ゆるキャン△ 愛故に   作:狭間です

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【28】始動

 

 

 

「恵那ちゃんと優太さんは来れんて?」

 

「あぁ、恵那は今日は一日仕事だって。トリミングサロンなんて週末の方が忙しいんだろうな。優太さんはとりあえず最初は恵那と時間合わせるから今回は来ないらしい」

 

「……どんだけ仲ええねん」

 

 千明にかけられた号令によって集合していた私たちは、場所を移動してなでしこの実家で蟹を食べていた。実際は数名足らないが、久々に野クルのメンバーで集まれた事にみんなテンションが上がっている。

 

 

 あらかた食べ終えたところでなでしこの部屋へと会話の場を移し、そこで出されたお茶を一口啜る。

 

「ってことで、キャンプ場作りなんだけどさぁ」

 

「えらい唐突やな」

 

「キャンプ?! キャンプ場作るの?!」

 

「おちつけ、なでしこ」

 

 いきなり話を始めた千明にめっちゃ食いつくなでしこ。犬かお前は、待てだぞ。待て。

 

 いきなり何故こんな話になっているのかと言うと、それを説明するには少し時間を巻き戻さなければならない。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 仕事が終わった後、私は自宅のソファーでくつろぎながら次の休日にバイクで行けそうな場所を調べていた。

 そんな時にいきなり千明が今名古屋に居ると言うもんだから、名駅の居酒屋を探して二人で呑むことにしたのだ。

 

 久しぶりの再開で喜びが溢れ出していたのかつまみも酒も進む進む。あれやこれや思い出話をしているうちに話題は今の仕事のことへ。

 

「リンは今編集部だっけ? 仕事のは調子どうよ」

 

「まぁ、何とか。そっちこそ、イベント会社は?」

 

「私か? 私はなぁ…………辞めた!」

 

「えぇ?!」

 

 何かをもったいぶった彼女は、ジョッキを一気に空にして衝撃の事実を言い放った。しばらく連絡を取っていない間に何があったのだ。それを聞くまでもなく千明はつらつらと今の仕事について話し始めた。

 

「と言うか、結構前に転職して今は山梨」

 

「もどってるの?」

 

「どうもっ! 山梨観光推進機構の大垣です!」

 

 何やら聞いた事の無い長い名前が飛び出してきた。山梨、観光……推進? それは一体なんなのだろうか。

 

「とにかく山梨を盛り上げたい! 今メインでやってるのは高下地区の再開発。この辺さぁ数年前に潰れた施設があって、敷地も結構広いんだけど、廃墟にしとくのも勿体ないからそこで何かやれって、何か面白そうなんだけどさ、やるっつっても何するのーって話じゃん?」

 

 そうまくし立てた千明は私の肩に手を回しながらずっと自撮りを取っている。昔はシンプルに鬱陶しかったこの距離の近さも、もう慣れたもので特に不快感は無かった。

 話を聞きながら軽く考えた私は、ふと思いついたことを口に出してみる。

 

「……そんなに広い敷地なら、キャンプ場にでもすればいいじゃん」

 

「?!」

 

 と思い付きで私が言った案が、なにやら彼女の琴線に触れたようだ。急いで会計を済ませてタクシーに乗り込むと、なんとそのまま山梨の高下へ向かったのだった。

 タクシーのメーターがありえない額まで膨れ上がって行く様子を後部座席で見せつけられるというのはある種の拷問であった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 そんなこんなでなでしこの家で作戦会議をすることになったのだが、軽い気持ちで言った言葉がなんだか進みそうになっていることに焦りを覚える。

 

「前に言ってたの、ほんまにやるんや」

 

「あぁ、みんなも一緒にどうだ? リンは是非ともやりたいと言ってくれている!」

 

「いや、私は別に……」

 

「やるやる! 皆でキャンプ場作りなんてすっごく面白そう!」

 

「でも大変やないの? 私とアキは地元やけど、なでしこちゃんと優太さんは東京、恵那ちゃんは横浜、リンちゃんなんて名古屋やで……?」

 

「大丈夫、何とかなるよ!! ねっ? リンちゃん」

 

「えっ、あ、……うん」

 

 今回のキャンプ場作りで一番ネックになるであろう皆の職場のバラけという問題を何とかなるというパッションで片付けたなでしこだったが、元気に頷く彼女を見ていると、なんだか本当に大丈夫な様な気がしてくる。

 

「ようし! 恵那と優太さんからも参加OKの返事が来た

これで役者は揃ったな! 今日からこの六人で力を合わせ、キャンプ場作りを進めていく。そのために、私から役職を授けよう!」

 

「「「お?」」」

 

 全員の承諾が得られたことを確認できたらしい千明は、

意気揚々とこのプロジェクトを進める為に役職なるものを全員に言い渡すつもりらしい。

 元気に啖呵をきった彼女は、まず初めになでしこを指さして話を続ける。

 

「まず、なでしこは現場監督!」

 

「イヌ子はスケジュール管理!」

 

「恵那と優太さんは広報!」

 

「私はもろもろ裏方担当!」

 

「そして、キャンプ場の総合リーダーは……リンだっ!!」

 

(えぇ……?!)

 

 仕事は終わったと言わんばかりに腕を組んで満足気な表情を浮かべる千明と、あてがわれた役職についてそれぞれが話を始める。だがちょっと待って欲しい。

 

「ぴったりだろう? 私も一応、皆の適性を見て考えてるからなぁ」

 

「ちょ、ちょちょ、なんで私がリーダーなんだよ!」

 

 私がリーダーという人選が普通に理解できなかったので慌てて尋ねるも、何を言っているんだという顔を全員から向けられる。

 

「だって、キャンプ歴一番長いし」

 

「適任だろ?」

 

「キャンプと言えばリンちゃんだよ!」

 

 そう言われてしまうと反論の余地が無いかもしれない。いや何かある筈だ、リーダーという面倒くさそうな役職から逃げられる理由が何か……!

 

「よろしく頼むぜぇリーダー、なるべく迷惑がかからないようにするからさぁ」

 

「うぅむ……」

 

 羨望の眼差しを向けてくる三人を見ると、どうやら断るという選択肢を取ることは不可能らしい。このまま悩んでいても埒が明かないし、これだけ頼まれてしまったらやる以外無いだろう。

 

「はぁ…………わかったよ」

 

 首を縦に振った私は、総合リーダーという大層な名前の役職が与えられるのだった。

 

 

 




優太君は恵那ちゃんと一緒の広報担当になってもらいました。これが一番丸いかなって思います。
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