アイ(愛)を求めて   作:頭お菓子いエクレア

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過ちと歪

 

・視点変更「星野 アイ」

 

 私はきっと今日という日を後悔するのかも知れない。

 

そう思いながら私はあの人を待っていた。

天城君と再会してから四か月?五か月目だろうか、結構な日にちが経っていた。

 

 彼への思いは日々募っていった。私がどん底にいた日々に一緒にいてくれた彼。

 

忘れてもおかしくはない口約束を今でも忘れずにいてくれた彼。

 

彼の家に急に押しかけても、嫌な顔せずに迎えてくれる彼。

最近はアルバイトでいない日もあった。それの日はちょっとさみしかったなぁ。

 

でも変わらずにいてくれ彼にいつかこの思いを伝えたい。

 

でも怖かった。

 

この気持ちが嘘だったらどうしようって。

 

だから私は嘘をつき続けた。

 

「嘘が本当に」

 

この言葉を信じ続けてきた。

 

アイドルになって「愛してる。」ってファンの皆に嘘を振りまいてきた。

 

でも未だに私は誰かを愛してると思えてはいない。

 

ならば手段を増やそうと思った。

 

母親の子供に対する無償の「愛」

 

母親に捨てられた私が言うのもなんだが、母親になれば子供を愛せると思った。

 

彼への思いと母親の無償の「愛」が同じ「愛」だとは思わないけど、きっと彼への思いの手がかりになると思った。

 

 だけど彼に迷惑をかけたくない私は利害の一致したあの人と過ち犯す。

あの人は嘘の私しか知らない。

それでいい、本当の私は彼にしか見せたくない。

あの人も自分の目的の為だけに動いてる。それが何なのかは私にはわからない。知るつもりもない。

それでいい。

 

スマホでエゴサしながら頭の中で自分への言い訳をし続けて、彼への罪悪感をごまかしていると私と同じように変装をしたあの人がやってきた。

 

「やぁ、お待たせ。」

 

「別に、早く行きましょ。」

 

私たちは合流してすぐに目的の場所へ移動を開始する。

 

季節は夏、過ちという言葉が最も似合う季節

 

私は今日、この人、

「カミキヒカル」とひと夏の過ちを犯す。

 

 

・視点変更「星野 アイ」end

 

 

 

 照りつける日差しの中、夏休みという長期休暇にもかかわらず、俺は毎日のようにバイト先で働いていた。

 普段は夕方からシフトに入っているが夏休みということで、朝から夜まで働くことになったが、普段できない業務内容が増えた分挑戦心がくすぐられていた。それに働けばその分給料は増えるのは素直にうれしいし、給料を貰うということそれだけ責任を負うということ。そのプレッシャーは俺に程よい緊張感を持たせてくれた。とどのつまり、ここの仕事は楽しいのだ。

 

「戻りましたー。」

 

と俺は午前中の買い物代行の仕事を終えてきた。

 

「おう。おかえり。」

 

と最初に返事をしてくれたのはここ「(有)なんでも代行」の社長「火野 竜馬」さんだ。

 

「天城、このまま昼休憩に入ってこい。」と火野社長は俺に言う、

 

「はい。じゃあ休憩いただきます。」といって休憩室に向かう。

 

昼休憩は休憩室でインスタントラーメンを作り、そこで昼ご飯を食べて過ごし、片づけをして体を休める。休憩終了もタイマーがなったので、俺は午後の仕事に入る。

 

「休憩頂きました。」と言いながら仕事場に戻ってくる。

 

「おう。天城、この後は二階にいる黒鉄のサポートに入ってくれ。」

 

「わかりました。」

 

 そして俺は二階に向かう。一階は受付、事務所と休憩室になっていて二階は作業場とロッカールームだ。階段を昇って

 

「失礼します。」と言って作業場に入る。

 

「お!やっときたか!」と迎えてくれたのは「黒鉄 剛輝」さん。ここの唯一の正社員だ。ちなみに後パートが二人いるのだが、俺が休みの日に出社してくる人たちなので、研修の時以降顔を合わせてはいない。

 

「黒鉄さん。今日の午後の作業はなんですか?」と問う。

 

「今日はプラモ作りの代行だ。俺はパテの作業に集中するから、天城はランナーからの切り離しとゲート処理して、パーツごとに番号の付箋をつけておいてくれ。」

 

「はい。わかりました。」

 

作業量はプラモ五個分しかも制作難易度が高いのが二つ。これは集中してやらないと早く終わりそうにない。

 

「よし!」

 

俺は気合を入れて作業に集中した。

 

 

 

 

 

時計が夜七時頃を指したころ。

 

「ふぅー、今日はここまでだな。」と言って黒鉄さんが最後の作業を終わらせた。

 

「お疲れ様です・・。」

 

と意気消沈しながらもなんとか俺も作業を終わらせる。

 

「はははっ!疲れてんなぁ天城。もう今日は上がれ、明日は外の作業が多いからな、早めに帰って早く休んで体調を万全にしてこいよ。それと熱中症対策の為の帽子と水筒もってこいよ。」

 

「はい。わかりました。ではすみませんお先に失礼します。お疲れさまでした。」

 

「おう!おつかれさん!」

 

その後は火野社長にも挨拶をして、帰宅する。

 

「今日も疲れたな~。」といいながら、体を伸ばして軽くストレッチをして、帰路につく。

 

 今日の晩御飯はどうしようか?

星野は今日も来てくれるのだろうか?

そんな事を考えながら歩いていると、雲行きが怪しいことに気が付いたが、時すでに遅しと言わんばかりに夕立が一気に降ってきた。

 

「マジかよっ!」

 

 俺は激しい雨の中、走って帰ることにした。

最後の曲がり角を曲がってあとは一直線に走るだけと思って走っていると前には誰かが傘もささずに重い足取りで歩いていた。その人の後ろ姿は何回も見たことがあった。俺はもしかしてと思い話しかける。

 

「星野?」

 

その人は俺の声に反応して振り返って、

 

「天城・・君?」

 

「何やってんだよ。ほら早く行こうぜ、風邪ひくだろ。」

 

そう言いながら俺は星野の手を取り、一緒に走っていった。マンションの中まで逃げ込んできた俺は改めて星野の顔を見て少し驚いた。

今まで見たことないくらいに、いや、初めて会った時のように何もかもに絶望した暗然とした顔だった。

そんな星野を放って置くわけにいかないので、

 

「星野、ちょっと来い。」

 

俺は再び彼女の手を取り自分の部屋に連れ込んだ。

 

「タオル取ってくるから少し待ってろ。」

 

と言い、洗面所に向かい、先に風呂にお湯を張る。そのまま俺はタオルを二、三枚手に取り、星野のいる玄関に戻り、星野にタオル渡す。

 

「拭き終わったら、そのまま風呂に入ってこい。」

 

「・・・・・うん。」

 

星野は小さい声だが返事をしてくれた。

 俺はその場を離れ、自室で体を拭き、乾いた服に着替える。

自室から出た俺は星野が風呂に入ってくれたのを確認し、星野の着替えを用意しようとしたが、当然のことながら俺の家には女性用の衣類なんて持っていない。買い物をしに行こうとも思ったが、彼女を放ってはいけないので、

 

「すまん星野、悪いがお前の分の着替えは俺の服を使ってくれ。その・・下着とかは俺の新品のやつで代用してくれ。」

 

と入浴中の星野に言って洗面台に着替えを置いておく。一応新品だという証明のために未開封の状態で置いていった。

 

 そして俺は星野が風呂に入っている間に晩御飯を作る。とはいえ今の星野の状態でたくさん食べるかどうかわからない。なので俺は細かく切った野菜と肉のコンソメスープを作った。

 

 スープの完成と同時に星野が風呂から上がってくるも彼女の沈んだ表情は変わらない。

 

「さ、今度はこれを食って温まってくれ。」

 

「・・・ありがと。」

 

唯一の救いは星野が素直に言うことを聞いてくれることだった。

 

 二人で晩御飯を終えた後、

 

「じゃあ俺は風呂に入ってくるからな、自分の部屋に戻りたくなったら戻っても構わないからな。」

 

そう言い残し俺も入浴をするが、星野のことが心配で十分もしないうちに風呂から上がる。

 リビングに戻ると先ほどと変わらず、ソファーのいつもの位置に彼女は座っていた。

俺もいつもの場所、星野の隣に無言で腰掛ける。

長い沈黙の後、それ破ったのは星野からだった。

 

「・・・・何も聞かないの?」

 

「星野が話したくなってからでいいよ。」

 

「・・・・うん。」

 

彼女はそう答えた後、彼女は俺の胸に入り込んできた。

 

「星野?」

 

彼女は何も答えなかった。

次第に聞こえてくるのは彼女の泣き声だった。

 

必死に声を抑え、

 

悔しそうに、

 

何かを後悔するような泣き方だった。

 

そんな星野に俺ができるのは無言で抱きとめる事だけだった。

 

 

 

 

 

しばらくして泣き止んだ星野は自分の部屋に帰ると言って立ち上がった。

 

「天城君、今日はありがとね。」

 

「あぁ、気にするな。」

 

「・・うん。」

 

心なしか星野の表情は少し明るくなっていた。

 

「また来いよ。」

 

「また来るね。」

 

そういって星野は帰っていった。

 

次はいつ来てくれるのだろう。そんな期待とは裏腹に、

 

 

 

 

この夏に星野は俺の部屋に訪れることはなかった。

 

 

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