星野と再会したあの日から数週間がたった。
あの日から星野はちょくちょく俺の家に転がり込むようになった。そういう日は大体仕事の愚痴を聞いたり、小学生の時みたいに無駄な内容が大半を占めた雑談をしたり、俺が作る晩御飯をたかりに来ていた。今思えばもしや晩御飯を食べにくるのが目的なんじゃないかと疑ってしまう。
そしていつも斉藤社長が星野を強制的に連れ帰るまでがその日の決まりだといっても過言ではないだろう。いつもお疲れ様です、斎藤社長。
ちなみと言っては何だが俺は料理するのは嫌いではない。むしろ好きなほうだ。料理は実家にいた頃、毎日のように作っていたから、一人暮らしになっても苦にはならない。むしろ前は家族四人分作っていたのに対し、今は俺の分だけか星野が食べに来れば二人分だけなので、作る量は減っているので楽になっている。
さらに創作料理、自分の思いつくままに料理をアレンジしてみたり、オリジナルに挑戦するのはなんと楽しいことか。それに加え星野が晩御飯を食べに来た時に感想が聞けるのは嬉しかったりする。実家では家族からの感想は無言か不味いのどちらかだけだったが、
星野は「天城君。これすごくおいしーよ!」と褒めてくれたり、
「あはは!なにコレ!マズッ!」と言いながらも出された料理はキチンと完食してくれるので、作り甲斐がある。
・・・・まぁ不味い料理を毎回出すわけにもいかないので、星野が食べにくるに即興で創作料理をするのはやめておこう。
そんな感じで俺は春休みを満喫していたが、休みの日も昨日で終わりを迎え、今日は高校の入学式だ。俺の通う高校はいわゆる偏差値の低い高校である。隠したり自慢することではないが平たく言えば俺は馬鹿の部類に入る人間だ。そう思うと星野は高校をどうしているのだろう?いつか聞いてみるのもいいかもしれない。そう思いながら俺は高校への通学路を歩いていく。
そして今日からお世話になる高校についた。校門を潜るとすぐに案内役の先生に名前を確認される。
「おはよう。名前を教えてもらえるかい?」
「おはようございます。天城 将也です。」
「天城君だね。え・・・と・・あったあった。君のクラスは二組だ。教室は二階にあるからそこで式が始まるまで席に座ってまっていなさい。それと昇降口の下駄箱と教室の机に君の名前が書いてあるシールが貼ってあるからそれを使いなさい。」
「はい。わかりました。」
「入学おめでとう。」と、笑顔で案内役の先生に賛辞の言葉を贈られたので、
「ありがとうございます。」と答えた。
そこからは案内役の先生に言われた通りに指定された下駄箱で靴を履き替え、校内へ入り、階段を使い、二階へ上がっていく。その階で二組の教室を教室プレートを見ながら探す。
「ここか・・。」
自分の教室を見つけ、俺は緊張と胸の高鳴りを秘め、意を決して教室に入る。そこにはすでに十数名のクラスメートたちが先に来ていて各々雑談を楽しんでいた。俺はそんなクラスメート達を横目に自分の席を探し、着席して入学式が始まるのを待つ。
そうして待つこと数十分、俺が来てからも十数名教室に入ってきて各々自分の席に着席していく。教室の席が埋まってから間もなく案内役の先生からの指示にしたがいつつ、入学生全員で入学式へ向かった。
式が始まれば、ずっと校長の話だったり、よく知らない議員の代理の人の賛辞の言葉だったりと、退屈の極みなことこの上ない。そんなことを思っていたら式は終わり、教室に戻ってきた。
その後は自己紹介、担任の挨拶、注意事項だったりと担任の先生が事を運んでいく。担任の先生が最後の連絡事項を俺たちに伝え終えると「今日はこのまま下校してよし。明日からよろしく。」と簡単に言い、教室から去っていく。クラスメートたちが下校し始める中で俺は担任の先生を追いかけ呼び止める。
「すみません先生。」
「ん?どうした天城。」と足を止めて振り返る先生。
「先生、俺、アルバイトをしたいので、申請用紙をくれませんか?」
「そうか、わかった。申請用紙は職員室にあるからな、ついてきなさい。」
と言われついていき、職員室の前で待たされるが、先生はすぐに申請用紙を持ってきてくれた。
「ほら、これが申請用紙だ。バイト先が決まったら、これに勤め先の住所を書いて提出しなさい。」
「はい。わかりました。」
「まぁ働くのはいい経験になるだろうが、君はまだ学生だ。学生の本文をわすれないように。」と、くぎを刺され
「はい。気を付けます。」
そう返事した後、俺はカバンを取りに教室に戻り、荷物をまとめ、下校する。
校門を出た後、スマホで現時刻を確認すると、まだ昼前だ。帰りに昼食でも済ませようと思ったが、近くのコンビニでバイトの求人雑誌を貰っていくついでに、コンビニ弁当とお茶とアルバイトの面接で使うであろう数枚入りの履歴書を買って帰宅することにした。
家に帰ってきた俺は誰もいない部屋に向かって「ただいま。」とつぶやくように言い放った後、キッチンにある電子レンジでコンビニ弁当を温めながら、バイトの求人雑誌を読み始める。そのまま俺は行儀が悪いとは思いつつも求人雑誌を読みながらコンビニ弁当を食べつつ、気になるバイト先を赤ペンで印を付けていった。
昼食を雑に終えた俺は印のをつけたバイト先を見比べていき、近所にある代行サービスの求人に目が止まる。業務内容には車の運転の代行のほかに家事の代行などいろいろな代行をしている人のサポート役らしい。初心者歓迎、高校生可、未経験者OKと資格、条件の項目にも書いてあったので、俺はさっそくこの代行サービスをしている会社「(有)なんでも代行屋」に電話してみることにした。
「はい。お電話ありがとうございます。なんでも代行屋です~。」
「すみません。バイトの求人雑誌をみて電話したんですけど。」
「ああ、はい!バイト希望の方ですね。ではお名前と連絡先、面接希望の日を教えてもらってもよろしいですか?」
と相手の質問に答えていき、この後すぐに面接をすることになった俺は履歴書をすぐに書き、身支度を整えて、面接に向かった。
その後は以外とトントン拍子にことが運び、来週からバイトすることが決定した。
こうして俺の高校生活の日々が始まった。
そして高校生活が始まってから十日程たったある日の夜、今日も星野は俺の部屋に来て晩御飯をたかりに来た。
すでに星野が晩御飯をたかりに来るのに慣れた俺は、素早い手付きで晩御飯を作り上げていく。まぁ大体は昨日使わなかった食材や余り物を応用するだけなので大して手間はかからなった。
晩御飯の片づけまで終えた俺はいつものように星野と雑談を楽しんでいた時、星野は思い出したように俺に質問をしてきた。
「そーいえばさ、天城君はどう?あの時の約束の答え、もうわかった?」
と聞いてきた。特に進展がなかった俺は素直に答えた。
「いや、まだ全然だよ。色々・・とは言っても恋愛ものを中心に色んなものを見てはいるけど、大体は同じだったり、似た感じでどうにも理解しにくくてな。星野はどうなんだ?」
「私も似た感じかなー?やっぱり「愛」ってよくわからないや。」
「そうか・・。」
星野も自分なりのやり方で頑張ってはいるのだろう、なんて思っていれば
「そういば今日のレッスンでねー・・。」
と次の話題に進める星野と再び雑談を楽しむのだった。
星野が帰った後、俺は風呂に浸かりながら、先程話していた競争の約束について思い出していた。
「やっぱり恋愛とか実際にしてみないとわからないものなのかなぁ。」
そう呟き、俺が自分が誰かとデートしたり、恋愛する様子を想像するがいまいちピンとこない。だが自分の妄想とはいえ、恋愛をしている相手が星野だと気が付いたときに我に返る。
「いやダメだろ・・。」
星野は友達だ、そして何よりアイドルなのだ。
きっと恋愛なんてご法度だろう。
そう自分に言い聞かせて、風呂から上がり、いつものように恋愛ものの作品を読み漁る。今読んでいるものは小説ではなく漫画だ。
「やっぱりよくわからんな・・。」
そういいながら俺はスマホの電子書籍のアプリを閉じ、時計を見て時間を確認すると、もうすぐ日付が変わる時間だ。
「今日はもう寝るか・・・。」
俺はスマホでいつも目覚まし時計として使っているアラームを設定し、布団に入り、俺は「愛」というものをもしかしたら一生理解できないのではないだろうか?という不安を抱きながら、眠りに落ちていった。