瀬田宗次郎物語ー韋駄天と呼ばれた男ー   作:あずき@

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第3話

転生してから半年余りの歳月が過ぎた。

 

現在、僕は何をしているかというと簡単に言えば傭兵を兼ねた運び屋だ。

 

え? 傭兵はわかるけど運び屋ってのがいまいちピンと来ないって?

 

まぁ、簡単に言えば、誰もが忌避するような危険地帯(例えば近くにドラゴンがウロついていたりするような場所だとか、魔法生物がウジャウジャいたりとか)に注文一つで向かって行き、お預りの品をお届けする仕事だ。

 

ルールとしては、こちらからは決して運ぶ品や場所を選ばない決まりだ。それこそ人間だっていいし、砂の一粒だって構いやしない。

 

因みに今のところ一番多いのは、自分をどこどこまで無事に運んでくれ、といった類の注文だ。これが傭兵家業に繋がるというわけ。

 

こういった注文が増えた原因は、恐らく最近になって帝国サイドと連合国サイドがドンパチおっ始めたことからだろう。

 

嫌だ嫌だと言いつつも、こうも需要があると大戦も馬鹿に出来たもんじゃないなぁ、な〜んて思ったりする今日この頃。

 

……僕もだいぶこの世界に染まってきたなぁ〜。

 

 

 

 

 

「はいよ! お客さん。ご注文の目的地まで到着しましたよ」

 

「お〜、御苦労さん! いやぁ相変わらず早いね〜。

まぁ、そもそも人力車で砂漠を渡るなんて人間離れした芸当、宗ちゃんくらいしか出来ないけどさ」

 

「ははは。これでも一応、安全かつスピーディーに、がもっとうですから」

 

「流石だねぇ。ところで宗ちゃんは、もう少しここにいるのかい?」

 

「そうですね…まぁ今のところは、これと言った注文もありませんし、少しくらいゆっくりしていくのもありですかね〜」

 

「お〜、それなら今からアソコの酒場で一杯どうだい? 礼を兼ねて是非とも自慢の地酒を呑んでもらいてぇんだ!」

 

「……真っ昼間からですか?」

 

「がっはっは! 構いやしねぇよ! こんな御時世だ。少しくらいならお天道さんも許してくれらぁ」

 

酒場に入ると予想外にも中は、昼間にも関わらず満員御礼の大盛況だった。

 

ただし客層がかなり特殊でその見た目から判断するにどこぞの傭兵団か何かのように思われた。

 

「あ、そ〜れ。いっき! いっき! いっき!」

 

「がっはっは! いいゾ! いけいけー!」

 

「んく…んく…んく…ぶはぁ〜! どうよ‼︎」

 

酒らしきものを樽ごと一気に飲み干した筋骨粒々の大男が、周りから惜しみない拍手と「スゲ〜」「いいゾ!」「流石ラカンだ!」と言った称賛の声を受けている。

 

(ラカン⁉︎ てことは、これがあのチート無限のバグキャラか……)

 

宗次郎がマジマジと見つめていると突然ラカンが話しかけてきた。

 

「ん? お〜、兄ちゃんここらじゃ見ない顔だな。新入りか?」

 

「えっ⁉︎ あ〜、僕はその……「この兄ちゃんも傭兵だよ」ちょっ、おっちゃん⁈」

 

「おー! そうだったか! 人は見かけによらねぇなぁ。てっきりどこぞの貴族のお坊ちゃんかと思ったぜ」

 

「「「「「ギャハハハハハハハ」」」」」

 

「あははは………」

 

『むっか〜〜! ちょっとなによコイツら! バカにしちゃって。ムカつくわねぇ』

 

「まぁまぁ。実際この見た目だし仕方ないよ。それより今は早いとこの場から脱出することを考えよう」

 

「なぁ兄ちゃん。お前さんも傭兵の端くれなら腕には、そこそこ自信があるんだろ?」

 

「へ? まぁ、それなりには……」

 

「だったらよ。一つ俺と勝負しねぇか?」

 

そう言うとラカンはニヒルな笑みを浮かべた。

 

それに合わせて周囲のギャラリー達もやんややんやと囃し立てる。

 

「勝負……ですか?」

 

「そう。勝負だ。どうするよ?」

 

「…………わかりました。この勝負受けます」

 

その一言にギャラリーの盛り上がりが最高潮に達した。

 

『いけーーーー! 宗次郎ーーー! そんなヤツぎったんぎったんにのしちまえーーーッ‼︎』

 

玉ちゃん……

 

(やれやれ。厄介なことになってしまったぞ……)

 

「で、勝負の内容なんだが『腕相撲』なんてのはどうだ?」

 

「ふむ……いいでしょう。それで構いませんよ」

 

「因みにハンデとして俺は左腕一本に対してお前さんは「いらないですよ。そんなの」………へぇ。本当にいいのか? 後になって後悔するなよ?」

 

「こちらのセリフです。吠え面かかせてやりますよ」

 

一見、ニコニコしているがよく見ると顔面に濃い陰が指している宗次郎。こう見えてだいぶ『キて』いるようだ。

宗次郎とラカンの間に目に見えない火花が散る。

 

二人のあまりの気迫にいつの間にかギャラリー達も鎮まり返っていた。

 

(『そ、宗次郎。ブチギレちゃってるわ。どうしましょう……』)

 

当然、どうすることもできないまま、腕相撲対決は幕を開けた。

 

「いいか? 勝負は一回限りだ。レディゴーの合図と共に開始する。わかったな?」

 

「了解した。早く始めよう」

 

「よし。じゃあおっちゃん。掛け声頼む」

 

「あ、あぁわかった。それじゃあ両者、手を組んで………レディ〜……ゴーーッ‼︎」

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお‼︎‼︎‼︎」」

 

この時、この場にいる誰もが『ガンッ‼︎』というまるで何か鉄の塊みたいなものを打ち付けるような強烈な音を耳にした。

 

だが誰一人としてその音の発生原を見誤らない。何故なら今、店内は対戦中の二人を除いて皆、固唾を呑んで勝負の行方を見守っているからだ。

 

「グォォォォォォオ‼︎」

 

「ガァァァァァァア‼︎」

 

両者の腕はテーブルの中央からピクリとも動かない。

 

互いの力が拮抗したまま、数分が経過した。

 

「い、い加減、あき、らめ、やがれぇぇぇぇえ…!」

 

「そっち、の、ほ、う、こ、そぉーーーーッ!」

 

すると次の瞬間、バキッという乾いた音と共に二人の腕を支えていたテーブルが真っ二つに割れた。

 

「がっ‼︎」

 

「ごっ‼︎」

 

二人はその割れ目に吸い込まれるようにして地面へと落下していった。

 

砂埃が晴れると二人共、床の上に仰向けになって目を回していた。

 

「りょ、両者ドローーーー‼︎‼︎‼︎」

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」」」」」

 

「ぐっ…痛痛痛痛ぅ〜……はっ! 勝負は⁉︎」

 

慌てふためく宗次郎。

 

「ドローだとよ。そら捕まりな」

 

「あ……ありがとう」

 

すでに起き上がっていたラカンの手を取り立ち上がる宗次郎。

 

それからしばらく、互いに見つめ合っていたが突如、満面の笑みを浮かべて仲良く肩を組みだした。

 

「テメェこの野郎! やりやがるじゃねぇか‼︎」

 

「アンタの方こそな‼︎ ジャックラカン」

 

「ほ〜。俺のことを知っていたか! そんじゃあ俺もお前さんの名前を知っとく権利があるよなぁ」

 

「おうよ! 僕の名前は、瀬田宗次郎。運び屋兼傭兵だ!」

 

「運び屋の宗次郎…なるほど。どっかで聞いた名前だと思ったらそう言うことか! どうりでやるわけだ」

 

「あれ? 僕ってそんなに知られてるの?」

 

「ここいらじゃ有名人だぜ。どんな危険地帯でもその足二本で淘汰しちまうネジのぶっ飛んだクレイジーな野郎だってな」

 

「ははは…とんだ言われようだけど一切否定できないや」

 

「ま、とにかく今夜は飲もうや! な?」

 

「おう!」

 

『やれやれだわ…』

 

こうして宴の夜は老けていった。

 

 

 

 

 

 

夜半過ぎ、大量の人がひしめき合ってそこいらに寝転がっている中、ラカンだけがカウンターで一人酒を飲んでいた。その隣では宗次郎が酔い潰れて眠っている。

 

「全く可愛い顔してとんでもねぇ野郎だぜ。まさかこの俺様が絶対の自信を持つパワー対決で引けを取らねぇとはな」

 

そう独り言を呟くとグイッと酒を一気に飲み下し、それからそっと立ち上がると何の気なしにフラッと対決跡地に足を向けた。

 

そして彼はそれを見てしまった。

 

「なっ⁉︎ これは……」

 

そこにあったのは、床に空いた小さな二つの穴だった。

 

「なるほど。伊達に運び屋を語ってなかったってわけだ」

 

ラカンはニヤリと不敵な笑みを浮かべるとそのまま店の外へと消えていった。

 

「…………」

 

『どうやらバレちゃったみたいね?』

 

「うん。まぁいいさ。どちらにしろいつかはバレることだったし」

 

『ふふ。そうなの? 宗次郎の今の顔、だいぶ悔しそうだけど?』

 

「もう! からかわないでよね」

 

そういうとふて寝する宗次郎だった。

 

今回の勝負、実はカラクリがあった。

 

いくら宗次郎でもこの体格差では、とてもじゃないがラカンには適いっこない。そこで彼は自らの足を床に突き刺して体ごと固定したのだ。そうすることで踏ん張りが効いてラカンの馬鹿力にも対抗出来る…訳がないので床から更に奥、地面の深いところまで突き刺したのだが……まさかそれでも互角とは、宗次郎からしたら思いもよらないことだった。

 

実質、ラカンは大地と腕相撲をして引き分けた男ということになるのだ。

 

…とんだバグキャラである。

 

翌朝、二日酔いの鈍い頭の痛みと共に目を覚ました宗次郎は、店の外に出て大きく深呼吸をした。

 

「よう。よく寝れたか?」

 

「ん? あぁラカンか。早いんだな」

 

「俺様くらいになればたかだか一日寝ないくらいなんともねぇのよ」

 

「あんだけ飲んどいて元気だねぇ。おかげで僕は二日酔いだよ」

 

「おいおい。しっかりしてくれよ。そんなんでこれから先、俺の相棒が務まるのかい?」

 

「ん〜? まぁなんとかな……ゴメン。今なんて?」

 

「ん? だからあのくらいの酒で二日酔いなんて「そこじゃなくてその後!」…いや、そんなんで俺の相棒が務まるのかって…」

 

「ちょいちょいちょい! 相棒ってなんだよ⁉︎」

 

「へ? 俺とお前のことだろ? お前が運び屋で俺が付き添いの傭兵。俺たち二人で組みゃあ敵なしだぜ!」

 

(コイツ、マジか………でもまぁ…相棒か………そう悪くないかもな……)

 

「おい。どうした? 吐きそうなのか?」

 

「はぁ……お前のあまりの馬鹿さ加減に呆れてたんだよ」

 

「お? なんだオイ。 機嫌良さそうじゃねぇか!」

 

「うっせーよ。頭に響くだろーが。ったく……ま、今後ともよろしく頼むわ。『相棒』」

 

「! おうよ‼︎ 任せとけ‼︎」

 

これが宗次郎の新たなる旅の幕開けだった。




どうも。あずき@です。

たくさんの感想お待ちしています。

それではまた!
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