[なでしこに送って貰ってる]
[そう、ならリンも何かお礼をしないとね]
お母さんに連絡を済ませる。とりあえずみんなでキャンプ場を作るという事が決定した後、詳しい事は後日詰めていこうという話になり今日の所は解散することになった。
なでしこの家まで電車で来ていたため帰りもそうなるだろうと予想していたが、車で送ってくれると言うのでご好意に甘えさせて貰うことにした。
名古屋に住んでいると電車で殆どの場所へ行けてしまうため、普通自動車第一種運転免許という資格は未だ使われることなくその力を秘めたままにしていた。
「キャンプ場を作るなんて本当に出来るのかな」
「難しいこともあるかもしれないけど、新しいことを始めるのってなんだかワクワクしない?」
なでしこの言うことも一理ある。確かに不安もあるけど今はとても楽しみにしている自分に気付く。窓の外に視線を移した私は、久々に帰ってきた地元の風景が夕日に照らされる様をゆっくりと鑑賞していた。
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「そろそろ行こっか」
「そっかもうそんな時間か」
前日から泊まりに来ていた恵那と朝食を食べ、暫くだらけていると約束の時間が近付いてきた。僕は各務原さんと恵那とはいつも顔を合わせているが、他の面々と会うのは久しぶりだ。
恵那に至ってはみんなに会うのが本当に久しぶりなようで、昨日からずっと楽しみにしていた。今日の移動は彼女の車で行うことになっている。駐車場に停められた車に乗り込むと、山梨県庁に向かって発進させる。
「わざわざ車出してもらってありがとな」
「いいよ〜そんなの。一緒に行くのに私が車で優太がバイクで行くのも何か変じゃん。それに、せっかくなら二人でドライブしたかったしね〜 ♪ 」
そう言うと、山梨県庁までの道のりを二人は楽しみながら運転していく。事前に教えてもらった関係者用の駐車場に車を停めた我々は、県庁の入口に向かった。
そこには既に僕ら以外のメンバーが揃っていた。少し待たせてしまったかもしれないな。
「お待たせ〜、みんな久しぶり〜」
「お待たせしました」
「あ! 恵那ちゃんに優太さん!」
「お久しぶりです」
「ほんま久しぶりやなぁ」
「これでようやく全員揃ったな!」
それぞれと再会の挨拶を済ませると、大垣さんに連れられてエントランスをくぐる。県庁ということもあり、とても大きなホールが我々を迎える。
これだけ立派な建物なのだから、今から案内されるであろう部屋はどんな所だろうと思っていた。そんな時期が僕にもありました。
「ここがウチらの作戦本部だっ!!」
「「こっこれは…………狭っ!」」
「プロジェクト用に部屋を貸してくれっつったら、この部屋でよぉ」
「野クルの部室みたいやね」
君たちは一体どんな所で活動していたんだ。確かに野外活動サークルという名の通り、主に居る場所は外なのだろうがこれではただの物置ではないか。
……まぁ秘密基地的なこじんまりとした雰囲気はあるので悪くは無いな。
「ま、ここは打ち合わせでしか使わないだろうしこのくらいあれば十分だろう」
そう言って部屋の奥へと進んでいく。すると誰かが引っ掛けたのか、何かにかかっていたシートが落ちてその姿を表に出す。
「「「「うわっ!」」」」
「なんやこれ……」
「こいつは観光PRロボット、ジンジャー君だ。仲良くしてくれよな」
現れたのは某ペ○パー君のような見た目をしたロボット。胸にあるディスプレイとその目には光が無く、何やら悲しげな雰囲気を醸し出している。
「何で観光ロボットがここに……」
「まぁ、色々あったんだよこいつも……」
全員の思っている事を代弁してくれた志摩さんに、適当な答えを返す大垣さん。そのジンジャー何某に手を当てると、突然電源が入り言葉を発する。
「ジャンケンシマショー!!」
「ひぃぃ!!」
「ジャン、ケン、ポンッ!! ハイッ、ボクノカチー!」
テッテケテー!
いきなりなんの脈絡も無く始まったジャンケンだったが、唯一反応していた各務原さんがグーを出す。ジンジャー君のディスプレイに表示されているのはパーの絵柄。
気の抜けるファンファーレと共に、ジンジャー君の勝利が確定したのだった。うん、何となくここに居る理由が分かった気がする。
そんな茶番は程々に、本来の目的をそろそろ果たさなくては。一枚のホワイトボードの前に部屋の奥で眠っていた椅子を並べると、志摩さんが綺麗な文字で何かを書いていく。
一通り書き終えるとこちらを向き直り講義が作戦会議が始まった。
「ちょっと調べてみたんだけど、キャンプ場を作るにはこの三つが必要らしい」
① 企画
② 現場作業
③ 運営
「最初に客層とか、サイトの種類とかの企画を考えて、並行して現場作業も進行。これは、それぞれの仕事の合間を見て交代制になるかな」
一息ついてうんうんと頷く僕らを見て、しっかり着いてきていることを確認した志摩さんは続ける。
「あとはオープンに向けて予約システムとか運営マニュアルを作るって感じかな」
「「なるほどね〜」」
「そしたら、まずは企画ですよね。誰に向けてのキャンプ場で、どんなサイトが必要か考えないとね。」
少し考えた彼女らは、次々と自らの思う理想のキャンプ場の案を出していく。
各務原さんは、友達や家族と楽しめる所。
志摩さんは、ソロの人でもゆっくり出来る所。
犬山さんは、キッズスペース等がある子供に喜んで貰える所。
恵那は、ドッグランのある犬連れの人でも来れる所。
僕は、地元の人でも楽しめるような所。
「色んな人が、色んな楽しみ方が出来るキャンプ場だと良いよね!」
「だな」
「じゃ! 現地へ行って、もうちょっと具体的に考えてみようぜ」
「ついでに草刈りもしない?」
「「「さんせーい!」」」
全てのバラバラな意見を総括した各務原さんに感謝する。ちょっと詰め込み過ぎな様な気もするが、せっかく初めからキャンプ場を作る機会があるんだ。夢はでっかく持っても良いだろう。
「優太」
「ん? どうした恵那」
早速現場へ行こうとそれぞれの車に乗り込んで行くと、ふいに恵那から声がかけられる。
「こうやって皆で何かするって、なんだか学生時代に戻ったみたいだね」
「確かに、懐かしいな」
「でしょー? それで、優太と付き合い始めた時のこと思い出しちゃってさ」
「あぁー……うん。そうだよな。……恵那、あの時居酒屋で僕が言いかけたこと覚えてる?」
「うん、何か深刻そうな顔してたけど」
「いや、別にネガティブな話ではないんだけど……。こうやってキャンプ場作りも始まっちゃった訳だしさ、一段落着いてから話そうと思うんだけど……良いかな? それまで待ってもらえるとありがたい」
「……わかった、楽しみにしてるね ♪ 」
うーん完全に勘づかれてる気がするけど、まぁ納得してくれたみたいだから良いだろう。心の中でずっと待たせてしまっていることに申し訳なく思いつつ、目的地に着くまで彼女の隣で話し相手になることに集中するのだった。
改めて映画を見直したけどやっぱり面白いですね。皆25歳くらいということは優太くんもう三十路やないかい。多分イケオジに育ってると思います。
あ、あと皆さん誤字報告ありがとうございます、マジで助かってます。読み直しはしていても意外と見落としてる所ってあるもんですね。
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