アイ(愛)を求めて   作:頭お菓子いエクレア

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進路

 

 アクアとルビーがやってきて一週間程経ったある日の高校からのバイト先へ向かっている道の途中、俺は担任の先生に言われた事を考えていた。

 

「進路、かぁ・・・。」

 

高校二年になり、担任からは「漠然でも良いから自分の進路は決めておきなさい。」とHRの時に言われた。周りの反応は、すでに決めている者、俺と同じく決められていない者、ふざけた事言っているものとそれぞれだった。

 

 正直、二年後の進路、将来の事なんてまともに考えたことなかった。高校受験は星野に会えるかもなんて淡い期待で高校を決めていた。結果的に星野に再開出来たから良かったものの、もしあの日の夜に再開できていなかったとしたら、ゾッとする。考えが少々脱線してしまったので、本来考えるべきことを再び考える。

 

 将来やりたいことなどは正直言ってしまえば無いに等しい。というより今はアクアとルビーのお世話や星野の事を支える事がやりたいことだと思っているので、これ以上何かをしたいというのは特にない。

 

 目標という考え方をすれば、星野と約束した競争の内容、「愛」とは何かを知ることだ。だが、これは担任の先生の言う進路には当てはまらない。  

 

そう考えると俺は一体将来何になりたいんだろう・・?

そんなことを考えながらバイト先への道を歩いていくのだった。

 

 

 

 歩みを止めなければ当然目的地に着くわけで、俺は将来のことを決められないままバイト先に着いた。

 

「おはようございます。」

 

と俺は扉を開けながら中に入る。

 

「おお天城、おはよう。すまないが今日は話があるから、支度が整ったらここに来てくれ。」

 

 と火野社長に言われ、少し急いで更衣室に向かい作業着に着替え、火野社長の元に戻ってくる。

 

「お待たせしました。」

 

「早かったな天城、それじゃあ話をしようか。」

 

そう言って、火野社長は俺を応接用の椅子に座らせる。

 

「まぁそんなに重要な話ではないから、緊張する必要はないよ。苺プロダクションの社長、斉藤壱護さんを知っているかい?」

 

「はい。」

 

「その斉藤さんから君を指名して長期的な依頼が入ってねぇ。会社としては仕事の依頼だから構わないのだけど、君の了承もなしに決めるわけにもいかないからね。

どうだい?この依頼受けるかい?」

 

きっとこの依頼内容はアクアとルビーの事だろう。だが何故今更俺のバイト先に依頼という形を取ることにしたのかはわからない。だが、斉藤社長にも何か事情があるのだろうという考えと、今までと特にすることは変わらないだろうと思い、素直に依頼を受けることにした。

 

「はい、受けます。」

 

「そうか、それはよかった。それじゃ後の細かい事は私がやっておくから、明日からよろしく頼むよ。今日は買い物代行だったかな?」

 

「はい。なので自転車お借りしていきますね。」

 

「あぁ、気を付けて頼むよ。」

 

「はい、行ってきます。」

 

そう言って斉藤社長の依頼を快諾した後、俺は今日の業務内容の買い物代行に向かう。

 

 買い物代行は自動車運転免許の返納した人や怪我人などの人の為に行っている業務だ。先に依頼人の住所に向かい、購入物の確認及び購入物に必要な資金をお借りして買い物を行い、再び購入物を届けるために依頼主の元に向かう。

ようは子供のおつかいだ。だが一日に十数回の依頼をこなすので体力を結構消費する。近場の依頼なら特に重労働ではないのだが、大量の荷物を載せたまま坂を上ったりする作業を数十往復するのも珍しくはない。が、慣れや体力がつけば特に難なくこなすことも造作ではない。

 

 数時間後、今日の依頼をこなした俺は最後に今日使った自転車の空気入れをして、仕事を終わらせる。

 

「お疲れさまでしたー。」

 

「おう、お疲れさん。」

 

 火野社長から労いの言葉をもらい、俺は帰宅するため、帰路に就いた。

 

星野も遅くまで仕事らしく、アクアとルビーの今日のお世話はミヤコさん一人でしているとのことなので、少し心配だった俺は急ぎ足で星野の部屋に向かうことにした。

十数分後、星野の部屋に着いた俺はリビングに入る。

 

「フーン♪フフーン♪イケメンと再婚~~~♪♪」

 

ミヤコさんが何か不吉なことを口ずさみながら上機嫌に家事をしていた。

 

「あら、天城君こんばんわ♪」

 

「こんばんわ・・。」

 

今のは一応見なかったことにしておこう・・・・。

 

「ただいま~。」

 

「戻ったぞー。」

 

ちょうどその時、星野と斉藤社長も帰ってきた。

 

「お、天城、丁度よかった。話がある。」

 

「わかりました。すまん星野、少し斉藤社長と話があるから、晩御飯少し遅れる。」

 

「うん、大丈夫だよ~。」

 

星野にそう言って俺と斉藤社長は俺の部屋に行き、リビングのテーブルに対面するように座る。

 

「悪いな急に。」

 

「いえ、今日バイト先に話が来ていましたから、何となくそうなるとは思ってました。」

 

「そうか。なら話は早い、まずはこれを見てくれ。」

 

そう言い渡されたのは一枚の紙、折りたたまれた紙を開けばそこに書いてあるのはDNAの鑑定の結果だ。以前話していた。斉藤社長による俺とアクアとルビーの親子関係が無い事を証明する為に、星野達には内緒で鑑定してもらっていたものだ。

 

 

その結果は、

 

当然、関係を否定する結果だった。

 

 

「これでアイとお前の間には何もなかったと証明できたわけだが、」

 

「他に何か気になることがあるんですか?」

 

「いや、そうじゃない。天城もさっき言っていたが、天城のバイト先にお前を指名した依頼があっただろう。」

 

「はい。」

 

「あれの依頼内容はな、今まで通りアイの生活のサポートとアクアとルビーの世話をしてほしい。」

 

「それは全然構わないんですけど、何でバイト先に依頼する必要があったんですか?」

 

「それはだな天城、お前にはアクアとルビーの世話を集中してほしい事と、それに対する報酬を受け取ってもらうためだ。」

 

「報酬・・・つまりは口止め料を含んでるってことですか?」

 

「端的に言えばそうだ。」

 

「別にそんなの無くたって協力しますよ。」

 

「お前ならそういうと思ってたよ。だがな、この件に関してはアイ、苺プロの信用問題に関わっているんだ、汚い大人のやり方で悪いが、この報酬は受け取って責任を負ってほしい。」

 

と頭を下げられる。

 

「・・・・わかりました。この報酬はアルバイト代として受け取らさせていただきます。」

 

「すまない天城、恩に着る。」

 

「これで俺も運命共同体ってわけですね。」

 

「そういうことになるな。」

 

「それでは早速仕事してきますね。」

 

「? 何か頼んだか?」

 

「何って、星野の晩御飯作りに行くんですよ。そろそろおなか減らして限界だと思いますし。」

 

「そうか。じゃあアイの事、これからもよろしく頼むな。」

 

「はいっ!任せてください!」

 

そう言って俺は星野の部屋に向かおうとすると斉藤社長に呼び止められた。

 

「ああ、そうだ天城、まだもう一つ話があるのを忘れてた。」

 

「何ですか?」

 

俺は足を止め、斉藤社長のいる方向に向きなおす。

 

「アイドルマネージャーに興味はないか?」

 

「アイドルマネージャーですか?」

 

「ああ簡単に言えばアイドルの管理やサポートをする仕事だ。」

 

「何となくイメージはできますが、なんで俺にそんなことを聞くんですか?」

 

「さっき話したことにも繋がっている事と言うのもあるが、ウチは弱小の芸プロ、人手も多いほうじゃない。アイがこれから売れていくってのも考えたら人手はもっと必要になる。そう考えたときにアクアとルビーの事で融通の利きそうな人材の候補に挙がったのがお前だ、天城。」

 

「でも俺、知識とか何もないですよ?」

 

「そんなのはやっていくうちに身に着けていくものだ、だから最初は俺やミヤコの元で経験を積んでもらう予定だ。それにアイからの信頼も厚いだろうしな、最終的にはアイの専属マネージャーになってもらうとも考えている。」

 

「星野の専属マネージャー・・・。」

 

その言葉には妙にしっくりくるものがあった。

 

「何も今すぐに答えを出す必要はない。天城にも目指したい自分の道があるのであればそちらの道に進んでもらっても構わない。あくまで一つの可能性としての選択肢をお前に預けたいと思ったまでだ。」

 

深く考える俺に斉藤社長は続ける。

 

「もしよかったら今度のB小町のミニライブに俺のサポート役として付いて来てみるか?少しはどんな仕事か体験してみれば、考えやすいだろう。」

 

「わかりました。お供させていただきます。」

 

こうして俺は本格的に星野達と命運を共にする事となり、

自分の進路について考える機会が与えられた。

 

 

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