(あれから優太さんに会えずクリスマスキャンプ当日を迎えてしまった……)
面と向かって伝えられた告白の返事を、LIMEの文面や通話越しにするのもおかしいと思った私は、彼に会うためにいつもの散歩道をほぼ毎日歩いていたが会うことは叶わなかった。
家に直接行くことも考えたが、インターホンを押してから彼が出てくるまでの時間を我慢出来る気がしなかったし、それまでどんな顔で待っていればいいのかも分からなかった。
散歩道でいつものようにばったりと会えば、勢いでそのまま返事ができるだろうとタカをくくってた私を嘲笑うように会うことは無くなった。幸運の女神は私の事を見放したらしい。
昨日準備したキャンプギアと隠し球のパーティグッズを車に載せながら理不尽にも神様を呪った私は、ちくわとともにお父さんの車に乗り込むのだった。
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あの出来事から数日後、とうとうクリスマスキャンプの日がやってきてしまった。アルバイトや大学の講義の都合でいつもの散歩の時間を前後してしまったためか、恵那さんと会うこともままならなかった。
特に返事を催促するつもりも無かったし、家まで行って聞くというのはどう考えても非常識だ。もしかして嫌われてしまっただろうかと予想するが、私一人で考えても仕方がない。後は野となれ山となれ、待つだけだ。
(少し早く来すぎたかな)
今回の会場である富士山が一望できるキャンプ場に到着した私はヘルメットを外し、ニット帽を被りながら管理棟に向かう。
「鳥羽、せんせい」
「それ名前と違うで」
「しまりんって何て苗字だっけ」
「上半分が苗字や」
受付に行くと少女が二人が名前を記入しながらやり取りをしている。そのすぐ側には引率の女性だろうか、一歩引いたところで彼女らを見守っていた。
「……こんにちは」
「あ! おにーさん、久しぶり〜」
「ちょうど良かった! お兄さんの名前漢字でどう書くんですか?」
「それこそLIMEに書いてあるやん」
「……大丈夫ですよ、瑞浪市の瑞浪に、優しいに太いと書いて優太です」
「「ありがとう!」」
再び受付票に向き合った彼女らを確認すると、横に立っていた女性に向き直る。
「……初めまして、瑞浪優太と申します。本日はよろしくお願いします。」
「初めまして、お話は生徒たちから聞いています。志摩さんを助けて下さったのも貴方なんですよね。本当にお世話になりました。改めまして、野外活動サークルの顧問をしています、鳥羽美波と申します」
丁寧な所作でお辞儀をする彼女に私も会釈を返す。しっかりとした印象が見受けられる彼女だからこそ、元気の有り余る彼女等の顧問として抜擢されたのだろう。とても頼りがいのありそうな人だ。
「キャンプ代一人2180円やって〜」
「……受付ありがとうございます」
端数分お会計を少し多めに払った私は、彼女たちと共にサイトへ向かいテントの設営を行った。
「風呂つき富士山つきのナイスなキャンプ場がこんな所にあったなんてなぁ」
「さすがプロキャンパーしまりん」
「ほんまやでー」
「だが、ちょっと早く着きすぎたかな」
「急にはよ行きたいって言い出したのあきやないの、みんなには二時現地集合って言うてあったやん」
そんな事を言いながらじゃれあっている彼女らを見ていると、こちらにその話題の矛先が向かってきた。
「おにーさん! すぐ近くにじゅかいの牧場ってあったやん? せっかくやし、ウチらと牧場スイーツ食べに行かへん?」
「おー! いいねー!!」
突然の誘いだったが集合時間の二時までまだ時間がある。少しくらい間食をしても許されるだろう。
「……良いですよ」
「おっしゃー! 早速先生に車出してもらおうぜ!!」
「せやな!!」
ジュー
(も、もう始めとるーー……)
意気揚々と先生の元へ駆け寄った彼女らが見たのはビールを片手に何かを焼いている先生の姿だった。
恐ろしく早い飲酒、その場にいた全員が見逃したようで微妙な空気が漂う。
「……歩きましょうか」
「「せやな(そうだな)」」
「いってらっしゃーい」
見送る先生を背中に牧場に向かって歩き出す。さっきまでのしっかりとした印象は幻想だったのかもしれない。第一印象だったとはいえ、いくらなんでも崩れるのが早すぎではないだろうか。
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「アイス代まで払っもらって、ありがとうございます!」
「ほんまにありがとうな〜」
「……いえ、かまいませんよ」
「これが大学生の余裕か……!」
「かっこよすぎるやろ……!」
何やらおかしなことを言っている彼女達から感謝を受けると、そろそろ集合の時間が近付いてくる。他の人達ももう来ているかもしれないし、戻ろうと思った時に、通り道に積み上げられている薪が目に入る。
何と薪が一束300円という破格で売られていたのだ。これ幸いとそれを四つ購入した私たちは、買ったはいいもののどうやってテントまで運ぼうか途方に暮れていた。
先生に車で運んで貰おうと思ったが彼女は既に飲酒しているため運転することはできない。本当に何をやっているんだあの教師は。
悩んだ結果、志摩さんに原付で運んでもらうという案を思いついたらしい大垣さんは直ぐに連絡するのだった。
ついさっきキャンプ場に到着したらしい志摩さんと合流し、彼女のビーノに薪を載せる。ひとつは私が手で持っていくために残すも、三束も薪を載せたビーノは明らかに重量過多であることがわかった。
「いやぁ態々運ばせちゃって悪いなぁ」
なんてことを言っている大垣さんの前に一束下ろして出発する志摩さん。
「あれっ? しまりーん、一束忘れてるぞーーっ!」
「重すぎるからそれは大垣が持ってきてー」
「……」
立ち尽くす彼女が流石に不憫に思えたので私も声をかける。
「……そっちも、持ちましょうか?」
「……イエ、ガンバリマス」
「ふぎぎぎ」
テントまでの帰り道、呻き声を上げながら大垣さんは薪を運ぶのだった。何度か私が持つことを提案したのだが、その度に私の仕事なのでと言われてしまったらもう見守るしかないだろう。
来る時より少し荷物が私たち三人はゆっくりと元来た道を歩くのだった。
区切りまで残り僅かになってまいりました。あと少しお付き合い下さい。皆様からの感想、評価等お待ちしております!