アイ(愛)を求めて   作:頭お菓子いエクレア

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戻ってきた日々、決めた二人

 

俺とアイが斉藤社長とミヤコさんの家に保護を求めた日、いや、彼が亡くなった日から一か月が経とうとしていた。

 

彼のことを知ったのは亡くなった日の当日の午後、仕事中に掛かってきた警察からの電話だった。それを聞いた俺は安堵感を得ると同時に消化不良な気持ちがあった。それはきっとアイもそうだろう。

 

この事はニュースでも取り上げられた。だが、アイの悪質なストーカーとしてではなく、哀れな交通事故の被害者としてだ。あの日何故彼はあそこで倒れていたのか?運転手は気付くことが出来なかったのか?など色々な人がニュースに出演していたコメンテーターや専門家が議論していたが、結局のところ運転するときは周囲に気を配らなければならないの一言で片づけられていた。

 

そしてこの話題のニュースは事故発生の日から二日で消えた。

 

 アクアとルビーにはあの日何があったかという説明はストーカーに襲われたとしか言ってない。実の父親が母親のアイを襲いに来たと言ってもショックを与えるだけかもしれないと思った俺達は、もう少しアクアとルビーが大きくなって父親のことを知りたがったら教えてあげようと決めた。

 

不幸中の幸いというべきか年末年始は特番が多いこともあってか俺とアイは仕事に没頭することであの日のことを考えずにいられる時間が十分にあった。

 

それでも仕事が終わると俺は考えてしまう。何であんなことになってしまったのだろう。と。

 

アイを守るときに深く傷付いた手の平は確実に治って傷跡は消えていくのに、

 

心の中のぬぐい切れない思いは消えることはかった。

 

 ある日、俺とアイはテレビの収録を終え、自宅のマンションの俺の部屋に帰ってきた時、俺のスマホに一本の電話が入る。ミヤコさんからだ。確か今日からアクアが出演する映画の撮影をしに県外まで行っている。なんでも前に出演した映画の監督さんにえらく気に入られたらしく、またアクアに出演してほしいとのことだ。ちなみにルビーもミヤコさんの子供として同行している。

 

「あ、もしもし。天城君?今日そっちに帰れそうにないのよ。」

 

「え?どうかしたんですか?」

 

「撮影中に天気が急に悪くなってね、こっちは猛吹雪よ。」

 

「マジですか。」

 

俺は通話しながらテレビをつけ、ニュース番組にチャンネルを変えると確かにミヤコさん達がいる地方が急な猛吹雪と報道していた。

 

「アクアとルビーは大丈夫ですか?」

 

「ええ、撮影スタッフの人たちがホテルを手配してくれたから、立ち往生にはならなくて済みそうよ。今はそのホテルにいるわ。」

 

「そうですか。」

 

急なことでびっくりしたが、それなら安心だ。

 

「一応社長には私から連絡を入れるからその辺は心配しなくていいわ。それでねアクアとルビーがアイさんに代わってって言ってるの。代わってもらえるかしら。」

 

「了解です。」

 

俺は通話状態のままスマホを持ちながらアイのいる仮眠室に行き、ドアをノックをする。

 

「アイ、ちょっといいか。」

 

「はーい。」

 

すぐに返事が聞こえ、ドアが開かれる。

 

「どうしたの?」

 

「電話。今日ミヤコさん達が帰って来られないみたいでな。アクアとルビーが話したいってさ。」

 

「ええっ?!そうなの?!!」

 

そう言って驚いたアイは、俺からスマホを受け取って、話しかけた。

 

「もしもし!アクア!ルビー!大丈夫?!・・・・・・・・うん・・・う

ん・・・・・・そう、よかった。」

 

アクアとルビーの無事を本人たちから聞いたらしく、アイは一安心していた。

俺はその場を無言で立ち去り、キッチンに向かい、晩御飯の材料を二人分に減らして、調理を始めた。

テレビをつけたままだったので先程の大雪のニュースの続きも確認しておく。どうやら一時的な大雪らしく、明日の午後には天気は良くなるそうだ。

そうなると明日の夜にはミヤコさん達は帰ってこられそうだな。

 

そう思っていたらニュースは次の話題になっていて、その内容に興味がわかなった俺は調理に集中することにした。

 

しばらくして、晩御飯が完成間近となった頃、廊下につながるリビングの扉が開かれ、アイが俺のスマホを持って入ってきた。

 

「ごめんね、将也君。つい二人と長話しちゃって・・・。」

 

アイは少し申し訳なさそうにしながら俺にスマホを返してくれた。

 

「急に帰ってこられなくなったってことだし、しょうがないよ。 さ、ご飯食べようぜ。丁度完成するところだったんだ。」

 

「そうなんだ。タイミングばっちりだったね♪」

 

そう言ったアイはテーブルに着いた。

俺は完成した晩御飯の盛り付けを手早く済ませ、テーブルの上に運んでいく。

料理を並べ終えた俺もテーブルに着き、二人で晩御飯をいただくことにする。

数十分後、晩御飯を食べ終えたアイが俺に提案してくる。

 

「ねぇ将也君、今日ここに泊まってっていい?」

 

「ん?どうしたんだ急に?」

 

「え・・・っと、ちょっとお話したいことがあるんだ・・。」

 

「・・・わかった。泊まっていいよ。」

 

「ありがとう。」

 

アイの態度から、真剣な話だろうと思った俺は、話が長くなっても大丈夫なようにアイが泊まっていくことを許可した。

 

「じゃあ俺は片付けとかするから、話はあとでいいか?」

 

「うん。じゃあ私は先にお風呂入りたいから一回私の部屋に着替え取りに行ってくるね。」

 

「・・・大丈夫か?」

 

「あはは、もう将也君は心配性だなぁ。もう終わったんだから、大丈夫だよ。」

 

アイはそう言って一人で部屋に着替えを取りに自分の部屋に戻った。

 

アイの言う通りだ。終わったことにいつまでも気をもんでいてもしょうがない。

そう思うようにしながら俺は食器や調理器具の片づけを始めていき、片付けが終わる前にアイは帰ってきた。

 

「ただいま。ね、心配なかったでしょ。」

 

「ああ、そうだな。」

 

杞憂でよかった。

 

「それじゃあ、お風呂入ってくるね~~。」

 

そう言ってアイはすぐに風呂場へ向かっていった。

 

「おう。」

 

俺は軽く返事をして、片付けをを再開する。

 

数十分後、片付けを終えた俺は、アイが風呂から上がったことを本人から聞いて、俺も入浴を済ませ、俺は話があると言っていたアイと話すため、いつも雑談をしているリビングに向かった。

 

だがそこにアイの姿はなかった。

 

仮眠室にいるのかと思った俺はアイが使っている仮眠室の前まで来て、扉をノックしてみるが返事は返ってこなかった。

 

俺は一応扉を開いて中を確認するが、誰もいない。

 

俺は心配になり、声を出してアイを呼ぶ、

 

「アイ、どこにいるんだー?」

 

「将也君の部屋にいるよー。」

 

と返事が返ってきた。というか俺の部屋にいるのか、珍しいな。

そう思いながら俺は自分の部屋に向かった。

 

「アイ、お待たせ。」

 

「ううん、全然。」

 

アイは俺のベッドの上で寝転がっていたので俺は近くの椅子を引いて座ろうとすると、

 

「待って、こっちに来て。」

 

アイはベッドに座るように、端の部分を叩いていたので俺は素直にアイの近くに座ることにした。するとアイも寝ていた体を起こし、俺の隣に座る。

 

「それで、話ってなんだ?」

 

俺はさっそくアイに話の内容を尋ねる。

 

「・・・うん。最近の将也君の事だよ。」

 

「そうか・・。」

 

なるべく気にしていないように振る舞っていたつもりだけどな。やはりバレていたのだろう。特に最近は過保護気味だったからな、特にさっきの心配がアイにとっては決定的だったのだろう。

 

「将也君・・カミキ君のこと、まだ気にしてるの?」

 

「ああ、俺達が悩む必要がないのはわかってるんだけどな、・・・でも、カミキが死んで良かっただなんて思えなくてさ。カミキが関わらずにいてくれたらこんなことにはならなかっただろうなって、つい考えちゃうんだ。」

 

「将也君がそんなに悩む必要なんてないよ。・・もう終わったことなんだよ?それにもとはといえば私が悪いんだよ。」

 

「そんなことないよ。アイが今言った通りでもう終わったことなんだ。アイが気にすることじゃない。これは俺がいつまでも感情に整理ができない俺が悪いんだから。」

 

「だったらどうすれば将也君の感情が早く整理できるの?」

 

「それは・・・ごめん、わからない。ただ時間が欲しいとしか言えないんだ。」

 

「そっか・・・・だったら私待ってるね。またいつもみたいに楽しい日々が送れるように待ってるよ。」

 

「ありがとう、アイ。」

 

「でもっ!」

 

「な、何だ?」

 

「私はいつも通りに将也君と仲良くさせてもらうからね♪」

 

「え?いや、今待つって言ってたよな?」

 

「うん、将也君がいつもみたいになるのは待ってあげる。でも私は前みたいに将也君と仲良くしたい。これは別の問題だからね、私はいつも通りにさせてもらうよ。」

 

「また都合がいいな。・・でもそれでいいってアイに言ったのは俺だしな。」

 

「えへへ。でしょ?」

 

アイは笑顔でこちらを見る。

 

「でもね。」

 

「ん?」

 

「私も気にしてないないわけじゃないんだ。でもいつまで気にしていたってどうにもならないからね。切り替えなきゃね。」

 

「そうだよな。」

 

「そうだよ。」

 

「さ、解決したってわけじゃないけど、どうしていくかは分かったんだし、今日はもう寝ようよ。」

 

「ああ、そうだな・・・・ってアイ?なんで俺のベッドで寝ようとしてるんだ?」

 

「だって今から仮眠室に移動して、冷たいベッドに入ったら寒さで目が冴えちゃうでしょ。」

 

「だからって・・・いいや、俺が仮眠室に行くから。」

 

「それはダメっ!」

 

「え?何で?」

 

「えっ・・・と、そう!風邪ひくかもしれないし。」

 

「いや、風邪ひく要素はないだろ・・・。」

 

「とにかくっ!ここで一緒に寝ようよ!」

 

どうやらそれが目的らしいが

 

「さすが一緒に寝るわけにはいかないだろ。」

 

「いいじゃん!一緒に寝るくらい!」

 

「ダメだろ。」

 

「なーーんーーでーー?前も一緒に寝たときあったじゃんっ!」

 

「あれは別々の布団だっただろ!」

 

「もういいっ!こうなったら・・・えいっ!!」

 

「おわっ!?」

 

アイは俺の腕を強く引っ張りベッドに引きずり込もうとする。俺はとっさのこと反応できず、ベッドに倒れこんでしまう。

 

「アイ何するん・・・」

 

そう言って体を起こそうとしたら、

 

「逃がさないよっ!!」

 

アイは俺に抱き着き、両手両足を使って俺を拘束して逃がさないようにする。

多分本気で逃げ出そうとすれば、逃げられる。だけど俺は本気で抵抗せず、アイのなすがままにされることにした。

 

「・・・はぁ、わかった。ここで寝るよ。」

 

「やった♪」

 

こうなったアイには敵わないな。

 

「アイ、ほどいてくれないと眠れないんだけど・・・。」

 

「え~、じゃあこうするね。」

 

アイは一度拘束を解いてくれたが、今度は俺の頭をアイが自分の胸に抱き寄せた。

 

「ちょっ!!アイっ!」

 

「えへへ~、暴れちゃダメだよ~。」

 

アイは俺をぬいぐるみのように抱きしめる。

そうなると当然、俺の顔には服越しとはいえ、柔らかいアイの胸の感触が伝わるわけで、先月風呂場で感じたあの柔らかさを再び感じた。

 

すると今度はアイが俺の背中をトントンとリズムよく、赤子をあやすように叩く。

 

これではまるで赤子扱いだ。

 

「・・・・アイ、何してるんだ?」

 

「ん~?思いっきり甘やかして、嫌な気分を良い気分で上書きしてあげようかなって。」

 

「それでこの扱い?」

 

「嫌?」

 

「・・・・・嫌じゃないけど、恥ずかしい。」

 

「誰も見てないから平気だよ。しばらくこうしててあげるから、眠たくなったら眠っていいよ。」

 

正直に言えば、この一か月抱えていたいやな気分は一気に消えていた。なにより好きな人に甘やかしてもらえるのは嬉しい。

 

今ここで、アイのことを抱き返してあげたいという欲求に駆られるが、それができるのはきっと恋人以上の関係を持つ人だけなのだろう。

今の俺はそうじゃない、ならば今ここでアイのことが好きと言ってしまおうか迷った。

 

だけどこの状況で?

 

この状況で告白しても、なんだろう・・・カッコつかないなぁ。

せめてもう少しいい雰囲気な場所で告白したいな。

でも人目に付く場所で告白したら大変なことになる。であれば、人気のないいい雰囲気の場所で告白かな?

 

なんて悩んでいたら、規則正しい寝息が聞こえてきた。

 

アイの様子伺うと、眠ってしまったみたいだ。

 

今なら簡単に抜け出せそうだ。

・・・でも、今日はアイに甘えて、ここで寝かせて貰おう。

 

 

翌朝、スマホのアラームが鳴り、目を覚ます。アイもつられて目を覚ましたようだ。

 

「おはよう、アイ。」

 

「ふぁ~。おはよ~、将也君。」

 

「ありがとな、おかげで前より気分が楽になったよ。」

 

「ホント?ならよかった♪」

 

俺は体を起こしてから、アイに

 

「そうだ、またいつか休みの日が重なる時にどこか行こうぜ。今日のお礼がしたいし。」

 

「いいよお礼なんて。私がしたくてした事だし。でも、せっかくだしどこかにいくっていうのは賛成かな。」

 

「なら、決まりだな。」

 

「うん!」

 

俺は決めた。次の二人の休みの日に俺はアイに告白を、俺の思いを伝えよう。

 

 

視点変更「星野 アイ」

 

 もしかしてこれってデートの約束になるのかな?

 

将也君が昨日のお礼だっていって誘ってくれたお出かけの約束。

 

嬉しいな。

 

楽しみだな。

 

早く次のお休みが決まらないかな。

 

心臓の鼓動が意識しなくても聞こえるくらい高鳴っている。

 

気分が高揚する。

 

幸せな気持ちで満たされる。

 

そうだ。前に決めてた事をしよう。

 

私はもう嘘吐きだということ、過ちのことも将也君に知ってもらった。

 

なら、あとは一つ。私の思いを彼に伝えよう。 「愛」の告白をしよう。

 

 

視点変更「星野 アイ」end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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