ゆるキャン△ 愛故に   作:狭間です

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 暖かい言葉もあり、めげずに何とか次が描き上がりました。長くなってしまったので分けて投稿します。
 いつも誤字脱字報告ありがとうございます!改めて御礼申し上げます!


幕間 卒業旅行

 

 

 

 今日は野クルメンバーと共に長野県へ卒業キャンプに来ていた。

 

 と言っても、少し南下すれば愛知県に入るし、これまた少し西にズレれば岐阜県に入るという絶妙な位置だ。山梨から静岡を跨いで、志摩さんを除く野クルメンバーは鳥羽先生の車で、志摩さんは原付でやってきた。

 

 僕と言えばいつも通りバイクに乗り、志摩さんと二人で車を後ろから追いかける形で走行する。停車する度に車内から手を振る彼女らに返事をしつつ到着、オートキャンプ場だというのに様々な設備がしっかり整っており、夜には綺麗な星空が見えると評判のキャンプ場だった。

 

 卒業旅行にもみんなでキャンプとは、なんとも野外活動サークルらしい。

 

 

「それにしても立派なキャンプ場だなぁ」

 

「せっかくの卒業キャンプなんやから奮発しよう言うたのはアキやないの」

 

「いざ来てみると想像の五倍デカかった」

 

「リンちゃん! あっちに遊具スペースがあるよ!」

 

「あんまりはしゃぎ過ぎるなよ」

 

「受付しますから、あまり遠くに行かないでくださいね」

 

「「はーい」」

 

 鳥羽先生の合図で散り散りになろうとしていた数名を含め集合する。ふと横を見ればまた皆より若干大きめの荷物を持った恵那が佇んでいた。

 

「また何かサプライズグッズ持ってきたの?」

 

「あ、これ? ううん、今日はそういうのじゃないよ ♪ 」

 

「それは残念」

 

「でも、全く違うと言えば嘘になるかなぁ」

 

「どっちなんだい」

 

 ふわふわと回答を濁した彼女だったが、これ以上追求してもヒントは得られそうにない。それでも彼女はなんだか楽しそうだから良いだろう。

 

 

 

 

「ここを今日のキャンプ地とする!」

 

「お、各務原さん。そのセリフはあの番組のやつだね」

 

「えへへ〜 ♪ お姉ちゃんがこないだ見てたので言ってたんだ! これ、わたしも言ってみたかったんだぁ」

 

 (……着々と布教しているみたいですね)

 

 あの日付近の出来事を思い出すと、何故か体から力が抜ける。徹夜続きの数日だったため、かなりの体力を消費したという事だけは言っておく。

 

 番組の布教は身近な者から進めているようで、各務原さんも徐々に染まりつつあるようだ。

 

「さぁ、さっさとテント建てちまおうぜ!」

 

「皆でやればすぐ終わるだろうしね」

 

「さっすがシマリン! わかってるじゃねぇか!」

 

「大垣、ちょ、暑苦しいって」

 

 強引に肩を組まれ、若干苦しそうにしていた志摩さん。それでも彼女からは、本当に嫌がっている訳ではなく照れを隠しているような表情が伺える。

 

 以前まではソロキャンプが好きだった志摩さんも、だんだんグルキャンの魅力に気付きつつあるらしい。皆とじゃれ合いながら過ごす時間も悪くない、そんなふうに思えるようになったのはとても喜ばしいな。

 なんて、自分と彼女を重ねているようで何だか烏滸がましいだろうか。

 

「ほらそこー、イチャついてないではよ建てるで」

 

「あおいちゃん、リンちゃん達もだけどあっちも中々……」

 

「……せやなぁ」

 

 何故か各務原さんと犬山さんの両名がこちらを見ながらニヤニヤとしている。別に僕らはイチャついて居るつもりなど無いのだが。

 

「……無意識かいな」

 

「……二人ともいつもあんな感じだった?」

 

「最近また距離が近付いた気がするけど、だいたい同じ感じやで」

 

「……なんかあのレベルの二人に気付けなかったのちょっとショックなんだけどわたし」

 

 何やらよく分からない事を言っていたが、そろそろ僕らも手伝った方がいいだろう。今のところ全員手を止めてしまっているため鳥羽先生だけが働いている形になってしまっている。いくら卒業旅行とはいえ、負担を先生に押し付けてしまうのはよろしくない。出来る限りの手伝いをしよう。

 

 僕は恵那と繋いでいた手を離し、鳥羽先生と共にペグ打ちに勤しむのであった。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「恵那ちゃんも行こうよ!」

 

「うん、いいよ〜 ♪ 」

 

「優太さんはどうするん?」

 

「僕は荷物番しときます」

 

「もう既に酒が入ってるグビ姉を一人にするのは危なそうだしな」

 

「……だな」

 

「まらまら、あらしは飲めるわよぉ!」

 

「「「……」」」

 

 それじゃあ、いってきまぁす!

 

 そう元気よく言い放つと、各務原さんを先頭に野クルの面々は遊具スペースへと駆け出して行った。

 

 それにしても珍しい。酒好きとはいえ、以前はこんな数杯で呂律が回らなくなるほど酔うことは無かったはずだ。彼女も教え子の卒業旅行ということで、目的地へ無事着いたこともあり少し気が緩んでいるのだろうか。

 

「優太くん」

 

「鳥羽先生、大丈夫ですか?」

 

「ええ、まだそれほど飲んでませんから」

 

 気付けばほんのりと顔が赤いものの正気を取り戻した鳥羽先生が居た。

 

「……さっき呂律回って無かったじゃないですか」

 

「演技ですよ、演技」

 

「何故そんなことを……」

 

「私も優太くんと改めて話したかったんですよ」

 

「……そういうことでしたか」

 

 マグカップに注がれるラム酒を見ながら彼女の意図を理解する。もう春になっているとは言え、標高が高い場所はまだまだ冷える。こくりと酒を煽ると、冷えた体が芯から温まって行くのを感じる。

 

「優太くん、今日も皆さんのわがままに付き合ってもらってありがとうございます」

 

「いえ、そんな。わがままだなんて思っていませんよ。それに鳥羽先生こそ、休日までお疲れ様です」

 

「可愛い教え子なんですもの、それくらいへっちゃらです」

 

「……凄いですね」

 

「それに、私にとって優太くんも教え子のようなものですから」

 

「……僕は別に」

 

「あの子たちも君を慕っていましたから、まるで部活の先輩のように」

 

 そんなふうに思ってくれていたとは、知らなかった。

 

「私は優太くんのことを深くは知りません。それでも彼女たちから聞く話は、まるで先輩と過ごしているような楽しい話ばかり。性別も違えば年齢も違う、まして学校も全く違うあなたでも、彼女たちにとっては大切な友人だったんですよ」

「だから私にとってあなたが生徒だったとしても、なんら不思議な事は無いでしょう?」

 

「……」

 

「あの子たちも卒業してしまうし、優太くんと会うことも少なくなると思います。だから今日の卒業旅行は、優太くんも含めての卒業旅行なんです」

 

「なんだか、照れくさいですね。高校の頃の思い出とか、あまり無かったので」

 

「それなら良かったです。今日のことはあなたの高校時代の思い出としてカウントしていいですよ?」

 

「ありがとうございます」

 

「ということで、卒業祝いです。飲みましょう!」

 

「……高校時代でカウントするなら飲酒はアウトでは?」

 

「そんな細かいことどうでもいいんです! 年齢的にセーフなら法律もセーフ、つまり完全セーフ! んぐっ、んぐっ」

 

 わけの分からないことを言いながらラム酒を瓶ごと煽り始める鳥羽先生。真剣な顔から一転、いつものグビ姉の表装を取り戻した彼女は、ダボダボと偶に僕のマグに酒を注ぎつつ凄い勢いで飲んでいる。

 みるみるうちに一本目を空け終えると、カバンからもう一本取り出し栓を開ける。

 

「ふふふ、今日はどんな料理でもドンと来なさい!」

 

「前は忘れて大泣きしてましたもんね」

 

「あの時は本当に悔しかったのよ……!」

 

「そんなにですか……」

 

「あ、優太くんは無理しちゃダメですよ?」

 

「ちゃんと限界来る前に止めるので、お付き合いしますよ」

 

「そうですか? では……」

 

 

 

 遊具スペースから帰ってきた彼女らが目にするのは、大量の酒を飲んで眠りこけている鳥羽先生と、それに付き合って飲んで顔を赤くしながら椅子に座り込んでいる僕の二人組であった。

 

「うわ、酒臭っ」

 

「リン、そこのお水取ってくれる? ほら優太、大丈夫?」

 

「うぁ、ありがとう……」

 

「優太さんお顔真っ赤だよ?!」

 

「どうせグビ姉に飲まされたんだろ」

 

「災難やったなぁ」

 

 ふらふらする頭を何とか抑えつつ、恵那に差し出された水をゆっくり喉に流していく。先程より幾分かマシになった気がするが、まだ体は火照っている。

 暫くは行動不能だろう。酔った状態で刃物や火を扱うのは非常に危険だ。申し訳無いが、ここは彼女らに一任することにしよう。

 

 (あ゛ぁ〜……あつい……)

 

「「?!」」

 

 体が暑くてしょうがない。着ていた上着をはだけさせ、肌着を露出させる。涼しい空気が火照った体を冷やしていく。

 

 

 だかその様子は年頃の女子にとっては些か刺激が強かったようだ。

 

「あおいちゃん?! 優太さんなんか凄いえっちだよ?!」

 

「アカン、あれはアカンよ! なんかよぅわからんけど見ちゃいかんモン見てる気がする!」

 

 

「……まだあつい」

 

「がまんして」

 

 何故か若干むくれた様子の恵那に上着を戻される。何だか少し不機嫌になっているようだったので大人しく上着のジッパーを上げる。

 

「……シマリン」

 

「……大垣、言いたいことは分かるけどやめとこう」

 

「……そうだな」

 

 友人の独占欲強めな行動を間近で見てしまった彼女らは、何を言ってもこの状況が好転することは無さそうだったので口を噤むことを決めるのだった。

 

 

 




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