた袋小路に追いやられた宗次郎はピタリと足を止めて振り返る。
「ガァァァァァァア‼︎‼︎‼︎」
相変わらずティラノザウルスは、ヤ(殺)る気満々でコチラに向かって走ってくる。
互いの距離が5m…4m…3mと着実に狭まっていく。
『マズイわ、宗次郎! 避けて‼︎』
2m…
「はぁぁぁぁぁぁあ……」
1………0
「ハッ‼︎」
激しい地鳴りと共に巨大な岸壁が次々と崩れ去っていく。
しばらくしてようやく衝撃が収まり、砂煙が晴れると薄っすらではあるが、どういった様子なのか見えてきた。
そこには崩れた岩に押し潰されてぐったりしたティラノザウルスの姿があった。
では肝心の宗次郎はどうなったかと言うと……
『まったく…あんまり無茶しないでよね……宗次郎』
「あはははは……いやぁ悪い悪い。でも今回は上手くいったわけだし許してよ。ね?」
『うっ…も、もう! 今回だけよ⁉︎ まったくウインクは反則だっての…ブツブツブツ……』
どうにか事なきを得た宗次郎だが、いったいどのようにしてこのピンチを乗り切ったのか、それは偏に彼の持つ超人的なジャンプ力によるものだった。
「いやぁホント、玉ちゃん直伝の『震脚』がなければどうなっていたことやら……想像しただけでも震えが止まらないよ」
『ふふふ。そうでしょ、そうでしょ〜? せいぜい感謝なさい?』
「うん、もちろんだよ! でさ〜よかったらなんだけどまた何か新しい技教えてくれたりなんかしない〜?」
甘える様な猫なで声で迫る宗次郎。
今のところ宗次郎の使える技は全部で三つだ。
一つは、震脚。もう一つは、震脚を利用した二重の極み。そして『縮地』を使用した捨て身のタックルである。
いくら一つ一つの技が強力とは言え、この三つだけではこれから先、心許ないのは確かである。
故に宗次郎はいち早く新たな技の修得に励みたいと考えていた。
そしてそれを実現出来るのが、相棒の玉ちゃんなのである。
玉ちゃんはとても博識でこと修行と名の付くものに関して知らないことは皆無と言っていいほどなのだ。
「ね〜、玉ちゃ〜ん。お願〜い」
頬ずりしながら懇願する宗次郎。
『アウアウアウ…! わわわ、わかったから! わかったからとりあえず落ちつきなさい! 教える! ちゃんと教えるから‼︎』
照れからか真っ赤になって湯気を上げる玉ちゃん。
「ホント⁉︎ やったーーー‼︎ 」
『ふぅ…まったく調子いいんだから……』
「で? で? で? 今日は何を教えてくれるの⁉︎」
『そうね。じゃあ今日は『縮地』を利用したタックルの進化形…なんてどうかしら?』
「お〜〜。なんか凄そうだね!」
『もちろん威力はお墨付きよ。ただしマスターするには一朝一夕ではいかないわ。覚悟は出来てるかしら?』
「もちろんだよ! 」
『よし。じゃあまずは、軽く説明をするわ。
この技は『縮地』の進化形と言ったように『縮地』よりも更に早く動くことで全身を粒子と化してそのまま敵の身体を突き抜けるというものよ』
「なっ⁉︎ ……そんなことホントに可能なの?」
『えぇ、もちろんよ。実際にこの技を使っていた者も存在するしね』
「えぇ⁉︎ それっていったい誰なの⁉︎」
『菅下竜二。漫画D・N・A2. に登場する超能力者よ』
「超能力……」
『彼はテレポーテーションの速度を半分に減速することでそれを可能にしたわ。
アナタはその逆、『縮地』の倍早く動けばいいのよ』
「なるほど。確かに一朝一夕ではいかなそうだね。………でも」
『やり甲斐はある』そう言って満面の笑みを浮かべた宗次郎の眼差しは沈みゆく夕陽よりも紅く燃え上がっていた。
どうも。今日五日ぶりに食事(重湯)を取れて独り号泣したあずき@です。
今回はネギま名物『修行回』でした。
ネギまと言えば修行、修行と言えばネギまです。
このSSでもたぶんこれから先、修行シーンは割とよく出てきます。
まさに王道! まさにテンプレ!(笑)
……飽きられないようどうにか頑張って工夫していかなきゃなりませんね;
てなわけで今後ともよろしくお願いします!