「天城君!? 天城君だよね?!!」
「あぁ、久しぶり、星野」
引っ越し初日の夜、俺と星野は再開した。
「久しぶり!天城君!」
そう言いながら俺のほうへ駆け寄ってくる星野。
「な、何か近くないか?星野?」
星野の顔が目と鼻の先に近寄ってきた。
「そう?そんなことないよ~。」
彼女は口では否定しているものの俺から距離を取ろうとしないので、俺は半歩下がり、目をそらすが
「もしかして、照れてるの~?」とにやけ顔で聞いてくる。
「あぁ、そうだよ、悪いかよ。」と両手が荷物でふさがっている俺は手で顔を隠すことができないので顔もそらしてしまう。
「第一、美人の顔が目と鼻の先に迫ってきたら男は大体照れると思うぞ。」と続けるが、
「そっか~、私美人だし天城君が照れるのもしょうがないか~。」
「自分で美人っていうのかよ・・、大した自信だな。」
俺のあきれた感想を述べた後、二人の間に沈黙が入るが俺と彼女の小さい笑いがすぐに沈黙を消し去った。そこに一人の男性割って入ってきた。
「おーいアイ、スマホまだ見つからないのか~?」
現れたのは金髪ショートにワイルドな感じ髭を生やした男性だ。
「おい、おまえは誰だ?」
先程よりも少し低い声色で男性は俺に問いかけてきたが、俺は臆することなく
「俺の名前は天城 将也です。 星野・・星野さんとは小学生からの友達です。」
関係者の前で俺は星野のことを呼び捨てにするのは無礼かと思いとっさにさん付けで彼女の名前を言い直したが、大丈夫だっただろうかと内心、不安に思ったが、
「あぁ、君が天城君か。アイから何回か話に聞いたことある。そうか、お前が天城か。」
そういいながら俺を舐め回すように、品定めでもしているかのように見てくる。少しの間を挟んで今度は男性のほうから自己紹介された。
「俺は斉藤壱護。ここの苺プロの社長だ。」
「よろしくお願いします。」と社交辞令のつもりで返したが、
「おう。まぁあまりよろしくするつもりはないがな。」と言われると、
「ええーーーっ!!!佐藤社長そんな意地悪言うの?!」と星野が割って入る。
「だから!俺は斉藤だっていつも言ってるだろクソアイドル。」
とツッコむ斉藤社長に合わせて俺は
「星野、お前まだ人の名前覚えるの苦手なのか・・。」
「あはは~。まぁね~。」と星野はケラケラと笑うが、斉藤社長が話を戻す。
「とにかくだ。アイ、お前はアイドルなんだ。お前と天城君が友達だとしても、スキャンダルにでもなってみろ。お前のアイドル生命は終わりだし、こいつにも迷惑がかかるかもしれないんだぞ。」
そう斉藤社長は星野に厳しく注意をするが、
「心配性だな~、大丈夫だって~。」星野はどこ吹く風だ。
「まぁ、そうですよね。何かあったら大変なのは星野や社長さん達ですからね・・。」と俺が斉藤社長からの注意を素直に受け取る。
「はぁ・・・。すまんな天城君。君には悪いとは思うが、芸能界ってのはプライベートでも気が抜けない世界だからな、あまりアイとは近づかないようにしてくれないか?B小町もアイもこれからっていう大事な時期なんだ。」
と斉藤社長は真剣な顔つきで俺に語る。俺自身、星野がトラブルやアイドル活動に支障が出てしまうようなことはしたくはない。
だから俺の返答は決まっている。
「はい。わかりました。」
「えー天城君はそれでいいの?」と星野は不満げに俺を見る。
そんな星野を見た斉藤社長は大きい溜息をついた後
「まぁせっかく友人と再会できたわけだし、俺もそこまで鬼になりたいわけじゃない。今言ったことを厳重注意してくれれば、月に一回か二回位会うのは構わん。だがもちろん公の場に遊びにいくのはナシだからな。」
「やったー。ありがとー社長ー。」と星野は満足げに答える。
「いいんですか?」
「あぁ、まぁアイにも誰かと遊びに行くぐらいの休みがあってもいいとおもってるからな、君の話はさっきも言ったが何回か話には聞いてはいるし、アイが俺たちの前では一度も君の名前を間違えて言ってないと君の自己紹介で確信したからな。アイも君に大きな信頼をしているんだろう。だからアイと君がたまに遊ぶくらいなら構わんさ。」
と斉藤社長は俺に語る。
「はい。ありがとうございます!」
「さぁ、そろそろ帰りなさい。もうとっくに遅い時間だ。」
そう斉藤社長に言われた俺は二人に別れの挨拶をしてその場を去ろうとしたら
「あっ!そうだ天城君、連絡先交換しようよ。」
と星野が俺を呼び止めた。
「いいのか?アイドルと連絡先の交換だなんて。」
そう俺が聞くと、
「大丈夫だよ。このスマホはみんなには内緒にしているやつだから。」
その割にはさっき車の中に忘れてなかったか?と思いつつも俺と星野は連絡先を交換する。
「じゃ今度こそだな。おやすみ星野。」
「また今度ね~おやすみー天城君。」
そういって俺は星野と別れ、家路についた。
そのあと家に帰ってきた俺はすっかり冷えてしまった晩御飯の総菜を平らげ、風呂に入り、「愛」について知るためスマホで電子書籍の恋愛小説を少し読み、明日に備えいつもよりは少し早いが寝ることにした。
翌朝
いつもより早く寝たせいか、それとも新しい生活環境に緊張しているせいか、今日も俺は朝早くに目が覚めた。今はまだ春休みの最中なので惰眠を貪ろうか迷ったが、思い切って朝の散歩に繰り出すことにした。
俺は動きやすい私服に着替えて、家の戸締りを済ませ、マンションのエレベーターで下に降りようとエレベーターの操作盤のボタンを押し、少し待ち、上からガラス越しに見える先客を乗せたかごが目の前で停まり、ドアが開き俺は先客に挨拶をしながら乗り込んだ。
「おはようございます。」
先客は俺の声に反応して俺に顔を向けきたので俺も先客の顔に視線を移す
「「あ。」」
先客の正体は星野だった。
「まさか一緒のマンションに住むことになるなんてねー。びっくりだよー。」と星野はケタケタ笑っていた。
「そうだな、俺も驚いたよ。」そう言いつつ俺も小さく笑っていた。
「星野はこんな早くから仕事か?」と俺は質問する。
「うん。まぁねー。」と簡単に星野は答えると
「そっか。がんばれよ」と応援する。
「もちろん。」
そう答えた星野はやる気に満ちた笑顔だった。
エレベーターが一階に着いた時に俺たちは短い会話を終え、二人無言で外へ出た。
だがそこには星野を迎えに来た斎藤社長がいて、
「なんでもう会ってんだよっっ!!!!」
と大きい声のツッコミが早朝の静寂の空に響いていた。