ゆるキャン△ 愛故に   作:狭間です

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1章 出会い編
【1】プロローグ


 

 

 

 目の前には、少女達が焚き火を囲む暖かな風景。マシュマロを焚き火に近付ける子もいれば、ココアを飲んでいる子もいる。皆それぞれ自由に過ごしている。とても楽しそうだ。

 

 僕は、こんな光景を見られるなんて、数ヶ月前には夢にも思わなかっただろうとコーヒーを飲みながら一人思い耽っている。

 

 すると、少女の1人と目が合う。彼女は輪の中から抜け出し、僕のそばに来てこう言った。

 

「優太さんと会えて、私本当に幸せだよ ♪ 」

 

「……あぁ、僕もだよ」

 

 我ながらなんて無愛想な返事だろうか。しかしその態度にも、彼女は特に気にすることなく満足そうな笑みを浮かべていた。

 この笑顔を見ていれば前に進めるような、そんな気がした。

 

 今まで神様の類は信用していなかったが、今でもあの時の出会いを神様に感謝したいと思った瞬間であった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 山梨県某SA

 

 

「……どうすればいいんだ」

 

 腕の中には突然飛び込んできたチワワが一匹。とてもリラックスした様子で座り込んでいた。まるで長い時を共に過ごしたかのような関係性にも見えるが、だがしかしそのチワワは青年の飼い犬では無い。

 

 つい数分前、サービスエリアの喫煙所で煙草を吸っていると突然見知らぬチワワが彼の腕に飛び込んできたのである。しばらくしても一切退く気配が無いので、喫煙所から離れたベンチに移動した。首輪もリードもつけているし、大方飼い主の元からエスケープしてきたのだろう。気が済んだら飼い主を探しに戻るか、それとも飼い主が探しに来るだろからととりあえず待機している。

 しかし、かれこれ15分ほど経っているがやはり退くつもりは無いらしい。

 

「……君の、飼い主はどこかな?」

 

「ワンッ」

 

 当然相手は犬なので返事が返ってくることは無く、目の前には楽しげな表情を全面に押し出したチワワが残る。こちらの困惑を打ち消すような空気を醸し出すチワワをゆっくりと撫でる。

 もういっそこのままでもいいかと、雲のない空に意識を向けようとした時だった

 

「ちくわ!」

 

 少女が息を切らしながらかけ寄ってくる。見たところ高校生くらいだろうか。どうやらこの犬の飼い主らしい。

 

「見つけてくださって、本当にありがとうございます!」

 

 私は特に探したりはしていないのだが、まぁいいだろう。犬(ちくわと言う名前らしい)を彼女に手渡すと、少女は何度もお礼を口にした。

 その後少女の両親も追いついて、一緒に飼い犬との再会を喜んでいた。

 

「……いえ、では私はもう行きますので」

 

「あ、ちょっと待って下さい!」

 

 どことなくいたたまれなくなった私は足早にその場を去ろうとするも、少女に引き止められる。

 

「私、斉藤恵那って言います。何度目か分かりませんが、うちのちくわを助けてくれて、本当にありがとうございます!もしまた会えたら何かお礼をさせてください!」

 

 少し躊躇ったような表情を見せてからそう告げた少女は斉藤さんと言うらしい。一家はちくわを連れて停めてある車まで帰って行った。

 それを私は無表情で見つめていた。特に何を思うわけでもなく。

 

 それが彼女との初めての出会いだった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 どこから話そうか、あの時の私、瑞浪優太は誰に対してもとても無愛想な人間だった。しかし、幼い頃からこんなにも無感情だった訳では無い。両親と共に岐阜にある一軒家に住み、日々学校に通い、休日には両親とキャンプに行く、どこにでもいる普通の少年だった。美人な母と面倒見の良い父に一人っ子として育てられた私は、その愛を惜しげも無く注がれていた事だろう。

 しかしその夢のような時間はは、あの日に終わることになる。

 

 私が小学四年生だった時に両親が他界し一人になった。不幸な事故だった。

 親子三人で夕飯の買い物に出かけた帰り、私たちの乗っている車にトラックが突っ込んだ。通行人の叫び声や救急隊員が大声が脳に響く。

 意識が朦朧とする中でも両親の最後の声だけが鮮明に残っている。それは普段から両親が口癖の様に言っていた言葉だった。

 

「……優太…………しっかり、生きなさい……」

 

 その後、病院で目覚めた私のそばには祖父母が居た。両親はもう居なかった。

 

 私は一ヶ月ほど入院していたためよくは知らないが、その間に葬式が行われたらしい。父の会社の関係者や母親の友人などが何人も来たそうだ。2人ともよっぽど人に好かれていたようで、その息子である私を見舞いに何人も病室にやってきた。それからと言うものの、感情を表に出すのが苦手になっていた。

 

 

 

 名古屋で暮らす祖父母が私を引き取ってから、いつもとあまり変わらない日常が再開した。学校に行き、食事を取り、眠る。ただ1つ違うのがそこに両親は居ないことだ。

 

 それ以外の時間は基本的に私用に宛てがわれた和室に篭っていた。それでも祖父母が根気強く話しかけてくれたおかげで、新たに二つのことをできるようになった。

 

 ひとつが料理だ。祖母の手伝いをして料理をすることを学んだ。

 もうひとつは単車の運転だ。父の形見の単車を祖父は大事に保管してくれていた。それを見た私の顔に何かを感じたのか、祖父は自動二輪の免許を取らせてくれた。早生まれだったのと、成績が優秀だったのが幸いし、高校在学中に免許を取得することが出来た。私の通っていた高校が珍しく在学中にも免許の取得が許可されていたのも奇跡のようなものだ。

 

 

 その後高校卒業、そして大学入学を機に、両親の故郷である山梨で一人暮らしをすることになった。山梨の大学を志望したのは、祖父の勧めだった。

 

 父の形見である単車に乗り下宿先のアパートに向かう。私の荷物は少なかった。特筆すべきものと言えば、事故のあったあの日、母が作るはずだった夕飯の献立表くらいだろうか。

 

 大学に入学してからもう一年経つが感情を出すのが上手くなる気配は無い。今日も講義とアルバイトを終え、家に帰るとポケットから手のひらサイズの箱とジッポライターを取り出す。ゆっくりと部屋の中を歩きながらアパートのベランダに出て、父の吸っていた煙草と同じ銘柄の物を吸う。最初は咳き込んで不味いだけだったそれだが、今ではもう慣れてしまった。特に吸いたくて堪らないということは無いが、今は亡き父との繋がりを感じられるような気がして手放せない。

 

「さぁ、夕飯食べるか」

 

 思いを馳せながら煙草を燻らせていると、気付けばフィルター手前まで火が迫っていた。携帯灰皿へ手元に残った短い煙草を押し込み、部屋へと戻る。毎日、生きるために惰性で作る料理もさすがに手慣れてきた。

 

 今日もいつもの焼き魚の定食を作る。

 

 




 初めまして。ハザマと申します。この小説を開いて下さりありがとうございます。さっさと恵那とイチャラブさせたいので頑張ります。
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