ラカンとコンビを組むようになってだいぶ仕事がやりやすくなった。
道中現れるモンスター共は放っておいても勝手にラカンが始末してくれるし、人力車じゃ明らかに定員オーバーな時には、ラカンの身体に直接、客を引っ付ければなんとかなった。
正直、ここまで役に立つとは思いもしなかった。
「お? どうした? なんか用か?」
「いいや。ただお前がやけに楽しそうにしてるから…それがなんとなく意外でな」
「楽しそう、か……そうだな。実際、かなり楽しいぜ! 今まで俺は傭兵稼業しかしてこなかったからこういう地道な力仕事は新鮮なわけよ!」
「へ〜、意外と性に合ってるんだな。いい拾いものしたわ〜」
「がっはっは! 当然だろ? なんてったってこの俺様だぜ? お前は宇宙一のラッキーボーイだぜ‼︎」
「ボーイ言うな。まったく…調子のいい奴め……」
『ちょっと2人共。目的地が見えてきたわよ?』
「あ、ホントだ」
「サンキュー。玉!」
『玉、言うな! 馬鹿ラカン‼︎』
「がっはっはっは‼︎ そんな電撃、効かんな〜! むしろ肩こりが取れて助かるくらいだぜ!」
『ムッキーーッ! チョー腹立つゥー‼︎ ちょっと宗次郎! この馬鹿になんとか言ってやってよ‼︎』
「まぁまぁ。ラカンも悪気はないんだし許してやってよ。ね?」
『な、なによ! ムキになった私が悪いって言うの⁈ そもそも宗次郎はラカンに甘過ぎよ!
はっ……も、もしかして…………ホモ?』
「ブーーーーーッ‼︎」
玉ちゃんの意外な一言に思わず噴出する宗次郎。
「んなわけないでしょ‼︎ 気持ち悪いこと言わないでよね!」
『だってその見た目だしぃ〜。それにこの前だって女装したりしてたじゃない』
「あ、あれは酔っ払ったお客が無理矢理、着せてきただけで僕は別に……」
「でも割と満更でもない感じだったよな?」
「ラカン! テメェ‼︎ 話をややこしくすんじゃねぇーッ‼︎」
『ほ〜ら、ヤッパリそうなんじゃない。正直に認めちゃいなさいよ。今ならまだ間に合うわよ?』
「間に合うってなにが⁉︎」
『いや、ほら。式とか披露宴の段取りとか』
「ふざけんなーーーーッ‼︎‼︎」
と、まぁこんな調子で結局、最後はいつも宗次郎が弄イジられて終わるのがお決まりのカタチなのだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
息も絶え絶えな宗次郎。
「それはともかくさっさと中に入ろうぜ? 中々デカイ街みてぇだし酒場も良さげだしな!」
『そうね〜。ホラ、いつまでもヘバってないで行くわよ?』
「ちょっ…2人共、待ってよ〜〜」
予定通り積荷を指定先に届け終えた一行は、その足で街酒場に直行した。
「邪魔するぜ〜」
ラカンが入店すると一瞬、客が静まり返ったが、間も無くして再び喧騒を取り戻した。
席に着くなりラカンはビールを樽で注文し、僕は適当にカクテルを頼んだ。
乾杯のコールの後、つまみなんかを飲み食いしていると突然、カウンター席の方から何やら揉めている声が聞こえてきた。
「テメェ! なんだこのカクテルはよぉ‼︎ こんなドス黒い液体が飲めるかァ‼︎」
「そ、それは当店自慢の一品でございまして。我がウェスペルタティア王国原産の果実を使用した特別なカクテルでーーー」
「んなこたぁどうだっていいんだよ! とにかく俺はまともな酒を飲みてぇんだ‼︎ わかったか‼︎」
「わかってねぇのはお前の方だろーが」
「あぁん? なんだアンタ? 店の関係者か?」
「いんや。ただの酔っ払いだ」
「なら引っ込んでな!」
「そうはいかねぇなぁ〜。このままアンタを放置してたらせっかくの美味い酒が不味くなっちまう」
「あんだと〜〜?」
一触即発の雰囲気を醸し出す両名。そこに慌てて宗次郎が割って入る。
「おい! やめとけ! ラカン」
「! チッ! わ〜ったよ」
「あ〜〜? なんだテメェもこのデカブツの仲間か? おぉ?」
「えぇ、まぁ似たようなものです。すいませんね。すぐに席に戻りますんで」
「ちょいと待ちな」
「はい?」
「こちとら言われのない因縁付けられて最悪の気分な訳よ。そこで、だ。兄ちゃん、テメェがそのデカブツの代わりに責任取れや」
「 テメェ…調子乗ってんじゃ「ラカン!」…クソッ‼︎」
「分かりました…僕で良ければ責任取らせて頂きます」
「よし。じゃあこっち向いてくれ」
男はニタニタとイヤラしい笑みを浮かべて指図する。
「これでいいですか?」
「あぁ。バッチリーーーだッ‼︎」
「ガハッ!」
男におもいっきり顔面をぶん殴られる宗次郎。
「ッ‼︎ 宗次郎⁉︎ このクソッタレェェェェエッ‼︎‼︎‼︎」
ラカンは男の胸倉を掴み一気に持ち上げる。
「ぐっ…く…く……! はっ、離せッ‼︎ このデカブツ‼︎」
「テメェだけは許さねェ…その汚ねェ面、一旦グシャグシャにしてリサイクルに出してやるッ‼︎」
「ひっ⁉︎ だだだ、誰かッ! 誰か助けてくれェーーーーッ‼︎」
「へっ…誰がテメェなんかを「おい」あぁ?」
ラカンが振り返るとそこには、見覚えのない赤髪の青年が立っていた。
「? 用なら後にしてくれないか? 俺は今、忙しいんだよ」
「そうはいかねぇなぁ〜。いいから大人しくその手を離しな。でないと……」
「でないと? なんだよ」
青年はクッと片側の口角を吊り上げて不敵な笑みを見せる。
「ブン殴る!」
「ッ‼︎ ゴッ⁉︎」
とてもその見た目通りの青年が放ったとは思えない程、強力なパンチがラカンを店の外まで勢いよく吹き飛ばした。
ラカンの手から解放された男は、尻餅を付いていた。
「おい。アンタ。大丈夫か?」
「ひっ……ヒィィィィィィィ‼︎‼︎」
「あっ! おい! ……行っちまった」
「オイッ!」
「ん? ガッ⁉︎」
「よくもやってくれたな。お返しだ」
今度はラカンの右フックが青年を吹き飛ばした。
青年は店の壁を突き抜けてそのまま次々と隣りの店からそのまた隣りの店へと飛んでいき、最終的には外へと放り出された。
野生的な笑みを浮かべたラカンは、獣の如き勢いで青年を追いかけていった。
外では既に多くのギャラリーが青年を取り囲むようにして佇んでいる。
「い、痛痛痛痛………はっ⁉︎」
「ウォォォォォオ‼︎ ラカンッ‼︎! インパクトーーーーーーーーッ‼︎‼︎‼︎」
「ハァァァァァア‼︎ くらえッ‼︎! 千の雷ッ‼︎‼︎‼︎」
二つの凄まじいエネルギーがぶつかり合い、やがて一つの大きな熱の塊となった。
その塊は大地を大きく抉りながら地中深くに潜っていった。
でっかく空いた空洞を挟んで向かい合う両名は共にボロボロの状態になっていた。
それでも互いに笑っている様は異常の一言に尽きる。
「お前やるな〜。名前はなんてぇんだ?」
「ナギ。ナギ=スプリングフィールド。そういうアンタは?」
「俺様はラカン。ジャック=ラカンだ!」
「そうか。……じゃあ自己紹介も終わったことだし、な?」
「あぁ!」
「「続き、おっ始めっかッ‼︎‼︎」」
両者の戦いが再び火蓋を切った。
一方その頃、宗次郎はというと……
「いやぁわざわざすいませんねぇ〜。後片付けの手伝いなんてさせちゃって」
「いえいえ。こちらこそウチの者が本当に申し訳ない」
「そんな! 元はと言えばウチの馬鹿がーーー」
「それを言ったらウチの馬鹿の方がーーー」
ナギの連れを名乗る三人組の一人、近衛詠春と荒れ果てた店内を掃除していた。
その後、弁償に関して後に分割で支払うことを彼らーーー赤き翼の名で約束しどうにか事なきを得た。
ひたすら感謝の意を唱える宗次郎だったが「どうせ謝るならいっそ赤き翼に入って堂々と恩を返してはどうでしょう?」という突拍子もない提案を無理矢理飲まされるカタチと相成った。
(損得勘定はいけないことだけど……なんか理不尽な気がするのは気のせいか?)
「そんなに心配しなくても直に慣れますよ」
「いや、そういうことではなくてですね? イマさん」
「むむむ⁉︎ 今なんと言いました⁉︎」
「へ? えーっと…そういうことではなくてですね。イマさん、と「それそれ‼︎」…はい?」
「そのイマさんという響き……最高です! 実に甘美!」
「はぁ……そうですか」
(アルってこんなキャラだっけ?)
訝しむ宗次郎。
「あ〜、しかもこんなに可愛いい男の娘にアダ名で呼ばれるなんて…テンション上がってキターーーー‼︎‼︎」
……この発言は聞かなかったことにする宗次郎だった。
「すまんのう。ウチのアホ共が迷惑をかけてしまって」
「あ、いえそんなことは…」
(彼がゼクト……ナギの師匠か)
「ところでお主が今、首に紐で巻き付けている宝玉は魔法球かなにかか?
思うにかなり希少な品とお見受けするが……」
「あ〜、これは『流石! お目が高い‼︎』…もう慣れたよ………」
「なんと! 魔法球が喋りおった‼︎」
『フフン。ま〜私くらい《希少》ともなれば当然よね〜』
(うわ〜……)
「ふ〜む…こいつはなんとも研究しがいがありそうじゃの〜」
(………なんか今、物騒なセリフが聞こえた気が………)
「これからよろしくの!」
『えぇ。もちろん!』
「『わーっはっはっはっは』」
いったい自分がゼクトからどのように思われているか露知らず高らかに笑う玉ちゃんなのであった。
「不安だ………」
その後、ボロボロの状態で肩を組んで現れたラカンとナギが合流し、改めて自己紹介をした宗次郎と五人と一個は、簡単な決意表明をしてから酒を酌み交わした。
こうして『新生•赤き翼』が誕生するに相成った。
どうも。あずき@です。
私事ですがやっとこさ……やっとこさ明後日退院が決まりました! ヒャッホーーーーイ‼︎
テンション上がって更新速度が予定より早まってるぜェ〜! ………これはマズイことだぜェ〜……