「平日戦隊……」
「「「「作業着レンジャー!」」」」
「週末と平日で少し変わるんだねぇ」
仕事の都合がついた各務原さん、大垣さん、恵那と僕を含めて四人はキャンプ場予定地へと赴いていた。少しでも作業を進める為に早速集まる事の出来る人は集まったのだ。平日と週末での変化は名前のみなのだが、恵那はどこか気に入ったようでニコニコと楽しそうにしていた。
「とりあえず今日も草刈りだ!」
開始の音頭を取った大垣さんに続いて作業に取り掛かろうとするも、前々から気になっていた期間について聞いてみる。計画書を提出して本格始動した今なら分かるだろう。
「そういえば大垣さん、キャンプ場オープンの時期ってもう決まったのですか?」
「いい質問ですねぇ、今年の7月です!」
「「「…………えぇーっ?!」」」
「も、もう半年しかないよ?!」
「大人の事情ってやつだ! それを飲んで何とか企画通して貰ったんだよぉ〜」
「アキちゃん……」
「……まぁそういうこともありますよね」
「……う〜ん、分かった! 何とかするよ!」
期日を聞いて少し悩んだ各務原さんは、何かを意気込んで僕らに宣言した。何か良い案を思いついたのだろうか、自信に満ちた彼女と共にその日は作業を進めるのだった。
ーーーー
「店長! これっ、有給届けです!」
「……もう店長で良いです。もしかして、この間の『何とかする』と関係がある感じですか?」
「そうです! 週末には準備が済むと思うので楽しみにしててください!」
「それはそれは、溜まっていた有給を消化して頂けるのはこちらとしても有難いですが、無理だけはしないようにして下さいね」
「はいっ! わかりました!」
連日有給を取って何かを計画しているらしい各務原さんを見送って自分の仕事に戻る。それと同時にこちらもやる事をやらなければ。休憩時間に連絡先を交換したあかりさんとメッセージのやり取りをする。あれからポスターについてのアドバイスをいくつか貰って、だいぶ形になってきた。これならオープン前の宣伝にも間に合うだろう。
ーーーー
翌週
ゴゴゴゴゴ
颯爽とキャンプ場に現れた各務原さんは、大きな鉄の塊に跨り、轟音を響かせながらキャンプ場の切り株を次々に処理していく。
そう、彼女が乗っているのは正真正銘のショベルカーだ。何とこの一週間のうちに有給を使って講習を受け免許取得までやってのけたのだった。相変わらず彼女の行動力には目を見張るものがある。
「「すごーい!!」」
「バッチリ講習受けてきたから! 任せてー!」
重機の音に負けない元気な声で宣言する彼女を横目に、大垣さんも何やら取り出している。さてさて、とりいだしたるはエンジン付き草刈り機。以前差し入れと知恵を授けて下さった岡崎さんが貸してくれたらしいそれを使うと、今まで手作業で刈っていた枯れ草がみるみるうちに無くなっていく。
重機や機材を使ったおかげで、今までとは比べ物にならないスピードで整地作業が進んでいく。合間合間に恵那と一緒に宣伝用の写真を撮り、仕事で来られない志摩さんに現状報告として写真とメッセージを送る。
[私のやる分、残しとけよー]
そんな気の抜けるような返信を見て思わずほっこりとする。
それから我々は整地以外の作業も着々と進めて行った。元ある施設は何年も放置されていたため、やらなければならないことがまだ沢山あった。それでは現在までの工程をダイジェストでお送り致します。
全体の草刈り、その後油圧ショベルでの整地、壊れた階段などの修繕、元々あった施設を管理棟へと改修。
作業合間の腹ごしらえ。
全員のスケジュールの管理、ドッグランや遊具などアクティビティの検討、炊事場や水周りの修繕、などなどです。
ーーーー
「優太! アキちゃん!」
「二人とも大変や!」
残り少ない草刈りを進めていると何やら切迫した声が聞こえてきた。大垣さんと顔を合わせ、直ぐに声の方へと向かう。
「私たちの食料が!」
「ゴミ置き場が!」
「荒らされてる……?」
そこには今日のお昼休憩で食べる為の弁当と、ゴミ置き場に置いてあったゴミ袋が見るも無残な状態へ荒らされていた。
「近くに生息している生き物の仕業ですかね……」
「この辺りの山は鹿も猪も猿も普通に居るぞ」
「何かしらの対策は必須でしょうね」
「対策立てるにも正体を突き止めないとやねぇ……」
「もし猪とかだったら、私たちが見張るのも危ないんじゃない?」
「「「「うーん……」」」」
一体どうしたものか、予算的に業者に頼むのもキツいため自分たちでどうにかしなければならない。4人揃って頭を悩ませていると大垣さんから声があがる。
「いるぞっ! 適任者が!」
時間は夜へと移る。日中よりも野生動物が行動するであろう日の落ちた時間に、我々は管理棟でとある作業をしていた。そことは少し離れて山の中、文字通り目を光らせている人影、ならぬロボット影が一台。そう、様々な事情から県庁に放置されていたあのジンジャー君である。野生動物を釣る為にリンゴを両手に持たされたジンジャー君は、目に取り付けられたライトで前を照らしながら、遠隔で調査を任されていた。
追加装備として暗視カメラを取り付けたジンジャー君を管理棟から操作しながら調査を行う。すると早速ガサゴソと動く茂みを発見する。
「あ、何かいる!」
動きの原因を調べるためにジンジャー君には特攻してもらおう。ゆっくりとジンジャー君を操作して茂みに近付ける。
ウィーン
「ジャンケンシマショー! ジャン、ケン、ポ」
ガシャーン!
すると案の定、茂みの中から野生動物が飛び出しジンジャー君は襲われた。横向きに倒れたジンジャー君のカメラには手に持っていたリンゴが転がり落ちて虚しく地面に横たわっている。
「「「ジンジャーくーん!!」」」
急いで傍らに置いてあった懐中電灯を手に取り、ジンジャー君が襲われた事件現場へと向かう。予想では、犯人はジンジャー君が手に持っていたリンゴを食べる為にしばらくその場に留まっている事だろう。
そんなに奥まで行っていなかったので直ぐに現場へと到着した。
そこには力無く倒れるジンジャー君と、落ちたリンゴを頬張る狸の親子が居た。光に照らされた彼らは我々に気付いたようで、急いで茂みの中へと逃げ帰っていった。
「「「「ハァ〜……」」」」
「なんだ狸かぁ」
「猪やなくて良かったわぁ……」
「とりあえず食べ物を外に出しておかないよう、注意書きが必要だね」
「自然を相手にしている訳ですから、これくらいのことはありますよね」
犯人は分かり、それが狸ということもあり、今後の対策も比較的簡単に立てることが出来そうだ。我々はジンジャー君という尊い犠牲の元、キャンプ場の安寧を手に入れることが出来たのだった。なむなむ。
「ボクノマケデスー」
暗い山の中にジンジャー君の負け宣言が響き渡った所で、今日の作業は終了した。
キリが良いのでちょっと短めに切りました。
皆様の感想、評価等お待ちしております!
今後の続きと小話の案としていくつか考えてはいるのですが、どれが需要あるのかわかんないのでアンケートやってみます。お気軽にご参加ください。なお、ほかにも希望がございましたら感想欄でお願いいたします。
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