ゆるキャン△ 愛故に   作:狭間です

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最終話 旅路

 

 

 

 

「どうかな ♪ 」

 

「うん、とっても可愛いよ。似合ってる」

 

「ワンッ!」

 

 目の前でくるりと回り、爽やかな青色のパレオをたなびかせる。太陽に照らされる健康的な肢体は、この海水浴場の何よりも輝いて見えた。

 

「優太たちも一緒に行こうよ!」

 

「ちくわも行こうか」

 

 パラソルの設置場所から少し歩くと、波打ち際まですぐだった。

 

 そこの海の水は、人が多い海水浴場とは思えないほど透き通っていた。東京付近、太平洋側の観光地にある海はお世辞にも綺麗だとは言えなかったが、今日のこの場所はそんなことを感じることは無かった。

 

「綺麗な海だね」

 

「本当にそうだね ♪ 」

 

「まぁ流石に日差しはキツイけど……」

 

 暑い。雲ひとつない晴天のおかげで、直射日光が遮られることなく直接地上へと降り注いでいる。

 

 水場で軽く遊んだ後、我々は直ぐにパラソルの下へと避難していた。

 

「いやぁ遊んだ遊んだ ♪ 」

 

「ちょっと水に入っただけじゃん」

 

「もう私は十分かなぁ」

 

「ワウ~」

 

 日陰で涼みながらレジャーシートに腰かける。空気で膨らませるタイプのグランドシートを下に敷いているため、熱でしりが焼けることもない。

 

「皆でキャンプするのも楽しいけど、こうして優太と二人で過ごす時間も私は好きだなぁ。もちろん、ちくわともね ♪ 」

 

「同棲始めたから二人で居る時間自体は増えたよね」

 

「こうやってお出かけするのはそれとはまた別のお話なのです」

 

「まぁ分からんでもない」

 

「ワンッ」

 

「そっかそっかぁ、ちくわも嬉しいか ♪ 」

 

 恵那の言葉に同調するように、ちくわも静かに返事をする。これからも二人で居る時間は増えていくだろう。それでもその時間に飽きることは無いだろうし、嫌になることなんて無いと断言出来る。

 

「そろそろ切り上げて温泉行こうか」

 

「お、いいねぇ ♪ 」

 

「今からキャンプ場行ってもまだ暑いだろうし、テント建ててる間に汗かいちゃうと思うから、日が沈むギリギリ目指して着くようにしようか」

 

「さんせ〜い ♪ 」

 

「それじゃ撤収しますか」

 

 広げていた荷物を纏め、パラソルを閉じる。軽くシャワーで砂などを洗い流し、レンタル品を返却すると温泉へと向かう。

 

 

 

 キャンプ場に隣接しているこの温泉施設は、キャンプ場の予約完了画面を提示することで利用料金の割引がされる。実際引かれる料金は微々たるものだが、こういった小さなオトク情報も選ばれる魅力の一つでもある。

 ちなみにここはペットも入浴、もとい水浴びができるスペースがある。更に自分たちが温泉に入っている間に預けておける場所もあるため、入浴中も安心して過ごすことが出来そうだ。

 

 体についた汗や海水が流れてスッキリすると、売店で売っていたアイスクリームが目に入る。温泉を出て火照った体に冷たいアイスが沁みる。

 

 

 休憩所でゆっくりしてたら、日の入りの時間は直ぐにやってくる。

 

 

 

 

「なんと今回はメッシュ素材のテントを用意しました」

 

「お、また例のお仕事?」

 

「今期の新作でございます」

 

「ほほぅ」

 

「風通しも良く熱が篭もりにくい、おまけに軽量素材で持ち運びも簡単という代物」

 

「でも、お高いんでしょう?」

 

「それが今なら、スペアのペグとグランドシートをお付けして……」

 

ゴニョゴニョ

 

 

「いや普通にお高いじゃん」

 

「良い商品はそれなりに値段はかかっちゃうからね」

 

「クゥン……」

 

 そんな茶番を交えつつテントを設営していく。日もだいぶ傾いており、過ごしやすい気温になってきた。

 

 

 最後に焚き火台を設置する頃には、辺りはすっかり暗くなり、ライトの明かり無しでは何も見えない程だ。僅かな明かりを頼りに薪に着火し、キャンピングチェアに腰掛ける。

 

 ソロバーナーでお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。粗方やる事を済ませた僕らは、静かに流れる時間を堪能していた。

 

 

 

「ちくわ、もう寝ちゃったね」

 

「今日はいろいろ動き回ったから疲れたんだろう」

 

「そうだね……」

 

 マグカップを傾ける手が止まる。

 

「改めて、今日は連れてきてくれてありがとね」

 

「どういたしまして。僕も楽しかったよ」

 

「本当にさ……感謝してるんだ」

 

「どうしたんだ? 恵那」

 

 なんだか改まって言葉を紡ぐ彼女に向き直る。

 

「私達もどんどん大人になって、ちくわも……今はもうおじいちゃんになっちゃって」

 

「ちくわにはいつまでも元気でいて欲しいけど、犬の寿命は私たち人間とは違うから……だから、お別れの日が来るまで、なるべく楽しい思い出を作ってあげたいの」

 

「……そっか」

 

「だから、ありがと。優太のおかげでまた一つ思い出が出来たから」

 

 どれだけ元気だったとしても、生命というものに老いは必ずやってくる。頭では理解しているが簡単に納得出来るものでは無い。

 普段から楽しそうに過ごしている恵那でも、お別れの日のことを考えると悲しくなってしまうのだろう。

 

「……ちくわは幸せ者だな」

 

「……そうかな」

 

「こんなに想ってくれる飼い主の元で過ごせているんだ、絶対にそうだよ」

 

 僕にできることは少ないかもしれない。それでも、その辛さを一緒に背負うことはできる。

 

「過去の僕からしたら、今の景色は考えられなかったよ。それが今は当たり前のように隣に恵那がいて、こんなに楽しく過ごしている」

 

「それでも過去の思い出が色褪せることは無い」

 

「今のあり方が変わろうとも過去は変わらない。これから僕らも家族が増えるかもしれないし、その逆も然り。だとしても、今この瞬間の出来事が消えることは無い」

 

 

「だから……恵那」

 

 

「二人でちくわに沢山思い出作ってあげような」

 

「……うんっ!」

 

 なんとか元気になってくれた彼女を見て胸を撫で下ろす。

 

 

 

「……いろいろあったね」

 

「……そうだね」

 

「優太と出会って、皆でキャンプして」

 

「恵那に救われて、告白して」

 

「まさかキャンプ場を作ることになるとは思わなかったよ ♪ 」

 

「あれもいい経験になったね」

 

 一つ一つ、思い出しながら空を眺める。

 

「私……優太に会えて本当に良かった ♪ 」

 

「それは僕の台詞だよ。恵那のおかげで今の僕がある。……思えば僕らを引き合わせてくれたのもちくわだったな」

 

「あの時から、ちくわはこうなる事が分かってたのかもね」

 

「だとしたらもう足を向けて寝られないな」

 

「うふふ、大袈裟だなぁ」

 

 これからも辛いことや苦しい事があるかもしれない。だがきっと、恵那と一緒ならそれも楽しい苦難になるだろう。どんなことがあろうとも二人なら乗り越えられる、そんな気がする。

 

「……ねぇ、優太。さっき家族が増えるかもって」

 

「……そりゃ結婚するんだからその後のことも考えるでしょ」

 

「私は二人くらい欲しいなぁ」

 

「……善処します」

 

「期待してるね ♪ 」

 

 

 一人、二人増えることになっても、僕の想いは変わらない。自分に子供が出来たらという事を考えることも増えた。

 

 

 果たして僕は良い父親になれるのだろうか。僕の父さんや母さんのような、優しい親になれるだろうか。

 

 

 先の事は何も分からない。でも、良い親になれるように努力する事はできる。

 

 

 恵那と今後産まれてくる子供の事を考えると、時間がいくらあっても足りなさそうだ。

 

 

 なんでだって? そうだね……それはひとえに

 

 

 

 愛故に…………かな

 

 

 今後の続きと小話の案としていくつか考えてはいるのですが、どれが需要あるのかわかんないのでアンケートやってみます。お気軽にご参加ください。なお、ほかにも希望がございましたら感想欄でお願いいたします。

  • 卒業旅行編
  • 恵那 専門学校時代編
  • 桜さんとの原付の旅耐久視聴編
  • 映画編 その後
  • IF 優太が恋に気付かなかった編
  • 黙って全部書け
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