ゆるキャン△ 愛故に   作:狭間です

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 深夜テンションで書き上げました。どうぞ!


幕間 卒業

 

 

 

 

「はい、チーズ」

 

カシャッ

 

 遂に卒業を迎えた恵那達。僕は今、卒業式と書かれた大きな看板の前で野クルの面々+恵那の集合写真を撮っている。あれだけ一緒に居たのに、結局恵那は最後まで正式に野外活動サークルに加入することは無かったらしい。まぁそんなことで彼女らの関係が変わることは無いし、マイペースな恵那にとってはこの距離感が心地良かったのだろう。

 

 さて、卒業式と言えば桜のイメージが強いかもしれないが、実際に式があるのは三月下旬。全国的にも開花が始まるのは四月からが本番のため、その例に漏れず本栖高校正門のそれも、未だ開花することなくその鳴りを潜めていた。

 

 皆それぞれの夢を叶えるために進学する事になったが、特に心配はしていない。卒業後もこの関係は続くだろうし、彼女らもそれが分かっているようだ。卒業式だというのに、特に涙を見せることなく、楽しげに時間を過ごしている。

 

「でもまさか優太さんと恵那ちゃんが付き合ってたなんて」

 

「あはは〜、まいったねぇ ♪ 」

 

「……それ、最後まで気付いてなかったのなでしこだけだぞ」

 

「えぇぇ?! そうなのリンちゃん?!」

 

「なでしこは最後まで気付かなかったなぁ」

 

「まぁ二番目に遅かった千明が言えることちゃうけどな」

 

 どうやら僕らの話で盛り上がっているようだ。クリスマスキャンプでの出来事があったため志摩さんは知っていたが、やはり犬山さんは勘が鋭いようで年を越す頃には自ずと事実に辿り着いていたようだ。特に隠そうとしていたつもりは無かったためいつかは気付かれるだろうとは思っていたが、ここまで早いとは思わなかった。

 

 それよりも意外だったのが各務原さんだ。あれだけ人の気持ちに敏感なはずの彼女だったが、恋愛に関してはそのセンサーが発揮されることはなかったのだろう。春休みには一緒にアルバイトをしたり、恵那と居る時間は長かったはずだが。

 

「あ! 優太さんも一緒に撮ろ!」

 

「せやなぁ ♪ せっかくやし皆で撮ろや!」

 

「さっき鳥羽先生あっちの方で見かけたよ」

 

「本当かシマリン?! ちょっくら行ってくる!」

 

 もうすっかりはしゃぎ切っているようで、大垣さんはぶつからない程度の猛ダッシュで人混みの中に消えていく。鳥羽先生を見つけるやいなや、彼女は先生の腕を引っ張ってこちらへ連れてきた。

 

「お待たせしました」

 

「「せんせぇおそーい」」

 

「ごめんなさいね、他の子達に捕まっちゃって」

 

「ほらほら、優太さんもこっち来や!」

 

 そう言うと犬山さんは僕の手を取り恵那の横へと誘導した。たまたま通りかかった大町先生(登山部の顧問らしい)に持っていたカメラを渡す。大垣さん、犬山さん、僕、恵那、志摩さん、各務原さん、そして鳥羽先生の順番に並ぶ。はずだったが、やれ誰の肘がみぞおちに入っただのわちゃわちゃしているうちに、特に順番を気にする事も無くなった。

 

「そろそろ撮りますよー、はい、チーズ」

 

 長々と待たせてしまった大町先生には少し申し訳なく思ったが、これから卒業してそれぞれ羽ばたいていく生徒たちの楽しげな様子を見て、彼は満足気な笑顔を浮かべていた。

 

 

 後から確認したその写真は統一感など一切無いものだったが、まるで運命のように繋がれたその関係を示すような、そんな不思議な纏まりを感じる。そんな写真だった。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「優太くん、恵那のためにわざわざありがとうね」

 

「娘さんの大事な卒業式にれ誘って頂きありがとうございます」

 

「何言ってるのよ今更、優太くんはもうウチの息子みたいなもんじゃない ♪ 」

 

 優しく声をかけてくれる斉藤夫妻に改めて感謝を述べる。ある程度交流を済ませた後も、彼女らはまだ話したりなかったようでずっと校門の前で話し込んでいた。女子高生達の華やかな空気に若干の手持ち無沙汰感を味わいかけていた時、タイミングを見計らったように斉藤家夫妻が僕を連れ出したのだ。

 恵那の卒業式には最初から行くつもりではあったものの、そこに男子大学生が一人で乗り込むのは流石にかなり抵抗があった。そんな時に斉藤家からもし良かったら一緒に行かないかという誘いがあったので、僕はすぐさまその提案を受けた。

 今日は朝から車にも乗せてもらい、お二人には本当に頭が上がらないなぁなんて思っていると、旦那さんは僕に向かって声をかける。

 

「優太くん」

 

「はい」

 

「これから恵那も高校を卒業して専門学校に通う。それから二年もすれば社会に入ることになるだろう。楽しいことだけじゃなくて、辛いことや苦しい事もあると思う。もちろん私達も最大限サポートするつもりだが、親の出来ることには限りがある。親だからこそ、打ち明けられない悩みがあるかもしれない。そんな時には君が、恵那を愛し、愛されている君が、娘を支えてあげて欲しい。改めて、優太くん。恵那のこと、よろしく頼むよ」

 

「はい、必ず」

 

「それは優太くん、あなたにも言えることなのよ?」

 

 僕の返事を聞き、隣にいた奥さんも口を開く。

 

「あなたが恵那を支えたいと思うように、恵那もあなたの事を支えてあげたいと思ってる。だから甘えるべき所は甘えないとダメよ? 全部一人で抱え込まないで、私たちを、恵那を頼りなさい」

 

「ですが、あまり迷惑をかけてしまうのも」

 

「言ったでしょ? 優太くんは、もうウチの息子みたいなものなのよ」

 

 

「……ありがとう……ございます」

 

 

 

 まるで本当の両親のような柔らかな笑顔を向けてくれる斉藤夫妻に胸がいっぱいになった。込み上げてくるものを押さえつけながら笑顔を浮かべ、そう口から漏らすのが精一杯だった。

 目元に感じる湿気に懐かしさを覚える。辛い時、悲しい時にしか感じることのなかったこの感覚が、今ではそれとは異なる感情によって、とめどなく溢れ出していた。

 

 それを止める術を僕は知らないし、止めようと思わなかった。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「改めて、卒業おめでとう、恵那」

 

「ありがとう、優太さん ♪ 」

 

 卒業式を終え、昼を過ぎた頃。別れを惜しみつつも解散となった後、恵那の希望により僕の下宿先でささやかな卒業パーティをする約束をしていたのだ。他の友人とはまた別日に改めて集まる予定を立てているらしい。何となく目的は分かっているものの、恵那をこちらに譲ってくれた事にとりあえず感謝しておく。

 

「今日でこの制服を着るのも最後かぁ」

 

「僕が恵那に会う時はほとんど私服だったから、逆に新鮮だったけどね」

 

「優太さんが着て欲しいって言えば今後も着るよ?」

 

「どことなく犯罪臭が香るからそういうのは程々にしようか」

 

 必死に彼女の魅力に抗いつつも平静を装う。

 

「とりあえずお昼食べてないでしょ、ご飯にしようか」

 

「そうだね、沢山お話したから私お腹すいちゃったよ」

 

 

 元から二人で集まる予定だったので、あらかじめ買っておいたアラカルトの詰め合わせを温める。近所のスーパーで買った出来合いのものだったが、どうやら満足してくれたらしい。

 会話に花を咲かせつつ食事を進め、最後に、注文しておいたケーキを冷蔵庫から出す。

 卒業おめでとう、と書かれたチョコプレートの乗った小さなケーキ。カーテンを閉め、部屋の電気を消す。数本刺さったロウソクに火をつけて彼女の前へ置くと、昼間でも幾分か暗くなった部屋で照らされる彼女の笑顔が照らされる。

 

「おいし〜 ♪ 」

 

「冬休みに行ったカフェで、ケーキの注文もしてたからさ」

 

「あそこか! 私達が行ったあと急に人気店になってなかなか行けなくなっちゃったよねぇ」

 

 ちなみに、初々しいカップルを見た客によって口コミが広まり、その後急激に客足が伸びたらしい。その人気に一役買っていたという事実に、この二人は気付くことはない。

 そんなケーキも残りは最後の一口といったところで、恵那はこんな提案をする。

 

「そうだ。ねぇ、優太さん、あーん ♪ 」

 

「……これ、恵那のためのケーキなんだけど」

 

「もうお腹いっぱいになっちゃったから、ほら、あーん ♪ 」

 

「……わかったよ」

 

 拒否権は無いようなので、笑顔で差し出されたフォークに口を近づける。予想より少し大きかったケーキに何とかかぶりつく。やはり全ては口に入り切らなかったようで、クリームが少しはみ出てしまった。口内に残ったケーキを飲み込むと、少しはしたないが、クリームを拭おうと僕は手を口に向けて動かす。

 

 しかし、その手は彼女によって押さえつけられた。

 

 何も言わずに彼女は、僕の口についた白いそれを拭き取る。そしてなんの躊躇もなく、それを自らの口へと運んだ。

 

 彼女は、艶やかな水音を鳴らしながら指を舐める。じっとこちらを見つめる瞳から逃れることは出来ない。

 

「……あまいね♡」

 

 

 

 気付いたら僕は仰向けになっていた。口から指を抜き取った彼女は、僕の肩に手を置くと、そっと力を込めて押し倒した。すぐ目の前には、蕩けきった彼女の顔がある。

 鈍感な僕でも、こんな状況になれば流石に理解る。

 

 

「約束、覚えてる?」

 

「もちろんさ」

 

「私、今日卒業したよ」

 

「うん」

 

「もう、高校生じゃないの」

 

 彼女はこちらにしなだれかかりながら、言葉と身体でゆっくりと僕の退路を絶っていく。耳元で囁かれる度に背筋がゾクゾクと震える。脳内を媚薬に浸されているような感覚に襲われながらも、必死に理性を保つ。

 

「……だから、いいよね♡」

 

「……」

 

「お母さん達には、今日は優太さんの家で泊まるって言ってあるから」

 

 最後の懸念点が解消される、されてしまった。つまり、もう本能を邪魔するものは何も無くなった。先程から感じている彼女の身体の柔らかさと、同じ人間とは思えない甘い香りが鼻に抜ける。

 

 彼女はとどめと言わんばかりに、吐息が当たるほど近い距離で最後の通告をする。

 

 

 

 

「私と一緒に、卒業シよ♡」

 

 

 自分の中で、何かが切れる音がした。

 

 

 

 




 続きはお預けです。書き上がり次第、別枠で投稿させて頂きます。ここまで続けて来ましたが、恵那ちゃんの事をちゃんと魅力的に書けているのか不安でなりません。是非、感想お聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。

 R18版も実験的に投稿致しましたので、興味がございましたらどうぞ。
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