ゆるキャン△ 愛故に   作:狭間です

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忙しさMAXですがなんとか書き上がりました。
それではどうぞ。


【31】取材

 

 

 

 

 平日の昼間、普通の人なら働いているだろうこの時間に僕は志摩さんと一緒にキャンプ場へ来ていた。いや待って欲しい、これも一応仕事なのだ、決して仕事をサボっているわけでは無い。今開発しているキャンプ場について上司に掛け合ったところ、宣伝や広告を出す代わりにしっかりとしたものを作るよう言われ、その下準備として他のキャンプ場への偵察兼視察を命じられたのだった。

 そこで僕は最初は一人で行こうと思っていたのだが、志摩さんも雑誌の取材で各キャンプ場を回るという話を聞いていたため、せっかくなら一緒に行こうという話になった。

 

 志摩さんは昔乗っていたビーノから乗り換えて、新城さんから譲り受けたスラクストンをずっと愛用している。小柄な志摩さんの為にシート高を調節してあるのは恐らく新城さんの気遣いだろう。大人になった今でも身長は150cmを超えなかった彼女には少し取り回しが難しいと思っていたが、今では難なく乗りこなしている。

 ビーノは実家に置いてきているようで、今はしばしの休憩と言ったところだろうか。これまで沢山のキャンプ場に連れて行ったであろうその原付は、ゆっくりと次の出番を待っている。

 

 いつか走った本栖湖の周りを志摩さんと二人でもう一度走る事になった。ボンネビルとスラクストンが並んで走る様子に少し感動しながらもキャンプ場に向けて単車を進める。

 僕達は今日明日の二日間で三つのキャンプ場を回る予定だ。志摩さんはその後もういくつか回るらしいが、僕は仕事があるので同行するのは今回だけ。彼女と二人でキャンプをするというのはなんだかんだ言って初めてかもしれない。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「こんにちは、お電話した志摩です」

 

「それと瑞浪です」

 

「あぁ、お二人共お待ちしておりましたよ。それでは早速ご案内しますね」

 

「「よろしくお願いします」」

 

 第一目的地の浩庵キャンプ場に到着すると、管理棟に居るスタッフに声をかける。そこにはあの時からいくばくか歳を重ねた管理人さんが居た。東京に越してから随分とこのキャンプ場からも疎遠になってしまっていたため、会うのは本当に久しぶりだ。志摩さんの挨拶とは別で僕も挨拶をするべきだな。

 

「ご無沙汰してます」

 

「! 見違えたな優太君。名前を聞いた時はもしやと思ったが、やはり君だったか。雰囲気が変わっていたから別人かと思ったよ、前会った時より柔らかくなったね」

 

「その節はどうもお世話になりました。色々と気持ちの整理もついて今は普通に生活してます。改めて、今日はよろしくお願いいたします」

 

「あぁ、よろしくね」

 

 湖畔サイトへの道のりを懐かしい話をしながら下っていく。木々の湖から漂ってくる香りを楽しみながら過去の記憶に思いを馳せる。このキャンプ場があの子らとの出会いの場所でもあったんだよな。本当に奇跡のような出会いだと今でも思う。

 あの時と変わらない風景を写真に収めながらゆっくりと歩く。やはりシーズンオフということもあり、テントを建てている人は誰も居ないようだった。この日は天気が良く、山の向こうに見える富士山が湖面に反射して大きな二つの富士山を僕らに見せていた。

 

「良いキャンプ場ですよね、私よくここに来てたんです」

 

「……そうでしたね」

 

「!」

 

 どうやら管理人さんは志摩さんがよくこのキャンプ場を訪れていたことを覚えていたようで、感慨深そうな表情を浮かべながら返事をする。まさか覚えていて貰えたなんて思ってもいなかった志摩さんは驚いた表情をするも、直ぐに顔を綻ばせ笑顔を見せた。

 現在はあの頃より若干だがキャンプブームは下火になっていた。そんな時に以前からよく来ていた少女が大人になって今度は仕事としてこのキャンプ場に来るなんて事があったら、涙脆い人ならば涙腺が崩壊していてもおかしくないだろう。

 

「全然変わらないです、この景色」

 

「ここは出来るだけ自然に手を入れないようにしてるんですよ。言っちゃえば、そのまんま」

 

「そのまんま……」

 

「その方がここの良さが出るんじゃないかと思って」

 

 それを聞いた志摩さんは何かを考えているようだった。キャンプ場のコンセプトを作るのに何か良いアイデアが浮かびそうなのだろうか。

 考え込む志摩さんを横目に、なにやら管理人さんがひそひそと話しかけてきた。

 

「実はこれ内緒なんですけど、彼女の為に林で薪をわざと落としたりしてたんだよ」

 

「……それはそれは」

 

「毎回嬉しそうに拾ってくもんだから、なんだか餌付けしてるみたいで楽しくてね」

 

「ははは」

 

 この人は意外とお茶目なところがあるようだ。しかし言わんとしている事は分からなくもない。小動物の様な可愛らしさを持つ志摩さんが毎度嬉しそうに薪を拾っていく様子を想像すると、それをやってしまう気持ちは分かる。

 ……ただ、自然に手を入れないと何やらカッコイイことを言っていた手前、僕は微妙な顔をせざるを得なかった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 その後ほっとけや温泉で汗を流した僕らは、二つ目の目的地であるイーストウッドキャンプ場へと場所を移した。テントを設営して焚き火を始めようかと思っていた時に、ポケットからLIMEの通知音が鳴る。

 

[首尾はどう?]

 

[今イーストウッド着いてテント建てたとこ]

 

[そっかそっか、順調そうで何より ♪ ]

 

[恵那は?]

 

[私も今仕事終わったの、ちょっと様子が気になったから連絡しちゃった。私ももう帰るから、今日はリンをよろしくね〜]

 

[お疲れ様。わかった、また明日な]

 

 返信を済ませて焚き火台へと向き直ると、もう既に着火を終えて飲み物を用意している志摩さんが居た。どうやら珈琲を入れてくれている様だ。

 焚き火の向こう側には街の景色が広がっており、夜ということもあってあちらこちらの建物は光を放っている。志摩さんから珈琲を受け取った僕は、優しげな夜景を眺めながら暖かい飲み物を流し込んでいく。

 

「さっきのLIME、恵那からですか?」

 

「うん、志摩さんをよろしくって」

 

「相変わらずのお節介焼きめ……」

 

(君もそこそこお節介焼きだと思うけどね)

 

「その、あれから恵那とは上手くやれてますか?」

 

「あぁ、彼女に甘えてばかりだけどなんとかやってるよ」

 

「それなら、良かったです」

 

 やはり親友の状況は気になるのだろうか、僕の返事を聞いて志摩さんはどこか安心したような様子を見せた。今は僕がヘタレているせいで関係を進めることが出来ていないが、そんなことを志摩さんに相談しても仕方がないだろう。これは僕自信がどうにかしなければならない内容なのだから。

 

「ここでさ、大学生の頃新城さんに会ったんだ」

 

「そういえばおじいちゃんが言ってました。古い友人に会ったって。ここでの事だったんですね」

 

「あぁ、新城さんにも随分お世話になったよ。うじうじしていた僕を蹴飛ばしてくれたんだ。あの時の言葉には本当に感謝してる」

 

「そうだったんですね……」

 

「もちろん志摩さん達にも感謝しているよ。今日行った浩庵で君たちに出会ったのもその一部だからね。だから今まで貰った恩を少しでも返せると思うと、僕は嬉しくてたまらないんだ。だから、このプロジェクトは絶対成功させよう」

 

「……はい!」

 

 その後志摩さんと僕は、お互い今まで訪れてきたキャンプ場について語り合ったり、恵那との関係を深堀りされながら会話を続けていた。今現在異性とお付き合いしているのは僕と恵那だけらしく、仕事一筋で未だ浮ついた話の無い彼女らにとっては格好の獲物だったのだろう。

 様々なことを根掘り葉掘り聞かれて、シュラフに入る頃には相当疲れが溜まっていた。まぁそのおかげで直ぐに寝付くことが出来たので有難く思うとしよう。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 翌日、片付けを終えてイーストウッドキャンプ場を後にした僕らは、最終目的地である四尾連湖キャンプ場へと向かっていた。最初は僕が先導していたが、今は志摩さん先導で単車を走らせている。もう長い事乗っているからか、コーナリングやブレーキのタイミング、体重移動などもスムーズに行われており後ろから見ていてとても安心するものであった。

 そうこうしているうちに、管理棟が見えてくる。駐車場に単車を停めた後、スタッフさんに声を掛けて取材の事を話すと一輪車を貸してくれた。荷物をそれに乗せた僕らは、ガラガラと音を立てながら、人が歩ける程度に舗装された道をゆっくりと歩いていった。

 

「ここも、僕来たことあるんですよ。キャンプはせずに立ち寄っただけでしたけど、桜さんと二回目に会ったのはここでしたね」

 

「なでしこがなんで教えてくれなかったのって、ちょっと怒ってた時のやつですね」

 

「多分それ、だから湖をこっち側から見るのは初めてなんだよな。……まさか一泊二日原付の旅オールナイト上映が行われるなんて、あの時には少しも思って無かった」

 

「……そんな事があったんですか。確かに桜さん、原付の旅が絡むと人が変わりますもんね」

 

 どうやら志摩さんにも心当たりがあったようで、なんとも言えない苦笑いを浮かべながら会話を交わす。まぁでもあれ程までに好きになれる趣味があるというのはやはり羨ましいな。……ただあの無茶だけは勘弁して欲しい。

 あの頃はまだ体力があったから良いものの、今また何シーズンもある番組の一気見などしたら、確実に体調を崩すだろうな。三十路に差し掛かってきた自分の体は、あの時のような若々しい元気を出すことはもうできなくなっている。だからまだまだ元気な彼女らを見てこちらも活力を貰うと共に、どこか眩しく感じてしまうのも無理はないだろう。

 

 そんなことを考えている間にも志摩さんは横でパシャリパシャリと四尾連湖の風景を写真に収めていた。僕は僕で炊事場やトイレの設置場所などの傾向を見つつ、どんなレイアウトで置いて行くかを頭の中で巡らせていた。

 それと、宣伝用のポスターを作る時のレイアウトもだな。

僕らのキャンプ場を知らない人が見て、第一印象を受け取る重要な物だ。生半可なものは作れない。キャンプ場のコンセプトがどのような物になるかまだ決まっていないため、朧気なイメージだが何も考えないよりは良いだろう。

 

 

 志摩さんもある程度資料は集まったようで、今日はお開きになった。彼女は名古屋へ、僕は東京へ向けて、それぞれの向かう先へと帰っていく。

 何かを得たらしい彼女は早速仕事場に行って記事を執筆するそうだ。ウェブでの連載もあるようなので、これからの更新が楽しみだ。きっとその記事を見て、僕らのキャンプ場に興味を持ってくれる人も居るのだろうな。

 

(広報担当の一人として、僕も頑張らないとな)

 

 特に何事もなく自宅へと帰った僕は、昨日と今日あったことを恵那に報告しながらポスターのレイアウトを考える。なにぶん僕の専門外なこの作業は、いささか進むペースが遅いように感じた。知り合いにこういう物が得意な人は居ないし、外注するのも何か違う気がする。それでも完成度は高く仕上げたいと考えている為時間がかかってしまうのだ。

 頭を悩ませながら今日も一日が終わっていく。

 

 

 

「……そういえば、あのキャンプ場が完成するまでの期間ってどれくらいあるんだ?」

 

 ふと気になったことを考えてみるも、一人で思案して分かることでは無いので立案者の大垣さんに今度聞こうという結論に至った僕は、またポスター作りへと脳のリソースを割くのだった。

 

 

 




文章の書き方がようやく安定してきた気がします。
どっかのタイミングで序盤を書き直すかもです。
皆様の感想、評価等お待ちしております!

 その後の展開(具体的にはR18展開)どうしましょう。書いたことは無いのですが、需要があれば挑戦してみても良いかなと思っています。

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