アイにプロポーズしてから九年が経った。
俺とアイは八年前、プロポーズして翌年に婚姻届けを出し、夫婦になった。
俺は二、三年待つと思っていたのだが、アイが仕事をたくさんこなした結果、俺の給料が霞んでしまう程沢山稼いだ。
その結果アイは斉藤社長に
「今すぐ結婚させてくれないと女優も事務所も辞めるからっ!!」
と脅していたのを今でも覚えている。
当時はB小町の初期メンバーがアイに続いてアイドルを卒業する人が続出し、売上も人気もかなり落ちていたし、ミヤコさんが企画していたネットでの活動も始めたばかりで利益を出せるほどではなかった。
その為斉藤社長はアイの要望を断ることができず、俺とアイの結婚を許可し、俺とアイは夫婦になることができた。
結婚式はアイの希望でアクアとルビーには自分の子供として参加してほしかった為、式は俺とアイ、アクアとルビー、斉藤社長とミヤコさんの六人で内々に行うことにし、世間一般の人達に報告したのは結婚式をした後だった。
当然、様々な反応があったが、意外にもファンの人達からお祝いの言葉が多かったのは驚いた。多分、アイドルを辞めて女優になってから長くはないが、時間が経っていたおかげだろう。
助言、というより適切な判断をしてくれた斉藤社長には感謝しかない。・・・・まぁアイが前倒しした分、ファンからアンチになった人が少なくなかったのは目をつむっておこう。
そこから今まで八年間、俺とアイは夫婦としての時間を歩み始めた。
今まで過ごしてきた日々に加え、二人でよく旅行に行くようになった。海、山、有名な観光地、温泉旅行など色んな所に行った。アクアとルビーも二人が長期休暇の時に連れて行ってあげた。
それと家を購入し、引っ越しをした。最初はアイが
「大きい家にしようよっ!!」
と言って豪邸を建てようとしたが、俺もアイも共働きなので家にいることが少ないので、少し大きい程度いいんじゃないかと説得した。というより豪邸なんて買ったら貯金がなくなる。
後はまぁ、何というか夫婦になれば夜に愛し合うなんてことも当然あるわけで、俺とアイが一線を越えたあの日以降結構な頻度で愛し合っている。
そのせいもあってか、アイは未だに顔やスタイルに衰えを一切見せず、色気が増すばかりだ。
そんな感じで俺とアイは十代の時に比べ、穏やかで豊かな日々を送っていた。
アクアは中学生の頃は役者の仕事と学業をそつなくこなしていたが、子供の時から役者としてつながりがあった黒川あかねちゃんをいじめから助けたり、ドラマや映画の撮影でたまに一緒に仕事していた元天才子役の有馬かなが仕事が減り続け、自暴自棄になりかけていた頃、B小町でアイドルをしてくれないかと誘って居場所を与えてあげていた。俺はそのことを褒めてあげたのだが、その時にアクアは
「いや、ルビーとメムだけでB小町やらせるの心配だったから誘っただけ。有馬にならルビーの事任せられるからな。」
ルビーの為に有馬かなをスカウトしてきたのか。
アクア、恐ろしい子・・・!
でもそれがいい方向になっているようなので、俺からは何も言えないな。
まぁそんな感じで女の子に手を差し伸べていれば、女の子は少なからず好意を抱いても仕方がない。アクアは興味ない感じといった素振りをしているが、黒川ちゃんも有馬ちゃんもアクアに対する好意が見え見えだ。
そんな状況が続き、高校生になったアクアは仕事で恋愛リアリティショーに出ると決まった時、どこから情報が漏れたのか、偶然なのか、黒川ちゃんと有馬ちゃんも同じ仕事をすることになった。あの時は酷かったとしか言いようがなかった。
だってあれ、恋愛っていうか昼ドラで見るような三角関係だったよ、ホント。
まぁ、お偉いさん方は気に入ってくれたみたいだし。視聴率も伸びていたので特に怒られるということはなかった。ちなみにアイはその番組を見て、腹を抱えて大笑いしていた。自分の息子の三角関係見てよく笑えるな。いや、三人共演技だって知ってるけどさ。
最近アクアはジャンルに拘らずいろんな仕事を受けている。理由は高校を卒業後、大学に進学にした後、一人暮らしを始めるための資金を集めるためらしい。俺もアイもアクアの一人暮らしには納得している。
元々頭のいい子だ。一人でもやっていけるだろう・・・・・というより黒川ちゃんや有馬ちゃんが押しかけて一人になる時間があるかどうか逆に心配になる。
ルビーはアクアと違い、中学になってからは勉学に励むことは特になく、アイドルになるべく体力作りやレッスンに励んでいた。と言っても、ほとんどが自主練で、たまにメムのレッスンに混ぜてもらったり、アイが教えてあげてるので、それなりには様になっていた。・・・・まぁアイの教え方は感覚的だったので目も当てられなかったが、それでも伝わるのはやはり親子ということだろうか。
小さい頃はアクアと同様に頭のいい子だと思っていたが、中学生最後の年のなるころには年相応に、いや少し残念になっていた。本人は
「アイドルに学力は必要ないよっ!!」
と豪語していた。これにはアイが
「その通りっ!!」
と賛同していた。
この親にしてこの子あり、そんな言葉を俺は思い出してしまった。
中学三年生の中旬頃にはルビーは苺プロと契約してアイドルになり、望んでいたB小町のメンバーになったが、この時にはもうB小町にはメム一人しかいなかった。二人はしばらく動画投稿で活躍してもらいながら、斉藤社長とミヤコさん、俺の三人で再びB小町が大人気になるように尽力した。
そして先程も言ったけど、アクアが有馬ちゃんをスカウトしてきてくれたおかげで、B小町のメンバーは三人になり、有馬ちゃんの知名度のおかげでB小町が再び動き始めた。とファンの人達がまた集まり始めてくれた。
その後もネットに動画投稿をしながら日夜、歌と踊りのレッスンに励んでいた。そしてついに斉藤社長がコネの力でジャパンアイドルフェス、通称JIFでのステージに立つことが出来るようになり、ついに明日、JIFでルビーたちの初ライブが行われる。
B小町の人気が無くなって、落ちぶれても、再びここまで来れたのは皆のおかげでもあるが、一番の功労者は何といってもメムだ。
メムはメンバーがたった一人になっても、ルビーがB小町に入るという願いをかなえるために、一人で歌い、踊り続けた。だけど現実は厳しく、俺や斉藤社長が裏で頑張っても、メムが頑張っても人気の低下は止めることができなかった。そこでミヤコさんが前々から進めていた企画のネットでのアイドル活動に方針を切り替えるようにしようと提案があった。
その提案に、俺もメムも斉藤社長もB小町が生き残れるなら何でもしようと賛同した。
その後、俺は撮影者兼マネージャーという形でメム、B小町を支えた。動画の企画の中には染髪やカラコンに挑戦という企画や角付きカチューシャを着けて特徴を得たりしていた結果、今の彼女は前よりも大分見た目が変わった。
そんな彼女を応援し続けてくれるファンが少なからずいてくれていたので、B小町は今まで生き残ることができた。
B小町を支えてくれたメムとファンには感謝しかないな。
そう思い俺は窓の外の夜空を見る。
今までのことを思い出しながら進めていた仕事に一区切りつけ少し休憩をはさむ。するとノックの音が聞こえ、扉が開かれた。
「親父、風呂空いたぞ。」
「空いたよ~。」
そう伝えに来てくれたのはアクアと娘の翠だ。
翠は五年前に生まれた俺とアイの間に生まれた子だ。
最初は翡翠と書いて「エメラルド」という名前をアイがつけようとしたが、「翡」という字が使えなかったことやアクアや俺の説得もあって翠と書いて「すい」という名前に決まった。
そして翠はアクアとルビーが異父兄妹ということまだ知らない。何故かと問われれば、翠はアクアやルビーの時と比べ、年相応の賢さだったからだ。なので翠に本当のことを話すとどこかで話してしまうかもしれないので、今はまだ話していないが、二十歳になるまでには話そうと思っている。
でもそんなことを話さなくたってアクアとルビーと翠は仲の良い兄妹だ。
「ありがとうアクア、翠をお風呂に入れてくれて。」
「別にこれくらい手伝うよ、JIFのことで最近大変だったんだろ?親父も明日に備えてしっかり寝とけよ。」
「おやすみ~パパ。」
「ああ、二人ともお休み。」
そういって二人は俺の仕事部屋から出ていく。
翠が生まれてからアクアは家事を手伝ってくれたり、翠の面倒を見てくれるもよく見てくれる。良くできた自慢の息子だ。と思っていると入れ替わるようにアイが部屋に入ってきた。
「ねぇ将也、お風呂入ろ。」
「ああ、すぐ行くよ。」
アイの誘いに答え、俺とアイは二人で入浴することにした。
「ルビーの様子どうだった?」
俺はアイの背中を洗いながらルビーの様子を聞いてみる。今日は明日のJIFに向けてB小町の三人が最後の練習をして、そのまま事務所に泊まることになったので、直接顔を合わせていない。なので先程まで電話で話をしていたアイに聞いてみることにした。
「う~ん、特に緊張した様子はなかったけど、もしかしたら本番直前に緊張し始めちゃうかも。」
「そうか、ルビーはそういう感じか・・。流すぞ。」
そういう子は何度か見てきた。緊張しない子ほど、直前になって過度な緊張をしてしまう子。そういう時は大抵、仲間の子が何とかしてくれる。
「心配?」
「多少はな、でも場慣れしてるメムと有馬ちゃんがいるから大丈夫だろ。」
「何だか適当だね~。ありがと、変わるね。」
「信頼してると言ってくれ。」
そう答えて俺はアイにボディタオルを渡す。
「まったくもう、自分の娘の晴れ舞台なんだよ?」
アイは心地よく感じる力加減で俺の背中を洗ってくれる。
「アイの子でもあるからな、きっとうまくやるさ。」
「ふ~ん。 流すよ~。」
体を洗い終わった俺達は二人で浴槽に浸かる。アイは俺の胡坐をかいた足の上に座り上半身は俺に預ける形で座っている。風呂に使ってからはお互い口を開くことはなく、ただその日の疲れをお湯に溶かすように癒すことに集中する。
俺達は話し始めるとついつい長風呂になってしまうので、アイは健康や美肌を保つために風呂に使っているときはあまり話しかけてこない。その分、無言で頭を摺り寄せたりして甘えてくる。毎日一緒に風呂に入るようになってからこういうことをしてくる。もう可愛いとしか言いようがない。だから俺もついついアイに抱き着いて甘えてしまう。
時間が十分と経たないうちにアイは
「続きはまた後でね♡」
そう言って先に風呂から上がった。俺もアイに続いて風呂から上がる。俺は体を拭くだけでいいのだが、アイはドライヤーで髪を乾かしたり、寝る前にスキンケアをしたりとやることが多い。その間俺は俺とアイの寝室で窓を開けて、夜風を浴びながら、空を見上げながらアイを待つ。
しばらくすると、支度を終えたアイが来た。
「お待たせ~。それじゃあ寝よっか。」
「おう。」
そう言って俺とアイは一緒にベッドに入る。布団をかぶればすぐにアイが俺の胸に顔をうずめに抱き着いてくる。俺は愛が抱き着きやすいように横向きになってアイを抱きしめる。
「エへへ♪」
いつもしていることだけど毎回アイはうれしそうに笑ってくれる。その笑顔が愛おしくてたまらない。
「あ、そうだ。」
「どうした?」
「そういえば私、まだ将也にお願い事いってなかったぁ・・って。」
「・・・ああ、そういえばまだ聞いてなかったな。」
いうこと聞かせれる立場の俺としては忘れたままでも構わないのだが、約束は約束だ。
「あの時はまだ内緒って言ってたけど、何をお願いするつもりだったんだ?」
「う~ん、実は将也がもう叶えちゃってるから、別のお願いになるんだけどそれでもいい?」
「ああ、いいぞ。」
「え~とねぇ・・・」
アイは俺を見ながら少し照れた表情を見せる。
え?何?恥ずかしい願い事なの?
「私のことこれからもずっと愛し続けて。」
意外というかなんというか、結婚式の時に誓ったことをアイはお願いしてきた。
俺はアイの願い事にキスで答え
「愛してる、アイ。」
「私も愛してる。」
そういった後、再びキスをする。
「でもなんで今更?」
「実はお願いごとは結婚してって言おうと思ってたけど、何だか言わなくっても結婚してくれるってわかっちゃったから、別に言わなくってもいいかなぁ~って何か別のことお願いしようと思ってたら今まで忘れちゃってた。」
「お前なぁ・・・。」
少し呆れるが、それでもアイを愛おしいと思う気持ちは揺るがない。
約束をしたあの日、俺は「愛」とは何か知ることが俺の勝つ条件だった。
正直に言えば、まだ言語化できていない。
目の前に愛する人がいて、愛してることも愛されていることも自覚できているのに、未だに愛とは何かと問われたら、答えることは難しいだろう。
それでも俺は求め続けると思う。「愛」の意味を。
意味なんて無いかもしれない。ただの自己満足ともいえる。
愛してる。
この気持ちを分かったと言って終わらせたくないだけかもしれない。
アイを愛し続ける。その願いを叶えてあげたい。
「アイ。」
「な~に?・・・ッン・・・もう♡どうしたの♡」
俺はアイにキスをする。
「愛し続けてって今言っただろ。」
「そういう意味だけじゃないのに・・・。」
「知ってる。」
「しょうがないなぁ。」
そういいながらもアイはもう一度俺とキスしてくれた。愛を伝え合うことが嬉しくて互いに微笑む。
俺とアイはこれからもずっと言葉で、行動で、心で、伝え続ける。
この気持ちを表すたった一言、
「「愛してる。」」
サブタイトルで分かった方もいると思いますが、今回が最終回となります。
ここまで読んでくれた方、感想を書いてくれた方、誤字脱字等の修正に協力してくれた皆々様ありがとうございました。
初めて小説を書いた感想は、語彙力の無さを実感した事と、小説(妄想全開)書くの楽しいと思いましたね。・・・・何度バッドエンドで投げ出してやろうかとも思いました。
実はこの作品を書いてる途中で、別の作品も書いてみたいという欲求が沸いたので、いつになるかわかりませんが、また妄想全開な作品を書こうと思います。
二つ目と三つ目は原作が違う作品を書こうと思いますので、ここでは言えないのですが(言っていいのかわからない。)、四つ目に書きたいのはこの作品の世界観そのままにした寿みなみをヒロインにした作品を書こうと思ってます。
アフターとも言えるかもしれませんが、主人公は別になるのでifルートとかではないので、ご安心ください。
ただ、ある程度書き上げてからの投稿になると思うので、作品を出すのは遅くなると思います。
今のところ伝えておくことはこれくらいだと思うので後書きは以上となります。
何か質問等ありましたら、感想でお聞かせください。