アイ(愛)を求めて   作:頭お菓子いエクレア

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嘘吐きだとしても・・・

 

「アイ、そろそろ放してくれないか?」

 

「やだっ!」

 

 さっき帰ってきたアイが俺のことを心配してくれたのは嬉しい。

それが行動として俺を抱きしめてくれるのも嬉しい。

だが、さっきからずっとミヤコさんが見てるんだよなぁ・・。すごくニヤニヤとした顔してるし。五分間もこのままだし、どうしようか?

 

 アイの為に一応黙ってるけど、ミヤコさんがずっと見ていることをアイに教えたらどういう反応を示すのだろう。少し興味がわいてきた。

そんな邪な考えが頭に浮かんだとき、再び、玄関の扉が開かれた音がした。多分、いや、間違いなく斉藤社長だろう。

 

「ほら、社長が帰ってきたよ。放してくれないとややこしいことになるから、一旦放そうぜ。な?」

 

「や~~だぁ~~!!」

 

ええい、なんで今日に限ってアイはこんなに我儘なんだ?

 

「しょうがないわね。私があの人を何とかしてそのまま連れて帰るから、後の事は任せるわよ、天城君。」

 

「すみません。ありがとうございます。」

 

「別にいいわよ、イイもの見せてもらったし。ねぇ?アイさん。」

 

するとアイが身を震わせた。

今更気づいても遅いぞ。アイ。

 

「それじゃ、おやすみ二人とも。」

 

「おやすみなさい。」

 

 そう言ってミヤコさんは俺がアイの相手をしているうちにまとめた荷物を持って、帰っていった。途中によく聞こえなかったが、ミヤコさんが斉藤社長と何か話し合いをして、玄関に向かっていったようだ。

 

玄関の扉が閉まった音がした後、

 

「・・・将也君、ミヤコさんいつからいたの?」

 

アイが俺に抱き着いたまま質問してきた。

 

「・・・最初から。」

 

「嘘~~~・・・。」

 

「ホント。」

 

「どうしよ~~・・。」

 

「ミヤコさんは何かもういろいろ気づいてるみたいに言ってたぞ。」

 

「ええぇ・・・。」

 

「まぁ、俺も少し言われたよ。」

 

「すごいね、ミヤコさんは・・。」

 

「そりゃあ俺たちより大人だからな。さ、晩御飯食べようぜ。」

 

「うん。あ、そうだ。今日は私も手伝うよ。」

 

「助かるよ。」

 

ご飯の支度をするといったら、アイは手を放して俺から離れた。

 

「それじゃあ、私はお皿の用意しちゃうね。」

 

「ああ、頼むよ。」

 

二人でキッチンに立つ。そんなシチュエーションがなんだか恋人同士っぽいな・・・っていやいや、何を考えているんだ俺は。

でも・・・、都合のいいように考えたってもいい。ミヤコさんのアドバイスが頭の中に浮かぶ。

 

もしかしたらそういう可能性もあるのかな?

なんて思っていると、

 

「将也君、どうしたの?」

 

「ん?ああ、ちょっと考え事をな。」

 

「へぇ~、何考えてたの?」

 

俺はアイが用意してくれたお皿に晩御飯を盛りつけながら答える。

 

「今日、ミヤコさんに言われたことなんだけどな。俺はもう少し自分に都合のいいように考えてもいいじゃないかって。寂しい考え方に囚われなくたっていいって。」

 

「あ~。将也君にはもう少し欲張りになってほしい所あるな~。」

 

「え、アイもそう思ってたのか?」

 

「まぁね~。」

 

「そうなのか。・・・よしっ、完成したぞ!」

 

「待ってました!」

 

完成した晩御飯をテーブルの上に配膳していき、二人で晩御飯をいただくことにする。

 

「それじゃ、アイ。今日はドーム公演お疲れ様。」

 

「将也君も私の事守ってくれてありがと。」

 

二人で今日の出来事を称えて、食事を始めたが、お互いに相当おなかが減っていたのか、食事はあっという間に終わった。

 

「アイ、先に風呂に入ってきな、俺は先に片付けするから。」

 

「うん、わかった。将也君は今日お風呂どうするの?」

 

「縫合したばっかだからな。シャワーだけにするつもりだよ。」

 

「そっかぁ大変そうだね、だったら私が体洗うの手伝ってあげるよ。」

 

「それくらい出来るから結構だ。」

 

「遠慮しなくたっていいんだよ。」

 

「遠慮じゃなくて恥ずかしいんだよ。」

 

「ふ~~ん。じゃあ先にお風呂頂くね。」

 

「おう。」

 

 そして俺はアイが入浴している間に、晩御飯の片づけをしていく。

 

 

三、四十分位経った後、アイがお風呂から上がってきた。

 

「ふぅ~~。さっぱりした~~~。」

 

「おかえり、そういえば今日はアクアとルビーが仮眠室で寝てるけど、アイは同じ部屋に寝ていくか?」

 

「うん、そうさせてもらうね。あ、そうだあの子たちの着替えを用意しなきゃだから一旦私の部屋に行かないと・・・。」

 

「それじゃあ俺も一緒に取りに行くよ。」

 

「え?大丈夫だよ。スグそこだもん。」

 

「今日のこともあるから一応安全のためにな。」

 

「そう・・だね。だったらお願いしようかな。」

 

その後、俺とアイはアイの部屋に三人の着替えを取りに行った。

 

「アイ、もう準備出来たか?」

 

「うん。ばっちりだよ。」

 

「じゃあ戻るか。」

 

 俺とアイは二人で用意したというのもあり、五分もかからずに三人の着替えを用意することが出来た。

その後はアイの部屋の戸締りを再確認して、玄関の鍵を閉めて二人で俺の部屋に戻ることにする。

 

「あ、間に合わなかったか。」

 

「残念だね。」

 

俺とアイがアイの部屋に来るときに使ったエレベーターが一階にまで下りてしまっていた。

そのまま最上階にとどまってくれてれば少し楽に移動できたのにな。なんて思ったが、

 

「二階分降りるだけだし、階段で行くか。」

 

「そうだね、そのほうが早いよ。」

 

そして俺とアイはエレベーターの近くにある階段を使って、俺の部屋に向かう。

俺とアイが俺の部屋のある階に到着すると今度はエレベーターが最上階に止まっているようだった。

入れ違いになったのか。なんて思いつつ、俺とアイは俺の部屋に戻っていった。

 

「それじゃあ今日はもう疲れてるはずだから、早く寝ろよ。明日はオフだから寝坊しても構わないぞ。」

 

「やったね。それじゃあおやすみ~。」

 

「おう、おやすみ。」

 

それじゃあ、俺も早くシャワー浴びて寝ますか。

脱衣所に向かい、服を脱いで、風呂場に入り、俺は縫合した手が濡れないように気を付けながらシャワーを浴びていく。

 

頭髪と洗顔なら片手で十分だったが体の一部、背中だけはどうにも洗いにくい。

まぁ怪我が治るまでは軽く洗う程度でいいか。

なんて思っていると、

 

「お邪魔しま~す!」

 

アイが風呂場の扉を勢いよく開いて入ってきた。

 

「は?おまっ、入ってくるなって・・」

 

「恥ずかしいとは聞いたけど、入ってくるなとは聞いてないよ~♪」

 

「それはただの揚げ足取りじゃないかっ!!」

 

「将也君、静かにしなきゃ。ご近所迷惑になるよ。」

 

「誰のせいだよ・・・。」

 

俺は項垂れた。

 

「ちょうどいいタイミングだったみたいだね。それじゃ早速体洗ってあげるね♪」

 

アイはそういうと俺からボディソープで泡立ててあるボディタオルを取る。

 

ここまで来たらしょうがない、俺は項垂れたまま、

 

「わかった・・・任せるよ。」

 

「よしきた! あ、水着着てるからこっち見ても平気だよ。」

 

「それはいいから、早く頼む。」

 

恥ずかしさでどうかなりそうだ。

 

「は~い。」

 

そういってアイは俺の首や肩、脇、背中と腰を入念に丁寧に洗ってくれた。

 

「流すよ~。」

 

「おう。」

 

最後にシャワーで洗った部分と泡をきれいに流して終わる。

 

「ありがとう、助かったよ、アイ。」

 

「どういたしまして。」

 

その言葉を聞いた後、俺とアイの間に沈黙が流れる。

 

「・・・アイ?先に出てってくれないと俺が動けなッ・・・。」

 

 俺が声をかけようとしたとき、アイは俺の後ろに抱き着いてきた。

抱き着かれたことなら何回かあった。だから抱き着かれること自体は問題じゃない。

 

アイは今、水着姿で、俺は裸だ。

 

つまり、その、あれだ。いつもより肌が直に触れているのが問題だ。

そのせいか、今までにないくらい心臓の音が高鳴っているのが自分でもわかるくらいにうるさい。

そしてなんというか、うん。

 

 

ものすごく・・柔らかいです。

 

 

 

じゃなくてっ!!

 

「あの・・・アイ。何してるんだ?」

俺は何とか声を振り絞り、アイに今の状況について説明してもらおうとする。

「あのね・・・聞いてほしいことがあるんだ。」

 

「聞いてほしいこと?」

 

「うん・・・私、すごく嘘吐きなんだ。」

 

「嘘吐き・・・そうか?」

 

「うん。たくさん嘘を吐いてきた。将也君や皆、ファンの人たち、私自身にも、何度も何度も嘘を吐いてきたんだ。」

 

最初はいつもの悪ふざけか何かかと思ったが、アイの声色はいつもの明るい声ではなく、真剣な声色だった。

 

「・・どんな嘘を吐いてきたんだ?」

 

「ファンの皆には愛してるって嘘を吐いた。」

 

「うん。」

 

「将也君には子供の頃に沢山嘘吐いて、振り回して、困らせちゃったりした。」

 

「別に今は怒ってないし、いい思い出だと思ってるよ。」

 

「私自身、嘘を吐き続けたから、自分の本心や何が嘘なのかわからなくなった。」

 

「・・・そうか。」

 

「でもね。社長にスカウトされた時に、言われたんだ。愛してるって言ってる内に嘘が本当になるかもって。」

 

「もしかして約束の時に言ってた必勝法って・・。」

 

「うん。そうだよ。」

 

「どうだった?必勝法は。」

 

「逆に怖くなっちゃった。愛してるって伝えたときに嘘だったって思うと・・・。」

 

「そうか・・。」

 

確かにそれは怖い。口にしたときに嘘だった。偽物だと気づいてしまったら、そう思うと自分が壊れてしまいそうな気持ちになる。でも、

 

「でも、嘘だったとしても、伝えられる機会は一度じゃないはずだと思う。何度も伝えてもいいと思う。本物になるまで何度も何度も言ったって良い。」

 

「そんなの都合がよすぎるよ・・・。」

 

「俺はそれでいいって教えてもらった。そのおかげで俺は自分の気持ちに気付けた。」

 

「そうなんだ・・。」

 

「それに・・。」

 

「それに?」

 

「アイが今までずっと嘘ついてきたとしても、俺が今まで一緒にいたアイに寄せる思いは嘘じゃない。だから・・・えっと・・・・その・・・なんだ。うまく言葉にできないな。何というか、

 

俺はアイが嘘吐きだとしても、

 

俺はアイの事は嫌いにはならない。

 

俺は嘘を含めたアイに惹かれてる。

 

だから、嘘が悪いことだけみたいに思わなくてもいいんじゃないか?」

 

「・・・・・そっか。嘘って悪いことだけじゃないんだ。」

 

「ああ。だから今すぐに嘘を吐くのはやめなくてもいい。今まで通り、本当になるまで嘘を吐いたっていい。アイが自分の本心がわかる時まで俺がアイの嘘を全部受け止める。」

 

「いつまで続くかわからないよ?」

 

「任せとけ。」

 

「・・ありがとう、将也君。」

 

アイはしばらく俺に力強く抱き着いていた。

 

「ところでさっき私に惹かれるって言った?」

 

「ああ、言ったよ。」

 

「それはlike的なやつ?それともlove?」

 

「・・・内緒だ。」

 

「え~~~教えてよ~~。」

 

俺は黙ったまま答えない。言えるかこの状況でloveですなんて。俺は今裸なんだぞ。

 

「はっくしょんっ!!」

 

風呂場の温かい空気の中にいるとはいえ、裸ということ思い出したら少し冷えてきたようだ。

 

「あ、ごめん。そろそろ上がろっか。」

 

「ああ、先に出てくれ。」

 

「? 一緒に上がろうよ。」

 

「俺は今裸なんだぞ?!」

 

アイに背を向けた状態だったから大事な部分を隠せてたけど、一緒に出たら丸見えになってしまうじゃないか!

 

「私は気にしないよ?」

 

「気にしてください。」

 

「あははは。そうだね、それじゃ先に上がるね。」

 

「おう。」

 

俺は待ってる間、少し冷えた体をシャワーで温めなおすことにした。

 

「将也君、おまたせ。話聞いてくれてありがとね。おかげで気持ちが楽になった気がするよ。」

 

「なら良かったよ。」

 

「うん、じゃあ今度こそ、本当におやすみ。」

 

「ああ、おやすみ。」

 

 そういった後、俺も風呂から上がり、寝間着に着替え、自室の布団の中に潜り込む。

 

 今日は本当に色んなことがあった。早朝にナイフで襲われ、昼頃には治療の後に、事情聴取。その前にはミヤコさんに恋愛相談みたいな事をしてもらった。

 

おかげで俺はアイに惚れてるとわかった。

 

その後はずっとアイに抱き着かれたまんまだったり、風呂場で背中を流してもらったり、・・・アイが、自分の事を嘘つきだと教えてくれた事。

 

そのせいか、眠気を感じることなく俺はすぐに深い眠りにつくことができた。

 

 

 




エレベーター使ったやつは誰なんすかね?(すっとぼけ)
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