蝉がけたたましく鳴く中で僕らの作業は再開した。発掘作業のせいもあって、本来オープンする予定だった時期は過ぎてしまったが、それでも僕らは諦めること無く諦める秋のオープンに向けて進み続けている。
「それじゃ、1番上の段から終わらせていこう」
「うん!」
「せやね!」
「やりますかね」
予算が遺跡関連施設の建設という計画が加わったことでさらにパワーアップし、全員がエンジン付き草刈り機を手に入れた。つまり今までの倍以上の作業効率になる訳だ。青々と茂っていた雑草たちが瞬く間に切り刻まれていく。
大垣さんは離れた場所で作業員の方々とレイアウトについて話し合っていた。前の計画では無かった遺跡展示スペースや、土器作りを体験するためのスペースとそれを焼くためのスペース、それらの施設とキャンプサイトがかち合わないようにそれぞれの場所を決めていく。
一通り整地の作業が終わると、木の杭を打ち、おおまかに区画分けをする。
「よっ、ほっ、二人ともいいよ」
「おっけー」
「了解」
まずは手で軽く杭を地面に突き立て、それを上から木槌で叩く。
「せーのっ……! よっ、おっとっとっ、うおぉ!」
「うぉ」
「ありゃー……」
これがなかなか難しい、各務原さんが木槌を振りかぶるも扱い慣れていない道具だからかふらついてしまう。もちろんそのまま振り下ろした木槌は杭に当たることはなく、代わりに大地を強く打ち付けるのだった。少し離れて見ていた志摩さんもその勢いの良い失敗に苦笑いしている。
「ここは男手に任せてください」
「「おぉ……!」」
そう言って僕は各務原さんから木槌を受け取り、袖をまくった。羨望の眼差しで見つめられる中、身体を半身にして、意外と重量のある木槌を大きく振りかぶる。ズドンという音と共に打ち付けられたのは、やはり杭では無く地面であった。思いっきり叩きつけた反動で手がビリビリと痺れるが、残念そうな表情を浮かべる彼女らに見られるよりかは幾分かマシに思えた。
「がっはっはっ、もっと腰を入れんのよ」
「岡崎さん!」
そこに現れたのはまたしても岡崎さん(とその愉快な仲間たち)だった。山人と書かれた絶妙なデザインのTシャツを纏っていた彼らだったが、今の僕らにはピンチに現れたヒーローのようにしか見えなかった。過去に知恵を授けて下さった実績のある彼は、またしても僕らを救ってくれるのだろう。
「ほっほっ、……おぉりゃぁぁ!!!」
ドン ドン ドン
大きな雄叫びと共に振り下ろされた木槌は、見事に杭の頭を叩く。一寸の狂いもなくどんどんと杭が地面へとめり込んでいく。一通りデモンストレーションを終えた彼は、木槌を肩にかけて言った。
「こうやんだよ!」
「「「おぉ……!!」」」
流石やまんちゅ、難しい作業を平然とやってのけた。なるほど、腰か。試しに僕ももう一度やってみよう。
「優太さーん! ちょっとええ?」
「あっ、はーい! 今行きます!」
いざ実践というところで、上に居た犬山さんからお呼びがかかる。杭打ちの作業は一旦志摩さんと各務原さんに任せて上へ登る。
「どうかしましたか?」
「ちょっと優太さんに頼みたいことがあってぇ」
「?」
ーーーー
犬山さんと一緒に、作業用に持ってきた軽トラで目的地へと向かう。到着すると、そこは小学校であった。例の廃校になるという彼女の働いていた小学校だ。軽トラでここに来たということは、何となく察しがついているが今は何も言わないでおく。
「この間の話なんですけど、ここに残ってるのは持ってってもええことになって!」
校庭には棒球ネットや、あの正式名称がわからない地面に半分埋まったタイヤがあった。改めて考えてみると本当にあれは何と呼ぶのだろう。そしてどうやって遊ぶのかも見当がつかないが、それらを使って無限に楽しめるのが小学生という生き物なのだろうな。
「それとこっちにもあるんです!」
彼女に手を引かれ案内されるままついて行くと、校庭の隅にある用具入れにたどり着いた。ガラガラの音を立ててその中を覗く。
「確かに、これならキッズエリアで使えそうですね」
「せやろ!」
そこには使い古されたサッカーボールやフラフープ、竹馬など様々な物がそのままの形で残されていた。処分するにもお金がかかるため放置されていたのだろう。嬉しそうにそれらを見せる彼女に僕も応えなくては。
「それでは、これらを荷台に載せていきますか。タイヤは掘り起こさないとですね」
「そう思って、シャベル持ってきてます」
「流石犬山さん準備が良いですね」
「うふふ ♪ 」
キャンプ場へと戻った僕らは早速キッズスペースへと道具を運んだ。持ち帰ってきたタイヤを掘った地面に埋め込んでいく。掘り返されたり、使っている途中に出てきてしまっては危険なので、しっかりと埋めた上でシャベルを使って地面を叩き固める。次々とカラフルなタイヤが並べられ、キッズスペース段々と様になってきた。
ーーーー
それから僕らは来る日も来る日も作業に明け暮れた。キッズスペースには、丈夫な支柱立て、これまた丈夫なロープを使って新しいブランコを作った。山登りが趣味の各務原さんが、得意のロープ結びでしっかりと作ってくれた。
例の鳥かごは耐水ペンキで塗り直し、見栄えを良くした。これでただの古びた置物から、しっかりとキャンプ場のシンボルたる風格を取り戻した。
ドッグランには、現管理棟の裏に捨ててあったドラム缶を使ってトンネルと坂を建設する。これで遊びに来てくれた犬達も思う存分楽しめるだろう。柵には僕と恵那で看板を打ち付ける。自らの手でペットを楽しませられる場所を作るという作業を終えた彼女は、とても満足気な表情を浮かべていた。
これらの途中、大雨に降られるアクシデントがあり、その度に屋根のある炊事場へと逃げ込む事も偶にあったが、今思えばそれもいい思い出だ。作業最後の日には、土器焼きスペースで地元の人からおすそ分けして貰ったさつまいもで焼き芋パーティをした。疲れた体に焼かれたさつまいもの暴力的な甘みが染み渡るあのイベントはまたいつかやりたいと思わせるそんな行事であった。
あと残った作業は、オープンに向けて細かいところを詰めるのみとなった。
僕らの夢は、もうそこまで近付いてきていた。
キリが良いので今回は短めです。
終わりが見えてくると、とても寂しい気持ちになりますね。
あと少しお付き合い頂けたら幸いです!
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今後の続きと小話の案としていくつか考えてはいるのですが、どれが需要あるのかわかんないのでアンケートやってみます。お気軽にご参加ください。なお、ほかにも希望がございましたら感想欄でお願いいたします。
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