アイ(愛)を求めて   作:頭お菓子いエクレア

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温泉旅行とプロポーズと・・

 

 年が明け、季節は変わり、三月の最終日曜日、この日をもってアイはアイドルを引退、B小町を卒業した。

 

最後の卒業ライブは過去最大の大盛り上がりで、最後にアイがファンに対する気持ちや感謝の言葉を述べた時も、ステージから降りた後もファンの人たちからは卒業しないで、辞めないでくれという声が聞こえたが、アイはその言葉には答えなかった。

 

舞台裏では他のメンバーから色々な贈り物や、女優としての活躍を応援する言葉を受け取っていた。ちなみに俺からは花束を贈ってあげたが、関係がばれるといけないので事務所からという形で贈ってあげた。

 

 この時のメムはメンバーの中で一番泣いていたのをよく覚えている。メムは元々アイのファンだったということもあり、よく懐いていた。アイもそんなメムを可愛がっていた。

 

その後は解散となり、俺とミヤコさんは手分けをしてB小町の皆を家まで送り届け、アイにとって大きな区切りとなった日は終わり、そしてついに温泉旅行!というわけにはいかず、アイはすぐに女優として仕事を始めることとなった。

 

 そして二か月程が経ち、俺とアイはようやく有給休暇に入ることができた。

つまり、待ちに待った温泉旅行に行けることになった。

 

「アクア、ルビー、いい子にしてるんだよ。」

 

「わかってるって。」

 

「うん!お土産よろしくね!」

 

三人でしばしの別れの挨拶しているアイたちをよそ目に俺もミヤコさんにお礼を言っておく。

 

「アクアとルビーの事、ありがとうございます。」

 

「いいのよ、これくらい。せっかくの旅行なんだもの、二人で楽しんできなさい。」

 

「はい。」

 

「でも、くれぐれも羽目を外しすぎないように注意してね。アイがアイドルじゃなくなっても、アイのの事をマークしてる人はまだちらほらいるんだからね。」

 

「わかりました。」

 

ミヤコさんの注意に気を引き締めていると、

 

「おまたせ、将也君。行こっ!」

 

「ああ、それじゃあ、行ってきます。」

 

「いってきま~~す。」

 

「「「いってらっしゃい!」」」

 

こうして俺とアイは温泉旅行に行くことになった。

今日は平日ということもあってか、移動に使う新幹線の中の乗客は少なく、俺もアイも周りにバレないように強く気を張る必要もな・・

 

「ねぇねぇ将也君!見て見て!富士山だよっ!」

 

めちゃくちゃ楽しんでるよ俺の彼女・・・・。

これは俺が気を引き締めないとダメだな。・・・でもせっかくの旅行だし、俺もアイみたいに楽しまないと損だな。

 

そうして二人で楽しんでいるうちに目的の駅に着いた。そして電車とバスを使い、予約してある旅館のある町に着くが、

 

「やっぱり雨、降ってきちゃったね・・・。」

 

「今は梅雨だししょうがないよ。」

 

目的地に近づくにつれ、空は雲で覆われ、雨が降り始めていた。

 

「でも天気予報でも雨が降るって言ってたからな。傘は持ってきてあるよ。」

 

そういって俺はアイに傘を差しだす。

傘を受け取ったアイは、傘を差さずに傘を見つめながら何かを考えているようだった。

 

「どうしたアイ?行こうぜ。」

 

俺は自分の傘を差した状態でアイに声をかける。すると

 

「やっぱ恋人ならこうしなくっちゃ!」

 

そういってアイは俺の差した傘の中に入ってくる。そうなるといわゆる相合傘をしている状態になった。

 

「お、おいアイこれだと誰かに見られちゃうだろ。」

 

「別に大丈夫だよ。ほら私たち以外に駅で降りた人はいないし、雨で外に出てる人は

全然いないし。」

 

そう言われて周りを見渡すと俺たち以外の人は両手で数えられるくらいの人しかいなく、雨のおかげで遠くの人の顔は見づらい。というか。

アイが浮気デートというワードで検索したせいだろうか、よくよく見てみると初老のおじさんと若い女性という組み合わせだったり、素顔を隠した二人の男女の組み合わせがちらほらいる。

え?もしかししなくてもやっぱりそういう目的の人が多いの?ここ。

 

「ほら行こう。将也君!」

 

アイはそう言いながら俺の傘をさしている右腕に抱き着いてくる。

 

「・・・行こうか。くれぐれも周りには注意してくれよな。」

 

「は~い♪」

 

俺もアイと腕を組んでおきながら言えたもんじゃないよな。と思いつつもアイが予約してくれたという旅館を目指して歩き始める。

 

歩くこと数十分、目的の旅館までまっすぐに行けばもう少し短縮できたのだろうが、途中で何回も寄り道をしていたので到着に時間がかかってしまった。だが幸いにも旅館のチェックインの時間には間に合ったので良しとしよう。

 

旅館にチェックインした後は鍵を渡され、アイが予約したという部屋に向かう。

 

目的の部屋の前につき、解錠して中に入る。

 

・・・なんということでしょう。一目瞭然で分かる通りの高級な部屋だ。

フロントの人が渡すカギを間違えてるんじゃないかと疑うくらいだ。

一応アイに確認する。

 

「なぁアイ。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「どんな部屋予約したの?」

 

「将也君と一緒のお風呂に入れるように家族風呂付の一番いい部屋だよ♪」

 

疑ってごめんなさいフロントの人。

 

「ねぇねぇ、早く入ろうよ。」

 

「あ、ああ。」

 

アイに急かされて部屋の中に入っていく。ほんとに広い部屋だな。いくらしたんだろ?後でネットでこの部屋の料金調べみよ。

なんて思っているとアイは部屋に入った途端、部屋の中を走り回り、色々な所を物色する。

 

「わぁ~、広~~い!ここがお風呂で~。ここがアレだね!え・・っと?」

 

「広縁。」

 

「そう!それっ!」

 

旅館に来てから、いや、家を出た時からアイのテンションは高かった。外が雨が降っていることも忘れるくらいに大はしゃぎしている。可愛い。

とりあえず、持ってきた荷物をしまい、タオルだけ取り出して、アイを呼ぶ。

 

「アイ、濡れたところ拭いてあげるからおいで。そのままだと風邪ひくぞ。」

 

「は~い♪」

 

機嫌のいい返事をしたアイは俺のところまで来てくれる。

いくら傘を差していたとはいえ、相合傘では濡れてしまう部分は多いのでしっかり拭いてあげる。

 

「ねぇ将也君。お風呂に入った方がよくない?」

 

「一理あるな。」

 

「でしょ!じゃあ一緒に入ろう!」

 

「・・・・何故?」

 

「私、将也君、愛してる。」

 

「うん。」

 

「将也君、私、愛してる。」

 

「おう。」

 

「一緒にお風呂入ろ♡」

 

「待てや。」

 

「何でぇ?!今完璧に一緒にお風呂入る流れだったじゃん!!」

 

「どこがっ?!」

 

「もうっ!何でそんなに嫌がるのっ?!」

 

「別に嫌ってわけじゃ・・・・。」

 

「じゃあ何で?」

 

じっと見つめてくるアイに俺は正直に答えるしかなかった。

 

「・・・恥ずかしい・・・。」

 

「えっ・・・・今更?」

 

「・・・うん。」

 

「・・・・・そっか、じゃあ一緒にお風呂入ろっか。」

 

「・・・・え?話聞いてた?」

 

「もうっ!こんなんじゃ次の段階踏めないよっ!おとなしく一緒にお風呂入るの!どうせこれからたくさん見せることになるんだからっ!」

 

「キャーーーーっ!」

 

俺は強引に脱衣所まで連れていかれる。

 

「大丈夫!壁と天井のしみを数えてればいいんだよっ!」

 

「その言葉の使い方は絶対に違う気がするっ!・・・・アーーーーーーッ!!」

 

オンセン、キモチヨカッタ。

 

まぁ俺はほとんどアイに対して背を向けていたので、直視することはしなかったし、アイも一緒の風呂に入ることの以上の強引なことはしなかった。

 

早めの入浴を済ませた後は中居の人に運んできてもらった夕食を済ませて、二人で広縁にある椅子に座り、未だに降り続ける雨の景色を見てくつろいでいた。

 

「雨中々止まないね。」

 

「明日には晴れるって天気予報で言ってたし、それまでゆっくりすればいいさ。」

 

「うん、そうだね。」

 

そう言った後、しばらく二人の間には外から聞こえてくる雨音だけが響く。

暫くするとアイが俺に話しかけてきた。

 

「ねぇ、明日はどこに行きたい?」

 

「ん~、そう言われても骨休めの気分で来てるからな。とりあえず何処か美味いもの食べに行きたいかな。アイは?」

 

「私も将也君と同じ感じかな?あ、でもお土産は買いに行かなくっちゃ。」

 

「そうだな。じゃあ明日は適当に歩いて回るか。」

 

「うん、そうしよっか♪」

 

明日の予定を決めた後、俺達はいつもより早いが明日に備えて眠ることにした。

でも俺はアイに内緒で一つだけ予定があるのを隠しておく。

 

 翌朝、早くに寝たおかげで日の出とともに目を覚ました俺は体を起こして窓の外を眺める。そこには天気予報通り、昨日の雨が嘘だったかのように雲一つない朝焼けの空が広がっていた。そして朝露ではなく、昨日の雨で濡れた木々や葉が日に光を反射させ、より景色を彩らせていた。

 

そんな景色に見入っていると、アイも起きたのか後ろから声をかけてきた。

 

「うぅ~~ん、将也君?・・・どぉしたのぉ・・?」

 

どうやらまだ寝ぼけいるようだ。

 

「アイも見てみろよ。すごく綺麗だぞ。」

 

「えへへ、綺麗だなんて照れるよぉ・・・グゥ。」

 

なんだか勘違いをしたままアイは再び眠ってしまった。

景色のことだったんだけどなぁ。けどアイも綺麗だから否定することはできないな。

アイの勘違いにツッコむことが出来なった俺はもう少しアイを眠らせてあげることにして、しばらくの間、朝焼けの景色を一人で楽しむことにした。

 

 

 二時間程経った後、仲居の人が朝食を持ってきたときに、美味しそうな匂いにつられてきたのか、アイが起きてきた。

 

「おはよ~~・・。」

 

「おはよう、アイ。」

 

「えへへ~~。」

 

アイはご機嫌な様子で俺に抱き着いてきた。

 

「? どうしたアイ、やけに機嫌がいいじゃないか。」

 

「うん。いい夢見たんだぁ・・。」

 

「どんな?」

 

「将也君に綺麗だよって言われたんだ~。」

 

「そ、そうか。」

 

夢じゃないし、勘違いだけど、まぁ黙っておいたほうがいいか。

 

「そうだ、たった今、朝御飯が来たから早く食べようぜ。ほら顔洗って来いよ。」

 

「あ、ホントだ。ちょっと待っててね。」

 

そう言ってアイは顔を洗いに洗面台に行った。その後顔を洗ったアイと一緒に朝御飯を楽しんだ。

 

「美味しかったね~。」

 

「ああ、そうだな。それじゃあどうする?すぐに出掛けるか?」

 

「うん。そうだね。沢山いろんな所に行ってみようよ。」

 

 今日の行動を決めた俺達は身支度を整えて、二人で出かけることにした。

平日ということと温泉街が今閑散期ということもあり、周りには人がいない。見かけても昨日と同じで、訳ありの男女とたまにすれ違う程度だ。成程、確かにこれは浮気をするのにはもってこいの場所だな。

 

・・・浮気目的では来たくないけどな。でも世間にバレないようにするにはこういうところがいいのかもな。そう思いながら変装したアイと並んで歩く。

 

でも、いつかアイと結婚して、堂々と二人でいろんなところに行けたらいいよな。

そのためには俺がプロポーズしないといけないんだけど。

アイとつないだ手の反対側のポケットにはリングケースが入ってる。その中に入っているのは婚約指輪。

 

俺はこの旅行中にアイにプロポーズしようと決めていた。

 

決めたのはいいのだが、この旅行はアイが俺の分と自分の分の有給休暇を三日分申請して休暇を取り、その三日間すべてをを使い、二泊三日の温泉旅行に来ているので、明日のチェックアウトには帰ることになる。ということはプロポーズするなら今日しかないということだ。

 

どこで渡せばいいのかな?なんて思いながらあたりを見回す。ここから見えるものといえば、お土産屋に、飲食店ぐらいしかない。

 

どこか景色のいい場所でもないだろうか。

 

ふと、前に結婚について話したことを思い出す。アイは俺との結婚を望んでいたから特に何かにこだわらずに、ポンと渡してしまえばいいのではないだろうか?

いやいや、そんな寂しい渡し方はあまりに酷いのではないか?

やっぱり一生に一度のことだし、特別感は必要だよなぁ。そう悩んでいると。

 

「お~い、将也く~ん。何考えてるの~。」

 

「ん、プロポーズはどこでするのがいいのかなって・・・・・・あっ。」

 

「・・・・えっ?」

 

「ちょっと待って、違う。いや違わないんだけど、えと、何ていうか。」

 

うわああぁぁ~~~。やっちゃった~~~。考えるのに夢中でごまかし損ねてしまった。

 

「へぇ~。将也君私にプロポーズするんだ~♪それはいいこと聞いちゃったなぁ~♪」

 

「聞かなかったことにしてくれませんか?」

 

「無理♡」

 

「そっかぁ~。」

 

こうなったらもうプロポーズするしかないんだが、さすがに道の真ん中でプロポーズするのは気が引ける。

 

「アイ、どこか静かな場所に行かないか?」

 

「いいよ♪」

 

提案に乗ってくれたアイと手をつないで移動を始める。移動を始めたのはいいものの肝心の行き先を決めていない。

どこかいい場所はないか捜し歩いていると、駅の近くまで来てしまった。

 

ふと目をやると、そこには観光案内の看板があった。そこにはいろんな行き先が書いてあり、俺はその中の一つに目を止める。

 

「展望台か・・・。」

 

自分でもワンパターンだなって思う。場所は違えど、アイに告白した時も展望台だった。であれば場所は違えど、もう一度展望台で思いを伝えよう。

目的地を決めた俺はアイの手を引いて展望台に向かう。

だが、展望台までの道のりは楽ではなく、軽めの運動を目的としているのか、片道数十分はかかる道のりだった。途中、アイが音を上げないか心配だったがこの後のことを楽しみにしているせいか終始ご機嫌な様子だった。

 

そしてついに展望台にたどり着いた。

 

「着いた~~~~~~♪」

 

アイは全然疲れる素振りを見せなかった。というより、最近まで歌い踊るアイドルをやっていたんだし、体力が多くても不思議じゃないよな。

俺は少し休憩しようと、近くにあったベンチに座るとアイも俺の隣に座る。

 

「さぁ将也君。私に話すことあるんじゃない?ん~?」

 

アイはわかってるくせにニヤついた顔で催促してくる。

 

「わかったって。」

 

俺は一度立ち上がり、アイと向かい合うように移動してから跪く。そしてポケットにしまってあるリングケースを取り出して、アイの前でケースを開けて婚約指輪を見せる。するとそれを見たアイが喜びの表情になる。

 

ああ、やっぱり俺はアイの事が好きなんだ。いや、それでも足りない。

 

愛してる。

 

その表現が一番近くって、でも足りなくて。

愛してる以上の表現方法はこの先もわからないままだろう。

でも俺はこの先もずっとアイの事を愛し続ける。

だから誰よりもアイの近くにいたい。そのためにこの言葉を伝える。

 

「アイ、俺と結婚してください。」

 

「うん、もちろんっ!!」

 

そう言ってアイは俺に抱き着いてきた。今までも何回も見てきた笑顔で、喜びに満ちた声で俺との結婚を快諾してくれた。

 

「ねぇねぇ、はやく指輪はめてっ!」

 

「ああ。」

 

俺はアイが差し出した左手の薬指に指輪をつけてあげる。

指輪をつけた後、アイは左手を上げて、薬指にはめた婚約指輪を愛おしそうに眺めている。

 

俺は指輪に夢中になっているアイの隣に座り、少し心配だったことを尋ねる。

 

「アイ、指輪のサイズ大丈夫か?きつかったりしない?」

 

実は指輪のサイズはアイが寝ているときにこっそり測ったので、間違いないと思うが、素人の俺の測り方では不安があったので聞いてみる。

 

「え?特に問題ないと思うよ?」

 

「そうか、ならいいんだけど。もしサイズが合ってないと思ったら言ってくれよサイズ直し頼みに行くから。」

 

「うん、わかった。」

 

アイはそう答えた後、再び指輪に夢中になる。まるで新しいおもちゃを与えられた子供のようだ。

 

「えへへ♪これで私は将也君のお嫁さんになったわけだね♪」

 

「違わないけど、役所に婚約届を提出しないとお嫁さんとはまだ言えないぞ。」

 

「だったら帰ってすぐに出しに行こう。」

 

「いや斉藤社長にしばらくは待てって言われただろ。」

 

「もう十分待ったよっ!」

 

「気持ちはわかるがあと少しだけな、帰ったら斉藤社長に相談してみようぜ。」

 

「わかったよぉ・・・・・はぁ、結婚はまだお預けかぁ。」

 

「そんなに落ち込むなよ。お預けでも、時間があればどんな結婚式がいいか決められるし、式や披露宴でやりたい事じっくり決められるだろ。」

 

「そうだね。そう思えばなんだか楽しみになってきたよ。」

 

アイと婚約が出来たのはいいが、結婚はまだ当分先の話だ。アイを落胆させないように何とか前向きに考えてもらったが、いつまで待ってくれるのだろう。

俺も結婚が楽しみになるようにアイと結婚式の内容を一緒に決めたりしよう。

それからあとは何をしようか。また有休を使ってどこかに行こうか。それとも気分だけでも夫婦みたいなやり取りでもしてみようか?・・・アイがすごく乗り気になりそうだな。

 

などと、これから結婚まで二人でどう楽しむかを考えていると腹の虫が鳴くのが聞こえた。

 

「わ、私じゃないよっ!」

 

「まだ何も言ってないだろ。」

 

「もう!いじわるっ!」

 

「どこがだよ・・・。でも、もう昼過ぎてるもんな。降りて何処か美味しいもの食べに行こうぜ。」

 

そう言って俺は立ち上がり、アイに手を貸してあげる。

 

「賛成っ!でもさっきのことは忘れてよね!」

 

アイは俺の手を取って立ち上がり、二人で歩き出す。

 

「どうしようかなぁ?」

 

「む~~~っ!!」

 

アイはむくれながら俺を軽く何度も叩いてくる。

ははっ!痛くも痒くもない!・・・むしろ可愛いな。

 

「ほら。いつまでもふざけてると危ないぞ。」

 

「じゃあ危なくならないようにしっかり支えててよねっ。」

 

そう言ってアイは俺の腕に抱き着いてきた。

 

「ああ、任せとけ。」

 

こうして俺はアイと婚約した。

 

 

 この後、俺達二人は少し遅い昼食を済ませ、色々なところを見て回り旅館に戻った。その道中アイはずっと俺の腕から離れることはなかった。別に困ることは一切ないのだが、旅館に戻った後も離れなかった。

 

さすがに風呂に入るときは離れるだろうと思っていたが、考えが甘かった。

昨日俺を無理やり一緒に入浴させたアイがその程度で離れることなんてなかった。

無論、寝る時も一緒の布団で寝ることにした。さすがに一人用の布団に二人で寝るには狭かったが、アイの温もりを感じられて悪い気分になるなんてことはあり得るはずがない。

 

寝る前に、目の前で安らかに寝ているアイの寝顔を見ながら考える。婚約した俺とアイは当然結婚して夫婦になる。そうなれば俺は今まで我慢してきた事をする時が来るのだろうと思っている。

 

それはいつかするのであろう。

 

というか最近のアイの誘惑が過激すぎて我慢の限界だ。自覚してるのか無自覚なのかどっちにしてもヤバい。

 

いっそ今日このまま・・・ってもう寝てるアイを起こすのは気が引けるな。

とりあえず寝てしまおう。寝れば忘れる。治まる。何とかなる。

俺は理性を総動員させ、本能を抑え込むために目を閉じる。

少しずつ感じるまどろみに身を任せ、俺は何とか眠ることが出来た。

 

 

視点変更 「星野 アイ」

 

 

むぅ~、将也君の意気地なし。

 

私は薄目で将也君の様子を見ていた。

せっかくの二人きりの旅行。邪魔する人なんて誰もいない空間。ここなら将也君と一線を越えられると思ったのになぁ。

彼はもしかして結婚するまで手を出してくれないのだろうか。

今日プロポーズをされ、私たちは婚約者になれた。無理しなくったっていつかは体を重ねるのだろう。

というか私が襲うと思う。今だって我慢してる。

私が彼を愛してるのも、彼が私を愛してくれてるのも知っている。わかっている。でも、それでも、証明が欲しいの。将也君と愛し合えたって事実がほしい。

 

欲張っていい。

 

彼の言葉を思い出す。

だから私は明日の計画を楽しみに眠る。

 

それで何もしなかったら、私がしちゃうからね♪

 

 

視点変更 「星野 アイ」end

 

 

 

 翌日、旅行最終日。俺たちは朝食を済ませた後、チェックアウトして、駅に向かう途中でお土産屋により、アクアとルビー、斉藤社長やミヤコさん、苺プロの皆にお土産を買ってから帰ることにしたが、お土産を選ぶのに時間がかかったり、途中で昼食を済ませるために、寄り道したのもあってか、久しぶりの我が家に帰ってきたのは日が傾いた時間だった。

 

「結構時間かかったな。」

 

「そうだね。」

 

アクアとルビーが待ってるだろうし、早くアイの部屋に行こう。

そう思い、俺とアイはアイの部屋に向かった。

鍵を開けて、二人と再会をしようと思ったが、中には誰もいないようだ。

 

「あれ?アクアとルビーまだ帰ってきてないのかな?」

 

リビングまで進んでみたが二人がいる気配はなかった。

アクアとルビーはこの旅行の間ミヤコさんに預けているので、二人は斉藤社長とミヤコさんの家に泊まりに行っている。だけど今日帰ってくることを知っているのであれば、ここで待っていてると思ったんだけどな。

するとアイが俺に話しかける。

 

「ごめんね将也君。実は・・・。」

 

そう言ってアイは俺にスマホの画面を見せる。そこには

 

「いぇ~い!ママ見てる~?今日からお兄ちゃんとミヤコさんと社長と一緒にあの有名な大きい遊園地に二泊三日で楽しんでくるね~♪ママも四泊五日の温泉旅行楽しできてね~♪バイバ~イ♪」

 

とルビーからのメッセージと写真が届いていた。

 

「だから、今日からまた明後日まで二人っきりだよ♡」

 

「明日から仕事なんだけど・・・。」

 

「だからぁ、ミヤコさんも社長もアクアとルビーと一緒に泊りがけで出掛けてるんだって。そのために将也君の有給は私が代わりに申請しておいたんだよ。」

 

「・・・なるほどな。まんまとアイに乗せられたってわけか。それで何をするつもりなんだ?」

 

「もうっ!言わせないでよっ!  エへへ」

 

何をするかと聞けば照れるアイ。なんとなくだが昨日の夜に考えていたアイの行動と併せて考えれば、何をしようとしているのかわかる気がする。

というかここまでしてくれて、誘惑してもらって、

 

「じゃあ、先にシャワー浴びてくるね。」

 

据え膳食わぬは男の恥。どこかで聞いたその言葉が俺の理性を崩壊させていく。

 

「え?将也君どうしたの?一緒に入りたいの?」

 

俺はアイの腕をつかんで、引き留める。

 

「ごめんアイ。」

 

「え? きゃあっ?!」

 

俺はアイを無理やりお姫様抱っこして、寝室へと連れていき、ベッドに仰向きに降ろしてあげ、逃げられないようにアイに覆いかぶさる。

 

「え、えっと、将也君。先にシャワー浴びさせてほしいんだけど・・・。」

 

「アイ。」

 

「な、何?」

 

「ここまでされたらもう我慢できない。」

 

「・・・うん。わかった。誘ったのは私だもんね、いいよ。」

 

俺たちは今まで我慢してきた分を全てぶつけ合うように体を重ね続けた。

 

 

 

 

二日後・・・・。

 

「お兄ちゃん!ミヤコさん!早く早くっ!!ママとパパもう帰ってきてるかもしれないよっ!」

 

「落ち着けって。あわてる必要なんてないだろ?」

 

「ママと五日間も離れてたんだもん。早く会いたいのっ!!」

 

「やれやれ・・。」

 

「ルビーは本当にアイのことが好きね。」

 

「もちろんっ!!ママは私の一番の推しだもんっ!!」

 

アクアたちはもうアイの部屋の目の前まで帰って来ていた。

 

「ん?」

 

「どうした?ルビー。」

 

「今何か家の中で大きな音しなかった?」

 

「? いや俺には聞こえなかった。気のせいじゃないのか?」

 

「そうかなぁ?」

 

ルビーは玄関のドアノブを掴み、扉を開く。

 

「あ、空いてるっ!もうママ達帰ってきてるよ!お兄ちゃん!」

 

「見ればわかるって。」

 

「ママーーっ!ただいまーーーー!」

 

ルビーはリビングに向かって駆けていく。するとアイがルビーを出迎えた。

 

「おかえり~ルビー。アクアもおかえり。」

 

「ただいま、アイ。」

 

「ママ、抱っこ!!」

 

「も~うルビーはいつまでも甘えん坊さんだね~。おいで~。」

 

「わ~い。」

 

そう言ってルビーはアイに抱っこしてもらう。

 

「ミヤコさん、ありがとうございました。」

 

俺はミヤコさんに二人がお世話になったお礼を言う。

 

「いいのよこれくらい。・・・今度は私が温泉行かしてもらうから。」

 

どうやら相当疲れたようだ。

 

「斉藤社長はこっちには来ないんですか?」

 

「そうよ~。アイツったら帰ってきてすぐに事務所に行っちゃったのよ。だから私が二人を送りに来たってわけ。」

 

「そうでしたか。」

 

なんて会話をしていると

 

「ママ、首のところ虫に刺されてるよ。あっ!ここも!」

 

「え?ホントルビー?いや~森の中結構歩いたからその時に刺されたのかなぁ?」

 

とアイはとぼけているが、ミヤコさんにその誤魔化しは効くわけもなくて、

 

「天城君。ちょっと背中見せてもらえる?」

 

「え?いや、それは、ちょっと・・・。」

 

「見せろ。」

 

「はい・・・・。」

 

怖っ!こんなミヤコさん初めて見た。

俺はミヤコさんのいうことを聞いて背中を見せる。

 

「ふぅ~~ん。ずいぶんお盛んだったみたいね。後でアイと一緒に話聞かせてもらうわよ。」

 

「あっはい。」

 

隠すつもりはなかったが、俺とアイが婚約したことが斉藤社長とミヤコさんにこんなにも早く伝えることになるなんて思っていなかった。

 

当然、斉藤社長からはしばらく婚約したことを隠すように命じられた。

 

 

そしてアクアは

 

「諸行無常。」

 

と言いながら悟りを開きかけていた。

 

 

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